そう 過去の出来事 あか抜けてない僕の思い出だ

 ホテル健康起床、ホントに身体が健康だっつーことを良しとするしかない状態ですが、取りあえずポケットには5万円(オツカル様からお借りした2万円+北白川くんの御車代3万円)。その「御車代」の封筒を財布代わりにして、披露宴の引き出物の入った袋をバッグ代わりにして福岡に戻ることに。

 本日は連休明けで生徒は登校、ですが高3は今日明日が模試なので、私は今日の模試監督を空けてもらって年休を取っていたのです。本来なら「春画展」を観て、午後の新幹線でゆっくり福岡に戻り、20時から博多は名店「太郎源」で55回生Tくんとさしで飲む予定だったのですが、そこは大きな変更余儀なく。
 先ずは「春画展」は諦める。流石に今日はさっさとK市に戻って、とにもかくにも何より現在の住居の鍵をなんとかしないといけません(自宅前に14時の約束で鍵の110番を呼んでいます)。因みに、「春画展」のチケットと一緒に持って行かれた井上陽水の公演についても、チケットが金券扱いで再発行が出来ないとプロモーション会社の返答、残念ですが諦めなければならないようですね。
 完全なる敗走、ですが早朝7時台の「のぞみ」のチケットを押さえ、博多経由でK市に向かう。車内では、今回の成り行きを備忘のためにTwitterに呟きまくり。完全なるツイ廃モードです。何しろ、未読の本もCDウォークマンも鞄の中だったために全て喪失したのですから、情けないことに読む本も聴くCDも無いのです。こんなの初めて。
 あ、新幹線の中では、ホテルにFAXで届いた卒業生(63回生我らがA組某氏)の小論文添削も行いました。これがかなり効いた。「日常性の維持」って本当に強いですね。流石に当日こそど焦りでオツカル様に泣きついた私でしたが、一日経った朝に新幹線内で添削の仕事を始めたらすっ、と気分が落ち着いて来ましたもん。「あ、僕、大丈夫だわ」って。同じ質の、より大きな「大丈夫だわ」は昨秋、母君の肺癌手術の待合室添削の時に感じた記憶があります。

 【車内から呟いた140字×4】
 問題は、月末引っ越しの新居マンションの鍵も持っていかれたこと。これは、明日の午前中に年休がとれたから(午後は東大理系の特講があります)、明日処理しようかな。何しろ身分を証明するもの一切も消えてしまったから、色々面倒だろうなぁ。あ、職場の事務室にお願いして保険証の再発行が必要だわ。
 いや~、エキサイティングな3泊でした。56回生徹マンは日常の区切り、63回生食事会は話題文(化)系&エモカラ熱唱で笑いに笑う、そして北白川くんの披露宴&クイズで大学時代に戻り。盗難被害は無けりゃ無かったが良かったに決まってますが、色々な人の優しさに支えられて今のところ大丈夫だし。
 さて、次の問題は博多飲みwith55回生Tくん、の処置だよね。これは夜の約束で事件処理に動く時間とは別ですから、基本的には決行が前提なんですが(店も予約してるし)、20時博多着&即店にイン、の予定がK市での事後処理17時終了、とかになりそうだからちょっと時間を早めてもいいかなぁ。
 新幹線。職員室に電話をかけて保険証の再発行の交付依頼(但し、これは二、三週間かかるそうです。痛いなぁ)。夜の博多飲みTくんは「時間変更ばっち来い」と仰有って有難い(こんなエモい経験、誰かに話さでおらりょうか、ってもんです)。今日確実に出来るのは、K市の自宅の鍵のことだけなのかも。

 鞄ごと全財産を持って行かれた、時に携帯電話とご祝儀3万円が無事だったのが私を救いましたが、あと一つ二つ良いことがあったとすれば、印鑑は学校に置いてて無事だったこと、そして仕事の道具(答案とか)は一切入れてなかったことですね。
 K市に戻ったら、タクシーで職員室に立ち寄り印鑑をゲット、そのまま自宅近くのHさんの家に。忘れてはいけない、あとさらに一つ良いことは、K市にHさんが居てくださったことです。ホテルから電話で状況をお話しし、Hさんのご自宅でお茶を頂きながら今後のご相談を。
 私「今から、自宅の家の鍵を開けてもらいます。って言っても、合鍵もないから鍵の取り替えになるんですけどね」
 H「お金がかかろうもんね。新居の鍵も盗られたんやろ?」
 私「そうですね、それは明日の朝、同じように鍵ごと取り替えてもらうことで不動産会社・管理会社と話がついてます」
 H「ほいでいけのっちゃん、今日は博多でTくんと飲み会って言ってなかった?」
 私「そうなんですよ。20時の予定だったんですけど、Tくんも店も18時からでOKだって言うから、それには是非行きたいんですけど……」
 H「予約までしてるなら行った方がいいよねぇ。お金貸そうか? 全然持ってないんでしょ? 銀行も使えないみたいだし」
 で、Hさんから5万円をお借りしました。明日の夕食は、ほーむぱーちー形式でHさんちのお家にお呼ばれすることも決定(参加費は1000円と、私がHさんちの冷蔵庫で保存している日本酒です)。

