そう、いいかげんな男が あなたの理想だとしても

 ここ数日、元浪人組の63回生が続々とご挨拶に。春から大学生になる彼らとの歓談から。
 私「大学生に送る『べからず集』を4箇条。太るな、喫煙するな、授業無くても大学休むな、ピアスだタトゥーだと身体に傷を入れるな」
 生「太ったらダメ?」
 私「ボート部で背筋ついたとかそういうのは良いけど、要は入学時よりデブるなってこと。パフォーマンスが下がります」
 生「大学休むなは『日常性の維持』?」
 私「そう。バイトも部活も何でもやって良いけど、基本的に、土曜含めて大学の敷地に足を踏み入れない日があるのは論外」
 生「そんなもん? でも結局、この『べからず集』ってチャラい人間になるな、ってことなんでしょ?」
 私「ノン! それは違います。あのね、勘違いしちゃいけない。中肉中背で身体に傷の入ってないノンスモーカーが毎日大学に行ったくらいでチャラい人間になれないはずがないでしょうが。4つの縛りぐらいでチャラい人間になれないなら、その人は本来チャラに向いてないの」
 生「(笑)」
 私「これ、意外と大事よ? 例えば数学科のあの先生、国語科のあの先生。両人とも大変素敵な先生でいらっしゃるけれども、高校生のメガネを外してじっくり見て下さい。どっからどう見ても大学時代に遊び倒してた臭いしかしないでしょ?」
 生「……そんな気は、する」
 私「そこで笑ってる世界史先生、それは同意の笑いでしょう?」
 世「え、あ、まぁ、はい」
 私「ね? 数学だ哲学だという大学生活の軸にはしっかり足を置きつつ同時にどチャラい遊び方がお出来になる。単なるウェイや単なるチャラなら真面目勢は遠巻きに見て軽蔑してるだけだけど、あれら先生みたいな両義を生きられる人は真面目勢とも軽やかに交流しながら修学もバッチリ。言うなれば『会いに行けるチャラ』です」
 生「会いに行けるチャラ!」
 私「そう。真面目勢から『あの人って遊んでる臭しかしないけど、なんだで大学に居るし、結局点数も高いよね』みたいに言われる。『隣りのチャラ』」
 生「隣りのチャラ! じゃあ、隣にも居ない会いにも行けない純粋なチャラってのは」
 私「それは、向いてないから真面目の側面を全部捨てないとチャラくなれないってだけなの。でもってそれはチャラいんじゃないの。ペラいの」
 生「ペラいて。それって例えばどんな?」
 私「未明の高田馬場駅近くで泥酔して吐き散らかした挙げ句に道端で丸まって人間の幼虫みたいになってるテニサー」
 生「限定し過ぎでしょ」
 私「吐瀉物を雀や鳩がつつけるというのが唯一の社会貢献だという」
 生「何か恨みでもあるんですか? 因みに先生は真面目勢だったんですか? それとも、会いに行けるチャラ?」
 私「愚問だ」
 べからず集の中で敢えて一つを選ぶなら、身体に傷を入れるな、かな。

 というわけで、本日も卒業生続々。63回生我らがA組のM(九州)・I(一橋)・H(一橋)くんの元浪人組から「立花うどん」に連れてけと言われて諾、だったんですが11時の約束から3時間も遅れやがったので中止。職業人相手のアポイントメントに遅れの連絡もない非常識は社会人未満ならではですね。「勝手に行け」の代わりに食事代は渡しました。一人1000円で足りるかな?(と、思ってたらどうやら足りた様子。つっても、うどんと牛飯のセットを両方大盛りにして明太子おにぎり追加するなんて芸当をやってのけた人もいるみたいで。『べからず集』危うし)
 で、その3人は放っておいて、別口で来校の63回生A組Oくん(現役東大)と中華ランチ。文Ⅰから官僚志望のOくんに、政治知識が(額面通り)ゼロの元担任が世界情勢を教わる一時間でした(在学中から他の生徒相手に先生が出来る生徒でした)。例えば私が「今、Oさん『アメリカの影響力が下がる』って言ったけど、その『影響力』って数値化できる概念なの?」って阿呆みたいな質問をしたら「その数値化は誰誰の研究でですねぇ」って30分説明されるような感じ。今のアメリカ大統領選挙について、TPPについて、ロシア情勢について、等々。天晴れなのは「思想にはコミットしない」と前提をつけていること。右も左も藁人形論法に終始してる世界は生産的ではない、と。頭の良い人と話すと、必ず心が洗われます。「徹底した理知ならば必ず人間らしいものになる」というのは末弘嚴太郎の至言。
 「立花うどん」でデブ活してから学校へ戻って来た3人への進学お目出度うプレゼントは、長谷川如是閑『私の常識哲学』、齋藤緑雨『緑雨警語』、馬場康夫『ディズニーランドが日本に来た! 「エンタメ」の夜明け」。近代文語文の『緑雨警語』をあげたらIくんは露骨に顔を顰めましたが、大丈夫、一橋に向けてちゃんと練習してたんだから読めますよ。

 夜は、面談大好き芸人Iくんの要望で「美味しい椎茸のお店」へ。野菜料理の「B」にて、野菜ではなくて肉料理にしか思えない椎茸のソテーを、本当にお好きなんですねIくんはお代わりまでしてました。浪人中の生活について色々お話を伺う。自ら「勉強した」と任じることが出来るならそれが全てですね。「現役は厳しい、一浪したら絶対通る」の在学時予言が当たったので、ホッと胸をなで下ろす担任なのでした。
 食べ過ぎの胃を休める食後の珈琲は、店近くの小料理屋「A」にて。Iくんが珈琲を飲んでいる横で私は日本酒。楽しい夜でした。

 Iくんを西鉄まで送り届けた後、昼も夜もしっかり食べた体重を気にして徒歩帰宅。F校から「B」までの行きの道も30分の徒歩にIくんをつき合わせて。デフォルト65.5㎏の体重が、明日の朝には1㎏くらい増えてるかな、と予想。