それ以外 何もかも同じ 月曜の朝

 バスに乗っているだけだとは言え長時間の移動が母君にどのような負担か、と恐る恐るのバスツアーでしたが、今朝電話でお話しした感じでは心身至って順調なご様子で、「楽しかった!」のお言葉にも安堵。次にお会いするのは日曜日の選挙にご一緒する時ですね(ついでにお昼ご飯でも)。
 選挙と言えば、今回の衆議院選挙から、職員室の入り口前に「選挙公報」が掲示されるようになりました。違和感はありまくりですが、時代なんでしょうね。

 本日、定期試験最終日。
 4時起床で、学校が開く6時に職員室入り。学級通信を作ったり、定期試験後に生徒が記入する「心の整理」を印刷したりと、本来なら日曜日にゆったりと行う仕事をバタバタで片付けました。
 始業後は、高2現代文の採点をして、試験監督をして。でもって、高3は平常通りの授業日程を送っているので、要するに17時からの東大理系漢文特講はあるということ。他学年をメインで担当しながら高3を手伝うと、時にこういう小さな「面倒」があるというのはまさに進学校あるあるなんでしょうね。

 夜は自宅徒歩3分の焼き鳥屋「K」で独酌読書。焼き鳥を頼まずに、冷や奴・串カツ・お好み焼き鉄板を注文するというのはちょっと失礼なんじゃないかと思うんですけれども、ここの店はソースが絶品なのでどうしてもそっち寄りになってしまうんです。ここのソースは、関西出身・京大卒業の高2数学先生ですら絶賛しているほど。

 そう言えば、高2の生徒とは直接関係はないのですが、本日から61回生Hくんが3週間、国語科の教育実習に入られます。私は高3で週2コマの漢文を担当しただけの関係なのですが、縁あって何度か飲みに行ったりする程度の関係にはなっている(Twitterアカウントもフォローして下さっている)方ですので、期間中何度かはご一緒することになるだろうなぁ、と思ってたら既に明日の約束がまとまるという。

角を曲がってしまったなら 何もかも風景が新しくなる

 本日は久々に仕事をしない一日と決め、学校には入らず、母君と二人で人生初のバスツアー(日帰り)に参加することに。行き先の決定から予約の手配は私が行ったのですが、基本は母君の「コスモスが観たい」という要望にお応えするという観点で探しました。具体的には、元乃隅稲成神社、角島大橋、リフレッシュパーク豊浦(ここがコスモス)、の3箇所を軸に山口県を巡る旅。空は生憎の小雨模様(ギリギリ傘が要るか要らないかというところ)で、母君のために新調しておいた長靴も紙袋に携えて出発です。

 朝9時の集合場所には、50代~70代の夫婦連れ、女性中心の友人グループ、を中心に100人以上の人がびっしり。我々のツアー以外のバスに乗る旅客も居るとは言え、雨よけのビル軒下は立錐の余地なしという混み具合です。西鉄K駅近くのビル前、休日朝9時はいつもこのような状態なのだと推測されますが、その時間帯なら私は学校ですし、果たして偶然ここを通ったからと言ってこの集団に興味を向けるものかどうか。
 高速バスは、K市に来る前に既に大牟田羽犬塚やといった各集合場所からのツアー客を乗せているので、我々のK駅待ち合わせ場所に到着した時点で既に半分の座席が埋まっており、最終待ち合わせ場所のK市で我々が乗り込むと、50人超が座れるバスは1つの空席もなく満員になってしまいました。昼食付きのバスツアー、一人あたり7000円の破格だということもあり、先ずはその人気の高さに驚かされます。

 旅行前、母君は9時にK市を出発して再びK市に戻ってくるのは19時過ぎという旅程をご覧になり、若干怯んで居られました。現在の体力で、そのような長時間外に出ることは可能なのだろうか、と。とは言え、旅程を受け取った時点では申し込みが終わっていましたし、多少の無理は身体のためにも今後の自信のためにもやっておいて損はないだろうという算段で、割合気軽に「大丈夫大丈夫」と答える私、にじゃあ絶対の自信があるのかどうかといえばそれは「大丈夫」に根拠が全くないくらいですから推して知るべしで、小雨曇天空模様との景情一致、若干の不安含みの高速入りなのでした。
 が、基山PAでトイレ休憩、その時間を利用してロッテリアで朝食(私は店舗限定の「華味鳥バーガー」、母君は朝食を済ませているのでホットコーヒー)を買い込んできた辺りから、母君は「案外大丈夫」だと思い始めたご様子、割合饒舌に車窓の感想など口にされ、私は毎週この高速バスでK市の寮と小倉の(今はなき)自宅とを往復していた中学・高校時代を思い出したり。
 それにしても、添乗員さん(恐らく50代の女性)、見える景色に土地の謂われに名物にと、どこを走っていても喋る喋る喋る。行かない降りない果ては車窓から見えるわけでもないあちらこちらについての蘊蓄を怒濤のように喋り散らします。中学高校の修学旅行引率体験から想像していたレベルを遙かに超越し、大人向けのバスツアーは大抵そうなのかそれとも彼女個人の資質なのか。

 最初に訪れたのは北長門のお土産店で、バスツアー客専用の超巨大レストランが付設された大型施設。駐車場には、二十台以上のバスが並び、我々50人はバスからレストランへとコンベア式に移動を促されます。着席即頂きますのお昼ご飯は、ウニかカニかを選べる海鮮おこわを売りにした御膳で、小鉢のトコブシから茶碗蒸しから瓦そばから刺身の甘エビから貝汁からおこわから……とこの分量は(朝にハンバーガーまで食べた)私には無理(何しろ普段は朝食も昼食も取らないんですから)、小食偏食抗癌剤副作用の母君にも当然無理……だと思ったら、こういうのは気分が身体を引っ張るんですかね、母君の方が私よりももりもりとお召し上がりで、何だったら食後にドリンクスタンドでソフトクリームまで注文なさるほどです。ここでは、皆が定期テスト勉強に勤しんでいる中担任だけがヘダラヘダラと遊び呆けてごめんなさいね甘い物をあげるから許してね、という我ら高2B組諸氏へのお土産を購入。母君も、リハビリステーションのお知り合いにお持ちになるお菓子を幾つか買われていました。

 海沿いの山道は道幅とバスの幅が殆ど同じ、それを遙々何十分もかけて縫い登るだけの甲斐があるのかといえばどうやらありそうな絶景、SNSを中心に主に海外で話題になった「元乃隅稲成神社」は、絶壁海岸から神社までの岩坂道100メートルに123基の鳥居がずらり並び、高台からは鳥居びっしりの向こうに青々とした海が広がる……という「青々」は残念ながら曇天の影響で観ることが叶いませんでしたが、それでも実際に霊的空間で潮風に吹かれると俄然やる気元気が出てくるものなのでしょうか。ここでも母君、最初は絶景を観るだけと仰っていた(私もそのつもりだった)のに、是非鳥居123基を潜りたいと仰る。抗癌剤の副作用で爪が膿んで足がお悪い、のを物ともせずに傘の杖で根性をお見せになりました。登り切った果てにはお狐様、「有り難い有り難い」

 神社の散策自由時間には雨があがり、バスに乗ると雨がぱらつくという幸運で、次に向かう先は角島大橋。これは本当にバスで「渡るだけ」で、渡った先の角島では入って早々の駐車場でUターン、島には用事はないんだ島へ渡る橋を走ることに意味があるんだという本末転倒に乗客一同苦笑気味。
 大橋近くのパーキングでお土産・トイレ休憩。大橋の写メを1枚取ったら、橋を渡るロードレーサーと、橋の下の海岸で波に乗るサーファーとが映り込みました。雨は降ったり止んだり。

