驚異の部屋をご案内します

 寝てる間に37歳になってました。

 5時起床、大浴場湯浴み、お気に入りのネカフェ。非日常の中の「日常性の維持」を堅持。今日は9時にネカフェを出て、上野駅着9時23分。駅構内の切符売り場で「アルチンボルド展」のチケットを購入(美術館の売り場は並ぶんです)。幸いなことに台風の影響がなかった(雨も降っていません)ので通常開館の国立西洋美術館に、9時30分ジャストに入館。一時間後には特別展会場内が鮨詰め温暖化状態になりましたから、これは開館ジャスト入館が唯一解でした。
 入り口には「アルチンボルドメーカー」なる機械があって面白かったです。アルチンボルドといえば植物・動物・人工機器様々なものを組み合わせて人間の顔を作る肖像で知られた画家ですが、この「メーカー」は設置カメラの前に立った人間の顔を無数の野菜を組み合わせてアルチンボルド風に表現してくれるんです。この「作品」(自画像)は撮影も可能で、写真嫌いのも私もこれならばと喜々として写メりました。いや~、いきなり楽しい。
 「四季」「四大元素」の計8枚が全て揃った日本初の展覧会、ハプスブルク家の歴々から現代のサルバトール・ダリまでを驚喜させた肖像画群を集め観客を喜ばせつつ、その画業を可能にしたのが深い博物知(自然科学知)であったことを種々の資料を並べて示す(まさに「驚異の部屋」)という試みは、私のような予備知識ゼロの人間でも素直に楽しめ学べる造りになっていて大変楽しかった。こういう展覧会でこういう時期なので、家族連れが多くてちょっと騒がしかったけれども、まぁ許容の範囲内ですね。
 で、これはどうでもいい話ですが、常設展の方にも音声ガイドが作られていました。去年の「クラーナハ展」の時にはなかった筈なので最近完成したのでしょう。正直、それ、要る? と思う。

 池袋に戻って11時半の待ち合わせは63回生Tくん、2日に67回生高2の東大オープンキャンパスを手伝って下さったお礼は「中国茶館」にて中華バイキングです。料理は食べ放題で、私は勿論ビール・紹興酒を飲みますが……。私「Tくんは午後もあるから飲まないでしょ? 中国茶でいい?」 T「あ、僕はお酒はいいです」 まぁそらそだわな、話を聞くに国試に向けて夏休みは勉強しかしてないそうですし、流石D組代表! と思ったら、T「お酒はいいです……ちょっと宿酔いなんで」 私「宿酔いかよ。あんた今、勉強しかしとらんって言ったじゃんか」 T「息抜き。サークルのイベントです。それに、僕、飲んだ後でも勉強できますから」って、香ばし……じゃない、逞しい大学生に育ってくれてお先生は嬉しい。国試→官僚の道を邁進の眩しい毎日についてお話を伺い、校内模試首位から東大から官僚へなんて人に高々一介の(一塊の)教員が何をか言わんやなので私からは一言「官僚目指すんだったら、つまんない人にはならないでね」 大人になっても遊んでくれなきゃ嫌ですよ。

 Tくんと別れたあと一度ホテルに戻り、酔い覚ましのシャワー。その後、フロントにタクシーを呼んでもらって自由学園明日館に向かいます。当日券、残席僅か数席でしたが購入することができました。
 ホテルからタクシーで僅か10分のところで偶然おおたか静流のコンサートが行われる、さすが都会です。これは単独のライブではなく、朗読の飯島晶子、ピアニストの谷川賢作、を合わせた3人が中心メンバーとなって毎年行っているという「被爆ピアノコンサート」。爆心地から1.8㎞の地点で被爆したピアノを修理復元して今なお使い続ける、音楽や朗読を通じて戦争の悲惨を考えるというコンセプト。
 谷川賢作のピアノソロのあと、おおたか静流「花」「あの夏のまま……」の2曲。その後、飯島晶子による「おこりじぞう」の朗読(谷川賢作のBGMと併せてこれが良かった)。さらにその後、K高校合唱部による谷川俊太郎詩『原爆を裁く』が披露されました(正直、これは説明口調と説教がましさと演劇超の叫び声とがやや鼻につくものでした)。
 以上が第1部、休憩時間は被爆ピアノを眺めたり触ったりできるのでちょっと近づいて眺めてみて、ちょっと疲れたので第2部は観ずに帰りました。ちょっと近くのイベントにふら~っと立ち寄ったという風情。
 ホテルで1時間ほど仮眠。

 17時55分に東急五反田駅で待ち合わせの相手は56回生Yくん、塾講師は同業者と言っていいのかどうか分かりませんが、今夜は教育関係者同士のさし飲みを、お~この場所は『孤独のグルメ』でついこないだ観たわぁという雑居ビル内「立呑み とだか」カウンターに並んで。
 ①ウニオンザ煮卵、②肉豆腐、③イワシと茄子の包み焼き、④いぶりがっこ入りポテトサラダ、⑤冷やしアメーラトマト、⑥揚げとうもろこし、⑦牛ご飯。
 注文した料理を全部列挙できるわ。そんくらい一つ一つが美味しかったわ。これは二度来る三度来る。小食の私・Yくんは調子に乗って注文している内に満腹苦痛に襲われ、2次会を断念して1軒で帰りましたもんね。
 Yくんとのお話の中心は東京都の進学事情。都立を目指す小中学生を一手に引き受ける大手塾で某館館長をお勤めの方ですんで話がリアルで面白い。業界の話はここで書いても面白くないんで割愛(九州とは全然違いますしね)。些事を書くと、最近Yくんの職場がタイムカードを導入したそうなのですが、急ごしらえの制度故に今は生徒証で代用しているそうです(館長なのに)。生徒証がどうしてタイムカードになるのかと聞けば、その塾の生徒は入館・退館時に生徒証を機会にかざす必要があるそうでそうすると入退館の連絡が親御さんのスマホに届くシステムになっているそうな。これって、全国的なことなんですかね。

 前述のように1軒で健康解散、ですが私の誕生日ぱーちーは勝手にまだまだ続きますもんで、コンビニでケーキとつまみとビールを買い込んでホテル帰還、米原万里の傑作書評集を読みながら私が私を祝う独酌読書、37歳の初夜は更け(老け)行くのでした。