 14時に自宅に戻り、鍵の110番の方に鍵を取り替えて頂く。費用は18000円、時間は100分。身分証明の一切はありませんでしたが、北白川くんから届いた案内状があったためにその封筒が身分証明の代わりになりました。
 家の鍵の問題が片づいたら、次は市役所に直行です。クレジットカードは一週間後に私の自宅に新しいものが送られて来次第再開できますが、二つの銀行の口座は私が直接窓口に出向いて凍結解除の手続きをしなければならず、その時に「私以外私じゃないの」という自己同一性の証明をするためには、住基台帳カードを取得するしかないのですね。何せ、私はパスポート・免許証を持たず、保険証も鞄と一緒に盗まれてしまい、身分証明をする力を持つカードを一切持たない「アイデンティティがない 生まれない らららら」な状態なのです。

 さて、市役所の窓口のお兄さんは大変人当たりの良い優しい方で、全財産を奪われてしまったという、池ノ都辰也を自称する「何者か」(←身分証無しなのでこう言うしかない)に対しても非常に同情的だったのですが、それで証明書交付の可否が左右されることはありません。
 住民票は、実は簡単に取得できました。届出印がある、自宅からありったけかき集めて(JTCYさんのアドバイスです、多謝)持って行った公共料金の支払伝票がある、というのが奏功して、秘密の質問(「住所は?」「お母様のお名前は?」「独身ですか?」等々)に答えたら直ぐに発行してもらえたんですね。
 では本丸、保険証・免許証・パスポートと同等の効力を持ち、これさえ窓口で提示すれば口座凍結解除思いのままでキャッシュカードも通帳も即日発行になるという魔法のカード、「住基台帳カード」は交付されるのかどうかと言うと……。

 博多名店「太郎源」にて。
 私「駄目だった。申請は出来るって。免許証保険証パスポートがあれば即日発行だけど、そのどれも無い状態だと申請止まりだと」
 T「申請後は?」
 私「僕んちに、照会文書が届くから、それに必要事項を記入してもっかい市役所に」
 T「それで交付?」
 私「でも、その時に僕が僕である事を証明するものが何もない! 免許無しパスポート無し保険証は盗難と来たもんだ! すいませ~ん、生おかわり~!」
 T「打つ手無しじゃないですか」
 私「それがね、あるらしいんだよ。次の2点が揃ったらOKなんだって。先ず、顔写真入りの社員証。これは、僕、K大学からもらったものを持ってるからクリア。なんだけど……」
 T「2点目が?」
 私「公の発行した資格証明書、って漠然としたものでね」
 T「先生、教員ですよね? 教員免状」
 私「だしょ? そう思うでしょ? それが……」

 時間遡って、市役所窓口。
 私「あ、じゃあ、私教員なんで、教員免許でいいんですよね?」
 市「えっ、教員免許ですか? ちょっとお待ちくださいね(立ち去る)」
 近くにいた他の職員とひそひそと話すこと10分弱、で戻ってきて。
 市「申し訳ありませんが、今この場で返答は出来かねます。公の資格証明書と認められるかどうか、照会文書と一緒にお持ち頂いて、認められたら交付ということで」
 私「認められなかったら交付出来ない、と。成る程……分かりました、では次に来るときに現物をお持ちします」

 再び「太郎源」。
 私「……ってやりとりだったんですけど、何か今、心身が落ち込んでて全部フラグに見えるから、教員免許、駄目なんじゃないかって思い始めてさ」
 T「何言ってんですか、どっからどう考えたって教員免許って公が出してる資格じゃないですか。それが通らないなんてあり得ないでしょ」
 私「いや、多分そうかなぁ、って僕も思うんだけど、なんか自信が……」
 T「絶対大丈夫ですよ賭けても良いっす」
 私「だよねぇ、よし! 賭けよう! Tくんは『認められる』って方にベットしよう。僕は『認められない』に賭けるわ。賭に負けたらカードは貰えるからトントン、掛けに勝ったら取りあえずそこで得は出来る!」
 ってことで、私が負けたら(カードが交付されたら)年末に私がTくんにすき焼きを奢る、私が勝ったら(カードが交付されなかったら)Tくんが私にイタリアンを奢る、という約束。
 T「にしても、ここのマグロカマと佐賀牛、むちゃくちゃ旨いっすね」
 私「でしょ~、あ、すいませ~ん、山の壽お願いしま~す!」

 本日一番感動した生活の知恵。Tくんも財布に関しては悪い思い出があるそうで、必ず二つ折りの形状のものを買ってポケットに入れておくことにしているとのこと。これだわ。
 私、財布はでっかいのが好きで長財布を鞄にイン、というのをもう20年続けているのですが、よく考えたら今回の上京中の事件だってポケットに入ってた携帯電話とご祝儀のおかげで助かったわけですからね。買い直す財布はパカパカタイプ、背広の内ポケットに入れといたら安心ですね(ですよね?)。

 全額奢るというTくん(流石銀行マン!)の提案を固辞して半額払う。K市帰宅後即就寝。