永遠をお探しですか。

 63回生Iくんは春4月から「東京大学大学院新領域創成科学研究所人間環境学専攻W・F・Y研究室」の所属になるそうでとにかく長い(アルファベットは人名です)。東京大学大学院新領域創成科学研究科といえば、私が在学していたミレニアム当時にそんなのが出来るんだか出来たんだかが話題になっていたところですから、極めて新しい研究科ですね。
 そのIくんが職員室に遊びに来られ、旧担任団の数学先生・化学主任先生・国語私などとお話を。私が「大体『人間』『環境』『情報』って看板に入れときゃ人が集まるよねぇ、Iくんところは2つも使ってる」と言ったら、「『W・F・Y研究室』は『人間環境情報学分野』ですから、コンプリートしてます」と返ってきました。で、彼や彼の指導者である方が研究しようとしている内容(というか、目的)を聞いたときの文系私の最初の反応は「それ、無理じゃね?」だったのですが、無知なる素人が「無理じゃね?」と思うようなことを可能にしてしまう力を、研究所はともかくIくんは秘めているのではないか、と思ったり。
 67回生我らB組Mくん(4月から九医)は、例えばウェアラブル血圧計の機器開発であるとかそういう方向に興味がある、という話をついこないだ私にしてくれました。どんな人が研究開発に携わってるんだろうねぇ、とか言ってたんですが、まさしくIくん(の進む研究所)がそれでしたね。

 夕方までデスクワーク。母君の夕食を少し早めにお出ししてから、上京前最後の夜のイベントはユーミンのツアー。13年ぶりのアリーナツアー『YUMI MATSUTOYA TIME MACHINE TOUR TRAVELIMG THROUGH 45 YEARS』@マリンメッセ福岡、です。

 1.ベルベット・イースター 2.Happy Birthday to You~ヴィーナスの誕生 3.砂の惑星 4.WANDERERS 5.ダンデライオン~遅咲きのタンポポ 6.守ってあげたい 7.Hello, my friend 8.かんらん車 9.輪舞曲 10.夕涼み 11.春よ、来い 12.Cowgirl Blues 13.もう愛は始まらない 14.Carry on 15.セシルの週末 16.ハートブレイク 17.結婚ルーレット 18.月曜日のロボット 19.ダイアモンドダストが消えぬまに 20.不思議な体験 21.Nobody else 22.ESPER 23.COBALT HOUR 24.宇宙図書館 25.カンナ8号線 26.DESTINY 27.ひこうき雲

 2012年・18年の2枚のベストアルバムが入り口になった若い観客は演出の派手さに度肝を抜かされたかも知れませんが、しかしステージの仕掛けやストーリー(?)はユーミンのライブにしてはかなり大人しいもので、45年のライブから印象深いシーンを切り取るという構成上仕方がないのかも知れませんが一つ一つのパートの繋がりもそんなにはナチュラルでなかったり、私ごとき四半世紀のファン(新参者!)ですら色々と言おうと思えば言えないこともない。っつーか今日はかなり良く声が出ていたとは言えそもそもの歌唱に注文をつけようと思えば簡単なんです(中島みゆき矢野顕子のライブの声の出方と比較してみます?)。
 しかしそれでも、10000人の観客の視線を360度から集めて(今回のツアーはセンターステージです)、65歳が27曲を歌い踊り切ったことは感歎の一語です。
 2011年の『ROAD SHOW』ツアーの時に私は奇蹟を観た、ユーミンのファンで良かった、と芯から思いました。そして2013年の『POP CLASSICO』ツアーで奇蹟は2回起きる事実を目の当たりにしました。ただその時は、ユーミン自身がアルバムを「アンセム」と表現し、かつ収録された「シャンソン」「MODEL」の2曲が遺言みたいな歌詞だったこともあり、今度こそこれで最後だと覚悟しました。そこへ2016年に『宇宙図書館』のオリコン1位とツアーです。ポップスのフロントを駆けながら「輪廻(REINCARNATION)」まで実演してみせたこと、アーティストのライブで泣きそうになったのは初めてでした。それ以降、ユーミンに関しては「無理じゃね?」の念が兆すことはなくなりました。2018年は、苗場でサンバを踊り、ヒット曲の入っていない3枚組自薦ベストでオリコン1位を獲り、フェスに初出演し、『紅白』の舞台上で苗場のサンバを即興再現しながら桑田佳祐を煽る、というキャリア・ハイです。

 90年のユーミンが『天国のドア』でゴールドディスク大賞を獲った(日本一の歌手になった)時のキャッチフレーズは「永遠をお探しですか。」でした。それから約30年、(この括りにあまり意味はありませんがとにかく)一つの元号を跨いだ果てに再びキャリア・ハイを持ってきた。
 99年に大学に入った時、上クラの先輩方が我々一年生下クラの自己紹介集(冊子)を作って下さったのですが、「尊敬する人」の欄に「松任谷由実」と書いて引かれたことを覚えています。偉人・学者・両親、以外を書いたのが一人だった上に、挙げた人物が当時の感覚では「オワコン」の芸能人だったからです。奇を衒って外した、と言われもしました。20年経て、今はあの時の自分をこそ尊敬したいくらいの気分です。永遠が見つかりそう。