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いまに帰ってくるのやら 徐かに私は酒のんで

 さて、本日は高1以下の生徒は自宅学習で、一日中定期テスト(残り2日)の勉強に追われているはず。で、高2と高3とは送る側送られる側、の高校卒業式。私は高1担任団として式の受け付けであるとか式後に食堂で行われる歓送会の片付けだとかの雑務が色々。でもって、昨日は飲み過ぎた(というか軒数を重ねすぎた)という反省があるのに今日は今日で16時とかいう明るい時間から飲み始めてしかも杯を次々に重ねないといけないというお仕事が。

 高校卒業式の後は毎年、高3保護者主催の謝恩会が市内ホテルで開かれます。勿論主賓は担任団・管理職なのですが、高3で授業だけ担当した教員も招かれ、大体は縁が薄いという理由で断るケースが多いのですが私は誘われたら全部行くというマイルールを貫徹してヘラヘラと出席するという。
 3時間の会席中、担任・副担任の前には各クラスの保護者の方々がずらり列をなし、全員が瓶のビールを注いではご挨拶という、端から見てたら微笑ましく注がれる当人にとっては地獄みたいな光景が繰り広げられているのですが、担任団でもなく授業も文系漢文理系東大漢文特講だけなので対象生徒100人以下という私の場合はやって来られる保護者の方もぽつ、ぽつという感じでマイペースに飲める(だから「杯を次々に重ねないと」って程でもないですね。重ねましたけど)。

 さて、アウェイ勢漢文先生にとって唯一の「お仕事」は、各教員3分ずつという制限時間で壇上に立つ「3分間スピーチ」のみ。普通はアウェイ(授業担当者)→ホーム(担任団)の順番で喋るんじゃないかと思うんですが何故か今回は逆で、担任団が思い入れたっぷりのコメントで臨席保護者を感動させ尽くした所に司会者のお父様から「はい、アウェイ勢、どうぞ!」と壇上に促されまして。取りあえず、同じテーブルの副担任同窓数学に「今回こそは笑わせずに行くわ~」と宣言して、全く信用してないという視線を背中に感じつつ、マイクの前。「3分間スピーチ」、以下。

 【国語科の池ノ都です。今年度は漢文の授業でお世話になりまして、対象が文系の生徒と理系の東大志望者の特講だけということで、ここにいらっしゃるお父様お母様のお子様全員と関わったという訳でもない、要するに「通りすがり」みたいな存在なのですがそんな人間にまでお招きの声を掛けて下さったことを、先ずは感謝申し上げます。
 さて、文系漢文の二次対策授業、及び東大の特講ということで、これは単に授業だけではなくその後に授業中に解いた二次試験過去問の添削という作業が御座いますので、これが意外に大変な作業になるんですけれども、今年の65回生高3は、何故か文系の生徒の数が少ない。例年なら50人程度居る筈の文系が、今年は30人弱しか居ないんですね。これで私の仕事は大変楽になりました。こんなに楽な高3は過去なかった。こんなに楽をさせて頂きましたこと、皆様方には心から感謝しております。
 何故今年の高3はこんなに文系が少ないのか、と職員室内で訝しがる声は多々ありますが、そんなの考えるまでもありません。お父様お母様ならお分かりだと思いますが、これは偏に担任団に居る国語科2人、学年主任先輩先生と文系担任後輩先生という国語教師2人のせいに間違いはありません。
 卒業式の日だとついつい「終わりよければ」と考えてしまいがちですがこれはちょっと違って、やっぱり「始めよければ」が実際の所なんですね。高校65回生の一日の「始め」はどこからだったかと言いますと、毎朝6時30分に出勤なさって高3フロアの廊下教室の掃き掃除をお一人でなさる主任先輩先生のお清めから始まるわけです。登校した65回生生徒諸君は「あら何となく我々のフロアは居心地がよいぞ」と思いながら毎日を迎えられる訳でしてこれが「始めよければ」。
 というのに象徴される主任先輩先生の生真面目、無礼講で言葉を選ばなければ堅物、というのが右にありまして、はい左を見たら今度は文系後輩先生。こちらときたら上から下までビッチビチにお洒落センスの塊、これで生徒の文系観は固まったんですね。右見たら生真面目、左見たらハイセンス、どっちかに飛び抜けてなきゃ文系になれないと思うならこれはもう前門の虎後門の狼、生徒は全員「理系に逃げちゃえ~」となるのは必然です。文系が少ない所以。繰り返しますが、このお二人のお陰で今年の私は本当に楽をさせて頂きました、本当に有難う御座います。
 さて、先ほど文系後輩先生はスピーチでお別れが寂しいというようなことを仰有っておりましたが、それは、甘い。私、初めて高3担任団の中に年下が居るというシチュエーションが嬉しくてついつい喋り過ぎてしまっておりますが、この国語科2人の壁を越えてわざわざ文系を選んだような猛者が文系後輩先生、あなたのクラスには揃った訳ですよ。あのね、あいつらは、来るよ。きっと来る。明日も明後日も来る、5日後も10日後も1年後も5年後も、来る。でもって、来たら食事の一つでも奢ってあげたくなるじゃないですか。ねぇ。
 だからね、文系後輩先生。お金を貯めなさい。今からコツコツお金を貯めるんです。私も、担当クラスの卒業生に誘ってもらって数日前やそれこそ昨日も飲みに行ったんですけれども、1軒だけのつもりがあ~ら2軒目ほら3軒目、となった結果、65回生の特講費、あ、特講って勤務時間外ということでちょっとばかりお金が貰えるんですけれども、一年分の特講費が蒸発してしまいましたもので。
 ね、文系後輩先生、お金、お金を貯めなさい。私が申し上げたいのはここに尽きます。本当に。
 それでは失礼致します。本日はどうも有難う御座いました】

 降壇。同窓数学に呆れられる。
 同「どこが笑い無しだ」
 私「おかしいなぁ、主任先生の掃除の話あたりで保護者号泣の予定だったんだけどなぁ」
 同「アホか」

 謝恩会では、スピーチ以外に担任団が「出し物」をしなければならない(様な風潮はどっから出たんでしょう)んですけれども、ここでは後門の狼お洒落番長後輩先生がギター弾き語りで魅せました。また「時代」(中島みゆき)、「青春時代」(森田公一とトップギャラン)っていう選曲がさぁ。
 聴きながら、隣席の副担任化学先生も大興奮。「楽器出来るってメチャメチャ格好いいよね。池ノ都、俺たちもギター始めるぞ! コミックバンド組むぞ!」 何でコミック限定やねん。

 生徒の3年間を振り返るスライドショーや最後の保護者謝辞では皆さん涙、涙。毎年(のように)来ていますが、今年も良い時間を過ごせました。
 で、私の次なる「仕事」はここからで、19時終了教員一同退場、の後で担任団打ち上げ(二次会)のセッティングをする幹事です。全員が十分飲み食いをしているので店はホテルから徒歩10分の野菜料理「B」で二次会コース、とあたりをつけて電話したらバッチリ人数分の席が確保できたので、参加者に会場をお教えした後酔っ払い疾駆5分で先に店に到着。店のマスターと料理の出し方を相談しながら後続の到着を待ちまして、主賓高3担任団の方がお店に入ってこられる頃にはコースの最初の料理(野菜)が出来上がっているという次第。
 「乾杯」以降は、な~んにも考えずに飲むだけです。