わるいやつら

 やっちまった……このクソ忙しい(これから忙しくなる)時期に、もう絶対面白いということが分っている作品に手を出すという愚挙。荒川弘銀の匙 Silver Spoon(1~2)』読了、★★★★★。まだ書き出し駆け出しの冒頭部に過ぎないんでしょうけれども、えぇ面白かったですよ。でも、絶対3巻目には手を出さない……冬休みまでは。そらさ、止まんないですよこんなの。
 人生初荒川弘。『ハガレン』の1頁すら読んだことがありませんでした。

 未明の書斎で特講添削の残りを終わらせました。これで、今年度の特講関連の作業は一旦おしまい(正確に言えば、10日に「オマケ」がありますが)。次の添削ガシガシは、センター試験終了後の二次対策授業、及び2月のテスト会になります。
 本日の授業は2コマでセンター評論、富永茂樹『都市の憂鬱』は日記に焦点を当てる観点からの近代の定義。センター評論の授業に関しては、この後99年リービ英雄(追試)をやるのが最終回です。

 うっかりして大変なことを忘れていたことに気づきました。来年1月末のF中・高入試期間のことです。この期間は、早朝から夜中まで学校に缶詰で監督・採点・集計作業、事実上私の短期外泊に等しいんでした。この期間は、上京中と同じく母君のショートステイをお願いしないといけません。母君が「要支援1」から「要介護1」へ変わったのに伴い(来年1月から)、担当が地域支援包括センターから民間業者へ変更になるということもあり、再来週の月曜日に詳しい手続きを自宅で行うことに。

 放課後16時の職員室で、担任団の関西数学先生から「夜、暇?」と聞かれる。「はい、暇です。夜って何時からですか?」「17時やけど」「夜じゃねぇ」
 年休を取って全速力で自宅に戻り、風呂を沸かして湯船に浸かってから、そのまま母君の入浴をお手伝いして、身体を拭いていただいている間にバタバタ夕食を準備。味噌汁を作り置きしていたのが聞きました。誘われた店が自宅徒歩2分の焼鳥「K」だったのも幸いし、17時15分には入店。
 歳の順に、関西数学先生、小倉数学先生、熊本英語先生、国語私(英語と国語とは「タメ」です)。私も学生時代に教わったことがある関西数学先生はF校職員室を代表するマイペースさん、小倉数学先生・熊本英語先生は最近F校に赴任されたばかりの他校経験者ですけれどももうこれから出世することが約束されたも同然(教科も担任も大丈夫で、管理職にも向いてるタイプ)のお二人、あとは雑魚私。F校のこれからという長期的な話と、来年度の人事という短期的な話で盛り上がり。悪い4人です。
 解散後、小倉先生は100㎞、熊本先生も100㎞、それぞれ別方向に新幹線でお帰りになる、とね。私には無理ですよ(ビール3杯、日本酒3合)、徒歩2分が限界。

君も僕もまるで違う歌を書きました。

 矢野顕子『ふたりぼっちで行こう』、★★★★★。トレイラー映像も我慢して、前もって聴いた曲が一曲もないという真っ新な状態で聴きました。一周した後、YUKIとの共演「バナナが好き」、上妻宏光と(仙波清彦と)の共演「ROSE GARDEN」をリピート。前者、バナナはそんなに好きじゃないのに二人のハイトーンボイスで「ばっな~な~!」と歌いきられると耳は完全に屈服。後者、終盤の三味線が圧巻、これは一回生で観たいなぁ(上妻氏との共演自体は、石川さゆりとの「二人のジャンボリー」で観たことがあります)。吉井和哉の曲を矢野顕子がカバーしたやつを吉井和哉がカバーした(意味が分からん)「パール」も聴きどころ(っつったら、聴きどころじゃない箇所があるみたいであれですが)。
 戸川純・おおくぼけい『Jun Togawa avec Ookubo Kei』、★★★。純ちゃんのレパートリーを今の声で吹き込むという試み自体はファンとして嬉しい。けれども傑作『わたしが鳴こうホトトギス』の後だとちょっと落ちます。楽しみにしていた「クレオパトラの涙」が好みじゃなかったのも残念。

 滝沢秀一『このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景』読了、★★★。Twitterで話題のゴミ収集「あるある」、長い文章にしたら間延びする部分ができるTwitter発エッセイ「あるある」。

