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銀杏は手品師 老いたピエロ

 朝は恒例の大浴場湯浴み、湯上がり体重は62.9㎏。これは昨日の同じ時刻より1㎏低い数値で、要するにこれが築地朝ご飯ツアーの分だったのでしょう。うん、人間ってやっぱり食べた分だけ太るのね。昨日は「知音食堂」「あんぷく」と2軒またいでガッツリ。今日の夜は63回生理系のTくん・Oくんと豚カツ屋飲み放題を予約してて、激太りの罠を自ら仕掛けてる感がひしひし。

 夜まではフリーだから、上野公園を満喫しようかなぁ、と思っていたらまっぴぃから連絡、銀座「ヴァニラ画廊」の古屋兎丸展は年末の間の兎丸先生在廊率が高い、とのこと。「在廊率」て、初めて聞いたわそんな言葉。前回の兎丸展で『幻覚ピカソ』最終回原画ン十万円にあわやの喉手状態だったことを思い返すと、ご本人との邂逅は絶対に危険だとアラームが鳴っています。私の預貯金通帳を管理して下さっている仲良し事務嬢さんに「あの……ファンだから原画を……ン十万……」 あ、無理無理絶対言えない怖い。夫か。

 結局、「上野の森美術館」のデトロイト美術館展が本日特別に写真撮影許可、という情報が決め手になって上野公園散策に決定。訪れるのは、「上野動物園」「科博」「上野の森美術館」「西洋美術館」の4ヶ所です。これは一日仕事ですね。

 開園直後の「上野動物園」に突入。午前中雨、の予報通り途中から雨が降り出したのがやや残念でしたが、ジャイアントパンダ→カワウソ→トラ→ゴリラ→ゾウ→ハシビロコウオカピ→キリン→カバ→コビトカバ……と、毎度毎度訪れる度に同じ順路で動物たちを見て歩く。動物園を歩くのは割と好きで、独身36歳が一人で年に数回のペースで訪れると言えばこれは最早「趣味」と言っても良いのかもしれません。
 元々動物園は好きだったのですが、決定的なきっかけは大学3年生の時の中国バックパックでした。上海に独りの孤独と不安とを「上海野生動物園」が完全に忘れさせてくれたんですね。雰囲気は(ちょっとレトロでしたが)日本の動物園とほとんど一緒で、ガラス越しではない至近距離でジャイアントパンダが見られる等お国ならではのボーナスもあって本当に楽しかった。3週間中国放浪の不安は、動物園の体験と志ん生の落語(文庫本)とが癒やしてくれたのですね。
 閑話休題。雨傘をさして園内逍遙2時間。天気も悪く時間も早かったので、冬休み年末のシーズンですが客はまばらでそれも良かった。東と西とを結ぶモノレールは、行きは乗ったのですが幼児連ればかりの中オッサン一人がぽつねんというのがちょっと恥ずかしかったので、帰りは使わずに徒歩で移動。現在道路が工事中だった影響で、事務室横(ちょうど何かの機材を運び込むために職員さんが慌ただしく働いておられました)等、普段は訪問客が入れない場所を通って行き来しないといけないようになっていたのでちょっと(本当にほんのちょっと)面白い散歩でした。

 続いて「科博」の特別展は「世界遺産 ラスコー展 クロマニョン人が残した洞窟壁画」。壁画複製がメイン展示で、暗がりの中で絵が青く浮かび上がるよう施されたライトアップは確かに幻想的で素敵な雰囲気。前回の「海のハンター展」におけるこれでもかの「顎」連打に比べたらインパクトや面白みにはやや欠ける所がありましたが、堪能。自分用のものとは別に、高1担任の世界史先生へのお土産用にもポストカードを購入しました。
 で、メインの特別展とは別に、地味に面白かったのが企画展「花粉と花粉症展」。F校カラオケ倶楽部唯一の症状持ち、春には仕事における授業でもアフター5のカラオケでも四苦八苦になる私ですので、入り口足下の花粉ライト(床に描かれた花から、花粉が飛び散っているようにライトが動くのです)を見た瞬間から、目が、目が。ずらり並んだ植物(本物)と花粉(拡大複製)の対応表は想像花粉症を誘発するレベルで今日が雨で本当に良かった。花粉の栄養バランスが人間の食べるサンマ塩焼き定食のそれと同比率だというパネルがいちばん面白かったかな。へぇ、って。
 常設展は、前回の「海のハンター展」で廻ったのでスルー。上野動物園と違って室内で天候不問だからでしょうか、或いはお昼ご飯前後の時間帯のせいでしょうか、今日の「科博」は人が多すぎです。

