遣らずの雨なら よいけれど

 健康起床、のんびり入浴、お気に入りのネカフェで日記更新(3日分溜まっていました)、といういつもの流れでジュンク堂の開店を待ち、店内逍遥。
 今回の旅行(こそ)は聖地を2度訪れると固い決心、で敢えて「背表紙読書」の解像度を低めに。30分程かけて9冊の本を籠へ入れ、強い積み残し感を残したままキャッシャーへ。それでも、本は9冊も買えば福翁一人では足りないことになり珈琲チケットもついてくる。4F喫茶で今し方買った本を読みながら、ロハ珈琲はかくまで苦しの90分。
 今日買った本では、金子光晴『自由について』が嬉しい新刊で、傑作随想「報償を求めない心」(京都大学入試現代文出典)がきちんと収録された文庫が漸く手に入りました。

 一旦ホテルに戻って荷物を部屋に置き、丸の内線で本郷三丁目。改札待ち合わせの10分前に着いたので、待ち時間があるかも知れないランチのお店に先に出向くことに。高級ハンバーガーショップ「ファイヤーハウス」は並び客3組。15分ほどの待ち時間だったので先に来ていて正解。
 遅れてやってきたオツカル様と入店の店内は、満席の半分が欧米の方で。「東京って、本当に外人が多いね」「K市にもいるでしょう」「チャイニーズが多いかな。アジア系」ってやり取りがいかにも九州。毎回、数ヶ月ぶりに山手線に乗った時に、福岡の西鉄電車と比べて最初に凄いなぁと感じるのは、その人の多さではなく人種の多様さの方です。あ、そういえば昨日の夕方に山手線で気づいたんですけど、原宿駅お召し列車ホームって、夕方にはちゃんと電灯が点くんですね。知りませんでした。
 閑話休題、チーズバーガー(ポテトとピクルスの付け合せつき)で1200円の味は。バンズ・ハンバーグ・チーズ・レタス・トマト・オニオン・レリッシュ、オツカル様は勿体無いことにトマト抜きを頼まれたそうで。味付けはマヨネーズとマスタード。「ええっ、これがハンバーガーなの?」という奇天烈なものを想像していたら、もの凄く正統派のものがやって来たという感じ。大きい(分厚い)けれど持ってて崩れる程ではないという物理的な意味でも、しつこいとかもたれそうとかいう印象を一切持たせない味覚的な意味でも、想像していたよりもずっと食べやすかったです。3分もかからずに食べ終わり。

 私「シンプルに美味しいね」
 オ「『バーガー・バーガー』で作れるようなキメラ的なものを想像してた?」
 私「懐かしい! プレイステーションの中の僕の3大やりこみゲーム! 『バーガー・バーガー』『パペット・ズー・ピロミィ』『刻命館』!」
 オ「『バーガー・バーガー』は、要するに如何に早く世界三大珍味を見つけてパンに挟むかという勝負だから。トリュフ挟んどけば評価が上がる」
 私「僕、あのゲームで『シーズニング』って言葉覚えたんだよねぇ」
 怒られるかも知れませんが、数年ぶりにハンバーガーを食べて、私の中のナンバーワン(且つオンリーワン)であるところのモスバーガーを久しぶりに食べたくなりました……と書いて気づいた、私、去年の「男く祭」の出店でハンバーガーを食べてましたね(あれも良くできてました)。

 本三まで来たんなら、と東大の中を少し歩いて、中央食堂やら三四郎池やら東大病院辺りやらを散策、のまま上野まで徒歩移動。ここでは、対他関係におけるマウンティングの話で盛り上がる。私の「マウンティングは如何に先手を取って相手の下に滑り込むかが勝負を決める!」という意見にオツカル様が賛同して下さったので嬉しかった。「僕、ロックマン並に見事な滑り込みを見せるからね」
 上野の桜は一分咲き、数少ない木に様々な人種の人々が群がって挙って写真を撮ってます。シートを敷いて宴会、という集団は少ないですね。幾ら花より団子、花より酒、とは言ってもその「花」が殆ど咲いてない状態で団子や酒を嗜もうという気にはならないんですね。

