いろいろあったわよね覚えているわ

 宿酔いではないという時点で圧倒的勝利、でも起床は7時を大きく過ぎていました。直ぐに大浴場で入浴、朝のネカフェは諦めて出発した先は上野で、今日の午前中は科博「古代アンデス文明展」→国立西洋美術館北斎ジャポニスム」の流れです。明日にしようかとも思ったのですが、科博は今日が年内最終日だということで否応なく。 

 上野駅構内の切符売り場で各企画展のチケットを買ったのは、会場入り口は長蛇になっているだろうと考えたから(東京の「怖い絵」展なんて、3時間待ちとかだったらしいですからね)。実際、9時半開館の西洋美術館の前には、9時15分の時点で100人近い人たちが並んでいました。

 ところが、科博の入り口(こっちは9時開館)に到着して違和感。企画展のチケット窓口に誰も並んでいない。会場に入ったら(入り口で、2018年のカレンダーがサービスされました)、年末最終日なのに人が少ない。こういう言い方はあれですけれども、「ラスコー」とか「深海」とかよりマイナー(魅力を感じる人が少ない)のかなぁ、などと。まぁ実際、「アンデスってなんです?」というキャッチコピーとか、展示物の「変顔」に面白い吹き出しをつける大喜利とか、プロモーションも「??」ものだったんですけれども。
 高3の夏に担任の先生(世界史)に「インカ帝国ってどこにあるんでしたっけ? インド?」と口走って殴られたくらいの世界史弱者がどの面下げて観賞なんぞという話です。インカ帝国で使われたキープを見た感想は「意外にでけぇ」というのと「辛うじて覚えてた」というものでした(文字の代わりに使われたというのが記憶してた理由ですね)。先史時代からインカ帝国滅亡まで、宗教(祭祀)・政治により地方及び地域をまたいだ社会システムが形成されていくプロセスが、その象徴として使われた展示品を介して語られるのが全体の4/5。残りは「身体」をテーマに開頭術やミイラといった展示を介してアンデス文化の死生観に迫るというコーナーで、こちらの方が少年少女を中心に注目を集めていた様子(怖がって泣いている女の子も居ましたが)。
 企画展出口では、人生初のVR体験。500円払って10分ほど体験した「VRウユニ塩湖」は、私がアンデスの神・エケコになってウユニ塩湖の絶景を楽しみつつ、次々に現れる運勢アップのアイテムをゲットして身に飾っていくというゲーム。教員ですから当然学習運のアイテム(鉛筆)をゲットしようと意気込むも、気づけば金運(札束)と健康運(骨付き肉)への執着が現れていました。私の一つ前の人たち(親子連れ)が体験している様子を眺めていたのですが、目隠しヘッドギアをつけられた状態で無言で(マラカスみたいな2本のスティックを持って)両手を振り回している姿は何となく滑稽でした(私もそうだったのでしょうね)。

 科博の隠れた楽しみは日本館の小さな企画展で、今回は「南方熊楠 100年早かった智の人」が大充実です。水木しげるのファンで、日本酒「南方」も好きだという人間としては訪問マストの展示です。柳田国男への手紙、南方二書、御召講を報じる新聞記事、そしてデスマスク(!)まで。科博の展示は(映像等一部を除いて)全て写真撮影がOKなのも良いですね。

 さて、こっちは人がごった返しの西洋美術館「北斎ジャポニスム」、やっぱり南米vs西洋日本連合、では勝敗は見えてるのかねぇ。
 展示内容はタイトルの通り。モネ・ドガセザンヌゴーギャンゴッホ・スーラ……等々の作品と北斎の作品とを並べ、こんな所に影響がやっぱ凄いぜ天才北斎ジャパン万歳という形(悪意はありません)。この感覚は何かに似てるなぁ、と記憶を掘り返したら映画『ホドロフスキーのDUNE』のラストシーンでした。ホドロフスキーのストーリーボードが『スターウォーズ』だとか『エイリアン』だとかのSF映画の中でそのまま(本当にそのまま)使われてるのを列挙していくやり方ね。映画の監督は「ホドロフスキーは世界を変えた」と言ってましたけど、北斎も世界を変えたというんでしょうか。図録は、ポケットサイズの安い方を買いました。学級文庫に入れます。

 昼食は上野駅で「古奈屋」のカレーうどん。科博のチケットがあればウーロン茶が1杯サービスでついてきます。昔は揚げもちのトッピングが目的で食べてたような所がありましたが、今はうどんに加えて餅しかも油で揚げたやつ、なんて胃が受けつけてくれません。

