口下手な奴なら きっと後ろめたい何かあるに違いないと

 本日は久しぶりに学校に行かない日になります。出張業務で小倉、地区保護者会懇親会のゲストとして、数学科の大先輩先生と40分ずつの講演です。F校の保護者会は、K市・福岡1区~3区・小倉……等々、中1~高3の縦割りで十数カ所の地区に別れており、それぞれの地区が年に1度懇親会を行うのですが、それに際してF校関係者(主に教員)を招いて講演をというのが恒例になっています。私は「暇な独身枠」「講演好きそうな国語科枠」「断れなさそうな気弱枠」等々の条件の多くを満たしているということで(自分で言うのもアレですが)人気講師の1人でして、今年も4地区に呼び出しを食らっております(講師人選を担当する幹事が高2保護者と決まっていることもあり、今年は特に回数が増えました)。
 今年は小倉、福岡3区、K市、大牟田、の4箇所。大牟田以外の3地区では「入試国語力のつけ方、教えます」という大風呂敷タイトルで同じ内容の話をして、大牟田では国語科恩師先生との対談形式の講演を行うことになっています。というわけで、今日が今年の保護者会のデビュー戦。

 8時29分K市発の新幹線に乗って9時5分に小倉着。今日の出張は日帰りなのですが、小倉の保護者会は昼からアルコールが出るので実際は一日仕事。小倉は、3月までなら前日入りで実家泊などという選択肢も有り得ましたが、今やその実家がなくなり、遠くなりにけりな街になってしまいました。
 さて、到着後、駅そばのリーガロイヤルホテルが保護者会会場なので、幹事のお母様方との10時待ち合わせまでは2階のカフェで講演内容の組立を考えます。主に生い立ち(来歴)由来のとある理由で私は、このネタに関しては割と面白い話が出来るのですね。講演資料と睨めっこしつつ、赤ペン青ペンで講演メモを(割と細かく)とる。時間にして30~40分。F校生の保護者ですから、雑談披露といえども一筋縄ではいかないと覚悟すべきで、引き受ける時は気楽ですが実際に登壇して話す時には緊張です。
 メモ、以下。「青木奈緒『幸田家の言葉』」「東大クイズ研究会」「命令の言葉と説得の言葉」「就職活動挫折」「浅井了意『狗張子』」「唱歌『夏は来ぬ』」「小鳩くるみと『アタックNo.1』」「山本夏彦と大正の新聞」「水木しげるの妖怪図鑑」「古本に引かれた赤い傍線の意味」……等々、実際の講演では使ったり使わなかったり、地区ごとに異なる講演時間に合わせて内容を伸縮自在に出来るように詰めておかなくてはいけません。

 幹事学年のお母様方(要するに高2の保護者の方々)とご挨拶の後、控え室(っつっても要は今し方滞在したカフェ)で数学先生とお話をしながら待機。11時に会場に案内されたら早速保護者会の開始で、「数学先生講演(40分)」→「私講演(40分)」→「会食(90分)」という流れは恙なく。というか私、2年前にも別の数学先生と小倉地区で講演をやっていますので、中3以上の学年の参加者の方々からは「またお前かよ」と思われたのではないでしょうかねぇ(話の内容は全く別のものにしましたが)。講演に関しては、想定していた内容は一応話せたものの、もう少し構成を練って来週の福岡3区(60分)、K市(40分)に活かさないとなぁ、という感覚。
 その後の歓談は、お酒も入ってリラックスモード。面白かったのは、今年はお父様お母様に交じって初めて「お兄様」参加がいらっしゃったこと。高2某くん(高1A組では私が担任でしたが、今は主任先生のクラスです)のお兄様がお父様と連れだってのご参加で、F高とは無縁のお兄様が何故? と思えば某くんの入学者説明会に付き添われた時の私の話(国語科からの連絡)の「お代わり」をご所望だということ。光栄ではありますが、緊張でした。因みに、公立中高のご出身(現在は医学部生)であられるお兄様から伺った話でいちばん印象に残ったのは、やはり中島敦山月記」を古文(古典)の教材として習ったという話。驚きではあるものの、意外とまでは言えないというのが日本の現状でしょうね。今回の講演では「夏は来ぬ」のCD(小鳩くるみ歌唱)を流しましたが、歌詞の古文の意味が若い人に通じるなんてことは望むべくもありませんね。

 新幹線でK市に戻った後は、駅近くの居酒屋で読書独酌(まだ飲む!)、帰宅後は入浴・就寝(20時過ぎ)。 

 青木奈緒『幸田家のことば 知る知らぬの種をまく』読了、★★★★★。大好きなエッセイストの新刊。読んで打たれるだけでなく、校内模試本文・京大特講(幸田文「おふゆさんの鯖」)資料・東大特講(幸田文「藤」)資料と自在に使えて二度美味しい本です。保護者会の講演で、趣味の読書中であっても直観で模試・入試の本文(2000~4000字のひとまとまりの箇所)が見える、資料に使えるかどうかも無意識裡ながら一々判断している、と言ったら驚かれました。職業病ではあるかも知れませんが、今はそれが内面化されている状態です。
 内田樹『日本の覚醒のために 内田樹講演集』読了、★★★★。こちら、アマチュアではなくプロ中のプロの講演からベスト版。テーマや会場・聴衆の層如何によっては徒手空拳で(何も考えずに)登壇することさえある、というのですから場数が違います。こちらも、読んで面白くかつ入試・模試に使いやすいという二度美味しい本の典型です。