つれてゆこうかこれから スキー天国へ

 未明のコンビニで留寿都3泊4日に向けた最後の買い物は、歯磨きセット、帰りに着るYシャツ、CDウォークマン用の単3乾電池、生徒に配るのど飴、等々しめて5000円也。仕事なのではっきり言って「楽しみ!」って気分にはなれませんが、バッグに本やCD(松任谷由実『Surf & Snow』)を詰め込むと少しは旅行気分に包まれます。
 6時の職員室では高3生徒の小論文(慶應・文学部)の添削に付けるお手紙をガシガシと認め。その彼とは8時10分から職員室で面談をお約束しています。その後、スキー研修の高2を乗せたバスは8時50分に学校を出ますので、「日常」から「非日常」への移行はその間の僅かな時間が勝負という割とタイトな流れです。
 さて、小論文面談が20分程で終わった後、8時35分の職員室に高3某氏が添削(東大過去問)を3年分持って来られました。現代文(ボランティア)なら研修後まで待ってもらうところですが、漢文(正規の仕事)だったので無下には出来ず、その場でガシガシと添削。3枚とも、もう何百枚添削したか分からないほどに(本文と傍線部と設問とを大体暗記しているほどに)親しんだ問題なので、資料を見なくても採点・添削は出来ます。15分で添削をして、結局「非日常」の高速バスには1分程遅れて乗り込むことになりました(私が乗り込んだ時には、生徒点呼係が点呼を終えていました)。生徒には5分前行動を強いておきながら、いきなり駄目な引率っぷりです。

 平日朝は高速も空いているようで、F校を出発した高速バスは50分足らずで空港に到着し(私は段々憂鬱になっていきます)、空港に直接集合した生徒と合流した後で、200人超の一行を整列着座させて飛行機の搭乗券を配ります。この日記でも何度くり返した解りませんが真面目な学年だというのはここでも発揮されており全員がまさかの5分前行動。飛行機というのは偉そうな乗り物で離陸(発射)の1時間以上前に空港に到着することをお客様に強いるものだから、全員が搭乗口に到着したのは搭乗案内開始の1時間前です。完璧。昼食は飛行機内で摂ることが決まっており弁当とお茶とは既に各生徒に配布済み。その状態で、1時間の自由行動なんて許されても一体何をしろっていうのさ……と思ったらこういう時の時間潰しは皆さん得意なようで、添乗員と担任団とは北海道の(空港内の)お土産情報を交換したりおしゃべりに興じ、生徒は集団でトランプやったり駄弁ったりみんなで飲み物を買いに行ったり(移動中の飲食は、お茶とのど飴とのみが許されています)独りでスマホを弄ったり。私は30分ほど独りで読書をして(読了本は研修員卒最終日に)、その後30分ほどは周囲を散策(生徒観察)でうろうろ。年末の上京時に買おうか迷って(高いから)買わなかったアイスクリーム売り場に行ってみたら案の定生徒数名が買って食べてて、「これはルール違反じゃないの?」と聞いたら「アイスまでは飲み物です」との返答。「んならカレーも牛丼も飲み物じゃねーのか」とツッコミがてら更に散策してたらカレースタンドの止まり木に堂々腰掛けて牛丼食ってる生徒がいて大笑い。こんなの、見つかったら一発で生徒指導じゃないかと後ろから近づいて、何より30分後に弁当食うことになるのによくも牛丼なんぞという意味で「お腹、空いてんの?」と聞いたら振り返って曰く「『一蘭』でラーメン食べてから来ました」だって。福岡空港の搭乗口には、飛行機に乗る人しか(手荷物検査を潜った人しか)食べられない「一蘭」があるんです。初日から生徒が叱られるのを見るのはつまんないんで告げ口はしませんでしたけど、ラーメンから牛丼から弁当ってのが昼食なのか。痩せ型なのによく食うな、ってか金持ってんなぁ、と。

 飛行機2時間はずっと本を読んで過ごしました(やっぱり飛行機に乗るのは憂鬱です)。昼食は生徒と同じ弁当で、ナポリタン・唐揚げ・ハンバーグ・コロッケ……等々中学生男子が喜ぶものしか入ってなかったので来年からは内容を変えた方が良いと思います(多分、下見同行の高1担任先生が変更させるでしょう)。
 千歳に着陸(墜落)した後は、そのままコンベア式にバスに乗せられ、2時間近くかけて留寿都まで一直線。空港もホテルも暖房完備ですから、生徒は「ならでは」の寒さを味わう暇がありません。スキーの時も完全防備のウェアですから、3泊4日の全旅程中、生徒が寒さを味わうのは行き帰りの福岡県内でだけです(事前にホテル配送のトランクに防寒具を大量に詰め込んでいた生徒はそのことを知らないのかも知れません)。留寿都までのバス内でもずっと本を読んでいましたが、B組生徒は配ったのど飴の分配だけで優に15分は遊べるみたいですからテンションは高いのでしょう。急に前に出てきてマイクで歌を歌い出したりモノマネ始めたりした某くんの鉄のメンタルには唖然としましたが。あと、窓越しに支笏湖を写メって欲しいとスマホを渡したら自撮り画像を返してくれたあなた、それ、わざとなの?

