今日も酒場は酔いどれパーティー 中途半端に純情な俺

 K市から博多乗り換えの新幹線は12時に京都着、というスケジュール。ですので自宅をタクシーで出るのは8時というところ。馴染みのタクシー会社の運転手さん(65歳前後?)、3月いっぱいで会社を離れるそうです。曰く、コロナでこの3月は売り上げが半額以下、それなら一旦離れて命の洗濯(保険で賄う夫婦水入らず)、いつか世間が落ち着いたらもう一度ハンドルを握ろうかな、ですって。タクシー業界の出る戻るについてはよく判りませんが、とにかく売り上げが激減しているだろうことは判ります。「先生はご出張ですか?」と訊かれたのには、嘘をつく必要も無いので「いえ、完全な旅行です」とお答え。「そりゃいい、いっぱいお金使って来て下さい。タクシーにも乗ってやって下さい」だって。この運転手さん、良いわ。

 京都・倉敷2泊3日は、京都で67回生我らB組Yくんと夕食、倉敷は初訪問でのでゆったり一人旅です。これまで会った大学生は口を揃えて暇を訴えていた(何しろ部活コンパ新歓全部禁止、バイトもシフト大幅減です)ので、Yくんにも「暇なら、お昼の観光も一緒に行く?」とメールしたら、返って来たのは「一日5時間は勉強したいので」というお断り。元担任の100倍立派だ!
 新幹線は僅か3時間ですから東京行きに比べたらやや慌ただしい(あっという間の)印象。朝昼を兼ねた食事は小倉名物かしわ飯(東京から九州大学に通っていた高橋義孝はこれを肴に吞んでたそう。解る!)、読書、CD鑑賞。

 ①蓮華王院 三十三間堂
 駅からは徒歩で東へゆったり移動、最初の目的地は、中3の修学旅行以来四半世紀振りの三十三間堂です。先ずは圧巻の観音像整列を眺め尽くします。偶然にも(若しかしたら貸し出しの予定が全部コロナで吹き飛んだとか?)、1000号が欠けることなく勢揃いしている堂内を、1000号から1号までを逆に辿る順路を進みつ止まりつ戻りつ、じっくりと見学しました。正直無人レベルの「閑散」すら期待していたので「なんだ、そこそこ人、居るじゃん」というのが率直な感想なんですけれども、「順路を進みつ止まりつ戻りつ」と書いたこの「止まりつ」と「戻りつ」というのが通常は不可能で立錐の余地無しなんですよね。堂を出てから職員さんに話しかけたら、今日は3割の客入りですよ、と。1000号全部をこれほどゆったり観られる機会はもうありません、と断言され、思わずもう1周してしまいました。因みに、堂内はオール日本人。
 そして、堂の外壁はシートで全て覆われていたし、工事中で「池の水全部抜く」状態ではあったものの、種々の桜が咲き誇る庭園はとても美しかったです。色々と写真を取りました(勿論、文化財敷地内恒例の、HITACHI「火気厳禁ボード」も)。

 ②三年坂~清水寺
 バスで移動した先は三年坂、割と人は歩いています。1月12日に訪れた「清水三年坂美術館」は閉館でしたけれども、通りはかなり賑わっていると言っていいんじゃないかなぁ、と。欧米・中韓の方もちらほらとは。グリーンティーを買いに入ったお店の人曰く「5割の人出」だと。
 清水寺に入るのは8年ぶり(前回は63回生が中3だった時の修学旅行引率)、入口を潜る手前の手水舎には行列で私も並びましたが、ここはいずれ(感染を恐れて)閉鎖されるかも知れませんね。本堂にお詣りして、学業成就のお守りを購入。応対の方に「これで本当に5割なんですか?」と訊いたら、「多いと思いますでしょう? 半分以下ですよ。外国の方なんて殆ど居ませんし」ですって。普段の程が窺えます(きっと、おこわみたいに人がぎゅうぎゅうになってますね)。
 清水の舞台を写メ、種々の花が咲いているのを写メ、奥の院・本堂前の火気厳禁ボードを写メ。散歩道は人が多くありません。花美しく陽気麗らか、カップルもフレンズもファミリーも(勿論お一人様も)、例外なく全ての人々がにこやかです。丁度えぇ。

