転校生とブラック・ジャック

 葉室麟『嵯峨野花譜』読了、★★★★。
 安田弘之『ちひろさん(7)』読了、★★★★★。今年の収穫、これは事務嬢さんにお貸ししたら喜ばれるだろうなぁ。

 本日1限は高3文系漢文だったのですが、授業開始10分前に教室に入って板書準備していた時の生徒の会話が凄かった。ご退職後、今は請われて高校テニス部をご指導なさっている超ベテラン保健室先生、のことをテニス部部員以外はもうよく知らない。時折見かけるお姿と、切れ切れに入ってくる断片的事実とからだけ人物像を想像した結果が、以下。
 A「保健室のあの怖そうなおばさん、何なん?」
 B「職員室に果物届けるって聞いた」
 A「えっ、農家?」
 C「農家のおばさんが何で俺らの模試の成績を知っとん?」
 震えましたね。

 本日は半ドン業務の後、新幹線で小倉に移動して芸術劇場にて劇団ゴジゲンの舞台『くれなずめ』。F校の誉れ・松居大悟氏作・出演の公演を鑑賞、アフタートークは松居氏の生みの母親にして福岡では知られたローカルタレント・トコさんとの対談です。
 小劇場(100人ちょっとの客席は満席です)は初めて、ですから勿論ゴジゲンの舞台も初めて。客層は若い人が中心ですが、私の母親世代の人々も散見されます。私の2列後ろに、トレードマークとも言えるド派手なお衣装が目を引くトコさんが座っておられました。

 演劇60分。

 F校演劇部の公演で、バスケットボールの得点板を使って日付を表現するというのを見たことがありますが、そういうのが常套なんでしょうか。今回の舞台でも、目まぐるしく行ったり来たりする時間軸を客席に伝えるために、或る方法で一人の登場人物のその時の年齢を表示するという手法が取られていました。
 でもって、タイトルが『くれなずめ』で、中心となるシーンの時間設定がお昼に行われた結婚式後に2次会を待つまでの時間(殆どのお店がアイドルタイムだという時間)だという着眼に驚きます。確かにこの時間は、明るい最中に酔っ払った状態で放り出されて、よく分かんないまま2時間後の2次会を待つとかいうシュールな時間です。そういう宙ぶらりんの心身の登場人物たちが、とある人物を巡る過去の解釈の再解釈の再解釈の……と書いても劇の内容は伝わらないでしょう。結論を一言なら、面白かったしとある登場人物(もやしっ子)が60分間の間にどんどん格好よく見えるようになっていったのには少し感動すらしたし(客席からすすり泣きの声が溢れてたのには「そこまで!?」と思いましたが)。
 アフタートークで、息子松居氏の大ファンで今回の公演ツアーも20回近く観劇なさっておられるというトコさんが、作品に込められた松居氏の意図(の母流の解釈)を熱弁しようとすればするほど松居氏が「それは劇を通して言ってるから……」と困っておられるやり取りが印象的でした。

 小倉は出身地ながら成人以降の居住地は東京→K市で、夜の店の知識は皆無。「菅生寿司」が開いてたらと思っていたら店休だったので、とっとと諦めてK市帰還、「もりき」にて独酌。