 更に続いては、「上野の森美術館」で「デトロイト美術館展」。本日は一週間に2日だけ許される写真許可の日で、全ての展示作品の前で大勢の人がスマホを、或いは少数の人は本式のカメラを抱えていました。全ての作品が撮影OKだったのですが、ルオーやピカソの諸作等、一部は「SNSでの拡散禁止」となっていました。この辺りは、まだ観客の良識が期待されているということなのでしょうか。私もTwitterに最も気に入った4作品の写真を投稿しました(ルノワール「白い服の道化師」、ゴッホ「自画像」、セザンヌ「三つの髑髏」、モディリアーニ「男の肖像」)が、もしも拡散NGでなかったならゴッホの代わりにルオー「道化」を掲載していました。
 さて、ルオー爺さんの絵画は国語科恩師先生が大変お好きでいらっしゃるので、今回も図録を購入して先生に(一方的に)お送りします。「春画展」の時ほど喜んでいただけるとは思えませんが、まぁ。
 しかし、デトロイトといえば、要するに今はスラムになってる都市なんですよね? 廃墟化する街で、それでも市民一同が美術館の維持を訴えて活動したという文化意識は眩しいばかりです。残念ながら、K市の美術館からK市を象徴する絵画である青木繁「海の幸」が引き上げられてしまうことを思えば、諸々の条件が違うだろうとはいえ、寂しいものがありますね。

 更に更に続いては「国立西洋美術館」……の前に、「科博」に再入場してミュージアムショップでポストカードを1枚購入。生徒用の年賀状は(手書き一筆のスペースを残して)準備済みなのですが、喪中の生徒某くんへの寒中見舞い用にと思い出して。某くんは化学部部員なので、「科博」館内展示の同素体の模型を写したはがきにしました。
 さて、「西洋美術館」で行われているのは「クラーナハ展」。怖い絵が好きな人間としては通り過ぎるわけにはいきません。入口看板やポスターの「顔」になっている絵は「ホロフェルネスの首を持つユディト」の下部4分の1を除いた部分。剣を持ったユディトの胸から上、ですが当然その下には切断面もリアルな生首が描かれているわけで、そこ、そこを見たいのよ! と前のめりで飛び込む観客は私だけではないはず。
 明治期日本の美術誌、本邦初(最初期)のクラーナハ評が「画家としては二流、独逸画界に与えた影響で一流」と、「英」なのか「蛮」なのか兎に角勢いよく断じていたのが如何にも明治で面白く。実際に、展示の前半では、画家個人としての活動よりも、工房式大量生産のノウハウを立ち上げザクセン折り紙つきのサイン(指輪・蛇)を商標代わりにする等、日の丸をバックに大量の徒弟を率いた親方という集団活動がメインで紹介されています。政治的影響力の大きさもかなりのものだったそうで。
 さて、明治から時を経て平成日本には森村泰昌が登場、氏特有のなりきり絵画は氏が「ユディト」を演じたパロディ作品で、原作ではリアルだったホロフェルネス生首の切断面がサシの入った美味しそうな牛肉になっているのが面白く。詳述はできないのですが、以前卒業生某くんに日本刀で切断した人間の腕の断面図を写真で見せてもらったことがあり、その時の私の感想がズバリ「旨そう」だったあれを思い出しました。
 「国立西洋美術館」は、企画展は撮影禁止でしたが常設展の「松方コレクション」は撮影可能。ここでもTwitterに気に入った4枚を挙げたんですが、カペ「自画像」、フュースリ「グイド・ヴァルカンティの亡霊に出会うテオドーレ」、スーティン「心を病む女」、ピカソ「男と女」という4作品で、どうやら自分には「趨妖性」といったようなものがある様子。そら、クラーナハにも惹かれる所以です。

