セトウツミ

 「ガキ使」を録画しつつ「紅白」を流すというのが我が家の大晦日定番で、「定番」なのでチャンネルを変えることはしませんでしたが、今年の「紅白」は本当に番組として低レベルで、余りの徒然にいつもは元旦(1日の朝)に書く年賀状を書き始めてしまい、気づけば100枚の予定の内の70枚弱を書き上げてしまってました。
 「歌」を大切にするとか喧伝してますけど、それは歌の力でゴジラがとかいう小芝居のことじゃないし、目玉らしいデュオに20年前のデビュー曲を2番カットで歌わせることでもないし、今年の見所ってまさか本当に石川さゆりしかないんじゃないかと最後まで心配しながら観てたその心配が果たして殆ど的中するという悲劇。
 大竹しのぶの出場は若しかしたら明石家さんまSMAP、の狙いだったのかなぁ(でも、それと引き換えに「賛歌」枠の三輪様を外す価値はなかったんじゃないかなぁ)。タモリ・マツコ然り。人事って「第一優先事項以外を無視」したら大概失敗するって、大人なのに知らないのかなぁ。
 椎名林檎新宿駅の出口を東口から西口に変えたというのと、松田聖子の新曲が新沼謙治の「嫁に来ないか」にしか聞こえなかったというのと、後は石川さゆりが素晴らしかったのと、結局3つしか印象に残りませんでした。今年の「紅白」を観たのかは知りませんが観たとしたら一番得したのはクドカンなんじゃないでしょうか。「俺、大河で何やっても許されるんじゃね?」って。

 さて、本日31日。実家起床で、朝は例外無しのメニューでフルーツヨーグルト。今月、保健室ベテラン先生からご実家の柿を頂いたので、いつものバナナ・リンゴ・キウイ・イチゴ、にそれも加えて豪華。母君は拘らない方なので、セロリやらプチトマトやらの野菜も加えたり。
 午前中に、お雑煮の具材を初めとしたお正月3日分の買い出しに。我が家を中心とした徒歩5分半径の円内は3箇所の異なるショッピングモールがあるという郊外地獄絵図の様相、私を中学に入れて以降25年間は主婦をしていないと仰る母君ですがそこは流石で果物はここ、魚はここ、と3箇所を使い分け。荷物持ちが居ると買う量が増えたりするんでしょうかね。
 午後には宅急便でおせちが届き、今回は小倉帰省の期間を一日前倒しにしているという関係で、31日の夕食からおせちを食べ始めることにしました(だから夕食はおせちと年越しそばとです)。

 夜は前述の通り、年賀状を書きながら「紅白」。これは私が猛省するところですが、例年と異なる帰省の仕方で昨日は21時、普段は母君がお休みになっている時間に睡眠を邪魔した「日常性の維持」破壊が悪かったようで母君が夜から体調を崩され。体調というか、原因不明の腰痛に襲われ「紅白」前半の途中辺りから完全に起き上がれなくなってしまいそのまま寝正月の勢い。2ヶ月置きに肺がん転移再発の有無を検査している状態なので、「原因不明の腰痛」などと言われたら冷や汗が止まりません。
 で、母君に遅れること3時間、私も23時30分に2016年を閉じました。

