誰か私のために あの歌を歌ってください

 カプセルホテルの食わず嫌いって人は、蚕棚みたいなのを想像してるんでしょうか? 6時前に起床(長々と寝られるのは旅行の醍醐味!)、ホテル内の温泉風呂で身体を洗って、同窓会出席用の格好(とは言っても、通常のスラックスに灰色のジャケットという教員出勤スタイル)に着替える。ホテルを出て、渋谷駅近くの(早朝から開いている)理容室で洗髪と顔剃り。

 さて、どんな時でも東京に行けばオツカル様とのカラオケデート。朝の10時に渋谷センター街バスケットボールストリートだって、けけけけけけ……って馬鹿にしながらWikiったら命名時の説明に「こじつけた」という語があり大笑い)で待ち合わせ、私の教員ジャケットと真ん中分けの髪型に「あまりにも教員っぽい」と会った瞬間大笑いのオツカル様とご一緒に、「カラ鉄」って店の作りは安いけど曲目のリストを印刷したレシートを最後にくれるから日記書くには便利だね、今日はこんな歌を歌いました!

 オ①ときめきのルンバ氷川きよし
 池①二人のアカボシ(キンモクセイ
 最初はキンモクセイvsボウリョクゲイ。キメッキメの「ルンバ」PV映像には失笑を禁じ得ないところですが、熱唱のオツカル様は格好いい。大サビラストが「歌い上げ系」なのも演歌っぽいですね。私は、こないだ初めてサビ以外を耳にして、その「シティポップさ」に驚いた「二人のアカボシ」を。この人たち、絶対ユーミン好きだわ。
 オ②きゅるきゅる(大森靖子
 池②NIGHT WING(工藤静香
 一番の「アーメン」の部分を歌った後のオツカル様が「2番では君が今から予想する通りの韻の踏み方をします」と心理トリックを仕掛けてきました(その通りになりました)。私は工藤静香のみゆきさん作詞作曲マイナー曲で、オツカル様曰く「中島みゆきの歌い方をしてる」ってそらそうだ、私セルフカバーしか聴いたことがない。
 オ③月(桑田佳祐
 池③浮雲フジファブリック
 「ここから3曲はシリーズで行きます」とオツカル様はメジャー曲の選曲まで拘ってて素敵(絶賛してばっかりだな)。私は、4年ぶりくらいに歌ってその間1回も聴いてなかったもんだから一部メロディを忘れてました。
 オ④月ひとしずく小泉今日子
 池④終着駅(奥村チヨ
 必殺キー3度下げと思ったら1度下げで良かったオツカル様と、原キーの私。オツカル様の「シリーズ」は月で攻めてくるんですね。3曲目は何だろう。
 オ⑤月のしずく(RUI)
 池⑤ファンタスティポトラジ・ハイジ
 3曲目は「黄泉がえり」だった! カラオケの画面にはお懐かしや田中邦衛なども出演の映画映像。でもって、これ、普通に良い曲でしたね。私もジャニーズ歌謡屈指の名曲を(作曲はTHE 東西南北の久保田洋司さん!)。
 オ⑥レット・キス【ジェンカ】(坂本九
 池⑥サラマンドラ(尾藤イサオ)
 オツカル様が歌詞の出だしでいちいち「あレット、あキス」と弾みの「あ」を付けるところがその年代っぽくて面白い。私も、その年代の人の歌を。
 オ⑦Trip(CHAGE&ASKA
 池⑦光の戦士たち(鈴木けんじ
 おクスリに手を出すか出さなかったかという時期に発表された、その後「太陽と~」とか「Say~」とかで一気にてっぺんに上り詰める直前の助走曲(私は知りませんでした)。タイトルが意味深ですね。私のはタイトルを見た瞬間オツカル様が「胸のかたまり!」と叫んだように、何故「高まり」じゃないんだ荒木とよひさ流石「フライデー・チャイナタウン」で「肩にぶつかるジンガイ」という凄まじい作詞能力を見せた方だけある、というアニソンを原曲通り線の細い声で歌う。
 オ⑧アイネクライネ(米津玄師)
 池⑧目と目と目と目(KANA-BOON
 オツカル様の前置き、若者に迎合してネット発の「集まれ厨二病」ソングを歌う、とのこと。PVの漫画も歌い手さんが手づからで、「あらまぁなんて多才でオシャレ」との私の感想に「何か釈然としないんだけど」とオツカル様。歌い終わった後、「これが今の若い子に受ける世界なわけよ。良い曲だとは思うんだけど、何か、何か納得できない」って「あのねオツカル様、それはね、嫉妬羨望なの。僕たち、老害なの」 KANA-BOONさんだって、これが今のロックだって言われたらそらあたしらも釈然とはせんよ。
