ふらふら笑ってもう帰らない

 本日、上京最終日。15時過ぎのフライトまでは完全フリーですが、起床5時の時点では完全にノープランでした。6時前の朝風呂の中でぼんやり考えて、いつか機会があればやってみようと思っていた墓参を決行することに。目的地は調布です。
 部屋で荷物をまとめ、カウンターで着払い配送手続き。31日の午前中に自宅に届くそうです(先日のジュンク堂配送も31日午前中なので、荷物が2つ届くことになりますね)。

 まだ完全には明るくなっていない池袋北口、先ずはお気にのネカフェでちょこちょこと作業をしてから、池袋→新宿。
 8時の歌舞伎町入口は、何らかの理由があり往来でビール瓶を叩き割った若者が先輩と先輩の彼女とに叱られ(見張られ)ながら破片を拾い集めて掃除をしている姿が朝から痛々しいなど、夜が明けたってぐいぐい見せつけてくる矜恃。そして私が歌舞伎町に向かった目的は、毎回の上京で決行している「人生初」シリーズの一貫として「味より知名度のチェーン店に入ってみる」というもの。どうせ初めてなら多少業の深そうなところが良いだろうと思って歌舞伎町の「すしまみれ」を選んだら、いきなり入口の自動ドアが壊されてて手でこじ開けないといけないというパンチを食らう。通されたカウンターの隣り客は「社長、もう帰って寝た方が良いですよ」と通るたびにアルバイトくんに言われているおっさんで、カウンターに突っ伏したその目の前にはお銚子が5本ほど並んでいます。うんうん、歌舞伎町の24時間営業、選んで間違いはなかった。もの凄い人当たりの良さそうなお爺ちゃんが一人でカウンターの内側。私以外のカウンター客は、最早ピクリとも動かない「社長」と、いちばん向こうの遠い席で50代くらいのおっさん二人が並んで片方怒鳴る片方泣くというコントを演じてるのとだけですから、お爺ちゃん職人は私の独占所有です。寿司は適当につまみましたが、「美登利寿司」ではなく「若貴」ではないというレベルの非帯非襷、昨日は朝まで(っつこたついさっきまで)超大型の団体西洋人がフーリガン的な暴れ方をしてて大変だったんです、とお爺ちゃん職人にこにこ。お爺ちゃんに材料を届けに来た後輩職人さん、ネタケース内の商品よりも生きの悪そうな(魚の死んだような)目をして、「いや、もう、今自分が何やってんのか分かんないっす、疲れて眠くて……」とお爺ちゃんにボソッと。こういう時の客がどういう態度で居れば良いかというと、「ハマチちゃん」一択です。ぶりっ子だから「ハマチちゃん」。うわぁ、これ、とっても美味しい! 福岡から旅行で来たんですぅ、東京のことは全然分んないですぅ、東京ってどこもかしこもキラキラしてますぅ、こんなの初めてぇ!
 割と高かったです。

 新宿→調布。
 水木しげる翁に育てて貰って翁の墓参もしていないなど不埒なことがいつまでも許される筈もなく、調布からタクシーで覚證寺(浄土真宗本願寺派光明山覚證寺)へ向かいました。水木翁(武良家)は曹洞宗ですが、自宅近所にあるこの覚證寺の住職と井上円了ファンということで意気投合したことがここに生前墓を作るきっかけになったというエピソードは最近も何かの本で読みました。流石にお墓を写真に撮るわけにはいかないので、鬼太郎・ねずみ男を始め数々の妖怪が刻み込まれた墓を矯めつ眇めつして30分ほどを過ごしました(それも失礼な話かもしれませんが)。後で考えたら、お線香の一本でもお持ちするのが礼儀だったのかも知れません。
 行きはタクシーでしたが道順が難しくなかったので帰りは20分の徒歩。先程寿司を買ったばかりですが、水木翁に敬意を表して帰り道の「MacDonald」でハンバーガーを買って歩きながら食べました(下品)。水木翁ならビックマックなのでしょうが、ひよっこ私はハンバーガーでいっぱいいっぱいです。でもって、本当に100円なんですねぇ。