 さて、本末転倒と言えば、高速道路だけでなく下道もずいぶん走ったこのバスツアー、トータルだと7・8時間はバスの中ということになりましょうね。とすると、その車窓道端に、またかまたかとコスモスが咲いてるんです。母君、これでちょっとコスモスに「飽きた」。
 最終観光地のリフレッシュパーク豊浦、に着いて25分の自由時間。「さぁ、ここでアホほどコスモスが見られますよ!」という私に返して母君曰く「コスモスは、もう良いです。雨も降ってきたので、私はバスでコーヒーでも」
 一人でコスモス、100万本の「コスモスの絨毯」を眺めました。道端の野花で満足なさった母君は賢明でらっしゃったかも知れません。「凄いねぇ」「綺麗だねぇ」と言葉で景色を共有する相手が居らぬまま、北九州市の人口を超える分量の何物かを一人眺めるというのは余り精神衛生に宜しくない。というか、圧倒的でちょっと不気味なくらいです(曇天の影響もありましょうが)。

 外はそろそろ暗くなり始める18時。秋ですね。最後の目的地は、ここで観光客が大量に金を落とすという契約があるが故の7000円破格なのだろうというツアー客すし詰め状態の賑わい、山口県の名物「村田蒲鉾店」です。ツアー客が自動的に運ばれ、ここでお金を使うのは義務だという錯覚を起こさせるための事前CM(バスの中に店員が乗り込んできて、マイクを使って買うべき商品を予め説明する)を経て、いざと売り場に飛び込んだら待ち構えているのは試食地獄。これは女性陣の性(差別?)、どうぞ一口と言われて断らないどころか勧められる前からとにかく全てを試食したい、剰え爪楊枝二刀流で頼んでもないのに「ほら、池ノ都くん(←二人称)も味見して。で、これ、買う?」
 バスの中でスマホを使って検索、予めどれとどれとを買うと決めておいたので、そこほど無駄遣いはせずに済んだと思いますが、私は「もりき」マスターとHさんとのお土産に練り物のセットを2つ購入しました。で、これまた女性陣の性(差別?)なのか、あれだけ試食をしまくった母君は、ご自分用には何も買われません。

 帰りの高速バスに乗る頃には雨が本格化、メインのコスモスを結局見なかったという本末転倒はありましたが観光中だけは断続の雨の「断」に当たるという幸運もあり(念のため自賛の母君用長靴も出番はありませんでした)、総じて満足の旅行だったのではないかと。超・長時間のバス移動、母君も私も結局一度も寝落ちすることなく、バスは予定時間通りにK市の集合場所に帰ってきました。
 集合場所からは母君のリハビリステーション経由で帰宅。20時近くに「もりき」に入り、マスターにお土産を渡して軽く独酌。朝昼に食べ過ぎて、肴は殆ど入りませんでした。

 そう言えば、同じツアーの人たちと会話を交わすということは殆どありませんでしたね。そういう物なのかも知れませんし、母君が(癌治療故の外見の変化と、後は生来の人嫌いとを併せて)近寄るなオーラを出しておられたのかも知れませんし。
 いずれ、別のツアーに参加してみてもいいかな、とは。

誰が生徒か 先生か

 1限は高3文系漢文の授業だったのですが、第3回校内模試(文系専用現代文、返却済み)の解説という「建前」で、現代文の試験で「読む」「書く」というのはどういうことなのか、ということを30分間お話しました。答案を見た限りあまりにも「ルール」「作法」が内面化されていない、だから「これは説教です」と冒頭で宣言して。この説教臭さは勿論、昨日のRHYMESTERの余韻に決まっていますね。
 高2以下は定期テスト、本日は3日目で私の現代文の出題がありました。生徒が半ドンで下校した後はその採点を半分ほど終わらせて、本日のメインの(というか、いちばん楽しみな)業務であるところの大牟田地区保護者会の講演へ。

 西鉄電車内で、本日のメインゲストであるところの国語科恩師先生とお会いしてご挨拶(私は同じゲストでも「刺身のつま」です)。大牟田は15人程度の小集団なのですが、本日参加の保護者(お父様方)にF高の卒業生が多く、国語科恩師先生に心酔なさっておられるのですね。先生も、退職されてもう7年ですので人前に出ることはあまり好まれないのですが、担当生徒に頼まれれば絆されてしまう訳でして。
 講演とは言っても、先述の通り我々を入れても20人弱ですので、食事をしながら、私と恩師先生とが20分ずつお話ししたあとは、和やかに歓談をするという流れ。恩師先生は、「人前に出るのはこれで最後」と仰るだけあって、滅茶苦茶ディープな裏話を炸裂させておられて何度も噴き出しそうになりました(今思い出しても大丈夫なのかなぁ、って)。

 大牟田地区は有数の酒豪区ですので当然のごとく終電コースでしたが、恩師先生は本来の21時就寝を曲げてのご参加でしたので2次会の前にご帰宅。
 先生からは、母君へのお土産に「棒茶」を頂きました。幸せ。

誰がマイクロフォンマスター?

 佐々木敦筒井康隆入門』読了、★★★。そらま、小説読む方が面白いに決まっとるわな。

 昨日は英甲の試験監督を我らが高2B組で。その中でLafcadio Hearnについての長文が出題されており、事前配付資料(wiki)からクイズが出されていたのですが、①日本名を漢字で、というのは分かる。②「耳なし芳一」が弾く楽器名を漢字で、というのもまぁ分かる。でも、③日本名(八雲)の由来となった彼が在住していた市の名前、が「松江市」(旧国名「出雲」に因む)ってのはクイズの問題としては無理筋じゃないの? 普通、出雲市って思わん?(調べたら、松江市は1889年、出雲市は1941年発足だそうですけれども)
 試験後に、生徒から「八雲の由来って?」と聞かれて「八雲立つ、なんじゃない?」と答えたら生徒が「そっか~」って言ってて、生徒も担任も完全に「出雲市」モードで職員室に戻って、英甲のパイセン女子から答えを聞いてから慌てて教室に戻る。「ご免、松江市だった! 旧名の『出雲』が由来で……ってよく考えたらそんなん分かるかっ! あの人クイズ作るの下手かっ!」と担任逆ギレ。でもって、それを尻目に優等生某くんが小さくガッツポーズ。よくあんなプリントをそのレベルで読み込んでたな、と驚き。

 年末(冬休み)の上京日程、及び年度末(春休み)の上京日程を確定させ、池袋北口の定宿ホテルをネット予約。
 冬は、12月25日から5泊6日。30日に福岡に戻り、そのまま56回生の卒業10年を祝う同窓会へ出席します(昨日、幹事のIくんに「出席」の葉書を送りました)。
 春は、3月28日から4泊5日。最終泊の31日は(恐らく)戸川純たんのバースデーライブですね。

 1・2限は定期テスト監督、3限は明日の大牟田地区保護者会の資料作成。この保護者会は国語科恩師先生とご一緒の講演でこれは仕事に非ず最早完全に俺得の遊びです。
 さて、昼過ぎの職員室、入り口付近の机で、高3生2人が書き物をしている。ここで書き物をさせられるといえば大体反省文か追試かでどっちも高3には関係ないものなんじゃないのかと覗いてみたら豈図らんや反省文でして。今時高3にもなって何を反省文案件なんてと文面を見たら「校内模試の休み時間に脱走してセブンイレブンに買い物に行った罪」。動機は「数学不調のイライラからつい出来心で」って可愛いなオイ。

 さて、こちら高2担任の場合は何罪で反省文を書くべきなんでしょうか、可愛い生徒が恐らく必死で勉強しているであろう夜、独り福岡まで出かけて大好きなRHYMESTERのライブを鑑賞して来るなぞ。

