とかく侮りがちなミーとユーとユーとユーたちに喝入れる直球

 中3漢文の授業準備は「老子」で、日本の老子っつったらこの人、と水木しげる『水木サンの迷言366日』を資料プリント用にチョキチョキ、ペタペタしようとしたら、最初に開いた箇所で「次いで『論語』/これも僕と意見を異にしていた。いずれも生きるのをしんどくする連中だと思った」という一節。このセレンディピティは現神様(現代文の神様)の息吹。頑張ります!
 と、やる気を出して放課後の一橋特講(11年第一問の藤田省三)の板書準備を始めたら、直後に昨年度(63回生)の講義での説明の不備を発見する。あぁ、現神様はこれに気づけと私に命じられた訳ですね。一年前も頑張って準備してたつもりだったんですけれども、少人数の特講だからとどっかで気持ちが緩んでたんでしょうか。Aくん以下昨年度の一橋勢には申し訳ない限りです。
 で、本日唯一の授業は一橋特講、先週に続いて2週連続筆者は藤田省三。名づけて「藤田省三祭り」。先週は「自由考」要約、本日は第一問『精神史的考察』。先週の資料プリントには北村透谷「面罵」をチョキチョキ、ペタペタしたんですけれども、余白に(内容が通底していたので)56回生Mくんが在学中の2009年に東大新聞に載ったインタビュー記事をつけておりまして、それを中3学年主任先生にもお渡し。警察官僚Mくんは、来年2月に中3対象の講演(進路講座?)をして下さるのです。
 その藤田省三『精神史的考察』の文章は、『保元物語』『平治物語』『平家物語』と続く「史劇」の展開を論じた部分だったのですが、解説時に本文を範読して驚きました。感情を込めて読むのが苦手(嫌い)な私が、講談口調かっ! とツッコみたくなるような抑揚・調子で読んでしまう。自然に読んだらそうなっちゃうんですね。これは、藤田省三が散文の中に(テーマに即応した)リズムを意識的に内在させている証拠。優れた書き手たる所以、きっと黙読でもそのリズムは伝わった筈(それに気づかなかった昨年度は、やっぱり気が緩んでたんでしょう)。97年センターの辻邦生『詩と永遠』、09年京大の柳沼重剛「書き言葉について」などが言及していたリズムの内在した散文の端的な例でした。

 この年のオッチャンにRHYMESTERを教えてくれた63回生Mくんから、マイクロフォン№1宇多丸さんは町山智浩と組んで映画評論などもやっている論客だということを教えていただく。
 成程。こないだベスト盤の歌詞カードを初めて読んだ時はほとんど瞠目したんですけれど、理由は一つで歌詞で本格的に「評論をしていた」から。ノリと勢いだけで書いたら「評論になってた」じゃなくて、高い知性でしっかりコントロールされてるように思えた。歌詞だけ読んで曲は聴かなくても良いと思ったくらい、ったら言い過ぎですけど。而も、歌詞の向こうに書き手のためらい(躊躇)とはじらい(含羞)が覗えた(穿ち過ぎですが)ことも加わって、「ディストピアの希望」を論じるならこうじゃなくちゃ、と膝を打った。
 リズムの中に散文性があった、と言ったら前述の藤田省三と丁度反対になるでしょうか。

 野矢茂樹『哲学な日々 考えさせない時代に抗して』読了、★★★★★。
 入試作成の話が大変面白かったのは数日前の日記に書いた通り。本の中で理想的な国語の授業と紹介された(単なる名文鑑賞ではない)論理トレーニング、は私が99年に入学した初年度に「基礎演習」として受講したあれのことですね。「基礎演習」が野矢茂樹ってすごくね? と勝手に一人で喜んで一生懸命毎週の課題を解いたので(『論理トレーニング』、面白いんだこれが)、誤答はほぼ皆無でした(それで顔を覚えて頂けたから、サークルの部屋取りに必要な教授の印鑑はよく野矢先生にお願いしていました)。というか、東大生なのにこれ解けない人がいるの? って思ったら(クラス授業だったんですけど、結構出来てない人がいたんですね)「何をやっても自分より頭いい人ばっかり」という先入観が解消されて少し安心した、って言ったら感じが悪いですけどこれは間違いの無い事実で、大学に対する過度の緊張感を解いて下さった、という意味で野矢先生は私の恩人なのです。

 2年前が被服71.0kgで今が66.0kgですから5㎏減。経年劣化はあるだろうし、昨年秋の小倉・K市往復生活時の心身のプレッシャーもあるだろうけれども、ちょっとイケナイ落ち方。
 56回生の担任団(副担任)4年を終えた翌年(7年前)の私、激太りして6kg増とかだったかな、断食と自転車廃棄で戻すのに一ヶ月以上かかったんですけれども、今年度はそれと逆ですね。ただ、太ったら戻そうと思うけれども(仕事に影響が出るし)、痩せても戻そうとは思わないってのはある(仕事に影響が出ないし)。
 っつーか食ってんですよ。一日一食ってのは昔から変わってないけれど、今日だって「もりき」で一人鍋して〆に蕎麦まで完食してるんです。鍋の〆が蕎麦……ったら鴨ですね。渡りの鴨をつみれにして鍋。15日に狩猟解禁初日の鴨が届いて、今年最初に鍋を作って貰うのは私、って決めていたのです。で、最後は鴨の出汁の香りにクラクラしながら卵とじ蕎麦。日本酒は「鳳凰美田」「雅山流」「安東水軍」。「雅山流」の裏を仕入れるのは久しぶりだったんじゃないかな。

 「もりき」で魔法瓶に氷と水とを入れて貰いました(ベッド脇に置いて夜~朝の飲料水に)。
 12年のK市暮らしでお湯を沸かせる環境が自宅に整ったのは(頂き物のT-falのお陰で)今年が初めてで、魔法瓶を使うのも人生初、と言ったら「よくそれで10年以上社会人やってられるな」と驚かれ。63回生の某お母様には「先生の生活力は息子(大学1年生)と同じ程度」と言われ(「生活力」っていうか「生活欲」だと思うんですが)、Hさんからは「この子は東大卒の癖に私の料理がないと一人で生きていけない」と言われ(最近は料理に加えて洗濯もお願いしておりますが)、本当に何にも出来ない人間が死なずに生きているのは偏に他力本願。有難う御座います。