何と彼は文字と書物とを愛したであろう!

 8時前にのんびり出勤、本日は高2が外部模試受験でその監督以外に業務がないので身体は楽です。先ずは、昨日の高3理系東大漢文の答案添削をガシガシ、その後、高2現代文の授業準備を作成。

 次回から、高2現代文は3時限を使って中島敦「文字禍」を扱います。30歳過ぎのデビュー作で天才の筆。私は同時発表の「山月記」(国民的教材)よりも断然のクオリティだと思う、というか筆者の最高傑作だと推したい、もっと言えば日本の短編小説で5指のレベルで好き、なんですが教科書で読んだことはありません(京都大学の現代文で21世紀になってから出題)。「女を抱」くだとか「傴僂」だとかいうのがNGなんでしょうかね。
 でもって、そも教科書に出ていない教材なのだから教え方指南なぞあるわけもなく(教師用指導書、読みませんけど)、自由に楽しく職権乱用で喋り倒すだけ。初回では前半の1/3を読むのですが、喋りたい内容が多すぎて50分で足りるかどうか甚だ怪しい。夏目漱石石川淳太宰治三島由紀夫の話、小柴昌俊の話、スタイラスペンの話、デカルトアインシュタイン茂木健一郎の話、キョンシーの話、古代ギリシャにおける有徳の定義の話、江戸の漢学の話、瀧波ユカリ『臨死!! 江古田ちゃん』の話、ゲシュタルト崩壊の話、『旧約聖書』の洪水伝説の話、川上未映子『乳と卵』の話……等々挙げればキリがなく、どう詰め込むか(刈り込むか)が勝負です。とは言え、作品愛が先に立ちすぎた授業は大体成功不成功の落差が激しいので気をつけないといけません。開き直るしかないとは言え、初回の授業の1クラス目は、理系を煮詰めに煮詰めた地理選択クラス、国語教師は完全アウェイの空間なのですから。
 模試終了後は、LL準備室で生徒某さんに本文を吹き込んで貰いました(長いので、明日の放課後と分けて2回録音します)。63回生の高2で扱った時は、我ら文系A組のMくんに吹き込んで貰いましたが、彼は芸達者だったので若者の声は裏声で、老人の声は平泉成みたいな声で演じ分けて居ましたっけ。今年は、至ってノーマルで聞き易い朗読です。

 帰りのSHRで今年の女子演舞長(体育祭)にして次期女子太鼓長(男く祭)である某さんが3分間スピーチ、内容はデリケートなので書きませんが、何というか「イケメン」でした。内容も立ち姿もね、流石。

 職員室で某中堅先生とモンスターペアレンツトーク。F校にははっきり言って少ないと思う。けれどもちょいちょいチクチク来るのはありますよね。その中堅先生(私の3歳年上)の場合、教員生活で初めて担任をやった時に6月の保護者面談でとある生徒のお母様から「先生は初めての担任なんでしょう? 私、全然信用してませんから!」と宣言されたというのが印象に残っているそうです。確かに失礼な発言ですね、こういうのはネタにして笑って、身体の中から浄化させないといけません。ですんで思っきし笑わしてもらいました、あははははははは。

 夜は自宅近くの肉料理「I」にて。明後日の夜、高2担任団のうちの4人で飲みに行くことになったので、発起人の主任地理先生と予てから行こうと約束していたこの「I」を押さえることに。で、電話予約ではなくて直接店で飲みながら予約しようと決めた次第。多分、明後日は店の人気メニューを食い尽くすことになるでしょうから(私以外の3人は初訪問)、今日はマイナーなメニューを注文しました。

 日本の短編小説で5指と書きながら、残る作品が何なのかは茫としてます。中島敦「文字禍」、芥川龍之介「偸盗」、大坪砂男「天狗」……残る2作は何だろう。パッとは思いつかないな。山本周五郎筒井康隆山田詠美、等々大好きな作家を挙げていけばその中にあるのか、それとも全作読んだ訳でも大好きだという訳でもない作家の「これ!」という作品なのか。