 DRUM LOGOSはいつ以来? 志村さんがフロントを務めていた時代のフジファブリックのライブには欠かさず通い詰めましたが、それ以来なんじゃないでしょうか(ということはもう5年とは言わないんですね)。

 ①STYLE WARS ②Future Is Born ③Back & Forth ④B-BOYイズム ⑤ちょうどいい ⑥梯子酒 ⑦おぼえていない ⑧噂だけの世紀末 ⑨ガラパゴス ⑩爆発的 ⑪Don't Worry Be Happy ⑫ゆれろ ⑬グラキャビ ⑭POP LIFE ⑮The Great Journey ⑯DIAMONDS ⑰K.U.F.U ⑱カミング・スーン ⑲ONCE AGAIN ⑳マイクの花道

 ……あ~、抜けや順番の前後があるかも知れない。アルバム全部持ってて全曲のタイトルを知っているという訳ではない上に、完全なる記憶(現在11月2日)で書いているのです。
 ただもう、①~④の格好良さは本人たちも「ここで盛り上がらないと」という酒井くにお・とおるばりのMCで推していた通りで、相も変わらず会場最後方で観てたのに組んでた腕が解けそうに・上につき上がりそうになりましたよ37歳にもなって……って、ステージ上の3人はそれよりずっと年上のパイセンにあたるんですけれども(「年上のパイセン」って書くと重言感が消えますね)。もうすぐ30年選手だからこそ出来ること、例えば⑧のカバーだとか、敢えて「説教をかます!」と宣言してからの⑨だとか、「定番曲がこれだけあるグループは珍しい!」と自賛しつつの⑲だとか。酔いどれ⑥⑦に、アルバム通りのゲストを招いた(本来の4人に加えて更に5人目のラッパーまで登場した!)⑩に、東京だとKIRINJIがゲストで来るんだろうなぁいいなぁと勝手に羨ましく思いながら聴いてた⑮・⑯に、1部・2部幕間の映像コント(MCはかなりお笑い寄りでした)に、そして私が最も好きな曲⑰に、と満足の連打でふらっふらになってK市に戻りました……戻る車内から、RHYMEATERを私に教えてくれた63回生Mくんに自慢メール。

 K市に戻り、珍しくも22時30分の「もりき」。こんな遅くに珍しいと仰る常連某氏が続けて「先生は、明日は休みなんやろ?」と言ったら、マスターがすかさず「いけのっちゃんは土曜日も学校よ」だって。2年前までならマスターは絶対に私が土曜休日だという風に間違えました。お子様が高校生で、その日課(週休2日)を基準に考えていたからです。その手が離れて以降は間違えなくなりました。

 今年観たライブは、戸川純新居昭乃松任谷由実・絵恋ちゃん(複数回!)・おおたか静流RHYMESTER。残るは由紀さおり中島みゆき清水ミチコ。ミュージカル初観劇ってのもありました。『シスター・アクト』(複数回!)に『パジャマ・ゲーム』。

誰に読んでほしいんだその連投 孫引きのまた聞きをナナメ読みしただけの

 早朝3時に目が覚めて、書斎で日記を数日間分更新。本日から高2は第3回定期テスト、高3は第3回校内模試です。明後日出題の高2現代文定期は昨日問題が「降ってきた分」を原稿化、印刷室に回しているのでそれについては仕事がありません。高3の校内模試は、現代文第6問(最果タヒのエッセイ)を出題、これは文系全員と理系京大志望者が解答します。
 仕事は、朝と昼(試験中半ドン)とのSHR定期テスト監督(1コマ)、ちょっとした職員会議。15時過ぎに、高3が受験した校内模試現代文の答案を受け取ったので、その採点を……。

 しようとして驚く。おいおい、京大理系志望者が25人前後も居るの? 普通の学年は大体5人程度ですから、その数の多さたるや。しかも10月の第3回定期テストを受験するというんですから、その志望は「本気」だと思って良いわけですよね。というわけで、文系50人と合わせた75枚の答案を採点……。
 し始めて驚く。おいおい、文系の不調はまぁ「例年並み」の範囲でおさまってるけれども、理系の答案は二次試験の答案の書き方そのものを知らないそれなんじゃないのか。「なぜか → ~から」「どういうことか → ~こと」という解答の文末処理のミスが異常に多い、詩人のエッセイの比喩表現その他文体を全く洗い落とすことなくそのまま引用して解答を書く、というか「どういうことか(説明せよ)」という問題の傍線部の表現をそのまま解答に孫引きする答案まで。
 採点は瞬殺。それよりも何よりも講評の文章を考える方に力を注いで(というか気を遣って)、前述に挙げたような答案の「作法」が入っていないという指摘、二次試験で求められている解答の書き方がどのようなものなのか(というか、国語の二次試験とはどのような営みであるのか)という説明、を出来るだけ短い文字数で書きました。高3生の出来具合の評価は「良い・やや良い・例年並み・やや悪い・悪い」の5段階で「やや悪い」。校外生(浪人生)が高3生に平均で負けた時だけ「やや悪い」をつけると決めている私はこれまで高3生に対し「やや良い」「例年並み」以外の評価をつけたことはなかったのですが、今回は初めて。
 ただ、これは読解力・記述力というよりも「作法」と「構え」との問題なので、そういう「お約束」なのだということを身体に落とし込んでしまえば(数回の添削で良いでしょう)解決する話ですので、評価は厳しいですがそれで受験生の力そのものを断罪する気はありません(理系ですし、英語・数学・理科をどのように学習しているかの方が10倍は大切でしょう)。

 相澤理『「最速で考える力」を東大の現代文で手に入れる』読了、★★★。有名な予備校の先生が書かれた本。東大入試(文理共通現代文第1問)を例に、文章の読解、及び設問に対する端的な記述法を解いたもの。読解・記述のテクニックや心構え等、これは私が書いたんじゃないかと時には誤認しそうになるほどウンウンと肯けることが書かれています。なのに★★★なのは、肝心要の解答例が水準に届いているとはとても思われないものだという理由。本書の中で、本書が予備校の国語講師の間で評判が悪いと(誰にでも解るような手解きが他の講師のお株を奪う仕事を減らすから的なことを匂わせつつ)書いてあるんですが、評判の悪さの一因は解答まで正しいと読者が誤解する可能性がある点なんじゃないかと。ただ、解答の不十分は致し方ない部分もあり、本文の(全てではなく)部分抜粋に終始している中で解答を組み立てなければならないという制約を(ページ数の都合で)かけざるを得ないというハンデが重たいんじゃないのかな。大体、正しい解答を書くということよりも、飽くまでタイトル通り「最速で考える力」の涵養の方をより重要な目的にしているのだと考えたらそれで良いわけですし。

Not I, not I…

 定期前日の授業5コマは生徒に作文(東大200字作文演習)を書かせるだけで楽ちん、その間に高3のボランティア添削(現代文)を一気に進めて借金をゼロに。正規の授業担当者として、漢文・近代文語文の添削ならその日のうちにやるべきなのですが、現代文・小論文のボランティアに関しては「日数がかかる」旨をお伝えして、それでもOKな物のみ受け付けています(細切れの時間に少しずつ)。ただ、まぁ、1月のセンターを過ぎたらそうも言ってられなくなるかなぁ、とは。