 オ⑨あるぴの(たま)
 池⑨時のカンツォーネ松任谷由実
 大好きなアーティストの歌を歌う。幸せ。オツカル様は不謹慎系シュール歌詞。私はユーミンが98年にやらかしたまさかの「時をかける少女」同詞異曲、自分の歌なら何をしても良いと思うなよと原田知世は激怒しなかったのでしょうか。
 オ⑩悔し涙 ぽろり(中澤裕子
 池⑩氷の世界井上陽水
 ハロプロ愛溢れるオツカル様の選曲は、今では福岡のローカルタレント枠にも椅子をゲットしたという(テレビ観ないんで知りませんが)中澤姐さんのヒット曲。私は「夕立」ではなくて「氷の世界」、オツカル様は筋少バージョンでしか歌わないから毎回冒頭で「うをををををををっ!」って叫ぶそうです。
 オ⑪VENUS~迷い子の未来~(吉川晃司)
 池⑪奇跡の地球(桑田佳祐Mr.Children
 僕らの年になると、こういうのを「ロック」だと思うんじゃよ。
 オ⑫ゴーゴー幽霊船(米津玄師)
 池⑫wind(Akeboshi
 同歌手2曲不可の禁を破ってまでどうしても言いたかったことがあるオツカル様、BUMP OF CHICKENASIAN KUNG-FU GENERATIONの影響を受けたという米津氏のこの歌は曲といい歌詞のシュールさといいそのままアジカンやないかどう思う? と聞かれて「すみません私ASIAN KUNG-FU GENERATIONの曲を1曲も知らないので言われても分かりません」と答えてあちゃー顔をされる。それよりもあんた、BUMP OF CHICKENを「ほら、えっと、『天体観測』の」って思い出し方が34歳になってるよ。でもって、同じく34歳の考えるオシャレの限界っつったらこれくらい、英語詞のアニソンなんだってばよ(「NARUTO」読んだことない)。
 オ⑬リンスはお湯に溶かして使え(劇団☆新幹線)
 池⑬ヒステリヤ(ヤプーズ
 オツカル様は舞台にも造詣が深く。とりあえず、歌詞の「殺す」に笑いのツボをつかれる。「これ歌ってるの、内野聖陽だからね」「えっ、あの倫理観の低い役者?」 で、34歳ってのは中二病と聞いて戸川の純ちゃんしか浮かばない年なんじゃよ。
 オ⑭「自動車ショー歌」(小林旭
 池⑭「百合コレクション」(あがた森魚
 「最後は小林旭を歌う」「えっ、何トンなの?」「一択かぁ」「それとも、無職の癖に『赤いトラクター』歌うの? 仕事こそが男の命とか歌って、僕を切ない気持ちにさせるの?」と定番のやりとり。私は、オツカル様とのカラオケで一度は歌おうと数年以上前から思っていて毎回必ず忘れていた曲、で〆。

 オツカル様とのデートは続く。銀座に移動して、お昼ご飯は様オススメの「俺のそば GINZA5」。「俺の」系が大好きなオツカル様のお導きで、私はこれが「俺の」系初入店です。ランチで「俺の肉そば」という相当ボリューミーなメニューを。取り放題の生卵を使って最後に味変をして。
 オツカル様は「和牛とフォアグラの重ね焼き」とかそういうそば以外のおつまみメニューも期待していたみたいですが、通常メニューは残念ながらランチタイムには出せないということでした。これには様も大変悔しそうで「これはいつかリベンジせねば」と。大袈裟だなぁと思い「リベンジて」と返したら、オツカルママは飲食店に関してしょっちゅう「リベンジ」の語を使うのだ、と教えてくださり。曰く、期待して入った店が期待通りに美味しかったのに種々の理由で食べたかったメニューをコンプ出来なかった時に再来店を誓う、時の語彙らしい。美味しかったからまた行こうね、でいいじゃないの。「いや、絶対『リベンジ』って言うんよ」という強い語気に大笑い。
 デザートは、これまたオツカル様に案内いただいて「俺のそば」近くのデザートスタンドで、物凄く味の濃いソフトクリームを。500円くらい払ったんじゃないかな。テレビでも紹介されて大人気のお店なのだそう。コーンの代わりにラングドシャをコーン状に巻いた物を使っているのが面白いし美味しい。「大人気なんだ、分かる分かる」という私の言にオツカル様、「来週潰れるけど」

