「ありゃあ見事だったね」「……土左衛門じゃねえのか?」

 7時過ぎ、通常通り学校出勤。昨日で夏休みの前期課外授業は終了ですので校内は閑散。登校生徒は少ないながら、炎天下のグラウンドその他の場所で中学体育大会・高校体育祭に向け装飾や応援合戦、女子演舞の準備を……しているご苦労様なその風景に何か違和感、があったので職員室で生徒会の先生に質問。
 私「もしかして、中学の応援合戦って男女混合ですか?」
 先生「合同でも別々でも8分以内ならいいんです。2ブロックの内1つは合同になる予定です」
 共学化極まれりですね。

 午前中は残っていた浪人生の添削を終わらせて返送。午後以降に卒業生(大学生)が3人で遊びに来る、との連絡だったのでそれを待っている間は進路指導室で仕事。
 で、昼過ぎにやって来たのは我らが文系A組3人組(Oくん・Bくん・Nくん)、順に九大・京大・一橋大……って書くとやっぱりF校って進学校だぁね、と思う。うちBくんとはついこないだの京都出張の夜にご一緒したんですけど、その時戴いた本のお礼(本)を、それこそ昨日京都の住所宛に郵送したばかりでした。入れ違いになっちゃいましたね。

 雑談の面白さでは63回生でも特筆すべきだと思っている卒業生が、前述Bくんと、(今日はお出でではないですが)今年文転した元理系のKくんなんですけれど、Oくん・Nくんも話題の多さでは負けておらず、よくもまぁそれだけネタが続くもんだと感心させられる4時間超のトーク@進路指導室、元担任は完全に聞き役。

 アイスホッケーNくんのサークル話は、体育会系ならではの就職活動話や深夜練のことなど。商学部をてっぺんとした実学ヒエラルキーの如実な一橋大学の中では、観念に淫する社会学部は異端末端塗炭の境遇なんですよぅ、と泣き芸かますNくんはその反動なのかまだ入学3ヶ月なのにやたら就活への意識が高くて、その原因にはバイトを頑張っていることも関わっているのかなぁ、などと。
 延々と大根を卸す単純作業をやってると俺何やってんだろって思えて来る、と天麩羅屋体験を語るNくんですが、これは素晴らしいことだと思います、今日一番の感心。「俺何やって」と思ってしまうような誰でも出来る単純作業を苦とせず引き受ける能力が養えたならそれは集団の宝になる。つっても、「獺祭」の2割3分を定番メニューで提供するような天麩羅屋の大根卸しは、多分彼の認識以上に特別な作業なのではと拝察しますが。
 アイスホッケー部の深夜練というのが夜中の2時3時の作業だ、っていうのも初めて知った話。そらそうか、スケートリンクの営業時間後に、先ずは高校生が練習、その後大学生が練習、という流れなんですね(オーケストラのサークルなどもそういう形をとっている、とはBくんの言)。

 九大Oくんの話はオチ研体験に尽きますね。高校時代から変わらないドヤ芸フェイスの新人落語が、研究会内の匿名合評で「演者を好きになれない」と両断されたという話に爆笑。もともと面白くない人間が古典に手を出して面白くなさを拗らせてる、みたいな部員が多くないですか? という質問をサークルコンパの席で4年生にぶつけた、というクソ度胸にも感心。「きみ、面白いねぇ」と褒められたそうです。「でも、その発言は2回生になってからかな」
 後は、九大に行ったF校生が必ず言うのは「高校の方が面白かった」 これは、どうかしたら東大に行った人ですらそう感じることがある様子。地元ノリへの郷愁というのもありましょうし、長く過ごしているうちに郷に従うというか赤くなるというかで慣れてしまうという事実はあるのですが、やっぱりキャラの濃さと頭の良さっていう点でF校の教室内はかなり独特な空間だったと感じる卒業生が多い様子(でもって、その感覚はかなり正確に当たってると思います)。
 個人的なことを(日記なので)書けば、私は「高校の方が面白かった」と思うだろうことを事前に予想していたので(いくらなんでもこんなに頭の良い人がゴロゴロしてる場所なんてないだろ、と高3くらいの時に感じていて実際にそれは正解でした)、就職はF校と決めていました。大学内では、数多くあるグループの中で唯一「高校の時より面白い」と思えた魅力ある集団(17・18・20期)に積極的にコミットしていったので、大学生活にも総じて満足しています。
 ……あ、結局、Oくんに芸名を聞き損ねてしまったなぁ。

 京大で熊野寮、というだけで半笑いになれるBくんの大学生活話は、板前を辞めて京大法学部に入りなおしたアラサー大学生がたまに寮生に振舞う料理が絶品だとか、講義中に急に法螺貝吹き始める教授がいるとか、関西F校同窓会で一桁回生の大先輩と超仲良く語らっていたのにその先輩が次は日本人がノーベル経済学賞をとぶち上げたのを笑い飛ばした瞬間に激怒されたとか、文芸サークルのサークルコンパで突然隣に座った4回生先輩女子に「私、あなたの文章、好きよ」と言われて絶句したとか、細部でじわるタイプの畳み掛け方式。
 B「超右翼の教授が毎回毎回講義で人の悪口を言ってて、『寝ながら学べる』なんとかを書いたU・Tさんとか」
 私「イニシャルトークでさん付けなの?」
 B「批判するときはイニシャル。褒めるときは本名!」
 私「めちゃくちゃ紳士的じゃないかその右翼」
 さてさて、「遅刻八部集」唯一の大学合格者であるところのBくんに、卒業したら遠慮することなく話せるから楽しい。
 私「8人の中できみだけ通ったけどドヤ顔はすんなよ、能力に比べて志望が低かっただけで相応の志望だったら落ちてたんだから」
 B「(ムッとして)いちばん行きたいところに行ったからいいんですぅ!」
 私「だったら毎日大学に行けよ」
 小器用だけどスロースターターな上に移り気、三つ子の魂ですけれど、それなら春のキューバ旅行計画とか、経験の多さで他を圧倒すればいいのかなぁ。

 次々に繰り出される大学話を聞きながら「それにしてもきみらの大学生活話には学問の話が出てこないよねぇ。今の所、法螺貝吹いた以外に何もない」と3人を冷やかす私は、途中30分ほど進路を出て、アポイントメントのあった中3の卒論相談に乗りまして。
 進路に戻ったら3人から、N「あ~あ、今相当学問の話してたのに」 B「先生がおらんかったから聞き逃して勿体無い」とそういうベタな小ギャグかましたりするのね可愛いなこいつら、と。
 私「さっきの卒論の子、江戸期の和算の問題を自分でも作って、その問題と解説とを漢文で書くので添削をして欲しい、と。勝てる?」
 N「済みません勝てません」

 「もりき」で軽く夕食をとって、帰りにHさんちに寄って洗濯してもらった(旅行中に着る)服を引き取って帰宅。明日は長~い一日になります。