そして・・生きなさい

 授業は1~4限で、高2現代文は藤田省三「『安楽』への全体主義」。詳細は省きますが、授業後の質問2つ(共に文系)に感心したことだけ。「不快に対峙する経験」と「不快を一掃したい『安楽』への全体主義」との線引きはどこにあるか(どこからが「安楽」への全体主義なのか)という質問だったのですが。
 女子。「無痛分娩って、『安楽』への全体主義ですか?」 いきなり斬り込まれた感覚。これは、経験できない(性別的に不可能だという意味でも、子どもがいないという人生経験的な意味でも)男性がおいそれと答えられないので、判断はあなたまかせにという不誠実な答えを。但し、森岡正博の「無痛文明」の内容を付け加えてご紹介。
 男子。「どくさいスイッチもしもボックスのような、存在そのものや前提そのものを消したり変えたりするのが『安楽』への全体主義ですか?」 はい、そうです。これまた斬り込まれた感覚。63回生の高2でこの教材をやった時には、定期で文章と一緒に正にこの『ドラえもん』「どくさいスイッチ」の漫画を並べて関係を聞いたんです。で、今回はどうしようかな~、と考えていたらいきなりこれですから。頭良い、への敬意を込めて、敢えて63回生と同じ問題にしてみよう(ついでに、出来具合を比較してみよう)。

 4限まで授業した後、帰りのSHRを副担任先生にお願いして年休。この日記でも繰り返し書いているように、好きな歌手、一度ステージを観たい歌手の中に、この機会を逃したら「次」が無いかも知れないというベテランがどんどん増えてきています(そう書いたらその歌手には失礼なのですが)。
 だって、もうすぐ古希なんですよ? と博多座に出かけて初めて生で歌声を聴いたのは由紀さおりさん。今日は、昼夜2ステージで(童謡ではなく)歌謡曲のコンサート。

 博多座。客層は演者がMCで「同窓会」と言った通りの年齢層で、私(37才)など下から数えて2%以内には入るかな、という感じ。平日の16時開演というのが設定としてどうなのかは解りかねますが、目視した限り8~9割の入りという感じでしょうか(2階席は見てませんが)。
 さっき「だって、もうすぐ古希なんですよ?」と書いたんですけれども、生で聴くと「それでこれかぁ」と感歎してしまう歌声なわけでして。持ち歌からは「手紙」「恋文」「ルームライト(室内灯)」「夜明けのスキャット」「生きがい」等々の代表曲から、最新曲「そして・・生きなさい」まで。最新曲は深夜アニメ「鬼平」のEDだそうで、「ルパン」の石川さゆりもそうですが、美声ベテランにジャジーなナンバーというのが一つの需要としてあるのかな。歌詞の中には「ルルル」のパートもありました。
 テレサ・テン越路吹雪美空ひばりを取り上げたコーナーがあったり、ゲストのBaby Booとのコラボにはリストから観客が曲目をリクエストして一緒に歌う「歌声喫茶」コーナーがあったり、そして自ら「コメディエンヌ」を自称なさるほどの達者なMCで終始客席を笑わせたり、と想像していたよりもメリハリがきいてたのにも驚きました。勿論、大ヒットアルバム『1969』からも「ブルーライト・ヨコハマ」「真夜中のボサ・ノバ」等々を披露。
 それにしても、昼夜2公演(第1部50分、30分休憩、第2部70分。これを12時開演、16時開演と2回)、それぞれ20曲超を歌って息切れが無いというのですから、そのコンディション管理には改めて。そうそう、ユーミンの「あの日にかえりたい」のカバーもあったのですが、途中で歌詞を間違えるハプニング。2番の「草の波間を/駆け抜ける/私が見える」を、「草の波間を/想い出は」と間違えた(直前の「想い出は/さすらってゆくの」と混同)。観ていた限り「想い……」辺りで気がつかれた様子で(ハーモニーを担当のBaby Booのメンバーもちょっと表情が変わりました)、それでも流石の機転で「想い出は/駆け抜けてゆく」と歌詞を変えて切り抜けられました。さて、ユーミンファンなら気づくハプニング、歌詞を知らない他のお客さんにはバレたのかバレてないのか(多分、気づいた人、少ないだろうなぁ)。
 終演後、本日発売だというニューアルバム(ユーミンの「あの日にかえりたい」「『いちご白書』をもう一度」、中島みゆき「帰省」のカバーが収録)を購入して博多座を出ました。満足。

 博多座からバスに乗って博多駅、徒歩5分で本日のお店、博多と言えばここ「太郎源」に到着。かつて一口で超ベテラン柔道先生を虜にした鮪カマ焼きは事前に取り置きをお願いしています。先に到着したので料理だけ何品か注文して、5分後に到着の56回生Iくん(JR九州)とビールで乾杯。連続で同じ店を選んでしまってごめんなさい、お会いするのは半年ぶりですね(前回は、母君が小倉の元職場で退職手続きを取るのにお付き合いした日でした)。

 時間は遡って、朝の進路指導室で事務嬢さんと。
 私「……で、Iくんから届いたメールに『ご報告したいことが』って書いてあって。え、結婚? 結婚? って」
 嬢「年齢的には、56回生ならおかしくないですよねぇ」
 私「でしょ? どうしよう、嫉妬ゼロという体で『御目出度う!』を言う練習が要るのかな?」
 嬢「……やってみて」
 私「……お、御目出度う!」
 嬢「気持ち悪い! 引き攣ってる引き攣ってる!」

 再び夜の「太郎源」。「ご報告したいこと」は、社内の試験をパスして、2年間の社費アメリカ留学(大学で経営学を学ぶ)の権利を得たというお話でした。
 私「わ~、良かった! 勉強してるって言ってたもんねぇ。ってか、社会人になって働き始めてからまだ勉強したいって思う姿が眩しいよねぇ」
 I「先ずは、再来年の出発までに英語を鍛え直さないといけなくて」
 私「頑張ってねぇ。いや~、凄いなぁ。あ、そいや、Iくん阪大じゃん。まさか、行き先ってサンフランシスコじゃないよね? 大阪からサンフランシスコだなんて、今は恥ずかしくて申し訳なくて入れるもんじゃないじゃん」
 I「あ、サンフランシスコではないです。大丈夫」
 私「なら安心だ、良かった良かった。あ、でもさぁ、こないだメールで『ご報告したこと』って言ってたじゃん? その時はさぁ、結婚かな? 結婚かな? って思っちゃって。そじゃなかったんだねぇ」
 I「あ、一緒に向こうに行く相手は居ます」
 私「……お、御目出度う!」

 2軒目もこないだと同じ店だったような(駅から300歩横丁のうどん屋)。後でIくんも飲み過ぎて記憶が、って言ってたけれども私も少しその気配が。だって、Iくん笑うくらいの勢いで私に冷酒注いで来ましたから。あぁ、こいつ酔ってんな、って。
 新幹線は20分弱でK市、タクシーで自宅に戻って昏々。