 ③大椿山 六道珍皇寺
 清水寺から、次なる目的地の六波羅蜜寺へ歩いて行く途中に、「閻魔大王の冥官 小野篁卿旧跡」と大書された看板が。『鬼灯』を意識してるのかな? と看板を観れば、丁度今日から3日間だけ秘仏薬師如来を特別開帳しているということで、ふらりと。京都、凄いですね。
 このお寺は、高1『徒然草』の授業でも扱いました「鳥辺山」に亡者を送る道だった為に冥途の入口と呼ばれ、そのために小野篁に縁があるということ。本堂の庭にも入ることが出来、小野篁が冥途へ通うのに使ったという井戸(黄泉がえりの井戸)を見学することも出来ました。ここでも学業成就のお守りを購入しましたが、ここのは何だか霊験がありそうです。

 ④六波羅蜜寺
 最後は六波羅蜜寺、ここを訪問するのは初めてです。
 他の場所でゆったりし過ぎて殆ど時間が無かったので、宝物庫で空也上人立像他の重要文化財を観て「教科書と同じ!」というのを確認するなど、ちょこちょこ。勿論、本尊十一面観世音菩薩立像(国宝)、の前に立っているHITACHI「火気厳禁ボード」はしっかり写メ(これを意識するようになったのは明らかにまっぴぃの影響……で、結局「日立」と「火断ち」の洒落っていうのは本当なんでしたっけ?)。ここでも学業成就のお守りを購入(本日3箇所目)。

 三年坂のグリーンティーを最後に水分補給は禁止(夕方17時の飲み屋で口にするビールに集中!)、ってのもあってかなり歩き疲れたので、六波羅蜜寺から麩屋町のホテルまでは(K市の運転手さんにも言われましたし)タクシーで移動することに。
 年若い運転手さんにお話を伺う。昨日の木曜までは観光客皆無と言って良かったのに、今日になって急に人が増えた(私もその一人だ)そう。今日からは3連休ですが、自粛ムードの糸が切れたのは休校解除の雰囲気がニュースで流れたからでしょうか。運転手さんが具体的に仰るには、昨日までは例年の1割の観光客、そして今日は例年の休日の5割の観光客、但しこれはほぼ全て日本人が占めており外国人観光客はほぼゼロ、ということ。成程。それではやっぱり人は少ない、と。

 そらそうだよなぁと、到着したホテルのフロントホールの天井がめちゃめちゃ高いのを見上げてしみじみ思う。今日の宿泊は、これまで自費で泊まった中で最も豪華なホテルだと思います(人の金なら、56回生Mくんの結婚式で泊めさせてもらった恵比寿ガーデンプレイスの「ウェスティン」)。コロナの影響で65%オフというのがなかったら絶対に入れない場所です。平安京都をイメージしたデザインの建物、「廊下を全部覆ってるこれが『御簾』ってやつね」とか、生徒を引率したら色々教授が手っ取り早そうです。
 チェックイン、大浴場湯浴み、の後で荷物を置いて出発。と、やることはどこのホテルに泊まっても変わりません。本日は17時という早い時刻から、北野白梅町「神馬」を皮切りに夜遊びです。