 上野公園堪能、池袋に戻って駅構内の喫茶店で小休憩。国語科恩師先生にお送りする「デトロイト美術館展」図録に添えるお手紙を書きました。先に書いたとおり、以前お送りした「春画展」は滅茶苦茶喜んで戴けたのですが、今回はルオー1作品だけですしそこまでは、かと。ですのでせめて、の意を込めてお手紙はクラーナハ展「正義の寓意(ユスティティア)」の絵葉書に書くことにしました。我ながら配慮が裸婦です。
 ホテルに戻って大浴場、風呂上がりの体重は62.0㎏で初日の飲み会前とほぼ変わらず。2泊で3回飲み会をやって6軒で飲んだ(今からが7軒目)というのを考えたら、結構頑張ってる方なのではないかと考えます(頑張る方向性が間違っているというのは知ってます)。本日の飲み会、上京7軒目は水道橋「菩提樹」で、お相手は63回生理系2人(Tくん・Oくん)。

 進路は理系心は文系の東大Tくん、及び卒業後お会いするのは初めて慶應Oくん、と水道橋駅徒歩3分のお店。水道橋駅前は昨日徒歩で通りました(本郷へ向かう途中で店の場所も確認)が、昨日は駅前の橋の上で「嵐のドームコンサートチケット求む」のファンがすし詰めでした。本日もライブがあっているらしく、我々が集合の18時現在は既に観客がドームにインしているようで人影まばら、でも1次会退店後にぼやぼやしてたらライブ帰りの人混みに巻き込まれてしまうやも。「二次会があるなら水道橋から別の駅へ移動しよう」と決定してから店にイン。
 Tくんのご要望は「あまり騒がしくない和食」。ということで、渋谷「かつ吉」の姉妹店に入ってみたら、揚げ物メインではあったけれどもそこまでゴッテリはしてないコースだったので安心。店内は「あまり騒がしくない」雰囲気で、残念ながらトイレ故障のために店外のコンビニまで出て行く必要があるという(期間限定の)難点はありましたが、料理も美味しく飲み放題のお酒のお運びも良く、というか飲み放題の瓶ビールが大瓶だっつーところから素敵。
 Tくんに「椀子蕎麦ですか?」とツッコまれながら、コップが干される前に次々にビールを注ぎまくるお先生は、20才2人の飲みっぷりに感嘆。若いのにそんなに飲めるのって珍しくない? と。2時間で3人で、大瓶15~20本くらい空けましたよね。

 嵐の人混みを避けた二次会は、昨日独りで歩いた道を逆走して神保町へ移動。神保町の飲み屋なんて全く知らないけれども以前一度だけふらっと入った「日比谷バー」があったのを記憶していたのでそこへ。ここでも若いながらに良く飲むよねぇ、と感心しきりの飲みっぷりを見せられて、それだけで嬉しくなってしまうオッサンなのでした。
 でですね、取りあえずどんな話をしたかっつったら近況報告に決まってる訳なんですけれども、大学1・2年生の近況っつったら、こう、如何に遊んでるかとか如何に勉強してないかとかいう方に偏りがちになってしまうじゃないですか。例えば、2人の内の片方に弟くんが居てそれが現在受験勉強真っ最中の高3F高生だったと仮定しますよね、ったら肉親大学生の楽しげな毎日っていうのは目の毒耳の毒になるかも知れないじゃないですか、いやこれ仮定の話ですから深い意味はないんですけれども、近況報告詳細というのはここでは避けた方がいいかなぁ、と自粛してですね、先生はホテルで独り健康入眠に入ろうかな、と。
 あ、付言。2次会の切り上げ時は、大学生二人の話が所謂「恋バナ」に入り出した頃合いでした。そこのプライベートに関しては踏み込むのを丸っと遠慮したいんで、その手の話が始まったら私は宴を切り上げるか宴の最中なら耳を日曜にするかに決めています。おやすみ~。