帰り路 見上げる夜空に 星ひとつ

 先ず、大晦日の私的恒例、2019年のベスト5を書き留めておきます。

 今年発売の書籍5冊。
 A.R-指定『Rの異常な愛情 或る男の日本語ラップについての妄想』
 B.相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠
 C.秋本治秋本治の仕事術 「こち亀」作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由』
 D.下村幸子『いのちの終いかた 「在宅看取り」一年の記録』
 E.星井七億『百合えっち文体練習』
 Aは担任を務めた63回生Mくんの編集者デビュー作という個人的な事情もありますが、「好き」を語る筆者の熱量とインタビュアーの知性との呼応が見事だったのは本当。数冊買って、63回生文系組に「配布芸」をしたり(筆者ではなく編集者のサイン入りで)。Bは内容は素晴らしく、帯が最低でした。『屍人荘の殺人』単行本で、帯のミステリ作家綺羅星のコメントが絡み合ってネタバレに導くというあれ、あれの再来です。でもって、Bの帯の綺羅星にはその『屍人荘~』の筆者が入ってて最早何をか言わんや。Cは「日常性の維持」の権化、尊敬の極みです。母君の事があったのでDは他人事として読むことが出来ませんでしたとお涙頂戴みたいなことを書きつつ、E(18禁)で涙出るほど笑うというのが人生のやじろべえ。

 昨年以前に発売の書籍5冊。
 A.大村彦次郎『文壇うたかた物語』
 B.古今亭志ん生『びんぼう自慢』
 C.薄田泣菫『茶話』
 D.向田邦子『父の詫び状』
 E.山本周五郎赤ひげ診療譚
 平成が無ぇ、と思ったらAが辛うじて1995年の文章でした(けれども、中身は昭和どっぷりです)。Cに至っては大正時代(から昭和時代)の文章ですね。高校で現代文を担当する生徒には、活字化されている100年程度前の文章なら(文語文も含めて)読める、くらいのリテラシーがあって欲しいなぁと思います。具体的には、卒業のお祝いに『緑雨警語』を送っても引かないくらい、かな。

 今年発売(連載中)の漫画5作品。
 A.OYSTER『新婚のいろはさん』
 B.田村由美『ミステリと言う勿れ』
 C.もちぎ『ゲイ風俗のもちぎさん セクシュアリティは人生だ。』
 D.矢部太郎『大家さんと僕 これから』
 E.和山やま『夢中さ、きみに。』
 Bの会話劇が断トツに面白いと思っていたんですが、年末に読んだEがそれに並ぶクオリティの会話応酬でしたね(方向性は違うんですが)。Dの大家さんの旅立ちには涙腺をやられたし、Aのベタ甘新婚ギャグには笑いつつほっこり、と人間らしい反応を引き出されました。1玉9石と言ってもまだ言い足りないエッセイ漫画ですが、今年はCに惚れました。筆者が昼職(ゲイ風俗の世界に入る前の「気質」の職場)を石もて逐われるきっかけとなった同僚女子の悪意(若しかして善意?)は、読んでてゾッとするくらい気持ち悪かったです。

 今年印象に残った楽曲5曲、及び収録アルバム。
 A.小沢健二「高い塔 The Tower (Ancient Future Keeps Changin')」(So kakkoii 宇宙)
 B.折坂悠太「朝顔」(配信シングル)
 C.King Gnu「Prayer X」(Sympa)
 D.中島みゆき「放生」(中島みゆき「夜会」VOL.20 リトル・トーキョー)
 E.YAPOOS「12才の旗」(ヤプーズの不審な行動 令和元年)
 ついに、これまでのアルバム5枚という発表の仕方を断念。楽曲5曲に絞って、後ろの括弧内にそれが収録されているアルバム・映像作品名を書いています。Cは楽曲自体は2018年ですが、私は今年発売のアルバムで聴いたので今年の曲の扱い。1曲挙げるなら勿論Aで、この曲のエネルギーには(或いは錯覚かも知れませんが)強い「怒り」が感じられ、聴いてるだけで怒られているような気がするのにそれでもリピートが止まらないんです。

 午前中は書斎で書き物をして(今年の私的ベスト5を考えて)、宅急便(東京ホテルから送った荷物)を受け取り、スーパーで元日こたつむりに向けた買い出しをしたり。12時に懐石「G」までタクシーで往復してお節料理の受け取り。今年の元日はこれを母君と味わいましたが、来年は独りです。お節を冷蔵庫にしまったら、入れ替えに缶ビールを取り出してぷしゅ~。
 飲んで、飲んで、飲まれて、飲んで、『年忘れにっぽんの歌』と『笑ってはいけない』と『紅白歌合戦』を全て録画しながらザッピング視聴。今年はどれも面白いシーンが多くて、『年忘れ』と『笑っては』は去年よりずっと面白かった(『紅白』は去年が凄すぎたので仕方ないです)。

 『笑ってはいけない』は、神木隆之介と阿久津真矢(オツカル様は水野美紀を絶賛)、後はメルヘン須長新しい地図は(出演したこと自体は目出度いですが)どれもイマイチだったけれど先に出た分(と、裸芸を持ってる分)草彅剛に1票。多分、これが日本人の平均的な感想だと思います。あと、ロバート・キャンベル先生が吉本の件のほとぼりを冷ます企画に乗るのは悪手だったかな、と。
 『年忘れにっぽんの歌』は後で好きな歌だけ録画を編集しますが、哀しいことに大橋純子の声が出なくなってました。食道癌手術の影響でしょう。年齢もありますから、これからあのハイトーンが復活するのかどうかは解りません。
 昨年度の『紅白』では、番組内のコントでおげんさんが「紅白の区別はなくそう(大意)」と言っていました(今年はピンクの衣装で歌っていましたね)が、その翌年の『紅白』で田中圭を審査員に迎え、きーちゃんが紅白どっちでも「大丈夫」だと歌い、『LIVE PRIDE』でメインを張った2人の内MISIAはレインボーを背負ってユーミンは「ノーサイド」を歌った。メチャメチャ詰め込んだなぁ、という感想。「紅白」も「合戦」も消えたら残るのは「歌」だけになちゃいますね。

 独り宅飲みでてぇげぇ酔っ払ってましたが、樹木葬でご縁の出来たS寺まで除夜の鐘を撞きに伺いました(片道20分の徒歩往復です)。田舎ですからね、鐘が五月蠅いとか田分けたことを言う人間はいません。22時過ぎから1分おきに108回、隣接の職場に16年も通っておきながら全く知りませんでした。和尚さんへのお土産に4合瓶を提げていくのもどうかと思いましたが、寒空の下2時間ですからねぇ……と思ったら、鐘の下のストーブにはしっかり熱燗のセットがされてましたね。ご挨拶後、和尚さんの合図に合わせて一撞き。初めてでしたが良い音がしました。その後、振る舞いの蕎麦を頂いて、鐘の音を後ろに帰途に。
 帰宅後、再びテレビを点けて缶ビールをぷしゅ~。ジャニーズのカウントダウンを観ながら、年上は仕事人の先輩、年下は生徒を見る目に。

 健康睡眠。