君には一日我には一生

 本日、F中入試。F校に就職して16年、様々な種類の仕事がありますけれども、一人でやる仕事なら高3現代文(特に二次)の授業と添削と、皆でやる仕事なら入試業務、これが最もやっていて楽しい仕事だというのはず~っと変わりません。
 7時までは(職員であっても)校門をくぐれないので、7時過ぎに自宅を出て徒歩で20分の通勤。中学入試のは高校入試よりも引率講師(塾)や付き添いの保護者やという方々の数が多く、門を潜った後の歩道は応援講師陣が受験生用の花道を作っておられるので、車道を大股で歩いて校舎まで行きます(正門からは車が入れないようになっているので問題ありません)。

 職員室や入試本部、採点会場は全て窓という窓が外から見えないよう塞がれ(昨日の準備の中にはこういう作業が含まれます)、皆で秘密を共有しつつこそこそ動いてるっていう感覚が楽しく。因みに、職員は胸に写真入りの職員証明をつけることになっていますが、私はこれはスルーしています。理由は色々ありますが、ここでは略(対面で訊かれたらお答えします)。
 中高入試とも国語が第一限、理由は聞いたことがないのですが、採点に最も時間がかかる教科なのは間違いないので毎年有難いと思いながら仕事をしています(若しかしたらそれが理由なのかも知れませんが、確かめたことがないのです)。と言うわけで、国語科の教員、第一限終了後は、某室に閉じ籠もって全員野球の採点ガシガシ(色々な理由で、一限終了後即採点開始、という訳ではないのですが、まぁ雑に言うとこうなります)。

 基本的に、夜までず~っと採点、以外の仕事はありません。採点会場に、国語科、数学科、社会科、理科……と順番に先生方が入ってこられ、それぞれのシマでず~っと採点する(英語科以下の先生方は補助に回る)。湯茶だお菓子だ蜜柑だなどの差し入れも事務方が揃えており、毎年私(を始め何人かの先生が)そこにインスタントの珈琲やお茶や紅茶やなどを「寄付」してます(私の場合、前日夜にこれを買い込む辺りから段々テンションが上がってきます)。

 途中、4教科全てが終わって受験生が下校する時刻になると、私と数学若手先生と2人で校舎の外に駆けていき、塾関係者の方に頭を下げて「解答速報」を戴いてきます。採点の合間の気分転換に、各塾の解答速報を読んだり(採点したり?)するのも楽しく。今年は、Z塾様の速報にて、国語「全体的に力の差のつく良問であったと言える」、算数「メリハリのある問題構成で、よく練られた出題である」という、拝伏必至のお言葉を賜りました。うへへぇ。
 因みに、令和2年度のF中学校入試、国語の出典は、朝比奈あすか『君たちは今が世界(すべて)』、辰濃和男『文章の書き方』。5年ぶりに聞き取りテストが復活(!)して、永田和宏『現代秀歌』が朗読されました。テーマになった短歌は栗木京子の代表作「観覧車回れよ回れ思ひ出は君には一日我には一生」です。

 夜も更け、数学・社会・理科の採点が終わり(最初に採点を始めた国語科が他の科より先に採点が終わることはまずありません)、明日の仕事に備えて皆がいそいそと帰り、学校内に管理職と警備員と国語科教員とだけが残り(管理職と国語科教員とには重複がある場合があります)、年によっては疲れすぎて国語科教員が苛立ってブツブツと独り言の文句を言い出し兼ねないという時刻が21時ごろからなんですけれども、あれですかね、今年は塾様から「良問」とか呼ばれて浮かれてたんですかね、21時過ぎても皆さん上機嫌(私は固より入試に関わっている限り上機嫌)で、採点終了後は気持ちよ~く解散できました。

 国語科先輩先生の車で送って頂いた先は「もりき」。22時近くのカウンターで、今日は贅沢すると決めていた焼き鴨。マスターお任せの日本酒飲み比べセット、本日は四国、高知「豊能梅 いとをかし」と香川「悦凱陣 興」と。前者「豊能梅」はCEL酵母のお株を「亀泉」から奪わんとしている野心家酒蔵だそうで。明日は高校入試だから程々に……したいのに、鴨もお酒も美味くてねぇ。