 オツカル様とお別れして、電車で浜松町。東京プリンスホテルにて行われる、F高同窓会東京支部総会・講演会・懇親会、に(F高47回生として)出席。浜松町からホテルまで歩きながら、今この周辺のF高密度って相当高いんだろうなぁ、と思ってたら早速59回生2人と目が合って「あ、どうも」 K市から何でわざわざ来とんねん、って聞かれる前に答える。「今高3を担当してて、来年度お世話になりますから、その下見に、呼ばれたわけでもないのに、ええもちろん自費で」 59回生は中2(古文週1)・高3(文系漢文週2、理系漢文週1)を担当したので、顔見知りなのです。

 会場入りした受付で働いておられるのは61回生(これまた高3漢文授業を通して顔見知り)の方々。受付のNさんからは、(K市名物)フミヤートの施されたマグカップを寄付金と交換するよう命じられ。構いませんけれどもね、マグカップって愛されてる人間が使う小道具だから私には似合わないと思うんですよ(マグカップに対する偏見でしょうか)。

 で、総会開始前の会場に足を踏み入れたら、いきなり大スクリーンでF校が最近作った学校紹介DVDが流されてて顔面を殴られたようなショックを受ける。あれに国語教員として出演して生き恥を晒しておりますもので、まさか遥か東京の地までやってきてこんな暴力行為を受けるとは思わず、来なきゃ良かったとは思わないけれども少なくともその映像が消えるまでは会場入りをせんぞ、と受付前をうろちょろして学校に居るときと全く変わらない不審者のキョドり方。

 結局、開会直前に会場入りして、満席に近い椅子列のいちばん後ろの端っこにひっそり座る。席への移動の途中、目が合った57回生N嬢には、相変わらず目力の強い笑顔で「たつや~♪」と手を振られる。その隣りに座ってる茶髪の大学生2人は顔に覚えがありませんでしたが、後で行われた講演中に寝倒してて隣のN嬢・51回生Oくんに注意されてました。大学生くらいだと、ノリは高校時代と変わっていないですよね。

 支部総会は蚊帳の外、続く講演会はジャパネットたかたの次期社長でいらっしゃる45回生の先輩によるもの。ジャパネットがどのような会社であるのかという紹介が殆どでしたが、それでも十分面白かった。社長ワンマンの下でもの凄い結束の強さだなぁ、というエピソードが満載(社員旅行でチャーターした飛行機は1台で役員分乗せず、って結構凄くありません?)。
 社長就任は来年、ですのでまだ講演などする身分でない、と奥様に注意されたというお話にも感心。でもって、それでも「先輩から命令されたら絶対に断れない」という発言にも驚き。そんなもんなんですね。
 そして、文化祭と同じく本編よりも面白い質疑応答

 その質疑応答の中のある質問について、講演後に行われた懇親会の途中で56回生Aくんから尋ねられる。
 A「あの質疑応答の途中、議員さんが質問したでしょ? あれってなんで?」
 私「なんで質問したか、って言ったらそりゃ最初に名前を名乗るためでしょう。名乗るのが仕事なんだから。それよりも、どうして2つ前の質問と同じ質問をしたのか、っていうのを聞きたいんでしょ?」
 A「そうそう。全く同じやんか、って思った」
 私「断言は出来ないけど、『これからやりたいこと』みたいな抽象的な質問だったから同じ事聞いても別の切り口で違う答えが返ってくる、って期待があったからじゃない? 別に聞きたいことがあって挙手した訳じゃないんだから、わざわざ自分で考えなくても、って」
 A「じゃあ質問しなけりゃいいじゃん」
 私「だから名前を言うのが仕事だ、っつってんじゃんか。あのね、見も知らない・取るにも足らない後輩の1人に過ぎない僕にまでさっき名刺下さったんだよ?」

