振り返れば奴がいる

 「レミ風校内模試現代文」ってお前もう少し真面目に仕事しろよ、と思われる向きはあるやも知れませんが、しょうがないんですもん。タイプじゃない本に呼び止められたんですから、読まずに作ろうと思ったらその方法しかないんですもん。
 言っときますけどね、300ページの本の中でそんな探し方して問題が作れるなんてこと、滅多に無いんですからね。10冊やって1、2冊あるかないかなんですからね。今回の場合も半ば無理だと思いながら始めたら、運良く1カ所だけ条件に合う文章があった、というだけなんですから。ご丁寧に「デカルト」だ「西欧近代」だって単語まで入ってたらそら出すっちゅーねん。
 何度でも言いますけど、普段は自分が好きで読んだ本の中で「偶然切り取れた」文章を出してるんですから。

 で、今日の授業(水村美苗本格小説』センター)で、血痰ネーミングショッピングモール「You Meタウン」の「紀伊國屋」で後ろから呼ばれた本から校内模試作った、って話をしましたら、B~D組では「うわ……」「本に呼ばれるて」「遂にそこまで」と哀れまれたり引かれたりしたんですけれども、我ら文系A組だけでは「振り返ったらそこには××××が!」ととても此処では書けない固有名詞が生徒から帰ってきて教室爆笑。そのネタ、爆弾ですから。

 で、本文3000字以外原著を一切読まずに作った校内模試、の解答解説推敲のために本文を熟読しているんですけれども、「わしゃ憑依芸人かい!」って言いたくなるくらい東大風でこれ他大学志望の生徒が怒るんじゃないか、と。それより何より、出典本は(受験業界的には)割とキャッチーに見えるだろう本だから予備校の冠模試(11月に3連打)と出典が被るかも知れない、とこちらは本当にドキドキ。一応、予備の問題を作っておくことにしよう。

 これまでの11年間に校内模試で出題した現代文は数多い。ですがこれはと満足のいく出来の問題はそう多くない(っていうか殆どない)。個人的に最も好きな問題(っていうか本文)は霜山徳爾『人間の限界』、最も京大っぽい問題は北林谷榮「仕事について」、最も東大文系っぽい問題は小池昌代「背・背なか・背後」(そりゃそうだズバ的だったんだから)でした。で、最も東大第一問っぽいのは今回の第4回校内模試かなぁ。

 そうそう、就職初年度に校内模試で出題した小池昌代、まさかの同年の東大第4問をズバ的してしまいまして。就職前年度、私がまだ東大の学生だった時に何となく小池昌代という名前を学内で何度か見たのが印象に残ってたんで、就職年度の7月までに発表された小池さんの文章を全部集めて(8月以降の文章は、多分入試作成時期的に翌年2月の出題はあり得ない)、その中で一番東大文系問題に使えそうな物を選んだらそれが的中したという成り行きでした。
 褒められましたよ、そりゃ。色々な先生から「凄い」って言って戴けましたし、当時の高3現代文の先生からは粗品(携帯ストラップ)を戴きましたし。

 で、私がそれで有頂天になったか、というとこれが然に非ず。そりゃちょっとは嬉しかったけれども、何よりも先ず同じ文章を選んでおきながら傍線部の箇所が一つとしてあってないことがショックでショックで。どう考えても、東大の問題の方が本文全体と傍線との関係が有機的で(首尾照応だし4題解いたら全文要約になってるし)、自分は素材文を選ぶのに全力投球でその読解と作問化で明らかに手を抜いた(し、力も及んでいなかった)。
 先ほど色々な先生から褒められたと言いましたが、国語科恩師先生だけからは慰められました。「まだ一年目ですから、これから頑張ればいいですよ」

 なんてことをしみじみ思い出しながら4時間の授業と放課後の特講。明日も頑張って添削をしよう!