 さて、上野「パセラ」で150分の二人カラオケ。禁煙室万歳。同じ人を2度歌わない、過去に歌った歌は歌わない。このルールを破った選曲について先に理由を書いておくと、オツカル様の⑥はさっき「ロックマン」ネタで二人で一頻り笑ったことからの連想で、同じくオツカル様の⑭はPVを観たいから。私の⑥⑬は今夜の矢野顕子さんライブへ気持ちを盛り上げるため(アッコちゃんは⑬でコーラスを担当)、同じく私の⑭は前回巧く歌えなかった(覚えてなかった)リベンジを約束していたから。
 オ①CHAGEASKA「ひとり咲き」(1979年)
 池①KANA-BOON「MUSiC」(2012年)
 オ②キュウソネコカミ「ハッピーポンコツ」(2015年)
 池②小林旭熱き心に」(1985年)
 オ③雅夢愛はかげろう」(1980年)
 池③槇原敬之「春よ、来い」(1998年)
 オ④清竜人「プリーズリピートアフターミー」(2011年)
 池④ANATAKIKOU「LINE DANCE」(2006年)
 オ⑤たま「日曜日に雨」(1993年)
 池⑤HIS「夜空の誓い」(1991年)
 オ⑥ゴム「思い出はおっくせんまん!」(2008年)
 池⑥矢野顕子「ラーメン食べたい」(1984年)
 オ⑦tohko「ふわふわ ふるる」(1998年)
 池⑦KinKi Kids「硝子の少年」(1997年)
 オ⑧尾藤イサオ「悲しき願い」(1964年)
 池⑧守屋浩「僕は泣いちっち」(1960年)
 オ⑨米津玄師「Flowerwall」(2015年)
 池⑨サザンオールスターズ「YARLEN SHUFFLE~子羊達へのレクイエム~」(1998年)
 オ⑩ココナッツ娘。「情熱行き 未来船」(2001年)
 池⑩新井正人「アニメじゃない~夢を忘れた古い地球人よ~」(1986年)
 オ⑪川添智久「STAND UP TO THE VICTORY~トゥ・ザ・ヴィクトリー~」(1993年)
 池⑪IKKO「どうにもとまらない」(2007年)
 オ⑫globe「Wanderin' Destiny」(1997年)
 池⑫中島みゆき「吹雪」(1988年)
 オ⑬こぶしファクトリー「ドスコイ! ケンキョにダイタン」(2015年)
 池⑬井上陽水「Pi Po Pa」(1990年)
 オ⑭水曜日のカンパネラ「ディアブロ」(2015年)
 池⑭中村中「愚痴」(2006年)
 オ⑮稲垣潤一「エスケイプ」(1983年)
 池⑮フジファブリック「モノノケハカランダ」(2005年)
 以上、各15曲。オツカル様の平均は1998年、私は1994年。珍しくオツカル様が微妙に懐メロ寄りの選曲でした。

 山手線ぐるりで新大久保。本日は、東京グローブ座にて矢野顕子石川さゆりジョイント矢野顕子40周年記念の5日連続公演「二人のジャンボリー」の初日です。二日目以降のゲストは、清水ミチコ・森山良子・大貫妙子奥田民生(順不同)。
 先ずは、ライブ後に食事をする場所を探しがてら新大久保散策。ざっくり言うと、改札を出て右の高架を潜った先にある韓流レストランストリートをチェックする作業。韓流ブームの時には、ここに次々に出来るコリアンレストランに女性客が大挙、接客の店員が韓流スターのようなイケメンばかりの店には大行列、とこれはワイドショーなどで見た覚えが。私はここを歩くのは初めてなのですが、オツカル様曰く「めっきり人が少なくなった」とのこと。サムギョプサルの人気店「とんちゃん」というお店が(ライブ後に)満員じゃなかったら入ろう、と決めてから徒歩でグローブ座へ。

 舞台ど真ん中の位置で前から6列目という、ブルーノートを除くならこれまでで最も良席なのではないかという場所に並んで座り、二階席端が空席なのは舞台が見切れるから敢えての処置であるとか、今日は演者3人(上妻宏光も加わっていることを入り口で知りました)で舞台が狭いけれども演劇のときは舞台が迫り出す可動式で客席が減るとか、オツカル様から色々レクチャーしていただく。様は、有識者時代に舞台関係の仕事をしていたのでお詳しいのです。ちなみに、「有識」は「ゆうそく」でも「ゆうしき」でもなく「ゆうしょく」と読みます。今のオツカル様は「非職者」です。本人曰く「タマネギ剣士」。