 その作文監督中の7限に、突然定期テストの問題が「降って」きました。あぁ、「文字禍」と『白』とはそことそことを絡めて出題すれば良かったのかと豁然、これは最早自分で考えたというより誰かに「教えてもらった」というレベル。帰りのSHRも気が気ではなく、放課後の職員室で(本当は明日作ろうと思っていた)高2現代文の問題を一気に完成させました。
 と、いうわけで1tweet140字。
 【「競技=狭義クイズ」はあるあるの駄洒落で、これは界隈の大勢が(望んでか否かは問わず)やってるんでしょうが、「講義=広義クイズ」を毎日やって(お金まで稼いで)る幸せなプレイヤーは少ないだろうなぁ、と軽い自慢。あ、「抗議クイズ」は嫌い。「狭義クイズ」の押しつけとメンタルが同じだから。】

 私がガシガシと仕事をしている裏で、母君はいつの間にか手配なさっていた不動産屋さんと一緒に、リハビリステーション退所後にお住まいになる物件の内覧に行かれた様子。今回見た場所は私の家から徒歩4分の場所で、残念ながら気に入られなかったようなのですが、今後もぼちぼち探して行かれるとのこと。

 夜は「もりき」で独酌。帰宅後に、内田樹姜尚中『アジア辺境論 これが日本の生きる道』読了、★★★。

ここは春の国

 木曜日に第3回定期テストを控えた週明けの朝に、学級文庫に30冊を追加する教員は良くないと思う。私にも責はあります。でもさ、数分目を離した隙にその中の1冊だけがピンポイントで消えるというのもどうなんだ某くんよ。私「あのね、扇情的なタイトルの本だけ秒で消えましたけどね、それ(『売春島』)、真面目なルポだからね」

 「あの本を学級文庫に入れたんか。何という……」と呆れ顔の高2担当関西数学先生はしかし流石で、学年主任地理先生ですらご存じなかった売春島(渡鹿野島)のことをご存じ。
 数「少し前からあの島の名前を全然聞かへんよな」
 私「サミットの時に一緒に警備強化があって風前の灯火すら消えかかってるとか」
 数「あぁ、サミットか!」
 私「最近ルポが出ましたでしょ」
 数「あれな、読みたいねんけど、学校図書館に入れるわけにはいかんしなぁ」
 学級文庫には入れましたけどね、というわけで数学先生にお貸しすることに。

 生徒は定期テスト対策三昧の連休、なのに担任だけ上京旅行でさーせん、とお土産賄賂のラスクを配布するところからSHRを始めて、授業は原研哉『白』の最終回を5コマ一気に。放課後は、連休中に浪人生が受験した校内模試現代文の採点を。最果タヒ『きみの言い訳は最高の芸術』の中の一編から出題した文系・京大理系用の問題は、予想よりもかなり出来が悪くてちょっと意外でした(余りにも出来が悪かったので、逆に採点はスムーズでした)。

 夜は「もりき」へ。お土産を渡してチョイ飲み。帰宅後、施川ユウキ『銀河の死なない子供たちへ(上)』読了、★★★★。

僕なんざお気楽 悟りを開いて働けば愉しい

 今回の上京2泊3日はスケジュールがキツキツ、断腸でしたがジュンク堂本店への聖地巡礼は断念しました(お隣に完成の文房具ビル初訪問も年末までお預けですね)。昨日、58回生Tくんと渋谷で観劇アフター飲み会をやる前にちらっと近くの書店に寄りはしましたが。

 本日は移動日、ホテルで入浴・朝食を済ませたら、電車で羽田空港まで移動して、空港で(生徒と「もりき」マスターへの)お土産購入。飛行機移動は楽しいもんじゃないから委細(一切)省略、福岡空港からは高速バスでK市に戻り、行きの反省を生かしてF校近くの「十三部」にて下車、徒歩で学校入り、普通に仕事をします。
 デスクワークは授業準備・担任業務・高3から依頼されたボランティアの現代文添削、等々。あっという間に日常が帰って来ましたね。

 夜は、Hさんちにお呼ばれしてカレーを御馳走になりました。1000円とビールと、東京土産(初日に空港から目黒へ移動する途中に品川駅で購入した「品川珈琲」)とを携えて。Hさんちですから、ちょっと食べるなんてテンションで許してもらえるはずもなく、ただでさえ上京暴飲暴食で肥えた身体にとどめを刺すようなカレー3杯のじご……いや、これがまた美味しいんだ、天国です。

 旅行中の読了本は3冊。
 綾辻行人歌野晶午法月綸太郎有栖川有栖我孫子武丸山口雅也麻耶雄嵩『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』読了、★★★。正直、あの頃のようにはワクワクしませんでしたが、懐かしさと思い入れと(或いは懐かしさへの思い入れなのかも知れません)はありますね。あと、ネタバレ回避で固有名は避けますが、「名探偵」というキーワードだけ与えられたときに、ある作家とある作家とのネタ(発想の核)が被ってたのが面白かったです。
 土屋賢二『年はとるな』読了、★★★。切れ味が落ちてきているのか、私が飽きてきているだけなのか。
 高木瑞穂『売春島 「最後の桃源郷渡鹿野島ルポ』読了、★★★★。今回で1冊をあげるならこれかな。高度経済成長期に次々と「置屋」が生まれ「売春島」と呼ばれた島が、21世紀以降時代の流れとともにどんどんと寂れていく(そして近く野島で行われたサミットに完全にとどめを刺される)様を詳細レポート。生き証人(勿論、殆ど全ては堅気の人ではなく)へのインタビューは興味深いものばかり。瑣事ですが、島内にまだ残る大型ホテルが、現在は行き先不明のまま申し込む形式が話題好評の「ミステリーツアー」の目的地となって凌いでいるという話は面白かったです。

パジャマ・ゲーム

 終電の帰宅だったので就寝は1時を大きく回っており、今日の起床も7時半、普段だったら出勤に間に合わない時刻ですね。大浴場で悠々の朝風呂、その後はお気に入りのネカフェで数日分の日記を更新して渋谷へ。
 渋谷のラーメン屋「真武咲弥」(キラキラネーム?)にて辛い味噌ラーメン、瓶ビールを1本。今日は神戸出張だというオツカル様に、「えったんこ飯」のリプを飛ばすのも忘れずに。

 11時45分に外苑前、この駅で降りるのは初めてですが、今回の上京旅行のメインイベントの2つめ、日本青年館ホールでミュージカル『パジャマ・ゲーム』を鑑賞します。58回生Tくんとは会場前で待ち合わせ、前から10列目くらいの良席に並んで、余り目の良くない(眼鏡をしても)私でも役者さんのお顔がはっきりと見える観劇。

 主演の北翔海莉(元宝塚)、新納慎也、の両氏については名前も知らず、知っているのは今年舞台で見た栗原英雄・上口耕平、及びTVでしか見たことがないですが好きな女優の阿知波悟美の3人。いわゆるミュージカルは映画ですら観たという経験が皆無、今年博多座で『天使にラブソングを…』を観て感激して直後に2度目に観てやっぱり感激してという俄デビューが、3度目の観劇にと興味半分、上京旅行の口実作り半分でチケットを取ったのが今回の『パジャマ・ゲーム』。観るならコメディだよなぁと思っていたら、『天使に~』にも出演していた(ダンスがキレッキレだった)上口耕平さんの出ている有名な(私は知りませんでしたが)コメディが東京で上演されると知った瞬間の衝動です。