 ルスツリゾートは、ホテル全体が街です。これまで2度の引率はどちらも夕張(マウントレースイ)だったのですが、あそこがホテルとゲレンデ「だけ」だったとの比較したら、遊戯施設やショッピング街やという「遊べる」施設の充実度は半端じゃありません。一般客も多く、男子部屋のあるフロア(3階)も女子部屋のあるフロア(5階)も貸し切りではなく、生徒の節度が要求されます(くり返しますがこの学年は真面目なので以下略)。ホテルに入った途端に屋内メリーゴーラウンド、フロント前には幻想的な噴水ショー(思わず動画にとってTwitterにアップしてしまいました)。一般客には海外からの方々(東洋も西洋も)が多い様子。

 スキー研修の引率は、学校からは校長先生・高2担任団9人・高1下見担任先生、の計11人。他に、写真館さん・看護師さん・添乗員お2人。大人は全文で15人で、後者4人はず~っと仕事が続くのですが、前者学校からの11人に関しては実は仕事量に多い少ないがあります。研修担当の副担任英語先生・化学先生は起きてる間はずっと処理すべき仕事があるようなのですが、それ以外の担任・副担任はそれほど仕事が多くありません。就寝後の見回り等の雑務はありますが、基本的には生徒を「見てるだけ」でいい。しかも、核となるスキー研修中は班ごとに分かれた生徒の面倒をインストラクターの方々が全面的に見て下さるので、教員は何にもすることがありません(スキーをしてもいいし、便が悪いので事実上不可能ですがどっかに観光に行ってもいい)。私が今回の荷物に採点添削の答案を入れている所以。

 さて、ホテル到着は16時。スキー研修は文字通りスキー漬けですので、本日から早速スキーウェア合わせと歩行訓練とが始まります。
 北海道は日が落ちるのが早く、ゲレンデは既にライトが点灯するナイトスキー。殆どの生徒は人生初スキーということで、インストラクターの指導で先ずは板の着脱から雪道の歩き方のレクチャー。これが、明日の午後には既にゴンドラで山頂まで行くようになっているのですから凄いものです。

 私は56回生引率の時(12年前)は一切スキーをせず(卒業アルバムの教員集合写真でも、私以外の先生方は全員スキーウェアですが私だけジーンズにシャツです)、63回生引率の時(5年前)は全時間スキーをして(直前に体育先生に夕張スキー旅行に連れて行って頂き練習をしたのです)、今回はその中間かなぁ、というところ。今日の夜と明日の午前中は滑って、後はホテルに閉じ籠もっておくつもりです。
 5年ぶり(人生4回目)のスキーですが、教員には教えてくれるインストラクターなどいませんから、独りで何とかするしかありません。取りあえず、ゴンドラで初心者向けコースの上まで上り、重力に任せて滑るというのを2、3度くり返しました。他の先生方は重力に身を委ねる術をご存じですいすい滑ってお出でなのですが、私は引っ張る力に抵抗しようと常に身体が逆らうので「滑っている」というよりも「止まり損ねて続けている」と言った方が正しい格好になっています(後で生徒に「あんな不格好な滑り方をするのは普通に滑るより難しそう」と言われました)。
 そうそう、私、滑ってる(止まり損ねている)途中で某女子生徒にぶつかって泣かせてしまうという大失敗を犯してしまいました。そら、初めてのスキーでこんなでっかいのがぶつかって来たら驚くに決まってますね。ですので、ホテル内のケーキ屋でショートケーキを4つ購入して、彼女の部屋(4人部屋)に後で謝りに行きました。女子部屋に近づくのは勇気が要ります。中を見ないように賄賂(ケーキ)をお渡しするのに苦労しました。

 ホテル内にはレストランが幾つもあるようですが、67回生200人は3泊4日の間そのうち1つを貸し切りにして、そこを食事・連絡会議・職員打ち合わせの会場として使います。料理は全てバイキング食べ放題で、これは夕張より豪華だったかな(夕張では毎食飲み放題だった「カツゲン」が出ていなかったのだけは残念)。毎食サーモンの刺身が出ていましたが、それ以外の料理については3回の朝食・3階の夕食において全てのメニューに一つも重複がありませんでした。
 夕食後は生徒は自由行動(行動班の班長に対する連絡会議など細かい仕事はあり)。そうそう、引率担任団の殆どには引率に際して特別な業務はないと書きましたが、生徒指導部の先生お2人(世界史先生・体育先生)は来年4月の「男く祭」に関する打ち合わせを役員生徒とず~っと。こちらの「非日常」への準備も着々の様子。

 生徒は22時30分就寝(明日の起床は7時30分だから……9時間睡眠!)。各フロアの部屋を回って消灯の確認をした後、引率15名は本部に集合して明日の動きの打ち合わせを1時間ほど。今のところ、生徒に怪我や病気は出ていません(バス・飛行機内では200人超全員がマスク着用の義務でした)。
 健康睡眠。