 ①そりゃムリだ ②SOMEDAY ③青い山脈 ④悲しくてやりきれない ⑤サッちゃん ⑥夕陽が泣いている ⑦ちゃんと言わなきゃ愛さない ⑧名うての泥棒猫 ⑨ほめられた ⑩津軽じょんがら節 ⑪飢餓海峡 ⑫斎太郎節 ⑬さくらさくら
 ①~⑤がアッコちゃんのみの弾き語り。⑥~⑫が石川さゆりさんの歌唱で、アッコちゃんがピアノ・コーラスでサポート。⑩・⑫で上妻さんが三味線。⑬は歌唱なしでアッコちゃんがソロ・ピアノ。

 先ずは、原曲(佐野元春)を脱構築しつくした②にオツカル様が目を白黒。「途中まで、あれが『SOMEDAY』だとは全く気づかなかった。いい歌詞を書くなぁ……あれっ? って。あれは流石に『SOMEDAY』ではない」との言、確かにファンとっても難度が高いですが、あれはまだ「アレンジ」の内です。
 ①の歌唱の前の咳払いから異変は感じていましたが、今日は全く高音が出ず、喉をかばいながらの歌唱であることは明らか(その分、ピアノに熱が入っていることも)。ご本人がMCで風邪だということを明かされ、「滅多にない珍しい矢野顕子だとポジティブに」とニコニコの表情に客席も安堵の雰囲気でしたが、もしかして「鬼気迫る」に近い演奏なのかも。
 お馴染み⑤の演奏のアウトロにあわせ、「サチコさんじゃないサッちゃんを」と石川さゆりさんを呼び込み。特注の「くまモン&金太郎」帯のお着物で登場の石川さんに客席の温かい拍手(矢野さんなら「リラックマ」でも良かったですね)。最初に長めのMC掛け合いなのですが、先ず驚いたのは石川さゆりさんの口調がふわっふわだったこと。これ、完全に少女じゃん、と。天城も越えられそうにないし、一人で連絡線にも乗れなさそうな雰囲気。
 それでいて、⑥でピアノ1本をバックに歌うその歌唱力に、出だしから私も隣のオツカル様も圧倒されてしまう。今日は凄いものを見てるぞ、と。人前では初披露だという『ルパン三世』ED(⑦)はコケティッシュに、椎名林檎ではなく矢野顕子と組んで披露した⑧では色気と凄みと。
 次に面白かったのは、ゆるふわな少女語りの口から出てくるさゆりトークが基本毒舌全開だったこと。先ず最初に⑦の作詞者「つんく♂」を呼び捨てにした所で私とオツカル様とで顔を見合わせ、続いて「巧いピアニストに鼻につくやつがいるじゃないですか~」の発言で客席がどっと沸き、難しい漢字を歌詞に使う椎名林檎を「あんまり学校に行ってそうじゃないのに」と言ったのには私初めて歌手のMCで声出して笑いました。こんな人だったのね。
 上妻さんの技巧が加わった民謡は言うまでもなくの満座喝采、オツカル様も私も総毛立ちの⑪の迫力は「紅白」でも観ることは出来ないここだけのもので。とどめのサプライズは風邪で声が潰れたアッコちゃんが代わりにピアニストに徹した⑬の美しさ。

 明日以降のジャンボリーで声が出るのかどうかだけが心配ですが、その他に関してはコンビ・トリオのケミストリーの意外さ・迫力、風邪というネガティブな理由ではありますがピアノソロの珍しさ、ともう大満足の内容。石川さゆりさん曰く「日本中どこに行ってもついてきて下さる」という熱狂的なファンの方が4列目あたりに並んで座って居られましたが、その方々ですら他では観たことのない物が観られたんじゃないかな。

 事前に予想してた曲目は一切披露されず。ラーメン食べない、ミニミニ見にこない、夜行列車降りない、天城越えない。
 「全ての予想が外れたのに」「素晴らしいライブだったねぇ」としみじみ語りながら、会場を出たら雷鳴と遣らずの雨だった悪天候もありガラガラだった「とんちゃん」で、二人でサムギョプサルを食べたのでした。オツカル様はビールを少しだけ、私はビールにマッコリにとたくさん。

 23時の山手線で池袋。健康睡眠。だけど、少し食べ過ぎの感があるなぁ、お腹が重い。