 数年前のF中入試の評論本文で、野矢茂樹氏が曰く「全能の神に論理は要らない」(大意)と。全能故の以心伝心が不可能な人間には、他者のことは絶対に分かりません。国語を担当する生徒には、先ずここを必ず伝えます。他者の気持ちは分からない、きみの気持ちはよく分かると大人が言うのは大抵嘘だと思って下さいね、と。国語の出発点はここで、委曲を尽くした表現も、細部に配慮した論理も、他者との断絶を前提にそれでもなお架橋したいという希求から始まったのではないでしょうか。聞くも読むも話すも書くも「若しかしたら分からない(伝わらない)かも知れない」という恐れを持つからこそ傾聴熟読熱弁推敲への意欲が駆動するわけでして。私はこれを一つの倫理だと思っていて、作者がその倫理を共有しているのではないかと思わせてくれる作品に出会ったら全幅の信頼を置いて身を委ねます……勿論、「若しかしたら分からないかも知れない」という恐れをもって(この文、「作者」を「教師」、「作品」を「授業」に置き換え可能です)。「論理」の本の感想を述べるのに「倫理」の話をしてどうするんでしょう、仲島ひとみ『大人のための学習マンガ それゆけ! 論理さん』読了、★★★★★。
 学級文庫に入れたら、最初に手を取ったのは医学部志望の某くんでした。そうですね、断絶他者とのコミュニケーション能力が最も必要な職業ですものね(他者の気持ちが分かると強弁する人も、他者の身体の痛みが分かるとまでは言わないはずです。論理的に無理ですから)。

 5時に起きて二度寝したら7時半、作り始めて半年間で最も遅い時間に朝食をお出しすることになりました。飲み過ぎたってほどではなかったけれども、とにかく長っ尻でしたね。午前中は書斎で作業をしながらのんびり。血痰ネーミングスーパーマーケット「You Meタウン」に母君と買い物にも。
 昼過ぎから学校に出て3時間ほど仕事。高3生がクラスルームで自習をしています。各クラス数人ずつで、このくらいの数が気が散らず丁度良い感覚です。超ベテラン保健先生から大量の柿をいただいたので、Hさんに4つ、担任団の先生方に少しお裾分け(Hさんからはお返しにリンゴ2つと鯖の塩焼きとを)。母君の夕食は、おでんの残り、鯖の塩焼き、そして柿です。果物をむくのは私には難しく、皮はピーラーを使っています。

 夜は二日市に出て焼鳥「月空」へ。西鉄K駅の古本定期市のワゴンに渡辺一夫『僕の手帖』がありました(他、数冊の文庫・新書を購入)。

踵の減った靴だっていいんだ 磨きあげれば

 朝、一時間だけ年休を取りました。そのつもりはなかったのですが、母君のお風呂介助が必要な事案がありまして。普段の母君は浴槽には入られず(本来がシャワーだけの方であるのに加えて、浴槽を跨ぐのが甚だ難しいのですね)、浴槽に浸かる必要がないシャワーだけの作業なら全てお一人でこなせます。ですが、今朝はどうしても浴槽に浸かっていただきたいし全身をよく洗っていただきたい。
 と、いうことで、今日が「介護記念日」と相成りました。こういうお手伝いは流石に「介助」じゃなくて「介護」だと言って良いと思います。私も濡れて良い格好になってから、Birthday Suit 状態の母君をお風呂場にお連れして、先ずは全身をボディーソープで洗う、浴槽を跨ぐのをお手伝いしてお風呂に浸かっていただく(その間にタオルと着替えとを準備)、10分程度で再び浴槽を跨ぐのをお手伝いする、全身をタオルで拭く。その後、母君が着替えられている間に浴槽と風呂場の掃除をする。

 ぶっつけ本番でやってみて出来ないことはなかった、まさに「為せば成る」を地で行く結果です。後で気付きましたけれども、かなりデリケートなことまで肉親に委ねるのを全く嫌がられなかった(少なくとも素振りには出されなかった)母君がご立派で、これは介護職が長くそういうシチュエーションに違和感を持たれなかったからなのかと推察(全然違って、もう一度同じことをやろうとしたら嫌がられるという可能性もあるのでしょうが)。出来ないこともないと分かったのが収穫で、だから今日は「介護記念日」。

