彼女は心もち眶を上げて、「さう思つて?」と問ひ返した。

 ……結果、芥川龍之介「秋」、平均点は24.9、50点満点は学年全体でたった1人(理系男子、同学年に彼女あり)でした。「さすが、女心の機微を知り尽くしてお出でです。一体どこで覚えたんでしょう?」との言に皆大笑い。こんな真面目な(授業中の笑いが少ない)学年を大笑いさせるんですから、芥川は偉大です。
 さて、その理系男子の担任であるところの英語パイセン女子、「あいつが解けるならあたしも!」と挑戦して早々に放棄。曰く「本文は良いけど問題が悪い! 選択肢、なんか引っかけみたいのばっかやんか!」 私「……センター試験ですから」 パイセンは、女心より前に先ずセンター試験とは何かというところから……。

 さて、1限テスト監督、2限授業、3限会議、4限授業、5限授業、6限デスクワーク、帰りのSHR。の後、職場に「S」病院(母君通院中)から私宛の電話がかかってきたという連絡。まぁ、連絡があったと事務から知らされた瞬間に、どんなことが起きたかは想像が出来ます。が、自宅で倒れたならそのまま起き上がれず私が帰って発見するまで救急車を呼ぶことも出来ないはずですから、多分それ以外の場所で誰かに救急車を呼んでもらったという感じかなぁ、と予想。折り返しの電話がいっかな繋がらないので、善は急げで病院に直行したら果たして予想通りで、お一人で西鉄K駅横の「岩田屋」でお買い物の途中、エスカレーターを下りたところで倒れられて(転院の方の介助で)救急搬送されたとのこと。

 人前で倒れたのは運が良かったし、何より特講のない日を選んで下さったお心遣いが素敵……などという軽口(思っただけで言ってませんよ)が出るのも、まぁご無事だったからこそなんですけれども、運ばれた後の検査には一切の異常なし(癌ですけど)だったそうで、私が病院に到着した時には点滴が終わりかけてたとこでした(意識もはっきりとしてお出でで、立ち歩きも問題なし)。3日後の18日(金曜)が定期受診の日だったんですけれども、今日の全身検査が異常なしなら、3日後も「異常(変化)なし」になるってことだから逆に安心できて良かったくらいだ、などと不謹慎なことを口に出す親不孝ですが、倒れたもんはしゃーないからこっちが変に動揺するよりゃましかな、などと。
 主治医のY先生と二人きりでお話しましたが、そろそろかなぁと思ってた「緩和ケア」の話題が案の定先生の口から。小脳に転移があるので、いつまたこういうこと(母君はご自分が失神なさった訳だからその前後の顛末を余り覚えて居られません)が起こるか解らないのが怖い、と言われてまぁそうですよねぇ、と。とは言え日常生活は(脳転移の影響でバランス感覚に異常を来し足が萎えたようにはなっていますが)自立できていますから、居られる間は自宅に居ていただくのが筋だよねぇ、などと思いつつ、それでもいつか来るその日のことも考えておかないといけないなぁ、などとお話を聞きながら。

 取りあえず自宅に戻って母君をベッドに寝かしつけた後、私は「もりき」で独酌。さて、明日の母君は元気に起きてきて下さるでしょうか、など考えながら私の方は健康睡眠。