 北翔さんというのは宝塚で男役をやられていた方だそうで、グッズ売り場のカレンダーもそれっぽい写真ばかりだったんですけれども、今回の劇が宝塚退団後の初舞台だということは、女性役(ヒロイン)を演じるのは初めてだということなのでしょうか。女優さんにこういうことを言って良いのかどうか知りませんが、昨日まで男性だった(?)とは思えないほどに女の子してて可愛らしかったです。あ、でも、途中、黒ずくめで男性2人と歌い踊るシーンがあって相当格好いいんですが、2分ほどは真ん中の人が北翔さんだと気づきませんでした(3人とも男性だと思ってました)。
 ガレー船方式でセットをぐるぐる回すのって珍しいんじゃないでしょうか(個人的には、F校演劇部が今年の公演でやってたのと同じだ~、くらいの印象だったんですけれども)。あれで劇のメリハリとテンポとが生まれてたんですね、集中が途切れなかったので、1950年代のアメリカの工場なんていうちょっと遠い設定の物語(だって組合運動とかピクニックとか、解りませんよね、普通)にも取り残されずについて行けました。
 でもって、それでいいのかどうかが未だに解らないんですけれども、ストーリーが面白かったとか新納・北翔両氏の恋愛が素敵だったとか笑える要素が多かったとかいう感想よりも(あ、笑いの要素は少なかったかな。コメディって、爆笑喜劇とは限りませんもんね)、とにかくダンスのキレに目が持ってかれまして。出てくる人出てくる人、まぁ身体能力が高い高い。阿知波さんとか栗原さんとかの非若手も、動きが優雅で素敵でした(栗原さんの帽子の扱いとかね)。
 『天使に~』での個人的なMVPだった上口さんは、開演前のナレーションから客席を惹きつけて、終演後のダンスの時は眼鏡男子役なのに一瞬眼鏡を外して客席にウィンクする等、最初から最後まで達者やな~、としみじみ。

 とまぁ、理解度に乏しい素人さんでも楽しめたんで良かった(安堵した)んですけれども、さて、今回ご一緒の58回生Tくんは……。
 私「とてもそうには見えない(剣道部→住商)けど、舞台好きなの?」
 T「小さい頃から母に連れられて、劇団四季をよく。あと、『雨に唄えば』みたいな映画とかも」
 と、渋谷のワインバルでの観劇後の昼飲みにて。小さい頃からの教育があった訳ですね。聞けば、来春ご結婚(おめでとうございます)のお相手も偶然の四季ファンだったそうで(付き合い始めてから発覚したそうです)、正に出会うべくしてという感じですね。

 そういえば、数年前にTくん、就職1年目の時は職場飲みの一次会が終わったら先輩命令で街中の女の子をナンパして2次会に誘わないといけない(んなん、プロの女の子の居る店に勝手に行けやってなもんですが)と愚痴ってましたが。私「今は後輩にさせてるの?」 T「なわけないじゃないですか、自分が嫌だったのに」 私「偉い!」
 職場の飲み会のテーブル、喫煙席と禁煙席が別れちゃう傾向がない? とF校事情を踏まえて質問したら、住商(のTくんの部署周辺)では完全に入り混じってるそうです。へぇ、少数の喫煙派が端っこで固まるって訳じゃないんだ、と思ったら、住商は男性の喫煙率がもの凄く高くて少数派どころじゃないんですって。ほうほう。

 さて、観劇アフター0次会で結構酔っ払ってますけれども、18時からは渋谷「漁十八番」にて63回生と飲み会。会場は0次会ワインバルから徒歩2分で、Tくんと別れた直後に待ち合わせの場所で4人の卒業生と合流です。そういや全部東大生(全員現役で、留年せずに3年生になったお利口さん)で、文系は我らがA組「日常性の維持」担当のEくんと、今は妹氏を高2B(67回生)でお預かりしているMくんの2人。理系は軟式野球部の監督をしているHくんと、こないだ高2B(67回生)の理系某くんのキャンパス案内をお願いしたTくんの2人。計4人の卒業生と、既に酔っぱの元国語担当とで元気に入店、ビールで乾杯。

 元国語担当、卒業生4人に地下アイドル・絵恋ちゃんの魅力を語る。虹のコンキスタドールさんは地上の下で地下の上、絵恋ちゃんさんは地下。代表曲「カラシメンタイコ」の歌い出しは「だから頭に乗せたらチョンマゲ」
 今年リリースの最新アルバム『ERERGY』はRHYMESTER『ダンサブル』を僅差でかわして私にとって本年度ナンバー1、とお話ししたらMくん「そんなにですか!? ちょっと聴いてみようかな」と。Mくんは、私にRHYMESTERの魅力を教えてくれた恩人なのです(説教HIP-HOP、最新作も素晴らしかった)。
  「ゼクシィ」振りたくる、オレオ舞う、観客全員レジ袋被る、等々のヲタ芸の話に(一緒にミニライブを観に行ったことのあるEくん以外は)唖然、私が「流石に混ざんないよ、最後尾で見てるだけ」と話し、Tくんに「っていうか、没頭っていう感覚が分からない。どっかで理性が見てない?」と聞いたら「あ~、それはそうですね」とのお返事。したらすかさずEくんが「え~、先生、SEXの時は?」って聞いてきて、こいつ本当に真面目だな、と本当に感心しました。
 さて、その流れでEくん・Mくんが嘗て(高校時代?)秋元康系列のアイドルにハマったお話で盛り上がる中、これまでの談義に全く興味が無い、知識が無いHくんは私の対面でひたっすら「最前地蔵」状態。また、和風顔だから「地蔵」が凜々しいんだわ(確か高1Cで担任やってた時に、通知表の担任所見に「和風イケメン」って書いた記憶があります)。
 後、えれにすと50人の飲み会で「イケモト」を名乗ったら初対面の人から「じゃあ、『池ちゃんさん』ですね、僕、『××っぴい』です!」と返されたのにはアカウント名文化すげぇなと驚いた、という話をするに際して『バガボンド』並の間合いの詰め方という譬えを出したらEくんから「お前、巫山戯んな! 『バガボンド』馬鹿にすんじゃない!」と叱られたことも書いておこう。Eくんみたいな好奇心オバケなら、実際に参加したら絶対感動すると思うけどね。『バガボンド』を馬鹿にしてるわけじゃありません(っつっても、読んだことはないんですが)。

 とまぁ、恩師と教え子といっても話題はくっそ下らないことから、後はせいぜいが近況報告(何だかんだで東大生4人も普段は殆ど会わないわけですから)かな。最近どんなこと(勉強・サークル)してるとか、あいつとあいつとあいつとあいつとあいつとあいつと(多いな)は留年決定とか。
 2次会までは全員参加で、「漁十八番」から程近い「十徳」にて日本酒三昧。結局3次会まで行って、大虎恩師と胃袋宇宙のEくんと2人でMくんにウザ絡みをするという「63回生文系あるある」的なことをやって、23時過ぎの電車で池袋に帰りました。

 0次会を入れたら4軒回って、もう幾ら使ったか分からないレベルなんですけど(0次会後に「後輩に使って下さい」とTくんが差し出したお金を断らなければ良かった!)、がっつり楽しかったから無問題。
 健康(なのか?)睡眠。

君子は和して同ぜず

 6時入りの職員室でデスクワークは担任業務と高3東大文系漢文の添削、及び1限の高3文系(東大以外)の授業準備。朝のSHR、及び1限の授業が終わった時点で10時から年休。職員室で私服に着替え、手配済みのタクシーで西鉄K駅に向かいます。
 連休を定期勉強に費やすお生徒さんたちを尻目に、担任が2泊3日の旅行たぁどういうこっちゃという話ですが、本日から東京。時間の都合で飛行機往復をしないといけないというのが辛い(というか怖い)ですが、イベント3種(絵恋ちゃん「生誕祭」、ミュージカル『パジャマ・ゲーム』、63回生飲み)はどれもとても楽しみ。