 さて。
 泡立てたタオルで母君の全身を優しく擦りながらぼんやりと思ったこと。その内容が我ながら色々ダメなんですけれども事実なんだから仕方ない。職員PC室で、初めての入浴介護で思ったのが「あれ? 僕、今、風俗嬢みたいじゃない? 嬢みたいなことしてるんじゃない?」ってことだった、と同窓同僚数学に話して呆れられました(隣で聞いておられた同じ年の英語先生は噴きました)。
 いや、だって、本当にそう思ったんだもん。やってみ~(byはるたん)、ってなもんです。

 本日は半ドンで授業なし、デスクワークをして、12時から自宅まで往復して母君に昼食をお出ししました。帰りのSHRでは席替えのくじ引き。掃除まで見届けて、生徒面談(小論文)の後で再び帰宅。途中、血痰ネーミングショッピングモール「You Meタウン」内のタワレコ矢野顕子戸川純とおおくぼけいの新譜。その後、近所の血痰ネーミングスーパーマーケット「You Meマート」で食材を買い込み。今日は初めてのチャレンジでおでんを作ることにします。具材は、牛すじ・がんも・大根・卵・はんぺん・糸こん・餅巾着・焼き豆腐の8種類。出汁をとりつつ材料の下ごしらえ、餅巾着は油抜きをするべきなのかをスマホで検索したりできる便利な世の中です。はんぺん以外の材料を、1~2時間とろ火で煮込みます。今朝の「介護案件」は母君の体調不良を疑わせたのですが、朝食時・昼食時・おでん作成中、何れも体調は悪くないご様子(念のため、お昼から夕方まではお布団で休んでいただいていますが)。
 16時に学校へ移動、16時15分から京都大学理系現代文特別講義(最終回)で、教材は昨日と同じ野上弥生子。理系諸氏は文系以上に難渋している様子。解説終了が18時、そのまま自転車で帰宅。おでんを温め直して(この時にはんぺんを入れます)、母君の夕食プレートを作成(おでんは、牛すじ・卵・糸こん・がんもの4種を載せました)。

 さて、本日は同窓同僚数学・若手体育からホームパーティーに誘われています。母君の体調次第で決めようと思っていたのですが、どうやら大丈夫なご様子なので、母君がお布団に入られた後で出かけました。お土産は、「冬物語」6缶、日本酒の4合瓶を1本(山口「貴」)、それとタッパーいっぱいのおでん(主婦か)。
 到着時にはご夫妻ともう一人のゲストである事務嬢さんとで乾杯が終わっており、私も急いでビールで追っかけ。今日のお料理は若手体育先生が作られるお好み焼きがメイン(広島風でした)。事務嬢さんがマックのチキンナゲットを30個も買ってこられていました(食べるのは20年ぶりくらいの気がします)。おでんも喜んでいただけたようで何より(日本酒には合いますよねぇ)。
 話題は、ここでは絶対に書けない学校の話(来年度の人事の予想とか)、それと何故かジブリ映画の話。後者は数学にはちんぷんかんぷんなんだそうです。これはお子様がもう少し大きくなられたら父子ともども教育して戴かないと。そうそう、半年前にお邪魔した時には「寝返りならばんばん打ちますよ」だったお子様は、今ではあっちへちょろちょろこっちへちょろちょろと、元気があり余ってお出でです。

 気持ち良く飲んで食べて喋って帰宅。
 赤ん坊って、見れば見るほど高齢者と一緒。人間ってやっぱり、最後は赤ん坊に還るんですねぇ、としみじみ思いました。そういえば、帰宅した郵便受けに母君の2度目の介護認定の結果が届いており、前回は「要支援1」だったのが今回は「要介護1」になっており。やっぱり今日は「介護記念日」です。

とても素適な 昧爽どきを 通り抜けてたら

 『きのう何食べた?』実写化、TwitterのTLでも見ましたし63回生Eくんからのメールも。録画して観るとは思います(深夜なので起きてはいられません)。が、微妙。

