ハッピー・エンドにしてください ハッピー・エンドに

 5時30分出勤、1時間かけて念のための授業準備、ですが雨予報の天気はギリギリ曇天で7時に決定、体育大会は決行結構。結論から言えば、借り物の玉を濡らしてはいけないという理由で玉入れだけが中止になっただけで、途中のパラ降りも大したことなくプログラムは最後まで進めました。A組44人11騎の午後騎馬戦、1人の欠席も許されない状態で生徒は何とか全員が揃い、総合でも青団優勝で放課後の炭酸シャワーをばっちり。これ程までに楽しい日も珍しい、ってくらい幸せな一日でした。

 朝の教室でハチマキを配る、生徒は(勿論担任も)全員青いTシャツ、所謂クラT(クラスTシャツ)に身を包み。デザインはクラス生徒某氏、これが巧いんだ。巨大なAの形をした棒アイス、が溶けて雨になりポタポタ、を担任(私)が雨傘で防いだせいで横の副担任先生(世界史)が濡れてしまうという絵柄。担任のわがままと子供っぽさの犠牲になって人には見えない苦労を背負いつつ、世界史教科で文系の知を育み生徒会も回しておられる、という副担任先生の謙虚なる偉大さを見事に図案化。

 開会式の後は、第一種目のクロスカントリー(校外を走る)のチェックポイント警備。担当生徒と一緒に学校近くの川沿いの橋まで歩いて移動。移動しながら、大学の志望や勉強の話などちらほら。私のクラスではない理系生徒なんですけれども、基本的に誠実な人で将来的に勉強一途になれれば、など。
 午前中はず~っと競技見学をしたりA組(青ブロック)やぐらをひやかしたり遅刻の生徒と電話連絡を取ったり。綱引きは毎年毎年メンバー以外の助っ人が大量に参戦するという違法行為が行われてわやくちゃになっちゃう、っていう流れ。それでルール違反失格、ってなったら「ふざけんな!」ってキれるのもいつもの流れ。ふざけたいでも勝ちたい、って生徒はいつもお茶目。受験の場合遊びたいでも合格したい、ってのは無いけど、まぁ非日常の体育祭なら? あ、教員と生徒の二人三脚も、転ばずに走って結構息ピッタリだったんじゃないかな。

 午後のプログラムは、装飾紹介と応援合戦から始まる。1番手の我ら青団、練習の成果を全部出し切ったと言って良いんじゃないかな。最後の最後4拍、苦悶であったり無であったり恍惚であったり無我夢中にも種々様々な表情があるんですね、これを、後1年後に半年続けられたら彼らは大丈夫、って直ぐに話が受験になっちゃいますけど。
 笑いを取り入れた赤団、硬派を絵に描いた黒団、どちらも見事な演舞。この2団に我ら青団は一点決定的に負けているところがあって、それが言ってしまえば「統率の取れ方」。黒団はリズムをとる太鼓役が他2団を圧倒する経験者だったこと、人数が少なかったこと、等々色々ありましょうがとにかく全員指の先まで綺麗に揃ってた。赤団は「演舞きゃりーぱみゅぱみゅ」等々お遊びを盛んに取り入れた内容だっただけに、大まじめにやって動きが揃わなければ最悪に格好悪い、と覚悟が違う。