 西鉄から福岡空港への行き方は電車か高速バスかなのですが、手荷物もあるので歩く必要の少ないバスを選択。そうしたら、高速に入る前の乗車専用バス停がもの凄く増えてて、学校徒歩5分の「十三部」(←ローカル!)からも乗車できたことを知りました。空港行きなんて乗りませんからそら知らんかったわという話、タクシー代損した。
 福岡空港には離陸(発射)予定時刻の90分前に到着。ネット予約の確認番号を機械に入力したら乗車券が受け取れる、なんてことは全然知りませんでしたから、JALのCAさんに頼って一から教えて貰いました。空港内では、折角福岡から上京するならと絵恋ちゃんさんへのお土産(「生誕祭」だから誕プレなのかな)に「カラシメンタイコ」を使った商品をいくつか。書店を覗いて、昼食は構内の「一蘭」でとることに。保安検査を潜った先にあるから飛行機に乗る客しか入れないという難攻不落、福岡プライスなのか東京プライスなのかは分かりませんが、とにかくラーメン・替え玉・半熟卵・追加チャーシューでおよそ1500円の超高級店です。
 「一蘭」では勿論、絵恋ちゃんと楽器のCD(『ERERGY』『二度寝る寝るね』)2枚と料理とを一緒に写メる「えったんこ飯」なる儀式をこなし、写メはオツカル様にお送りしました。本日の「生誕祭@目黒『鹿鳴館』」、オツカル様は仕事の都合で2部からしか参加できないそうです(1部はゲスト多数のライブ、2部はトークイベント……この2部が相当なカオスだったのですが、これは後述)。私は1部の途中から参加で、恐らくライブトリの絵恋ちゃんさんには間に合うだろうという時刻に会場入りの予定。チケットはオツカル様に予約しておいてもらったので、会場受付にて「絵恋ちゃんを『××××』(←オツカル様のTwitterアカウント名)の名前で2枚予約した『イケモト』(←私の偽名)の方です」と名乗ればいいそうです。わざわざ「絵恋ちゃんを」と言わなければならないのは、大勢集まるアイドルの誰が目当てか(どのアイドルの運営からチケットを買ったのか)を明確にするためで、それによって出演者の出演料の割り当てが決まるというシステムなのだとか。以前、新宿LOFT戸川純ちゃんとZAZEN BOYSとの対バンイベントに行った時に入り口で「戸川さんですか? ZAZEN BOYSですか?」と訊かれたのを何でだろうと思っていたのですが、そういう理由があったのですね(あの時は、戸川純ちゃんが目当てで後攻のZAZEN BOYSは観ずに帰るという蛮行を)。
 オツカル様からは「もしTシャツを先に着てたいなら、入り口で先に自分の分を受け取っておいてもいいよ」との言。そうですよ、ついに私、地下アイドルのイベントTシャツまで注文してしまって。というか、それって記念品じゃなくてその場で着る前提なのね。どうしよ。

 飛行機の記憶は抹殺。全力で読書に集中して気を紛らわせました。発射時と着陸(墜落)時との、飛行機が「斜めってる」間が本当に怖いんですよねぇ。2月の高2北海道スキー研修、もし飛行機座席が私の隣だったら破れるくらい強く袖を握るつもりだと、既にお生徒さんたちには言い渡しています。
 発射予定時刻が20分ほど遅れ(客が飛行機に乗り込んでから滑走路で待機している時間が長かったです)、墜落予定時刻も15分ほどオーバー。速い速いが自慢なら予定時刻を遅れんじゃねーよJRを見習えJRを。

 さて、空港からは電車を乗り継いで直接目黒駅へ。ホテルは池袋ですが、チェックインは1部が終了後、2部が始まるまでの空き時間で往復して済ませます。目黒駅徒歩5分のライブハウス、「鹿鳴館」は勿論「ROCK鳴館」なのでバンド出演を前提に作られているのでしょうが、昨今は集客において優れているアイドルイベントが各所ライブハウスで行われるご時世だそうで。
 入り口でオツカル様に教わった通りの手続き(シャツは後回し)、ワンドリンクは当たり前のようにビール(缶)を選んでいざ会場入り……をしたら、100人くらいで既に立ち見満員状態の会場で、ステージの上には3人組の地下アイドル(「ノーメイクス」という名前だったそう)と、サングラス姿でも絶対にどこかで見たことがあると分かる小太りのおじさんと……で、おじさんが急に音楽に合わせて「大傑作! 大傑作!」とがなり始めてそのパンチ力に唖然。初手からすんごいの観ちゃってるなぁ、と思いながら、歌の後のトークでそのおじさんが映画監督・俳優の井口昇さんだということが分かりました。ど~りで。このアイドルさん3人で映画を撮られたんですね。それが「大傑作! 大傑作!」なのかぁ。
 会場内には、勿論他のアイドルを推しているファンの方々も居るのでしょうが、流石に中心勢力は絵恋ちゃんさんのファン(通称「えれにすと」さん)だと思われます(これまで何度か足を運んだライブ会場にいらした方が大勢です)。が、ノーメイクスさんたちのライブでも、続くぱいぱいでか美さんのライブでも、前者では「はい敬礼!」の声に合わせて全員で敬礼をしたり、後者ではタオルを振り回したりと、もう全員がノリノリでヲタ芸熱すげぇ、と。私はどのライブハウスでもスタンディングなら絶対会場後ろの壁に寄りかかって、というマイルールを貫いて(アイドル現場では「後方彼氏面」と呼ぶそう)、アイドルさんとそのファンの一体感、これを一つのグループだという思いで眺めて楽しみました……んですけれども、やっぱり色んな地下アイドルを観る(アイドルイベントは単独ではなくフェス形式? が多いみたいです)につけて、やっぱり私は楽曲に関しては絵恋ちゃんさんの作品「だけ」が好きなんだよなぁ、というのをしみじみと。

 さて、1部トリの絵恋ちゃんさんライブ。今日はバックバンドの「楽器」さんは不参加で(客席にいらしたそうです)、全曲カラオケ音源歌唱。

 ①カラシメンタイコ ②ことわれない女 ③もうどうにもえったんこ ④なまぬるイーな! ⑤恋人がサイコパス ⑥就職しないとナイト ⑦天狗 ⑧すっぱいぱい ⑨頭痛い ⑩結婚しないとナイト EC.①なぜか涙がでちゃうんだ EC.②レジ打ちでスカ!

 オツカル様が居らず私独りで鑑賞するわけで、言ってみればアウェイなんですけれども、考えたら2人で観に行ってもオツカル様は客席前方でえれにすとさんたちの一員としてヲタ芸三昧、私は後方で「えれんちゃんと楽器とえれにすとさんたち」というアーティストを観るという風に分かれるわけだから独りでも変わらないと言ったら変わらない。
 ライブハウスの客席壁面は、えれにすとさんたちが皆で絵恋ちゃんさんのお誕生日(一昨年も去年も今年も祝・14歳!)をお祝いする飾り付けでいっぱい。「絵恋ちゃん14歳の誕生日おめでとう」の垂れ幕、代表曲「レジ打ちでスカ」に因んだ(?)各種レジ袋、等々の手作り感に温かさが。先日読んだ姫乃たまさんの新書の中で、元々地下アイドルのファンには心の優しい人が多く、かつ推しを一緒に応援するファン同士の連帯感もあって(大意)というようなことが書かれていましたが、本日のイベントを通じて最も強く感じたのは正にそれ、F校校是「和而不同」が顕現していました。