 3時起床、書斎で昨日の特講の添削、母君に食事をお出ししてから入浴、洗い物まで済ませたら8時(一昨日の文系も昨日の理系も『白』に誠実に取り組んでくれていました)。タクシーを呼んで「S」病院に着いたのが8時半、再診手続き後に診察室前のチェアに座ったら、9時診察開始なのに40分に名前を呼ばれました。月イチの診察なのですが今回は月内2回目ということで検査はなし(いつもは、採血とレントゲンとがあります)。生活の様子を主治医のY先生にお伝えして、今日は3分で終了です。支払いを済ませて、抗癌剤他のお薬を受け取ってもまだ9時でした。
 病院から徒歩2分(私なら。母君とご一緒なら10分です)で西鉄K駅、9時オープンの構内スーパーマーケットで昼食のお弁当を購入してから母君をタクシーで自宅まで送り出し、私は構内のミスドでブランチ・コーヒーを摂ってから学校へ。

 授業は3限に東大文系二次対策、今日は90年の渡辺武信を扱いました。点になるかどうかはともかく、解くのも解説するのも採点するのも「時短」で済む問題で、授業は50分を超過することなく終了し、採点も瞬殺(昨日の特講答案と一緒に帰りのSHRで返却できます)。渡辺武信は建築家、今日の本文も日本の庭について論じたものなのですが、私にとっては松本隆に影響を与えた詩人だという事実の方が大切。凡そ日本人なら足を向けて眠ること勿れです。
 放課後は京大文系現代文特講の最終回で教材は04年の野上弥生子昭和11年二・二六事件の年)にイタリアへ留学した息子(野上素一)に送った書簡文から。相当に難しい問題で、漱石の「開化」を授業でやっていなかったら説明には1時間じゃきかない時間がかかったんじゃないだろうかと思います。

 夜は「もりき」で独酌……のつもりだったのですが、事務嬢さんがご来店のご意向でさし飲み……に常連Hさんも加わって結局大盛り上がり。鴨の在庫に余裕があるということで、事務嬢さんがお好きな炭焼きを注文しました。ビール2本に日本酒を2合くらい飲んだかな。〆はいつものやつで、22時くらいに、私「事務嬢さ~ん、帰ろ~」 嬢「帰り~」
 Hさんも居られてお一人にするわけではないので、先に帰る罪悪感がちょっと軽減。

前向け 右向け 左向け

 今週は、矢野アッコちゃんだけではなく、戸川純×おおくぼけいも新譜を発表するんでした。楽しみ。買いに行けるのは先ですが、それまでは折坂悠太のアルバム・ミニアルバムがあって飽きません。

 3時起床、書斎で特講の添削、入浴、母君の朝食作成、出勤。本日は防医一次の合格発表で、朝のうちに41人が合格しているという速報が入ってきました。40人超というのは就職以来2度目で先ずは目出度い。ですがこの入試、国公立二次との相関関係は必ずしも高いとは言い切れず、且つ「合格して気を引き締める、合格して増長油断する、不合格で奮起する、不合格で意気阻喪する」という4パターンがあって合否何れも生徒によっては善し悪しです。ですから、合格した生徒を過剰に祝福することはなく(おめでとうぐらいは言います)、不合格だった生徒を過剰に慰めることはなく(本命でリベンジだねぐらいは言います)、SHRでは受験生が前述の4パターンに分かれるという事実だけ述べて、後は「日常性の維持」です、とお話。63回生で初めて高3担任をした時には文系クラスだったので悪いけれどそんなに興味が無いイベントでしたが、理系も居るクラスを持つとそうはいきませんね。

 授業は文系二次対策が1コマで、これは授業後に添削(一橋大・九大・京大)をして帰りのSHRで返却。その後、放課後は昨日と同じ『白』を使って、今度は東大理系現代文特講です。
 帰宅後に母君に夕食を出して入浴、お休みになるのを見届けてから自宅徒歩2分の焼鳥屋「K」に入ったら、偶然ご近所の関西数学先生もおられてお話を。明日は母君の通院介添なので朝は年休(なので今日の特講答案は朝のSHRでは返却不可能)ですが、未明の添削はやりますので早めの就寝。

