弁証法的ダイナミズム

 1時半過ぎに起床し、3時前の「Joyfull」へ。コーヒーと烏龍茶を1杯ずつで2時間添削、5時に職員室へ移動して3時間添削、でギリギリ添削終了。本日は、1~6時限が全て授業(5コマ)と会議(1コマ)とで埋まっていて、昼休みも卒業生答案添削で潰れるというヘビーな一日。どうやら今年度は、月曜日がいちばん大変な状態になりそうです。

 授業5コマはセンター試験小説。前回の三木卓に続き、今回は堀辰雄です。
 前回の小説、三木卓「鶸」はラストで少女のレインコートを破った少年が「あへ~っ」となる小説。最後の設問は、傍線部が「布地を引き裂いた時の、痛みに似た鋭い快感を反芻していた」、正答が「少女の衣服を破ることによって生じた、異性に対する罪悪感を伴う興奮が、傷つけられた少女の心を感じとることによっていっそう激しさを増し、少年はその興奮を繰り返し味わっている」、って何を選ばせるんだと。
 でもって今回は「ラストで少年が『あへ~っ』となる問題つながり」で堀辰雄「鼠」。10才くらいの少年が、夢現の中現れた亡き母に生き写しの石膏像と「接吻」して「恐怖」と「恍惚」を感じる、というのがクライマックスです。最後から2つ目の設問は、傍線部が「彼は愛情と恐怖とのへんな具合に混ざり合った、世にも不思議な恍惚を感じだしていた」、正答が「少年は自分のつくりごとをこえた事態の展開に恐怖感をいだきつつも、そこに出現した母の唇のぬくもりに愛情をよびさまされ、官能をともなった喜びにわれをわすれた」、ってだから何を選ばせるんだと。例えばとある男子クラスで問題を配ったら、「これはあかんやつや」「問五は良問だねぇ」と皆様大興奮。ですが、この小説は実は難問、平均点は低いのです。

 会議・添削・授業で走り抜けたら夕方16時。既にして起床から14時間以上経っているので7時起きに換算するなら現在夜の21時、眠いんじゃという以前に身体が「酒を飲ませろ!」と叫んでいる。んですけれどもまだまだ休めない、本日は東京大学文系現代文特講なるものが7・8限。だから月曜日がいちばん大変なんですね。
 今日は早起きしたから先生おねむ、それなのにまた大量の添削を君たちが出すから、と教壇で愚痴ったらお生徒さんたち「それなら先生の負担を減らすために」「白紙で提出しなきゃ」ですって。「正解を書けっ! 正解を書いたら添削が楽なんじゃっ!」
 ですけれども今日の88年現代文は鈴木忠志『内角の和』、(東大式)弁証法で「離見の見」を記述させて難問。05年小池昌代に繋がる「背中」の疎外の話あり、「○○」と「○○論(学)」との違いの理解の必要あり、と受験生をのたうち回らせます。40分で解かせて30分で解説、後にお生徒さんたちから「こんなもん解けるかっ!」とクレームの嵐でした。

 特講終了17時20分、の後は本日のセンター授業200人分の得点を集計。過去8回分のセンター演習(合計400点分)の上位者一覧を配布用にプリント化して各先生方の机上に置いたら18時。さっき回収した東大現代文答案の漢字だけ採点したら18時10分。
 仕事開始から16時間、起床から17時間。もう仕事はせんっ! とタクシーで学校を飛び出し(30分を歩く自信もつもりもなく)、クリーニング屋で荷物を引き取ってからHさん家に。途中で購入した缶ビールがお土産、今日飲む日本酒も私が以前持ち込んで冷蔵庫で冷やして貰っていたものです(63回生Uくんから学校祭の時にお土産で貰った4合瓶2本)。

 私の学校の話、Hさんのご子息の話やお友達の話、等々で2時間の夕食歓談。ハタの煮付け、アラカブの味噌汁。お魚は「もりき」常連さんの釣果のお裾分けだそうで、町内の「贈与の環」。ビールの後は、上記の日本酒(新潟の某地酒)を。
 H「桐の箱にお洒落な瓶。味も良いし、いけのっちゃんこれはかなり良いお酒だよ?」
 私「ですよねへぇ(←睡魔と酔魔とに頭取られかかってます)」
 H「……どのくらい、すると思う? んふふふふふ」
 私「Hさん、それは下品、発想が下品ですよ! すぐ調べましょう!」
 と、スマホ検索で酒蔵のホームページを観た、ら。
 私「おわあっ、Hさん、その瓶1本で××××円ですよっ!」
 H「えっ、嘘っ、本当!?」
 私「ででで、でもって開けてないもう1本はその倍です!」
 H「えええええっっ、ちょっと、どうしよう、1本目、二人で結構飲んじゃったわよ」
 驚きで睡魔も酔魔もニフラムされちゃいました。
 私「……値段見たら、手が止まりますね」
 H「さすが、進学校には凄い人がいるのねぇ」
 開けてないもう1本は秋まで保管しておいて、私が新しいマンションに入った時の引っ越しぱーちーに出すことになりました。でもって、こないだ同じく63回生Eくんのお母様からいただいた「森伊蔵」もそこに持っていくことに。豪華だなぁ、っつかそんなぱーちーが既定路線だったのを今知りましたよ。

 進学校には凄い人といえば。本日大雨の中、Hさんちには傘を持っていったんですけれども。
 私「今日僕が使ってる傘、こないだ卒業生の誰かが放置していって、勿体ないから勝手に貰ったんですけど」
 H「うんうん」
 私「コムサ
 H「」
 私「コムサですよ」
 H「……まあっ、まあっ! なんてことっ、恐ろしいっ!」
 コムサの傘でしたけど、帰りの豪雨で足下はやられました。スラックスはクリーニング行きです。21時帰宅後即就寝、ってか失神。