 その点、青団はやっぱり中心になる高2Aの担任が「あれ」なだけあって普段から話を聞かない人が多いでしょう? だから団長は全員に「言うことを聞かせる」ことに相当苦労したはずです(夏休み序盤の練習でもそれは見てとれましたし、多分メンバーは「後半はちゃんと聞いて真剣にやった」と言うだろうその「ちゃんと聞い」た「真剣」さも、赤や黒には届いていなかった筈です)。だから、「統率の取れ方」に関しては他2団にやや離されてしまったし、残念ながら応援団の採点基準ってそこがもの凄く重要なんですね。
 結果3位に団長は号泣してましたけれど、そして勿論「団長」だから「結果責任」は思いっきり被ってもらいたいんですけれど、「原因責任」は団長じゃないよ、あれだけの努力と根性を見せた団長にそんなものがかかっていく訳がない、「原因責任」は担任にあるんですからね。
 個々人の潜在能力は高い、それは青龍躍動の装飾勝利でも実証されています。ですが、個と集団との相互作用に生きるのが人間ですから、集団の統率が取れないと個の力も涵養されないんです。あ、これ、入試の話にスライドしてますよ。未だ高2Aが勉強力で爆発できない「原因責任」は最近の日記にも書いた通り担任にあります、でも「結果責任」は合否それぞれ個人で背負うしかない。今からが最後のチャンス、担任は無力感と充実感の堂々巡りの中で足掻き続けますので、どうか一丸の知の空間を築いていきましょうと、祈るような気持ちでいるのです。
 そしてそれは多分、勿論断言は出来ませんけれども、もしかしたら達成されるんじゃないかという予感も兆しています。装飾と応援団を採点するのは教員有志ですが、2つの力を測る尺度は悪いけれどもそれら教員の点数ではない、どう考えたって装飾・応援団にブロックのメンバーが(意識的にせよ無意識にせよ)どの程度鼓舞されたかという一点に尽きます。午後のプログラム終盤、未だ点数は発表されていない段階でしたが、私は青ブロックの総合優勝を確信し、見学にいらしていたクラスの保護者の方に車を出していただきました。近所の量販店でペットボトル100本を購入するためです。総合優勝なら炭酸ファイト、木を隠すなら森、悔し涙は44人全員(と、こっそり混じった担任)で洗い流せばいい。絶品装飾と、(未熟ですが)努力の応援団と、その二つにブロックのメンバーが見事に応えたその流れの、先の先の先の先に、一丸の知的空間が光って見えたような気がする体育祭でした。

 さて、後片付け。テントやパイプ椅子やを移動中の生徒会・体育委員会を見学しに(手伝えよ)第1グラウンドへ。したら、30代教員4人で200メートルを走ったら誰がいちばん早いかトトカルチョ。国語(私)、世界史(私と同じ年)、数学(年上)、地理(年上)、ウチのクラスの生徒(青団副団長)まで私を選ばない圧倒的アウェイ感の中、20年ぶりくらいに200メートル全力疾走でしたけれども、革靴とジーパンで優勝してやりました。バイクだ自転車だ車だで通勤しておられる方々に、いくらもやしっ子とはいえ徒歩通勤のプライドにかけて負ける訳にはいかない。ってことで、「青団の点数に、200点追加しといてね」

 教員有志打ち上ゲーション! は焼肉だったんですけれども、炭酸ファイトが楽しかったからこれはもう二次会気分。前も世界史右も世界史、っていうロケーションだったんですけれども私、F高2~3年文系時代、担任先生が世界史でありながら世界史だけ選択的に勉強しないという問題児だったので(高3夏に「インカ帝国ってインドにあったっけ?」って口走って担任先生に叩かれました)、何この罪悪感掻き立て座席配置、って気分。副担任(世界史)「いけのと先生、じゃあ世界史って何も覚えてない?」 担任「ら、ラームモーハンローイがインドのサティ廃止に尽力したのは覚えてる!」 副担任「何そのディープな知識」 新人女性(世界史)「頻度数……」 担任「けどそれ以外は知らんっ!」
 あ、酔っ払ったってシチュエーションの記述なんで、言わずもがなのこと書いとこ。ヒック。あのね、世界史はやんなかったけど、私、国数英は人並み(←この場合の「人」っていうのは、99年の東大文3現役合格者)以上に出来ましたからね。な~んだ一科目捨てても東大現役って通るんだ~って考えは捨ててね。痛い目見ますよぅ。ヒック。