そこが知りたい

 4時起床、書斎で本日の特講(文系東大最終回、09年は原研哉『白』)の板書計画。入浴後、母君に朝食をお出しして、8時オープンの10分前に自宅徒歩3分の病院へ。10分前で一番乗り、入口が開くまでにご高齢の男性が2人後ろに並びました。
 場合によっちゃ何日か以上休まないといけない不調なんじゃないだろうか、それよかお酒が飲めなくなるんじゃないだろうか、とか考えながら先生に状況をお伝えして、その後で採血・レントゲン・エコー検査。丸々3時間以上かかりましたが、結果はホワイトもホワイトでした。一応数種類の薬を(一週間分)貰いましたが病気その他の心配はないと判って安心。しかも検査の序でに、γ-GDPも大丈夫で脂肪肝でもなかった(先生に「まぁまぁOK」という微妙な判定を)という「お酒飲んでも良いよ!」という折り紙まで。生まれて初めて「病院に行って良かった!」と感じました。
 採血の時に看護師さんから「アルコールは大丈夫ですか?」と聞かれたとき「それを知りたくて通院してるんです」と、答えはしませんでしたけれども。

 実は1~3限に授業が入っていたのですが、偶然にも50分まるまるテスト(センター現代文100点分を丸ごと解く)という内容だったので、配布回収をそれぞれのクラスの生徒に(昨日のうちに)依頼していたのです。授業に穴を空けるのは本当に申し訳なかった。5・6限のテスト監督は私がやりました。

 さて、放課後は東大文系現代文特別講義。本日は最終回で、最終回は09年の原研哉『白』を扱うと決めています(63・64回生に続いて3回目)。表現とは「白」を掻くことで、個人とはその「表現」の責任主体。白い解答用紙に向かって時間いっぱい推敲を続ける生徒諸氏は、本文で言われているような「表現」への恐れ/畏れをその身で理解してくれているんじゃないか、と期待。添削が楽しみです。

 因みに、東大の現代文の漢字書き取りでは、よく同音異義語の文脈判断が求められます。例えば今回の『白』では「断定しない言説に【シンギ】がつけられない」を「真偽」と書くよう求められ、何人かの生徒が「審議」と書きました。採点しながら、「ああっ、仲島ひとみ『大人のための学習マンガ それゆけ! 論理さん』の第二章を皆が読んでいれば絶対に間違えないのに!」と説明口調で悔しがってみたり。
 こんな木っ端ブログでは宣伝にもなりませんし、売れるだろうから宣伝の必要もないでしょうが、同書、名著ですよ。

 「……というわけで、我らが国分町の名医さんが『飲んでいいよ!』って勧めるもんだから仕方なく飲むんだけど」と、いつものハーフグラスではなく八勺グラスで日本酒(雪の茅舎「美酒の設計」)を注文する私にマスターも呆れ顔の「もりき」独酌。

病院は戦場だ 病院は外国だ

 本日は矢野アッコちゃんのニューアルバムのフラゲ日なのですが、夜まで会議。水~土までは特講です。最速でも購入は日曜日になりますね。

 母君の朝食と一緒に昼食のプレートも準備して冷蔵庫へ。火曜日は昼往復の暇がないのです。12時頃に学校から電話をしてお昼を召し上がるようにお願いしましたが、何となく歯切れの悪い返事だったのでこれは食べない可能性が50%だな、と思って夕方一旦帰宅したら、案の定手つかずで残っています。朝から冷蔵庫に入っている冷たいものという「味気なさ」をあまり好まれない。要は、毎日私がお昼の往復をしている内に贅沢になってきたという話です。一食抜いたくらいでは大した影響はないので心配は無用。因みに、息子が横で見ていたらその味気ないプレートをそのまま夕食に回しても文句一つありません。
 夕方の往復は帰りのSHRを副担任の先生に依頼して申し訳なく。また、食事やら入浴やらに手間取って放課後会議に10分遅れて学校に到着してしまったのも申し訳なく。

 長い長い会議の後は、肉料理「I」で読書独酌の寄り道をしてから帰宅。
 原克玄『ハテナテナ』読了、★★★★★。アリ王は出てきませんでしたが、昨日書いたような(NHKでも流せそうな)世界、ギャグセンスも変わらずです。

