鈍感力

 授業は高3東大文系が1コマで、直後に添削を終わらせて担任の世界史先生へ。やっぱり、先日の感触通り「例年並み」には届いているようです。

 さて。

 年明け頃から薄々感じてはいたのですが、今、約5年周期で来る「職業的心身不調期」に入っているみたいです。今日の昼休みに卒業アルバム用の写真を撮ったのですが、顔見知りの写真館さんに「先生、笑って!」と言われて「無理です!」と答えた時に確信しました。そらそうだ、楽しくないのに笑えるわけがない。そうか、今「例の期間」に入ってるのか。
 症状としては例えば、朝ギリギリまで自宅で粘ろうとする、高3添削が何となく楽しめない、他人の仕事ぶりがいつも以上に気になる、一瞬ぼ~っとする時が日に何度かある、等々。とは言っても、だから何かが変わる訳でも何かを変える訳でもなく、毎日の仕事を(若干パフォーマンスの水準を下げて……例えば8割くらいの力で)続けるだけですけれども。暫くしたらやり過ごせるんじゃないかな(過去の経験から)。

 「職業的心身不調期」、前回は63回生が高1だった5年前、その前は56回生が高2だった12年前。何となく調子が出ないなぁ、と思っていた違和感の理由がこれだと分かれば逆に安心ですね。
 しかも、今回のは前の2回と違って精神(ストレス)由来じゃなさそうなのも有り難い。前の2回、兎に角生徒との関係の取り方が解らなくて独りでイライラ抱えてストレス溜めまくってひたすら「辞めたい、辞めたい」と思うばかりでしたもんね。今回のはそうではなく精神的にはそれなりに普通で、逆に普通だったからこそ暫く自分の不調に気づけなかったんじゃないかなぁ、などと。

 要するに。今回の「職業的心身不調期」は間違いなく身体由来です。端的に言うと、疲れてるんですね。
 3年前、63回生高3担任時。担任しながら高3の現代文・漢文を掛け持ちという地獄のような忙しさの中で母君が肺がんを患い、やれ見舞いだ手術の立ち会いだ病人のストレスとの戦いだと無我夢中だった一年。
 2年前、64回生高3副担任。担任の負担から解放された喜びを噛みしめつつ、大好きな高3現代文を2年連続で担当できる喜びに無我夢中だった一年。
 1年前、67回生高1担任。おいこら適材適所という言葉の意味を知っているのか任命責任者出てこい、と誰に文句を言って良いのかさえ解らないまさかの高1A組(外進51名)担任。公立から来たクラスの生徒に「えっ、F高ってこんなにユルいの?」と勘違いさせる甘やかしっぷりを他の担任団から叱られながら毎日の業務(地味に高1現代文をやるのも就職以来初でしたね)に無我夢中だった一年。
 今年、67回生高2担任。おいこら適材適所という言葉の意味を知っているのか任命責任者出てこい、と誰に文句を言って良いのかさえ解らないまさかの担任続投(普通、副担に降格させるだろがい、と思いました)。やれと言われたらやったらぁ、と動き始めた4月に母君が癌の転移で倒れられてやれ引っ越しだやれ入院だやれ全脳照射だやれ抗癌剤だと、そら一番苦しいのは患者に決まってるけれどもだからって二番目に苦しい人間が全てを何でもないかのように耐えろというのは無理筋だぜ、と無我夢中だった半年……

 ……を終えて、今。母君の体調がおかげさまで落ち着いて、今。
 ホッと一息ついて「よっしゃこれから職務邁進だぜ!」と立ち上がりかけた時にやっと、身体からの文句が聞こえてきました。耳を傾けるだけの余裕が生まれたということなのかな。「あら、身体ちゃん、そんなに疲れてたの? ってか、3年も前から文句言い続けてたの?」って感じ。「なんだ、もっと早くに気づかせてくれてたら、63回生か64回生か67回生か母君かのどれか一つくらいは投げ出したのに」

 3年耐えてくれた身体ちゃんに敬意を表して、復調まで少しの間は8割の力で「日常性のEASY!」です……とか言いながら、だったら何で電車移動までしてわざわざ遠くの飲み屋に足を伸ばしたりするんだよ、とセルフツッコミの二日市「月空」イン。
 いや、だって、好物(牛モモタタキ風カルパッチョ)を食べると元気になりますしね、マスターが63回生Mくんパパなもんで旧担任に少しオマケしてくれたりして役得ですしね、なんかこう「あ~、63回生の担任団やってて良かったなぁ」とか(打算的に)考えたりしてる内に今の担当学年に対するやる気も出てくるってもんじゃないですか、やる気が出たら身体ちゃんの復調も早そうじゃないですか。
 どれか一つくらい投げ出すような人間になるのは避けたいじゃないですか。