暗い土の上に 叩きつけられても こりもせずに

 「★」をつけた読了本以外にも本はたくさん読んでおりまして、読み通してはいないけれども必要な箇所を拾い読みした(生徒に紹介した)本であるとか、目次だけ覚えて「積ん読」している本であるとか様々なんですけれども、ごく稀にページ開いて少ししてから投げ捨てる、みたいな本もあるわけでして。

 筆者の名は秘す、本のタイトルも秘す、けれどもまぁ東大の現代文を使って国語力を上げますよ、みたいなコンセプトの本です。筆者は、リクルートスタディサプリ」・Z回「東大進学教室講師」という肩書き、過去の著書には10万部のものもおありだそうですので、立派な方なのでしょう。が、S出版社から出てた某本、これは絶対に買ってはいけない愚著だろ。受験生向けではない一般書だから、という言い訳が通用しないレベルの酷い解答例に目眩がしました。
 例を一つだけ。08年第一問は宇野邦一『反歴史論』。問一「歴史学の存在そのものが、この巨大な領域に支えられ、養われている」とあるが、どういうことか。筆者の解答例【歴史は、書かれなかった事はなかったと断定できず、書かれた、書かれなかった、あった、ありえた、なかったなど広くあいまいな領域に存在するということ】
 傍線部の「この巨大な領域」は本文では「歴史」を指示しており、問一は「歴史(という未知)があって初めて歴史学(問い)は存在可能」ということを本文の用語概念に即して説明する問題なのに、筆者の解答例は「歴史学」に関して非言及なんですね。恐らく、筆者は「●●」と「●●学」と(ここでは「歴史」と「歴史学」と)が違うという根本が判っておらず、設問における出題者の意図・指示が理解出来なかった。この例、氷山の一角。
 自分だってミスをしますし、自分の解答例を盲信する愚は避けるべしと自戒した上で、この本の解答例が出来の良いものではないことだけは断言します。

 本日は高1古文『枕草子』が5コマ、東大文系漢文(添削付)が1コマ、要するに1~6限が全部授業だったので息つく間もなし、6限終了後は直ぐに東大漢文の答案(今しがた回収したやつ)の添削です。