 少し気になることがあって、明日は(授業を生徒諸氏の協力でやり繰りして)午前中の年休を申請、自宅徒歩3分の病院へ行きます。母君ではなく、私の方。

カナリつぼ ハニカミポリスメン

 大人の財力はあるんだから気になった時点で買っときゃ良かった、折坂悠太『平成』が好きすぎる、★★★★★。弾き語りが基本で「合奏」もする人みたいで、弾き語りの時は細野晴臣が引き合いに出されそう。実際、アルバムを聴いていたら細野晴臣宮沢和史高橋徹也遠藤賢司福岡ユタカUA小島麻由美で……以下何人だって挙げられますが……その誰でもない。以前読んだ本で「歴史家が正しい歴史を記述するためには多くの他者との交流交感を経て得た個性が普遍性(突き詰めた多様性の全てが一つに調和した状態)にまでいかなければならない」という記述(大意)をみたことがありますが、まさにそんな感じ。そして、その調和を統御しているのが歌声だという身体性が凄い。
 「その誰でもない」なんだから当たり前なんですけれども、新しいタイプの歌手が好きになった訳で、こういう時は否が応でも自分の方が変えられてしまうことになりますね。とても嬉しい。

 さて、職員室で国語科後輩お洒落男子をつかまえる。
 私「後輩先生後輩先生、これ知ってる? すんごいの。あのね、この『平成』って曲と『夜学』って曲だけでもいいから聴いてみて」
 後「はぁ」
 しばらくたって。
 後「あ、先生、これお返しします。確かに凄いですね」
 私「でしょ? でしょ?」
 後「才能が……」
 私「うわ~、良かった。誰かに言いたくてたまんなかったんだけど、どうせ言うなら確かな人にだからねぇ」
 バンドマンお洒落番長が折り紙をつけてくれるなら大丈夫だぁ(←自分に自信が無い)、と喜んで、喜んだ後から先輩権限で無理矢理言わせたんじゃなかろうかという疑念が湧く(←自分に自信が無い)。

 本日は午前中がデスクワーク、一旦自宅まで往復して母君の昼食、昼休みに生徒面談があって5・6限がセンターの授業。「スピンスピン」で2013年1月のオンラインを賑わせた小説、牧野信一「地球儀」です。放蕩の父親に作家崩れで口だけの息子(←これが主人公)、母親はどちらにも愛想づかしで家は自分一人で守るとまで言っています。最初に読んだ時は「んまに碌でもない主人公だねぇ。口だけやんけ」と超上から目線で読んでいたんですが、ラスト一行で主人公に息子がいる(ということは少なくとも嫁がいる/いた)ことが明かされ顔面殴打の敗北感を味わいました。

 さて、学校事務室には昨日ポチったCDが2枚、もう届いちゃってます。あら、水曜日着の予定じゃなかった? とメールボックスを開いたら、例の会社から「ご注文いただいた商品を少しでも早くお届けするため、本日、Amazon.co.jpが一部の商品を発送いたしました」と本日到着の旨。嗚呼、ブラック企業の労働者酷使に加担してしまった!

 母君の夕食をお出しした後、読書独酌は自宅徒歩3分の中華料理「H」。相方の料理人が都合で辞め、現在ワンオペになってしまったマスターは天手古舞い。昼・夜ともメニューは大幅カットの臨時バージョンです。私は唐揚げと春巻の盛り合わせ、パリパリ焼きそばを肴にビールと焼酎。昨日のジュンク堂では久々に原克玄の新作が出ていたのを買いましたが、幼女を主人公にしているので過剰な下ネタがなく且つじんわり感動路線に寄せたりすることもあるのが心地よいです。アリ王は……この作品には出ないかなぁ(期待)。

一心不乱に同じ動作をするのが我が常です。

 週明けに1学期分の特講費が支払われるという通知。私は今年、週4日(8コマ)と突出して回数が多いので、支払われる金額も大きいです。実は実働からすると安いんじゃないかと疑っているのですが、一回で受け取る現金としては額が大きいのでつい霧を払ってしまうのですね。具体的には、10万円を「事務嬢さん預金」にお預けして、残りを年末上京における卒業生への奢りに充てるつもり(足りませんが)。国公立の先生方が(法律上)残業代を貰えないのと比べたら待遇は雲泥の差です。