 年末上京旅行の読了本、9冊。
 内田百閒『先生根性』読了、★★★★★。既に日記で紹介したので今回は引用を控えますが、何気ないフレーズの端々から教育者としての迸るような矜恃。
 森博嗣『つぼみ茸ムース』読了、★★★★。森博嗣吉本ばななのエッセイは、読後感が似ています。筆触は違えど、考え感じることに投入するエネルギーの凄まじさが伝わる点が同じなのですね。そして、読んだ後に日々瞬間を大切に生きねばと思わせられる点も。本書の解説者、羽海野チカ氏の文章に吉本氏が登場、3人は親しいそうです。羽海野氏の作品は未読なのですが、もしかしたら同じ読後感を持つのかも知れませんね。
 原克玄『るみちゃんの恋鰹(3)』読了、★★★。『恋鰹』に移った段階で無理はあった印象でした。アリ王は別作品での再登場を期待。
 宇多丸『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』読了、★★★★。流石、B-U-N-K-E-I最凶のパイセン!
 きたやまおさむ『コブのない駱駝 きたやまおさむ「心」の軌跡』読了、★★★★。私の愛する「さらば恋人」「白い色は恋人の色」「帰って来たヨッパライ」……等々を生み出した詞人・精神分析学者が、対象を精神分析しながら語った自叙伝。『論語』の「和而不同」を校是とするF校の卒業ですから、筆者が本書で繰り返す両義性の重要性はその半分の年齢の私でも理解できます、が、「あれも、これも」の両義性が曲折経て「あれとか、これとか」のそれに変わる成熟は観念としてぼんやり想像するのみしかできず人生は長い。
 藤栄道彦『妖怪の飼育員さん(2)』読了、★★★。種々が1巻より丁寧になっており好感度上昇。
 富沢一誠『あいつの本音 長渕剛から永井龍雲まで13人』読了、★★★。CHAGE&ASKA「万里の河」が大ヒットし、「愛はかげろう」の雅夢と陰陽の関係と言われていた時代のインタビュー集を、興味本位で一気読み。男性シンガーの殆どが拓郎か陽水かで音楽に目覚めたというのが面白い(例外は彼らよりデビューの早い山本コータローと、かぐや姫を挙げた雅夢三浦和人)ですね。
 影山理一『奇異太郎少年の妖怪絵日記(九)』読了、★★★。8年越しのアニメ化を筆者は信じられないと書いていますが、徐々に徐々にのハーレム化はそれを意識していたに決まってます。
 中村正『僕らを育てた声 中村正編』読了、★★★★。黎明期・創成期を支えたレジェンドへのインタビューシリーズ、いつもいつも聞き手(唐沢俊一)の誘導で大体が「若手は巧いが無個性で、良いのは山寺宏一」という結論で締められるという欠点はあるものの、様々な大家の修行・交友回想録は毎回面白く且つ貴重です。女性声優も読みたいなぁ(小原乃梨子とか池田昌子とか向井真理子とか、絶対面白いですよねぇ)。

 今年の私的ベスト5を。今日の日記のタイトルは、20作の中で最もインパクトがあったものです。

 昨年以前発売の書籍5冊。
 A.森銑三『傳記文學初雁』(2/18)
 B.内田義彦『読書と社会科学』(2/22)
 C.黒柳徹子トットチャンネル』(6/16)
 D.井上荒野『静子の日常』(8/21)
 E.内田百閒『先生根性』(12/25)
 青ヶ島には生きている内に一度は行ってみたいと思うのですが、江戸の文献にそれが登場したと紹介されているA、篠原ともえ嬢はお読みになっているのか否か(私、篠原さんのファンなんです)。Bは仰ぎ見るべき読書論で一橋大学入試で読んだのがきっかけ、Cはドラマ(傑作)の影響で読みました。Dも素晴らしかったけれども、ここから高校入試小説が作られたというのも凄い話。Eの教職者としての揺るぎない矜恃にも震えます。

 今年発売の書籍5冊。
 A.大橋巨泉『ゲバゲバ人生』(7/31)
 B.國分功一郎『民主主義を直感するために』(9/13)
 C.松木直也『[アルファの伝説] 音楽家 村井邦彦の時代』(9/25)
 D.pha『持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない』(11/21)
 E.戸川純戸川純全歌詞解説集 疾風怒濤ときどき晴れ』(12/14)
 A・C・Eと芸能畑の本ばかり取り上げててそれでも国語教師かという選書になってしまいましたが、3冊とも面白かったんだからしょうがない。特にA、諸所鼻につくのは仕方が無いとして、やっぱり一つの職業を作った人というのは偉大だと思わされます。Bの倫理観はスッと腑に落ちましたし、プロニートDの筆者と大事にしている価値観が殆ど同じだということにも安堵を覚えました。

 今年発売の漫画5作。
 A.いしいひさいちののちゃん全集』(5/16)
 B.此元和津也『セトウツミ』(7/3・7/18)
 C.久米田康治『かくしごと』(7/3・10/29)
 D.施川ユウキ『ヨルとネル』(10/22)
 E.よしながふみきのう何食べた?』(10/30)
 2度(2年)以上同じ作品を選ぶのは読んでる量が如何にも少ないように見えてアレなんですけれども、Eがやっぱり面白いんですね。この主人公カップルは私が読んだあらゆる漫画の中の理想型。今年読んでその巧さに驚倒したのがB、残念なことに結局映画は観に行けなかったので、DVDが出たらレンタルじゃなくて買ってしまうかも知れません。

 今年発売のCD5作。
 A.吉田美奈子『MINAKO YOSHIDA GLORIOUS CONCERT "calling"』(3/19)
 B.KIRINJI『ネオ』(8/7)
 C.UA『JaPo』(8/10)
 D.矢野顕子『矢野山脈』(12/2)
 E.Kate Bush『BEFORE THE DAWN』(12/4)
 ユーミンの『宇宙図書館』も入れたかったけれども次点、次のオリジナルという奇蹟に期待しつつ、ですね。一番の若手がKIRINJIでそれでも20年選手、ベテランばっかりで自分でも笑ってしまいます。