改めておかえりなさい

 山口恵以子『愛は味噌汁 食堂のおばちゃん(3)』読了、★★★。
 就職以来、文字を読む量は増えましたが、拾い読みの本(授業資料用)と生徒の書いた文章による文字数が割合的に多くを占めるようになり、読了する本の数は大学時代に比べて激減しました。今月は既に28冊を読了していますが、1日1冊以上のペースで一ヶ月を終えるというのは、就職して15年で恐らく初めてなのではないかと思います。それだけ今月は「不調」だったということですね。今はやや上向いて、大体出口が見えています。

 さて、本日は母君がリハビリステーションを出て私の自宅にお出でになる日、25年ぶりの同居開始です。お一人様の引っ越しは荷物が少ないので大きな専門業者ではなく「赤帽」に頼めばよく、ステーションに14時過ぎに来て頂く手筈になっています。私は、早朝から自宅の中にある大量の段ボールを全て畳んで纏め(段ボールで書斎の半分が埋まっていたので、文字通り部屋の広さが倍になりました)、中島みゆきのDVDを流しながら部屋中の掃除をし、母君の荷物の搬入に備えます。
 11時に市内「梅の花」で独りランチの後、ステーションに持参するお菓子をデパートで購入してからタクシー移動。

 エアコンは備え付け、ベッドはレンタルの物を利用していたので、母君のお部屋にあり私が引き取らないといけない家電・家具は以下の物だけ。
 ①TV・CDデッキ……母君用の和室に移動
 ②冷蔵庫……「赤帽」に頼んで処分
 ③ちゃぶ台……母君の和室に移動
 ④T-falの湯沸かし器……自宅にあるので予備として保管
 後は、衣類・小物類・薬関係を段ボールに纏めるだけなので簡単です(段ボールは小さいもの2つで十二分でした)。どちらかというと、自宅に持って行かない不要物を棄てる方が(纏める方が)労力的に大変でした。合間に、私はリハビリステーションの事務の方と書類手続き関係を済ませます。本当は1ヶ月以上前に申し出るのが退居にあたっての義務なのだそうですが、今回はそれより遅い時期の届け出だったそうで、特例措置をとって下さるとの由。私「本当に申し訳ありません。言いだしたら聞かない人間でして……」 事務「えぇ、それは、まぁ、良く分かります」 私「汗顔の至りで……(お土産を差し出す)」 お土産、結構高いのにしましたからね。

 引っ越しの作業をお手伝いしながらも、本日は国公立二次試験初日ということで、東大国語が気にかかります。twitterで検索をかけまくりながら、どこぞの受験生が画像をアップしないかと監視の目。試験中(休み時間)にTwitterをやっている人の合格率がどうなのかは知りませんが、外野にとっては大変有難いお話で……ほうほう、今年の第一問は野家啓一さんですか、ということは08年宇野邦一『反歴史論』と絡められるのかな、ってか古文『太平記』かよしかも兼好法師高師直のラブレターを代筆とか超絶有名な箇所じゃんか、でもって漢文は王安石なのね地味だわ、そして文系現代文は串田孫一『緑の色鉛筆』ってことは平凡社「STANDARD BOOKS」なのね。
 平凡社「STANDARD BOOKS」は自然科学者による随想を人物別に集めた叢書で、ここ数年の高校入試では頻出するだろうなぁ、と注視していましたがまさか東大だとは。私もこの叢書は寺田寅彦他数人分を(下心を以て)読んでいますし、国語科の他の先生方の机上に本が置かれているのも見ています。実際、今年のF高入試評論(湯川秀樹「具象以前」)もこの叢書発で作られたんじゃないかな。皆、考えることは一緒ですね。

 移動がちょっと面倒な雨。取りあえず、母君をステーションの居室に残して私と「赤帽」さんとの2人でトラックに荷物を運び込み、自宅まで移動してリビングに運び入れました(前述のように、大した量ではありませんのであっという間です)。その後、自宅から段ボールを二~三十箱分、トラックの荷台に移します。
 私「段ボールって、どこで処分をしたらいいのか本当に分からないまま、二年間で自宅床の10%じゃきかないくらいの侵食なんです」
 赤「そうですよねぇ、業者でもない限り処分場を知らない方も多いですから。実は、お客様のこのご自宅から車で3分の所に処分場があるんです」
 私「嘘っ!?」
 自宅からリハビリステーションに進む道の途中、引っ越し前の自宅近くにある(かつてはここで未明採点をしていた)「JOYFULL」の目と鼻の先に、業者や一般家庭から段ボール・ペットボトル・空き缶等々を引き取るリサイクル業者がありました。大通りから少し奥まった路地に入ったどん詰まりで、これまで近くを通っても全然気がつかなかった場所です。これは盲点。資源ゴミを出すのも面倒だったのですが、ここならタクシーで(なんだったら歩いて)来られます。今後のゴミ処理が楽になったのは、実は今後の人生において結構大きめの収穫だったんじゃないかな。

 「赤帽」さんとは、最近はお一人様が多く単身転居の仕事が引く手あまたになっていることとか、何でも運ぶ「赤帽」さんは昨日神奈川まで工場部品を囲んで帰って来たばかりだとか(最も遠いところでは北海道まで車で往復したこともおありだとか)、お仕事の話を色々と聞かせていただきました。因みに、今回の引っ越しにかかった代金は、2時間で16000円でした(他に、冷蔵庫を処分してもらうための5000円)。時間単位の料金で、時間内なら引っ越しに関わるあらゆる作業をやって下さるのだそうです(例えば、母君の部屋の不要物でステーションでは処理できないと言われた包丁2本も引き取って頂きました)。

 リハビリステーションからタクシーで移動、母君と2人で自宅に入ったのが16時。その後、これまで使っていなかった和室を母君のお部屋にするために荷物の整理を始めます。藺草のカーペットを敷いて、TV台をセットして(上にTV、下にCDデッキ)、ちゃぶ台を置いたら家具類は全ておしまい。後は押し入れの中に母君の布団類・衣類を片付けます。衣類はハンガーに掛けられるように、組み立て式の衣紋掛け(古いな)を自宅徒歩3分のドラッグストアにひとっ走りして買ってきました。
 母君がちょこちょことご自分のお城を調えてお出での間に、私は夕食(出前)の電話を。母君のご所望はお寿司なのですが、鳥より少食で偏食さんの母君はどうせ4、5貫を召し上がるのが精一杯なので、一貫ずつ注文できる「銀の皿」を選びます。電話をしたら配達まで1時間と言われたので、その間に風呂を沸かして入浴、その後、届いたお寿司を2人で(鳥のように)食べました。私も、母君に合わせて6貫しか注文していません。少しのお寿司(母君だけには茶碗蒸しを付けました)とお茶とで母子の会話、は主にリハビリステーションの噂話。母君曰く「今が出るべきタイミング」だったのだそうで、オープンからまだ3年目のステーションは職員の中でも入所者の中でも色々な課題が生滅を繰り返している真っ最中だ、というのが部外者には分からなくても介護のプロ(三十年選手)でいらっしゃる母君にはよく見えるのでしょうね。

 18時にはお休みになる(今日は移動もあってお疲れの様子でした)母君が和室の電気を消されたのを見届けてから、私は「もりき」で食べ(飲み)直し。Hさんやマスターに引っ越しの話をしたり新生活の心得を伺ったり。帰りにHさんちに呼ばれて、作りたての巻き寿司とロールキャベツとを頂きました(明日の母君の食事にします)。お礼は、冷蔵庫に2本ある「獺祭」三割九分を1本、明日の出勤時に玄関に置いていくことにします。