 午前中は書斎で作業をして、母君の昼食をお出ししてから学校へ。味噌汁で(言葉は悪いですが)冷蔵庫の在庫処分をする傾向が出てきました。学校ではデスクワークを2時間ほど(学級通信・添削その他)。職員室は私のみで、入る時に警備員さんに部屋の解錠をお願いしなければなりませんでした。作業中にやって来られた先生がお二人。最初は国語科後輩先生で彼には入試関連で是非お願いしたい要件があったので飛んで火に入る。お二人目は私の方が飛んで火に入る格好で、目が合って早々12月の飲み会を入れられてこれが焼鳥。

 さて。
 12月の飲み会が、肉ばっかりだ。さっき入った焼鳥、職場の忘年会は焼肉、「もりき」の鴨コースが2回は入る、年末のオツカル様は野菜嫌いだから肉に行きがち……ということで、年末上京でお約束の61回生Sくんにメール。
 私「相談。あのね、焼鳥じゃなくてもよかったりしない?」
 S「大丈夫です! 池ノ都先生のおすすめの店をぜひ」
 私「中野でブリ尽くし、高田馬場でゲテモノ料理、池袋で変わりうどん、渋谷で豚カツ、なら?」
 S「僕が決めていいのであれば中野のブリがいいです!」
 私「はい確定、予約も完了しました! お店は中野駅『ぶり中野』、26日(水)18時半からの予約なので、駅集合を18時20分にしましょう!」
 スピード命、が過ぎて豚カツも肉なのを忘れる勢いでしたが、とにかく先ずは久しぶりの「ぶり中野」訪問が決定。56回生イツメンと行って以来、2年ぶり2度目です。ってか、若い人はブル中野を知らないよなぁ、と思ってネットで検索したら、ブル中野が「ぶり中野」を訪れたというのがニュースになってました。

 予想よりも仕事が早く終わって14時過ぎには職員室を出てもよくなったので、西鉄電車で天神に出ることにしました。昨日K市の血痰ネーミングショッピングモール「You Meタウン」に出たは出たのですが、民度の低さで欲しいものが手に入らなかったので、ジュンク堂タワレコとに行こう、と。
 先ずはジュンク堂は流石、お目当ての仲島ひとみ『大人のための学習マンガ それゆけ! 倫理さん』が人文科学新刊書棚で面陳列されています(勿論、隣には野矢茂樹『大人のための国語ゼミ』も)。これは自分用、学級文庫用に2冊を購入。その他、63回生Mくん(白夜書房でバイト中)が「働いた」と行っていた吉田豪のインタビュー集、筒井康隆の雑文集、マシンガンズ滝沢秀一のゴミ収集エッセイ、等々。

 続いてタワレコも流石、昨日K市でスルーした折坂悠太『平成』が全曲試聴出来るようになっています。で、収録11曲の冒頭だけ(数秒~10秒ずつ)聴いたところ、7曲目の「夜学」という曲がもう絶対間違いなく好きなヤツだという直観が走ったので、今回は躊躇わずに購入。20分ほどかけてJ-popの棚は一通り見ましたが、特に欲しくなるものは有りませんでした(何故か森田童子のコーナーが出来てて、ここはちょっと立ち止まりました)。次に買うのは矢野顕子さんの新譜(来週火曜日発売)ですね。

 電車でK市に戻り、自宅で母君の夕食を作ってから入浴、クリーニングの引き取りも。夜は居酒屋「A」で独酌読書。
 北田暁大と岸政彦との対談が(固有名詞をほぼ一切知らないけれども)面白く。社会学は地方に飛び込んでの調査ありきなんだというのは言われたらそらそうだなんですけれども、実態を知らない人、例えば北田暁大と言えば『嗤う日本の「ナショナリズム」』だというような一般読者(要するに私)には新しい教えなのです。というか、『嗤う~』の続編が今年出ていたことを知りませんでした。これは、直ぐに買おう。
 武良布枝『「その後」のゲゲゲの女房』読了、★★★。読んで、水木翁のお墓参りがしたくなりました。

 帰宅後、寝る前に折坂悠太『平成』を書斎のPCに入れ、歌詞カードを熟読しながら一目(耳?)惚れの「夜学」を聴いてみました。ら、当然の陶然。これは超絶カッコいい、間違いなく今年いちばんの曲です(まさかポエトリーリーディングだとは思わなかったけれども)。5回ほどリピートして聴きながら、気づけば折坂氏の全過去作をポチってました。amazonは苦手なれど無意識には勝てず。水曜日に事務室に届くそうです。全作買ってもいいと思えるようなアーティストが増えるというのは、音楽に関する体力・アンテナ感度の落ちたこの年になると珍しいことで、或る種「記念日」と言っていいくらいかも。