 調布→駒場東大前。
 これは二月の二次試験下見の更に下見、程度の散歩で大した意味はなし。

 駒場東大前→渋谷。
 これは徒歩で、途中で通るBunkamuraの展覧会「ロマンティックロシア展」を見学するのが目的。19世紀半ば~20世紀初頭のロシア美術界を概観するという展示。全く知識がない(例えば作者の中に知っている名前は一人も居ない)ので、先ずは全体を眺めた後で音声ガイド(諏訪部順一)を借り、蘊蓄を聞いてみたいと思う作品(20トラックの中で10トラックくらい)の前をもう一度巡りました。滞在時間は60分ちょっとです。

 渋谷→大﨑。
 本当は、品川から羽田空港へ移動して、空港でお茶でもして時間を潰すつもりだったのですが、気づけば大﨑で汁粉を食べている私です。南口で開かれている「おもしろ同人誌バザール」なるイベントをTwitterのTLで見かけてつい立ち寄ってしまいました。ハロウィンにおける「地味ハロウィン」という位置づけは合っているのでしょうか、取り敢えずほんまもんのコミケの帰りにでもひやかして戴ければという腰の低いイベントなのですが、逆から言えばほんまもんのコミケにまで行く勇気がない人間が導入として訪問するなら悪くないんじゃない? という発想。「カメ止め」のファンブックや軍艦島の写真集、そして何故か田中圭一の同人誌がずらり売られていたのを大量購入(結局、結構な金を使ってしまいました)。

 大﨑→品川→羽田空港福岡空港
 品川で「もりき」ファミリーへのお土産を購入して羽田空港に着いたらフライトの25分前。今回も、ギリギリの保安検査、ギリギリの搭乗です。今回の飛行機は怖い思いはしませんでしたが、斜め前の席に座っていた50くらいのおっさんがクレイマーで、着陸時に倒した座席を戻すよう話しかけたCAさんに全ギレし始めて「福岡に着いたら責任者を呼べ!」とか叫んでるのが滑稽でした(みんな困ってるから笑えないんですけど)。

 福岡空港→博多→新鳥栖介護施設「K」。
 飛行機が遅れて高速バスに2分差で乗り遅れたので、仕方なく地下鉄と新幹線とを乗り継いで、新鳥栖からタクシー15分で母君の滞在している施設へ。母君をタクシーに乗せて自宅に戻る途中にコンビニで鶏飯を購入。今晩は、母君の夕食はこれとレトルトのスープだけです(冷蔵庫の中は空っぽ!)。
 母君の(手抜きこの下ない)夕食をお出ししたら時刻は19時過ぎ、即座に自宅を出て、本日夜の飲み会に出掛けます。場所は「もりき」で、常連H医師を幹事にしてF高33回生の同窓会(超ベテラン数学先生をゲストに総勢20人!)のお手伝い。

 先ずはマスターにお土産をお渡しして、皆様にご挨拶。
 定員14名の店に20人ですから、小上がりのテーブルをビールケースと木板で延長するなど工夫が必要です。本来8人用の小上がりに12人、カウンターに6人、起立が2人(これがH医師と、47回生どペーペー私)。カウンターの内側で仕事をしているのがマスター、奥様、そしてかり出されたK市の母・Hさん。鴨コースでビール日本酒焼酎がひたすら進む(鴨焼きは肉だけやいてネギを残す男子校時代のやんちゃさんたち!)一行の中で、私はひたすら頭を下げて訊かれたことに答えるというのに徹していたのですが、途中から面倒くさくなって店員側に廻りました。サーバーからビールも注ぐし、空いてるグラスや食器は下げるし。途中で何人もの先輩から「ごめんね~、働かせて~」と言われましたが、どっこいこっちの方が性に合ってるし何しろ運びながら自分も飲んでる(1時間半で生中7杯)。

 宴会が盛り上がってきた(これからラストスパートだ! という)頃に先に抜けさせて戴き、折角だからとタクシーで文化街まで足を伸ばす。ライブバー「A」のカウンターで飲んで歌って、久々にステージ(マスターのギター伴奏)でイエモンなんて歌ったり。延長までしてたからたっぷり3時間ってとこですよねぇ、我ながら元気だわ。

 タクシーで帰宅して即就寝。旅行中の読了本は明日の日記に回します。