 さて、上野で満足した時点で時刻は14時、一旦池袋のホテルに戻って荷物を置いて14時30分です。ここで、予てやってみたいと思っていた経験に向けてスマホ検索、近くに下町温泉はないかや?
 池袋→高田馬場→早稲田。人生初VRに続いて、人生初下町銭湯です。池袋に近く、ジェットバスやサウナもあるという西早稲田「松の湯」へ(サウナ込みで1000円)。いや~、これが良かった。『時間ですよ』な番台から、『らんま1/2』的に「かぽーん」という擬音語が聞こえてきそうな湯船。壁面には太陽と鶴、サウナには砂時計、勿論洗面器はケロリン桶で。人が少ないのかなぁ、と勝手に想像していましたが御見それして申し訳ございませんでした、学生から高齢者まで大勢、賑やかで明るい。ジェットバス10分、サウナ10分、シャワー10分、ジェットバス10分、と何だで1時間以上滞在してしまいました。
 その後、早稲田駅出口直ぐの小さな小さな書店に入ったら入り口左の新刊壁面が意外な充実ぶり(人文・理工とも)でさすが学生街。昨日のジュンク堂で(籠に入らず)諦めた本がいきなり目に飛び込んできたので迷わず購入しました。笠覚暁『世界を変えた書物 科学知の系譜』なのですが、学級文庫化を見越して本棚を見る癖がついて以降、本来の興味外の物も手に取るようになってしまいました(金がいくらあっても)。その他、名著『オトコのカラダはキモチいい』や、少なからぬF校生の肺腑を抉りそうなタイトルの前川ヤスタカ『勉強できる子卑屈化社会』等々を。

 早稲田→九段下→神保町。ここでは「行きつけ」レベルの4、5店を回って絶版文庫を中心に(卒業生に配るための本を)購入。大通り沿いの店前ワゴンにはず~っと(それこそ何年間も)売れずに残っている本が少なくないのですが、その一部には最早「顔なじみ」みたいになってるものもあって、前を通ってワゴンをチラ見しては「おっ、久しぶり! 相変わらず売れてないんだねぇ」みたいな感じになってます。

 神保町→大手町→東京。
 本日のお相手は55回生Tくんで、ちょっと前から始めた「大人のさし飲み」企画。「大人の」というのは一人当たり10000円以上払うという意味なのですが、金額で「大人」を測っているあたりがまだ「子ども」という感じでしょうか、37歳進学校教師と29歳メガバンク勤務との本日のさし飲み会場は東京「ソルト・バイ・ルークマンガン」。オセアニア料理のフルコースです。
 夕方のメールでTくんに「新丸で食事とか初めて」と言われ、初めて店が新丸ビルの中にあることを知りました。私はビル訪問自体が初なので折角ならと一時間前に着き、入った瞬間に全方向からお呼びじゃない感の集中砲火を浴びました。全てのショップに用がないというか呼ばれてない、これが「子ども」の所以かと仕方なくレストランフロア内のカフェで読書をすることに。食事前なので味がするものは避けようとペリエを注文したら、300mlの瓶が700円でした。コンビニのウィルキンソンなら3.5リットル飲めます。

 T「何故、この店に『男く祭』のTシャツで来ようと思ったんですか」 私「だって、予約のときにコードは無いって言われたから」というやり取り一発で真の「子ども」という立ち位置を奪い取った進学校教師、人生初のオセアニア料理で本日の「人生初」はこれで3度目。
 オセアニア料理とは何ぞやと思っていたら、オーストラリア・ニュージーランド産の材料と和の材料との良いとこ取りで、フレンチ風のフルコースを味わうという趣向(合ってるのかな)。8000円のコースに3000円でビール・ワイン等々の飲み放題が2時間半。面白かったのは、前菜に入っていた「フォアグラのどら焼き」というのと、メイン「和牛パイの再構築」というお皿。後者メインは、ステーキとソースだけが乗った皿を置かれたあと、「これが『再構築』の意味です」とウェイター氏が手の中でパイ生地をグシャグシャに握りつぶしたやつを降らせた。「どうぞお口の中で再構築を」って笑うやん?(美味しかったけど)

 さて、「大人のさし飲み」、前回は東京ステーションホテルの焼鳥「瀬尾」で大失敗(高いだけでそんなに美味しくない)でしたが、今回は満足。コースは美味・お腹いっぱいで、シャンパン・ビール・赤白ワインのお酒も充実。飲み放題とは別に、各皿に合わせた飲み物(特別なワインやオーストラリア産の日本酒など)をシェフが選んで一口(ほんの一口)ずつ提供してくれる等の遊び心も楽しく。そうそう、ジャンルが違うので比較はできませんが、一昨日56回生「いつメン」と行った焼きとん「鳥茂」(←味は普通)よりも、今日のオセアニア料理フルコース・飲み放題の方が安かったです。

 Tくんとのお話は彼の公私で面白かった。将来の炎上案件の事前火消しに業務の大半を割く虚しさというテーマは重いし、社内(?)結婚結納後の新居探しのお話は東京の地価事情もあって(K市お気楽マンション購入とはレベルが違う)面白リアルだし。
 大手町構内のイタリアンで軽く2次会の後、ホテルに戻って健康睡眠。お付き合いのTくんには多謝、1月2日から仕事で今年は帰省できないそう。お身体ご自愛の程。