HEY!たくちゃん

 ホテルのベッドで4時に起床、室内のデスクで漢字の小テスト採点・学級日誌コメント等の仕事。持ち出したらいけないんでしょうけれども許してね。電灯が眩しかったのか、母君も5時ごろに起きて来られました(とは言っても、洗顔の後はベッドに横になりましたけれども)。
 昨日、母君の夕食(お弁当)を買うついでに、市内のスーパーと薬局とを回ってのど飴を大量に買い込んできました。全て種類の違う16袋。今日の放課後から、「男く祭」コーラス大会の練習が始まるのです。担任は、練習が間に合えば(別に生徒が望んでいるわけではありませんが)壇上に学ランで上がります。でもって、「餌付けーしょん」はのど飴を毎日差し入れる「飴ちゃんBOX」。思えば、高1A組の餌付けーしょんも、1年前のここから始まったんでしたね。

 さて、本日は学校と病院とをタクシー往復ピストン状態の一日。学校では授業はないのですが、朝・帰りのSHR、及び昼休みに体育館でクラス写真撮影があるのです。という訳で、ホテル1階のレストランで朝食(母君は洋風モーニング、私はコーヒー)のテーブルをご一緒した後で、

 タクシー①(ホテル→学校)。
 7時30分に学校に着いて担任業務。朝のSHRは、4月の内は文化祭を中心に連絡事項が多くて大変です。その後、課題テストの成績処理等の教務関係の仕事。印刷室でコピー用紙(B5)の箱を1つ貰い、前述の「飴ちゃんBOX」の作成も。中にのど飴を5袋分ほど入れて、メッセージ「和而不同のハーモニーを目指して、喉を十分に労わって下さい(味の好き嫌いは言わないで)」 フルーツ系は人気なんですけど、のど黒飴とかミント系とか漢方系とかを嫌がるお子ちゃま舌の方、多いんです。

 タクシー②(学校→ホテル)
 ホテルに戻って母君をお迎え。今日は主治医のY先生から、入院開始が何時になるのかを決めていただく日。ホテルの部屋は今夜1泊分まで押さえていますので、明日から入院ならそれで良し、明後日以降からの入院ならホテルの延泊が必要になります。

 タクシー③(ホテル→病院)
 Y先生の予約時間は11時30分なので11時に病院に入ったのですが、今日はなんだかとても患者の数が多い日のようで、加えて思うように患者が捌けていない様子で、12時になっても12時30分になっても母君の順番が回って来ません。同じく別の先生の順番待ちが30分とか60分とかになっているらしい老人男性が、窓口や通りがかる医師看護師に手当たり次第クレームを言い続けているのが母君の心身に響くようだったので、私だけが待合に残って(順番待ちのビジョンを眺めて)、母君は少し離れたところに移動してもらいました。

 タクシー④(病院→学校)
 昼休みクラス写真撮影が始まる13時には学校に居ないといけないのに、前述のように12時半になっても母君の順番が回って来なかったので、一旦母君を病院に残して学校に戻りました。4限の授業が終わるB組まで生徒を迎えに行き、「全力で体育館に移動! 最初に揃ったクラスから撮るらしいからB組を1番にするよ!」と初手からヒステリー気味に叫んで生徒を急かします。でもって、写真撮影を始める前に、体育館下にタクシーを呼びました。

 タクシー⑤(学校→病院)
 撮影が終わったらそのまま体育館下のタクシーに飛び乗って病院へ。大体そういうタイミングなんだろうなぁ、と思っていた通りに、私がタクシーで学校まで往復していた間にY先生の診察は終わっていました(その後、母君は先生に頼んで点滴を1本打ってもらっており、私が到着したのは点滴治療中でした)。病院の待合で伺ったところ、入院は明日からで、今日はこの後で放射線科の診断、及び全脳照射治療時につける(個人別の)マスク(顔型みたいなもの?)を作成することになると。暗い階段を歩いて、物々しいエレベーターを乗り継いで、何だか病院の奥の奥の隠れ部屋、隔離病棟じゃないけれどもこういう所には精神科があったりするんじゃないかしらん、という所まで2人でとぼとぼと歩きます。
 放射線治療のH先生から、全脳照射の手順(ガンマナイフと違って照射は1回1分程度、これを11回繰り返して入院は2週間超になるということ)、考えられる副作用とその対処法、本日このあと作る顔型マスクについて、等々色々なお話を伺いました。話が進んでいくに連れて、ご自分が末期の癌患者であること、副作用列挙の治療に進んでいかなければならないこと、をじわじわと「身分け」て来られた母君の顔が蒼白になって行きます。こっちはと言えば時計をチラ見しながらドキドキハラハラ。

 タクシー⑥(病院→学校)
 H先生から入院・治療の手順を聞けるところまで聞けた(私が記憶する係で母君が治る係です)後、マスク作成は母君にお任せしてタクシーで学校へ。後2、3分というギリギリのところで何とか帰りのSHRには間に合ったので、連絡事項を伝えたり「飴ちゃんBOX」を見せびらかしたりするために教室へ行き、SHRと教室掃除監督と。高2Bの人たち、というかその内の内進組はほぼ全員「無音清掃」が身についている様子で、その粛々に元高1A組生徒は完全に気圧されモード。う~む、こんなに真面目な人たちが(私が担任になったせいで)これから溶けていっちゃったりするんでしょうか。
 コーラス練習は、最初の集合とパート分け(私はもちろん男声高音)の途中まで立ち会って、残りはコーラス委員と指揮者・伴奏者にお任せしました。「まだ見ぬ味ののど飴を探す旅に出ます!」と言い残して、再びタクシーを呼びます。

 タクシー⑦(学校→病院)
 病院に着いたら17時30分、母君は明日の入院を前に、入院受付横の個室にて福祉士の方(?)と入院前のカウンセリング中でした。カウンセラーの方曰く「お母さまはプロでいらっしゃるからお話が大変早くて結構でございました」だそうですけれども、プロだから入院中も小姑だったりクレーマーだったりするんじゃないかとちょっと心配な息子さんです。

 タクシー⑧(病院→ホテル)
 連泊のホテルに母君を戻した後、私は母君の夕食(部屋食弁当)や生活用品の買い出しに出ます。もちろん、ついでに「まだ見ぬ味ののど飴」を探すことも忘れてはいません。のど飴の種類って、本当に多いんですねぇ。2日間で既に25種類以上見つけています。ホテルのお部屋に買い込んだものをお届けしましたが、流石に病院で一日過ごした母君は疲労のご様子。ただでさえ体調が悪いですし、病院って居るだけで心身をやられますからねぇ。

 タクシー⑨(ホテル→自宅)
 非情の極みですが、私はツインの部屋に母君を残して今晩は自宅泊にしました。2日ぶりに着替えたいですし、何より明日は3時起床がマストなのです(授業・HR活動・添削で1~7限がフルで埋まっています)。ど早朝起床に母君を巻き込む訳にはねぇ。
 自宅の湯船で汗を流した後、夕食は「もりき」。21時半の就寝です。