突撃の合図だと 捕えてみせるさ 逆転のときを

 昨日は早めに寝たので、5時前起床ですが10時間超の睡眠です。今日は入試業務初日(昨日は0日目)にして最大の(体力的)山場、中学入試の日。滅茶苦茶忙しい、そして滅茶苦茶楽しい4日間が始まりますね。何度も書いていますが、私はこの入試業務が(そして入試業務に一致団結で取り組む職員室の雰囲気が)とても好きなのです。6時40分自宅徒歩出発の足取りも軽やか。
 普段は6時に開く正門が中学入試・高校入試の行われる今日と明日とは7時開門に変わります。7時少し過ぎに警備員さん(いつもはお一人ですが今日はお二人)に挨拶をして門を潜ると、いらっしゃいませ塾関係者が大勢。正門から校舎までの一本道にずらり居並んで受験生を迎える塾の先生方に、何故か教員である私の方が「ようこそ」と言われている気分になりながら、心持ち俯き気味に歩きます。

 中学入試の当日が最大の(体力的)山場になる理由は、国語・作文の採点がどちゃくそ大変だから。中学入試は数年前の共学化以降受験者が激増、そして理由は分かりませんけれども今年は九州圏内の某私立中学と受験日が別々に別れてしまっている(これまでは同日受験日のことが多かったはず……よく知らないんですが)ということで更に受験者増。850人とかですっけ、こんなの、私が受験した四半世紀前の人数に迫る勢いです(私の受験年は950人とか。数年前頃には500人とかまで落ち込んでました)。要するに、受験者が多いとどの科も採点が大変なのよという話。
 加えて、国語科は前述の通り通常の問題に加えて作文の採点があります。中学国語の第1問は、毎年「聞き取り」「作文」の2つからどちらかが出題されることになっています。で、今年はそれが作文(200字)だったんですけれども、これの採点に時間がかかるのよ、と。試験の採点は途中で休憩を入れると採点基準がブレる可能性があるので、どの科も基本的に終わるまでノンストップで続ける必要があります。最も時間のかかる作文の採点は、1限の国語が終了後、某室に閉じ籠もった国語科の教員がトイレ以外席を立つこともせず最後まで行うんですが、それが終わるのは深夜です。採点を終えられた他の科の先生方が帰られた後も、無人の某室でず~っと採点を続けているのです。

 さて、1時間目は国語。今年度の出典は、200字作文が佐藤雅彦『プチ哲学』、評論が江國滋敬老の日に」、小説が「逆上がりのケイコ」という3つでした。他に、新美南吉の童話集も使われています。
 終了後は、採点に関する話し合い(会議)を国語科全員で行い、そのまま(人によっては昼食を挟んで)ノンストップで採点です。某室では先ず国語科の教員が採点ガシガシ。2限後に別の科の先生方、3限後にまた別の科の先生方……と監督を終えた先生方が答案をお持ちになって段々と集まり、最後には職員室中の教員が全員でガシガシガシガシとペンを動かします。この日ばかりは普段から折り合いの余り良くない教員(そらいますよね)同士も奇跡のタッグみたいな雰囲気があってこれが好き。ランナーズ・ハイで普段なら絶対に言わないような洒落やジョークが思わぬ先生から出てきたり。私は「思わぬ先生」ではなく積極的に巫山戯ている人間なので、例えば静寂の中で突然答案に向かって「ち~が~う~だ~ろ~!」と少し古いモノマネをやって隣の先生に怒られたりしました。事務方が、お菓子やお茶・コーヒーや蜜柑などの差し入れをしてくれてるのですが、これは毎年絶対に足りなくなるので今回は私がこっそりほうじ茶のティーバッグと粉末のカフェオレを大量投入。私の大好きな業務の私の大好きな雰囲気に資するなら、少々の出費は当然です。保健室先生もコーヒーその他をご準備なさっていました。

 さて、入試の全科目が終了する夕方前。ぞろぞろと帰宅する受験生たちを校舎前で迎える保護者……の前を陣取る塾関係者は、凄いですよね1限の国語と2限の数学との解答速報をもう準備して配布してるんです。この、Z塾とE塾との解答速報を読むのは毎年の楽しみなので……私「××くん、そろそろ突撃するぞ!」 ×「あ、もうそんな時間ですか? 行きます!」
 数学科の若手を引き連れて、試験終了の受験生が最後のアンケートを書いている時間にダッシュ。塾の先生方(事務の方?)を見つけるや走り寄って行き「すみません、学校関係者です、解答速報を下さい!」と。職員室で何枚かコピーして採点場に持って行きます。これを見るのは採点に疲弊している職員の良い気分転換になるのです(念のために書いておきますが、採点開始後に解答速報を見たとしても、それで採点基準が変わることはありません)。同窓同僚数学と。
 同「きみ、それもらいに行くの、好きだよねぇ」
 私「こういうのってさ、若いのが勢いで突入して向こうに苦笑いされる、っていう程度の『下から目線』で行くのが礼儀なんじゃないかな、と思って」
 同「」
 私「うん、知ってる。僕、『若いの』じゃないね。今ちょっと恥ずかしいから何も言わないで。後生」
 来年も解答速報ゲットに向けて中原誠ばりに突撃します。若くないから例えが古いです。

 さて、前述の通り国語(作文)の採点が最も早く始まって最も遅く終わります。中学入試の日は国語科だけは深夜解散が決まっているので(作文ではなく聞き取りの場合は多少採点が早いですかね)、夜遅い時間に夜食が投下されます。一人で幾つ食えというんだという大量のコンビニおにぎり……を、深夜の採点終了後に手に取ったら、いくつかの賞味期限は30分前に切れていました。
 国語科の先輩先生の車で送ってもらうのも中学入試の日の恒例。「もりき」の前で降ろしてもらい、そのまま深夜の常連さんたちと飲んで帰宅。マスターの奥様から「明らかに顔が疲れてる」と言われましたがそれはそうですよね。でも、機嫌は頗る良いんです。