はやく はやく A Happy New Year!

 早朝職員室入り。生徒・同僚・友達用の年賀状の印刷(手書きの文面は元旦に書きます)、新学期準備のデスクワーク、職員室の掃除(つってもゴミ箱とシュレッダーの片付けをするのみ)を終えて現在13時。私を除けば職員室には、卒業生とアポイントメントがおありの国語科先輩先生が一人。こっそり登校して(一応閉校期間)自習をしている高3が数人。校舎廊下は業者によるワックス掛けの最中、歩く時に気を遣いますね。
 夕方に小倉へ帰省して3泊。本は読まずに仕事もせずに、母君と2人でゆっくりと過ごす予定。母君がお酒を飲まれないので、私もつき合って断酒。正月三が日が最も健康的な食生活なんですね。K市に戻るのは1月3日。夜に仕事関係の新年会が入っています(某偉い先生に「3ヶ日が空いてるのなんて君しかいない」と懇願され、「病気の母親を置いて行きます」と快諾しました)。4日夜は今朝方届いたショートメールで58回生との飲み会が決定です。
 
 さて、15年続けているこの日記で毎年大晦日に更新しているのが、その年に印象に残った作品5傑。今年は高3を担当していることや私生活の色々で、本やCDとまともに接する機会が殆どなかったとまでは言えないにせよ例年に比べて激減したので(去年も似たようなことを言ってましたがその比じゃない)、逆に5傑を選ぶのが本当に楽でした。
 
【CD……今年発売の5作】
A.小島麻由美渚にて
B.清水ミチコ『趣味の演芸』
C.中島みゆき『縁会 2012~3 LIVE SELECTION』
D.矢野顕子『飛ばしていくよ』
E.吉井和哉『ヨシー・ファンク・Jr. ~此レガ原点!!~』
 小島麻由美の復活ミニアルバムは、その少し後に出たフルアルバムよりも私の好みでした。1曲目の第一声を聴いた瞬間に思わず吹き出したのは、「もしも自分が小島麻由美の声を手に入れたらチャレンジしてみたい」と誰もが思いそうなエロいというかロリい歌い方だったからです。清水ミチコさんは、練習の「過程」もきっちり新ネタとしてCDに入れてくる所が好き。椎名林檎さんの歌マネ、中島みゆきさんの喋りマネは、多分今後もっと似てくるんじゃないかと思います。今年最もたくさん聴いた曲は中島みゆきさんの「NIGHT WING」ライブセルフカバー。がなり中毒。矢野顕子さんは歌も巧いがピアノが凄まじい人というレッテルだったんでしょうけれども、還暦を迎える頃になり今度はその声の衰えなさが奇蹟だと思えるようになり。ブルーノート東京で観たライブの格好良さ、NHKホール大阪で観たライブの渋さ、どちらも現役最強。吉井さんのカバーアルバム、選曲良。全体的にそうではあったのですが、特に美空ひばり「真っ赤な太陽」と荒井由実「あの日に帰りたい」の2曲におけるリスペクト感は半端じゃなかった。
 
【漫画……今年発売の5作】
A.いしいひさいちののちゃん 全集9』
B.施川ユウキ『オンノジ』
C.新久千映ワカコ酒
D.峰なゆかアラサーちゃん
E.宮川さとし『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』
 全集7~9を通して読んだ今では、かつていしい氏ご病気の前後の作品を巡って一時不調? を疑った我が身の傲慢とセンスのなさを慚愧猛省。でもって若手では、施川ユウキ峰なゆか両氏の4コマは共に傑作だと思います(今年のベストは『オンノジ』。発売は去年ですが、今年読んで余りに面白かったんで)。後者、最新刊ラストのゆるふわちゃん「うぜー」連打は悶絶です。新久千映・宮川さとし両氏の漫画も、それぞれ30代の半ばを越えるとしみじみとするものがあるんですね。
 
【漫画以外の書籍……今年の新刊】
A.飯間浩明『辞書に載る言葉はどこから探してくるのか』
B.内田樹内田樹の大市民講座』
C.壇蜜壇蜜日記』
D.町山智浩『知ってても偉くないUSA語録』
E.林堂寺耀『十二人の抹殺者』
 『辞書を編む』の実践編Aが先ず良。何度か書きましたが、私は数学科の先生がよくお使いになる「求まる」は動詞として辞書に入れて良いのではないか、と思いますが、如何。今年の個人的なトピックスは内田樹先生と(お仕事で)お目にかかれたこと。本としては、900字コラムの常体文章が初期(『ためらいの倫理学』の頃の)真面目さ堅さを想起させた『大市民講座』が一押し。Cはまっぴぃに薦められて買いましたが、いやはや確かに傑作。先ず、目次の各章タイトルを見て目を疑いましたもんね。壇蜜さんという人は私殆ど拝見したことがなく勝手に黒木香みたいな人だと想像していたのですが、ちょっとテレビでご本人を観たくなってしまいました。ウエンツ瑛士叶恭子北林谷榮又吉直樹岸田今日子壇蜜……って何の並びだと思われましょうが、ここ数年の間に読んで生徒に配ったり試験問題を作成したりするほど面白かった本の著者です。町山智浩の本はナンシー関……とまで言えば勿論過言ですが、コラムと挿絵のコラボが生む笑いがもの凄いレベル。Eは幻のミステリー珍本復刻、表題作は雰囲気オンリーで内容はあれですが、同時収録の「人間掛軸」は問答無用でジェットコースター的映画の面白さ。
 
【漫画以外の書籍……2013年以前の旧作】
A.石井光太『遺体 震災、津波の果てに』
B.内田百閒『新方丈記
C.鬼海弘雄『世間のひと』
D.なだいなだ『人間、この非人間的なもの』
E.山本夏彦『オーイどこ行くの 夏彦の写真コラム』
 東北大震災Aと太平洋戦争B、前者衝撃、後者滋味。小状況は常に大状況に翻弄されるのでしょうが、日常性の維持を貫徹すれば手と目が騙されないはず、と思わせてくれるC。未読の本が減っていくのが悲しいD、去年に引き続き名文の鑑E、も共に騙されない眼とそれを過たず描写する手を持っている文章家の手になる傑作。