 Aくんは、ジャパネットたかたの次期社長氏にご挨拶をせよ、と関係会社にお勤めの父君から厳命を受けて来たのに、結局次期社長氏が懇親会早々で抜けられたために命を果たせなかったそう。こう言うのは先に動いてナンボ、と4月から会社員のAくんは学んだのでした
 私がいちばん関わりの深い56回生はAくん一人しかお出でではなくちょっと寂しいところ。

 って、お前といちばん関わりが深いのは自分が所属した47回生じゃないのか、と思われるかも知れませんが同回生で定期的に会う友人が、職場同僚先生とでっくんの二人くらいしかいないほどに友達が少ない私が、卒業以来みたいな47回生諸氏に会釈以上のコミットが出来る訳がないでしょうが、とこれははっきり口に出してちょっと周りをどん引きさせる。あ、でも、在学中に同じクラス(文系)だったI氏が、56回生のHくんが就職した会社の上司だった、って偶然はちょっと「縁」を感じました。結局、教職で関わった回生の方に思い入れが深い、って話なんですけど。

 さて、流石共学化10年のF校。女子(女性)の参加者も大勢。先ず最初にご挨拶の59回生文系女子3人組は全員大学4年。ドレスアップの長身二人が小柄な某嬢を挟む形は某嬢曰く「捕らわれた宇宙人」 成る程、捕らえた側は右手ルイ・ヴィトン、左手ゴールドマンサックスに就職が決定だそうで、っつか右手! ヴィトン! ほならなんでこないだ教育実習にいらっしゃったんじゃい、と。
 そして、59回生3人とお話しする私の後ろには、57回生最強女子N嬢が。私がちょっと後ろを向いて「あの右側の子、ほら、ルイ・ヴィトン(に就職)だって」っつったら、「え~、あたしの(今持ってる私物のバッグの方)が高いよ」って。「違う違う、就職の話」って答えながらやだなにこの子可愛い、と思いました。

 上記59回生某嬢には、来年2月の63回生東大受験文系下見の案内を依頼しました。文系女子最強の頭脳でいらしたんで、女子生徒への御利益があるかな。
 さて、続いては東大受験文系下見、男子生徒の案内をするメンバーを探さねば……と言ってもこれは一択、あそこに見える61回生は63回生某氏の兄君。あやつは言ったら必ずやってくれるはずだから後でメールするだけでいいや。

 さてさて、宴も酣。全員いい感じに酔っ払ってる所。私のもとへ、我がA組某氏のお父様にしてWikipediaにも立項されておられる日本有数の弁護士、32回生の某先生(先輩)がお出でになり。
 某「先生、態々東京にまで!」
 私「ええ、来賓(←毎年校長とベテラン先生2人がK市から招かれるのです)でもないのに自費で」
 某「先生が来賓になる、ってのは全然イメージが浮かばないなぁ」
 私「某くんだって今は全然イメージが浮かびませんけど、来年の今ごろは大学生ですよ~」
 某「いや~、来年は我々が(同窓会の)幹事学年だから」
 私「それは是非またお伺いしないと」

 ……本当に来年も伺ってもいいかもな、と。63回生はいっぱい居るだろうし、上記先生(担任クラスの保護者)が幹事でいらっしゃるし。
 そして何より、15年前の「老いた学級崩壊」の雰囲気がかなり払拭されてて、これなら63回生にも参加を勧められる(私はそんなに必要はありませんでしたが、人脈をきちんと作りたい人にはもううってつけの集まりですし)。古い記憶で先入観を持ってたのを反省。雰囲気が良くなった理由について、何人の方々が「大学生が騒がなくなったから」 と仰有っていましたが、私は最も大きな別の理由があると思っています(職場の先輩、F高40回生の先生もその理由に大いに同意して下さいました)。

 同級生より担当学年、ということでAくんと2人で渋谷へ。店名失念だけれども料理が美味しいから気に入っている居酒屋へ飛び込みで。ホテルが近いから安心して放談深酒。
 途中、同窓会に出席予定だったのにドタキャンしたMくんとメールのやりとり。こないだの電通氏の「約束の時間にこぼれる」じゃないけれど、Mくんもご自分の職場世界のジャーゴンを持ってられる様子で、文面で普通に「転進」って使ってて。