 ですがまぁ、オープニング映像・ナレーションが桃太郎のゆる~いパロディで何てことはないただ絵恋ちゃんさんが「どんぶらえったんこ」という台詞を言いたかっただけ、にすとさんたちの愛ある失笑からイベントが始まるところが多分「らしさ」なんでしょう。ですが、幕が開いたら絵恋ちゃんさんのキラッキラな衣装に客席大歓声、1曲目のイントロが流れた瞬間にはオイオイとかけ声、というメリハリ。ライブは、4月に初めて聴いた時にその世界観のおかしさに目眩がしそうになった「カラシメンタイコ」からスタートです。頭に乗せたらチョンマゲ~♪
 「なまぬるイーな!」ではサンバ間奏の「オレ~ オレ~」に合わせて客席でオレオが飛び交うし、「結婚しないとナイト」では客席にすとさんたちがすかさず「ゼクシィ」を取り出して振りたくるし、新曲「すっぱいぱい」では隣の人の汗をタオルで拭くという振りまであるし(「すっぱい」というのは汗の臭いの形容です)、一度生で聴いてみたかった「恋人がサイコパス」では歌い終わった後の絵恋ちゃんさんが「怒られるよ……」と思わず呟いてしまうような女王様冒瀆フレーズのかけ声が客席を飛び交うし、読んでる人は何が何だか分からないでしょうけれども書いてる私も何が何だか分からないんだから仕方がない。でも、一曲一曲毎に楽しく遊んで盛り上げようというファンの情熱、見ているとだんだん胸が熱くなってくるものがあります。
 極めつけは「頭痛い」かな。いったいどなたがどうやって準備したのか、客席に台車ワゴンを持ち込んで、絵恋ちゃんさんはステージからワゴンの上に移動して歌唱。足下の悪い中でふらつきながら歌う絵恋ちゃんさんが客席中央、間奏のサークル(みんなでぐるぐる回るやつ)はワゴンを中心にしてにすとさんたちがぐるぐるぐるぐる、からの土下座!(だから書いてる私も何が何だか分からない)

 さて、アンコール待ちの間に観客全員にある物が配られます。私も受け取ったのですが、それが何かというとレジ袋。ちょうど人間の頭がすっぽり入るくらいの大きさで、そう言えば被った時に目の位置にあたるところに穴が開いており……って、「これ、被るの?」と、誰も居ない空間に語りかける私。見れば前方にすとさんたち、全員袋をすっぽり被ってこれはさながら黒ミサかKKKかという。で、ヲタ芸はやらないけれども郷に入ってはとも言うし、と私も結局頭からすっぽり。何やってるんだろう、なんて考えるのは私だけで、他の人たちは皆嬉々としてやってるんだろうか、と一瞬自信がなくなりかけたんですけれども。
 アンコールで登場した絵恋ちゃんさんが客席の異様に明らかに戸惑った様子で「何やってるの?」と仰ったのでやっぱり何やってんだろうってなるよねそりゃ、と首肯すること3回、その度にレジ袋がガサガサ鳴ります。
 絵恋ちゃんさんへのファンからの誕プレは、お洒落なブーツとレジスターの形のデコレーションケーキ。ブーツを見た絵恋ちゃんさんは大喜び、第二部で絶対履く、とのお言葉。でしたがレジスターケーキにはイマイチの反応で「レジ打ちのバイトやめたのに……」と、何というかとても正直。
 黒ミサかKKKかの格好のままでファンは「レジ打ちでスカ!」のコールを叫び遂げる(酸欠になったんじゃないのか)し、最後の記念撮影(ステージ上から撮って、一番前に絵恋ちゃんさん、その後ろにえれにすとさん一同という構図)も全員袋を被ったまま行いました。

 そして、最後の最後でちゃぶ台返し、早速着用しているファンも多い生誕祭Tシャツにもはっきり「14歳」と書いてあるのに、絵恋ちゃんさんラストMCにて「今年はスナックイベントと結婚式とがあるので24歳になります」と一気に10年のワープ、客席のどよめき(そらそうだわな、コンセプト完全破壊なんだから)。確かに酒絡みのスナックイベントで14歳はまずいか、とは思いますけれども(この時、客席のどよめきに気を取られて「結婚式」という意味不明なワードへの疑念を忘れてしまいました。後で理由を聞いた時の衝撃たるや)。
 物販が90分、私は図々しくも最前列近くに並んで、新曲「すっぱいぱい」のCDや旧譜を中心に8500円分の音盤をゲット(何度も言ってますが、これまで観た地下アイドルの中で、唯一楽曲が好きなアーティストなんです)。チェキは撮りませんでしたのでご本人とはお話しをしませんでしたが、物販の係の方に福岡土産のカラシメンタイコを託けました。

 さて、会場を飛び出して一路池袋、北口の定宿にチェックインです。目黒から池袋に向かう途中の電車内でオツカル様から「今会場に着いた!」との連絡。2部でお会いしましょう、とお返事。因みにここでのやりとりで、生誕祭Tシャツというのがアーティスト側が作ったグッズなのではなく、ファンが自主的に作成してみんなで着ている(祝意を表す)ものなのだと知りました。凄い、どれだけ熱心なんだろう。
 ホテルチェックイン、1階の大浴場で湯浴みの後、再び山手線で池袋→目黒はライブハウス「鹿鳴館」。

 仕事上がりで背広のオツカル様とご挨拶、の後、よく考えたらここで着なけりゃ福岡・K市で着るタイミングはないぞ、とトイレで生誕祭Tシャツに着替えました。私もこれで「えれにすと」に片足を突っ込んだことになるのでしょうか。で、2部のトークショウの開演を待って……
 私「2部のトークショーってさ、あのラジオ番組の相手の人が司会なんでしょう?」
 オ「そうそう、谷さん。善意の豚」
 私「その『善意の豚』っていうワード、凄いよねぇ。よくそんな呼び方出来るよねぇ」
 オ「愛称、愛称。で、今日はプロポーズ会だから」
 私「?」
 オ「ここに居る人たち、今度絵恋ちゃんと結婚するの」
 私「?」
 オ「だから11月に結婚式があって、そこで絵恋ちゃんと結婚したいファンが集まって公開プロポーズするのが今日のイベント」
 私「……オツカル様は、するの?」
 オ「しない。ウチ(←一人称)は高みの見物派」
 私「(少し安心して)えっと、集団でプロポーズして、絵恋ちゃんさんがOKだして、来月にはその人たちと絵恋ちゃんとの結婚式イベントがある、という?」
 オ「そうそう」
 私「多夫一妻?」
 オ「女子もプロポーズするよ!」
 何度目か忘れましたけど、私だって書いててよく意味が分かんないんですから。もうそういう物として受け止めるしかないんですから。結婚かぁ、それで14歳を名乗れなくなったわけね。

 公開プロポーズイベントの2部が開幕。そのオープニングトーク中にも、えれにすとさんたちが準備した大きなデコレーションケーキが切り分けられて客席に振る舞われて、と細やかな心づくしに感じ入ります(チョコレートケーキ、美味)。
 ただ、「人数が多いからグダるだろうし、観てる方が小っ恥ずかしくなるんだろうなぁ」と、30人弱のえれにすとさんたちが順番にプロポーズをするというコンセプトには流石に正直引き気味でスタートを迎えました。

 見届け人はゲストの里咲りささん、ぱいぱいでか美さんのお二人。絵恋ちゃんさんの親友、先ほどのレジスターケーキを頬張りながらの審査員(?)席です。
 ・指輪の代わりにカラシメンタイコを差し出し、自分の頭の上に乗せてもらってから、「結婚して下さい!」
 ・他の推しであるところの里咲さんのグッズを(想定外にご本人が目の前に居られる場で)脱ぎ捨てて一途を示してから、「結婚して下さい!」
 ・モールス信号をプロポーズの言葉(何故か「SOS」でしたが)として流してから、「結婚して下さい!」
 ・シンプルにスーツ、花束を差し出してから、「結婚して下さい!」
 ・女性ファンが感極まって殆ど泣きそうになりながらえれにすと来歴を語り尽くしてから、「結婚して下さい!」
 ・ショートコント「結婚相談所」を披露してから、「結婚して下さい!」
 ・台湾からやって来たえれにすとさんが一緒のお墓に入りたいという希望を伝えてから、「結婚して下さい!」
 ・初めてお会いした時に頭にかけてもらった牛乳のことが忘れられません、と如雨露に入れた牛乳を頭にかけてもらってから、「結婚して下さい!」
 ・一生懸命書いてきた手紙を司会の谷さんに代読してもらってから、「結婚して下さい!」
 ・料理が得意なので絵恋ちゃんに手料理を食べて欲しいという意を伝えてから、「結婚して下さい!」