たかが冬の一日じゃない

 4時起床、書斎で仕事、入浴、母君の朝食準備、出勤。授業が2・3限でセンター01年野矢茂樹、これは水曜日に授業をした理系3クラスがどこも平均40点を大きく上回って上出来だった問題で、文系Aクラス、及び文理混合我らBクラスは更に得点がと期待していたら、流石文系でAクラスの平均点が45点を超えていました。高3現代文を担当するのは5回目(56・58・63・64・67回生)ですが、センター50点満点でクラス平均が45点を超えたのは初めてのことです。自宅に往復して母君の昼食、の後で学校に戻って京大理系現代文特講。本日は時間割の都合で毎週16時半スタートの特講が13時半からに変更。芥川龍之介の書簡文を使い、解説まで含めて15時に終了しました。
 仕事上がりに自転車で血痰ネーミングショッピングモール「You Meタウン」へ出掛け、「紀伊國屋書店」で本を数冊購入(K市は民度が低く、ここでも仲島ひとみ『大人のための学習マンガ それゆけ! 倫理さん』は品切れでした)。因みに、昨日の日記に書いた折坂悠太『平成』は「タワレコ」で手に取って買うか買わないか迷って今回は見送り。イベントコーナーでは市内で有名な餃子屋「K」が試食即売会をやっていたので、冷凍の餃子鍋を1パック。これは母君用で、10個入っていたから3回に分けて出します(早速今日の夕食に)。

 夜は「もりき」で独酌。小上がりに3名、カウンターで2名、それぞれ鴨のコースの予約が入っています。小上がりの代表は昔近所の焼肉居酒屋「M」(今は閉店)の大将だったお父様(自衛隊上がり)をお手伝いしていた女性で今は近所でスナックを開いている方、カウンターは同じく自衛隊関係で今年の日本酒の会(「仙介」)に来ておられた方々。マスターから鴨のつみれ鍋だけなら1人前出せると言われたのに従って、今季初鴨料理(正式に注文したものとしては初めて)。鴨の出汁は相変わらず絶品。ただ、今日のつみれはいつもと違ってえらく肉肉しい(ちょっとパサついてるくらいの)噛み応えで、鴨の味わいは強いけれども私にはちょっと合わない感じ……ということを素直に伝えたら、案の定つなぎの片栗粉を使わなかったそう(実験なのか、予約の人たちで使い切ったのか)。「バレたか」って、そら判るわ。〆は蕎麦でなく餅しゃぶにしました。

 数日前の日記でまだ早い的なことを言っておきながら、年末上京の夜の店をそろそろ考え始めているところ。実際、小市民の分際ではありますが、人気店は1ヶ月前じゃ遅いというイメージを持ってたりします。
 56回生「イツメン」は25日と予定が決まっていて「【悲報】男4人聖夜予定全空き」って感じなのかな、と職場でポロッと言ったら世界史女性先生に「そういう意味の予定は24日だから25日は別に空いていても『悲報』ではないのでは?」と言われました。38歳からはそういう感覚さえ蒸発しています。
 でも、そうは言っても、25日の飲食店っつったらまだクリスマス真っ最中ですよね。「折角だからちょっと良いところでパーティーしようぜ」って感じになってるんですけど、男衆で「ちょっと良いところ」に行って、食事の後も「ちょっと良いところ」を予約してるようなカップルにぐるり囲まれるのは嫌だよなぁ、と思う。その後が恐らく雀荘であろうこちらも惨めだし、カップルの側にとっても男衆は「逆ポプリ」だろうし。でも、チェーンの居酒屋だとかは流石にご免だし、まぁ割烹系の和食か現地人系の中華かが無難かなぁ。あ、恵比寿に最近出来た「素麺居酒屋」にも行ってみたいな。
 61回生Sくん(東大医学部様)ご一行(私を含めて4人組)はあちらのご希望で新宿辺りの焼鳥、という話になってまして、だとしたらお店はほぼ一択なんですけれども、これは週明けの予約の成功不成功次第ですね。
 うん、やっぱり店選びは楽しい。