 ①北野白梅町「神馬」
 店で直接待ち合わせ、付近のローソンでお金をおろし、錠剤ペパリーゼをメガシャキで流し込んだら準備完了(こないだの宮崎と同じです)。Yくんはバ先が人気の居酒屋なんで、居酒屋マイスター(?)としてついつい夜に誘いたくなっちゃうんですね(高校卒業後の1年間で今回が3回目です)。
 北野白梅町は有名なR中高の近くで(言葉は悪いですが)京都の外れ、そこの居酒屋「神馬」は京都最古の(100年弱の歴史を持つ)居酒屋なんだそうで、私も前から行きたいと思いつつなかなか予約が取れなかったお店です。今日も、基本は満席ながらオープンの17時から90分ならカウンター2席が、と言われてガッツポーズでした。
 店の外観・内装・カウンター・メニュー表記・店員さんの格好、構えはどれをとっても『酒場放浪記』なんですが、料理の値段と味とは割烹です(お酒は大瓶が600円とごく大衆的)。ローストビーフ穴子白焼き、ブリ大根、等々注文した単品は全て小さなポーションで1000円を超え、鮑バター焼なんて2000円を超えてたんじゃないかな(Yくんはこういうのを遠慮なく「食べたい!」と言える人で感じが良いんです)。オッサン左党の私はお酒(大瓶2本、冷酒3合)、未成年食欲旺盛のYくんは食べ物、をあれこれ注文しまくり、会計は90分で16000円でした。普段使いは不可能ながら、旅行中の贅沢なら。因みに、Yくん曰く「ここは良いお店」だそう。気に入っていただけて良かった。
 それにしても人気店、オープン直後に入ったら即座にカウンターが埋まり何組もの客が断られていました。コロナなんぼのもんじゃい、って感じ。きっと、これが閉店(確か21時とか早い時間だったかと記憶)まで続くんでしょうね。

 ②河原町三条「おざぶ」
 63回生Iちゃん(三鷹の食堂)も、67回生Kくん(目黒のラーメンチェーン)も、皆が本気で嫌がる「バ先に知り合いと一緒に客として訪問」。勿論、今夜のYくんも同じで、私「ねぇ、『おざぶ』に客として、って嫌?」 Y「僕、行ったことないですよ。嫌っちゃ嫌……かな、恥ずかしいし」 私「じゃあ行こう、予約して!」 ということで、普段なら人気で当日予約は難しいお店からOKを貰ってタクシー移動。2軒目はYくんのバ先です。
 ここは、おばんざい食べ放題・日本酒飲み放題(共にセルフサービス)が売りで外国人観光客も多数という人気店。だからコロナの煽りはモロに出ます(しかも、地下一階にあるという立地も不運)。一時休業・セルフサービス中止・短縮営業・外国人客激減、と大変だそう。我々が入った時は、6~7分の入りでそこそこ賑わっていたように思いましたが、確かに1月に来た時は満席でしたものね。Yくんは学費稼ぎで勤め上げるということ、お店にも頑張って欲しいです。
 入店したら案内のバイトの人が「あら、Yさんだったんですか!」とニッコリ、うん、こりゃ恥ずかしいな。Yくんオススメのおばんざいや、お出しに「獺祭」を大量投入するというGuiltyなブリしゃぶ鍋等を肴に、お店オススメの(中から「もりき」セレクションにある)日本酒を。Yくんは1年目ながら自分はバイトの主力なのだと仰る。人見知りしそう、っつかぶっちゃけ人の好き嫌いがハッキリしてそうなYくんですから、まぁ仕事は割り切ってるにしても「主力」とか自分で言うほどなの~? と嫌らしく思ってたら、「ちょっとトイレに」と席を立って戻ってくる時のYくん、ボックス席のお姉さんに「あの、すいません、注文を」と呼び止められていました。主力やんけ。店員全員制服なのに、Yくんど私服なのに。

 ③河原町三条「キャラメルママ」
 私が京都に行ったら最後は必ずここ、「ユーミンバー」として知られる老舗です。曲名のついたカクテルを飲みながらユーミンを聴く。お店の人に「リクエストかけますよ」と言われたので「かんらん車」をお願いしました。
 こないだの宮崎のFくんの時も2軒目はバーだったんですけれども、未成年を連れて行くなら本当は居酒屋よりバーだと思うんですよね。オレンジジュースとか烏龍茶とかじゃなくて、折角ならノンアルコールで凝った(面白い)飲み物を作ってくれるところが良いんじゃないかな、と。

 ……というか、③て。Yくん、一日5時間勉強って言ってたじゃん。5月に司法試験の予備試験を控えてるって言ってたじゃん。それを3軒連れ回すて。これは老害の謗りを免れ得ぬと帰ってから反省しまちた。小野篁の学業お守りだけで許して貰えますかねぇ。
 ホテルの高級ベッド(ふっっっっかふかのダブルベッド)で反省睡眠。