 ……三十人三十色の「結婚して下さい!」を観ている内に、胸の内に何とも言えない感動が広がって行くのに我ながら驚いてしまいました。全員が何かしら仕込んできていて、そこにはえれにすとさん同士じゃないと理解できない符牒もあったようで私には全然理解できないものもあったし、感動よりも観客を如何に笑わせるかという方向に振り切った「芸」が多かったんですけれども、誰も彼も兎に角絵恋ちゃんに対する愛情(と言って良いのか分かりませんが、何かしらの熱量を持った感情)に溢れているのが半部外者の私にまでひしひしと伝わってきて。見届け人のお二人もまさかこんな「神イベントになるとは」と思われたかどうかは知りませんが、ず~っと両手をマスク状態の里咲さんの圧倒されっぷりが印象的でした。

 最後の最後には、ファンの手作りのDVD映像鑑賞会。手の込んだ映像はこれもまた絵恋ちゃんさんに対する思いに溢れていて、内容そのものよりもやっぱり会場全体の雰囲気の温かさが良かった。
 イベント中に出たケーキのゴミは、紙の物とプラスチックの物とを分別してえれにすとさんたちが回収、飾り付けの撤収も全部えれにすとさんたちの協働です。もうね、一度観たら分かる。全ての地下アイドルのファンがこのようなクオリティの集団だということは流石にあり得ないと思うけれども、この手作りの温かさと居心地の良さは偉業だわ。これまでオツカル様には色々と面白いものを教えてもらったけれども、こういう形で「和而不同」が見られる世界を知れたのは、ちょっと大げさですけれども人生の収穫。色々な所でこういう協働が行われているんでしょうか。

 解散22時、終電の時間まで、えれにすとさんたちが集まる打ち上げが行われます。場所は「金の蔵」という安いチェーン店で、人数は50人超。オツカル様は慣れた調子で参加ですが、私はその後ろに影のようにひっついてオドオドです。

 結論から言うと、もの凄く楽しい飲み会でした。
 大体、50人規模の飲み会を取り仕切る幹事さんがいらっしゃって、その方が事前にオンラインで参加者を募集・把握して店を押さえられて(私は、オツカル様を通じて事前参加申し込みをしていました)、当日のキャンセルや飛び入りも含めて店と話をつけて、という労力がまず凄いですよね。私もF校で幹事仕事をよくやりますので解りますけど、勝手知ったる行きつけに仲良しメンバーで行くのとは訳が違う仕事ですから。

 さて、掘りごたつテーブルがいくつも並んだ座敷を「えれにすと」さんたちが占領。オツカル様が気を遣ってくれて端っこのいちばん小さな4人席を選んでくれたので、新規私は大勢の濃い人たちとは触れあうことなく、境界から全体を俯瞰するという最も得意なパターンで参加することが出来ました。我々2人の他には、多分我々と近しい年代の男性がお二方。
 で、早速感心したのが私の斜め前に座られた男性との自己紹介で、私が「イケモト」と名乗ったら初手から「じゃあ『池ちゃんさん』ですね! 僕、『××っぴい』です!」という返し、アカウント名文化の間合いの詰め方は『バガボンド』並の鋭さです。オツカル様とはオンライン(Twitter)で薄く繋がっておられる方のようで、そういえば「××っぴぃ」さんはオススメユーザーで時々お名前を拝見することがあります(大体私のオススメユーザーは、F校・クイズ・絵恋ちゃん)。

 料理の注文方式はテーブル毎にタッチパネルで、飲み放題は全員共通ですが料理は各自が適当に頼んで良いということ。てっきり食べ放題にするものだと思っていたのですが、参加人数が直前まで確定できないことが理由なのかな。取りあえず、そういう時は私が注文するという本能を持っているので早速タッチパネルを操作して、生ビールを3杯と瓶ビール(私)を1本。料理は「適当に選んで良いですか?」との許可を得た上で、先ずは4人なのでおつまみを4品。
 まさか就職以降の上京旅行でこんな安かろうのチェーン店に来るなんて思いもよらなかったので(嫌みではなく)逆に興味津々だわ、というノリ。それでも、「えったんこ飯」をなさるであろう他の3人のことを考えて、「カラシメンタイコ」の乗っただし巻き卵を注文するという礼儀だけは忘れてはいけません。「××っぴい」さんが、カラシメンタイコを見て「わぁ!」と小さく喜んで下さったのは嬉しかった。

 さて、料理は本当に安かろうで、でもそんなに不味いって程じゃなくちゃんとお酒を美味しくしてくれるものだったので先入観サーセン、という感じ。ただ、流石の安チェーンで、ビールは「薄い生ビール」か「ぬるい瓶ビール」の2択みたいです。4人で飲み比べて「本当だ、薄い!」「うわ、ぬるい!」となった時に、私が絵恋ちゃんの曲名で「なら『なまぬるイーな!』ですね」と言ったら「××っぴい」さんに喜んでもらえて、本当にそれ以降は全員瓶ビールになりました(私は、最後は冷酒に移行)。
 一瞬「あっ」と思ったのは、石焼きの麻婆丼を注文していたのですが、店員さんが持ってきたのを受け取られた私の横の男性(結局、名前は聞かなかったですね)が、流れるようにそのままかき混ぜて全員が食べられるようにしてからテーブルに置いたこと。うわぁ、幹事仕事取られたぁ、って思ったんですけれども、本当にこういうのが極々自然に出来る人って、私、あんまり見たことがありません。私は趣味なんで割と貪欲に混ぜる取り分けるってのをやるんですけど、隣の方は自然な気遣いって感じでした。 因みに、我々以外のお2人のお仕事はエンジニアだったかプログラマだったかそんな感じで、というか私が福岡で教員をやってることはオツカル様が最初に明かしたんですけれども、絵恋ちゃんさんのファンだということ以外の個人情報は殆ど交わさない(意味がない)という雰囲気でしたね。絵恋ちゃんさんが今度久しぶりに九州でイベントに参加されるという話題の時に、「じゃあ、池ちゃんさんは参加出来ますね! いいなぁ」と「××っぴい」さんに言われた時に、一瞬だけ周りのテーブルから視線を浴びて、個人情報が活きたのってその時だけだったかな。

 とにかく、生誕祭~二次会についてのえれにすとさんたちの運営の誠実さ・協働とが「凄い! 凄い!」と驚く私にオツカル様、「皆、青春を取り戻したいの」と。それにしても、情熱と、偏見かも知れないけれども能力とが高いと思う。地下アイドルのファンって、そういう意味でも「ちゃんとした」人が多いんだなぁ、って(偏見かも知れないけれども)。これまたオツカル様に教えてもらったんですが、アイドル自体のファンであるのは勿論なのですが、次第にそのファン同士の交流の楽しさ、ファンの人たちのファンになっていくようなファンも居るそうです。だろうなぁ、と思う。

 終電でホテルへ。長い長い一日でしたし、長い長い日記(約1万字!)になりました。健康睡眠。