ビルの谷間のラーメン屋

 澁谷知美『日本の包茎 男の体の200年史』読了、★★★★★。面白かったです。
 私が「M検」の時代からうっすらと男たちに共有されていた包茎に対する「土着の恥ずかしさ」(内発的なもの)が、主に1980年代以降の男性向け雑誌メディアの「タイアップ記事」の中の異様な煽りによって「作られた恥ずかしさ」(外発的なもの)へと変わっていく(病気ではない仮性包茎を手術のターゲットにする包茎ビジネスで儲けたい医師の狙いによって)過程を追い、90年代以降それ(包茎手術ブーム)が斜陽になっていく様までを見届ける。「タイアップ記事」の中には、仮性包茎を口汚く罵る女性(フィクションとしての女性の目)が盛んに登場して男性読者の劣等感を刺激するのと同時に、実際は編集者も医師も全て男である雑誌メディアから男性読者へ加えられている暴力を、(存在しない)女性から男性読者への暴力へとすり替えることで、「抑圧の移譲」さえ導く。女性のしかもフェミニスト包茎について研究する理由は、男性間の暴力・抑圧を解決しなければ女性も幸せになれないから、と筆者は断言する。
 私が「包茎」と言われて想起するのは2点。1つは、金子光晴が1965年の自伝『絶望の精神史』の中で大正期の浅草十二階を「包茎」と罵っていた記述。その語にネガティブなイメージがあったのは「土着の恥ずかしさ」ということになるのかな。
 そして、もう1点は、TV番組です。澁谷氏は著書の中で(雑誌からTwitterまで)活字メディアを仔細に検証して、例えば包茎ビジネスの断末魔を2013年の水道橋博士のコラム・高須克也のtweetに見た。私の記憶に焼きついているのはその約20年前のバラエティ番組、TBS『クイズ悪魔のささやき』の1シーン。アラフォー世代の中には割と強烈に覚えている人も居るんじゃないかなぁ、と思います。登場するのは司会者だった古舘伊知郎。番組でクイズにチャレンジした一般参加者の出場動機が「賞金で仮性包茎を手術したい」というものだったのですが、彼に対して古舘伊知郎が「自分も仮性包茎だけれども子どもが居る(大意)」と叫んで満座の喝采を浴びたんですね。「凄いなぁ」とちょっと呆然とした、あれは今でも覚えています。雑誌記事の「作られた恥ずかしさ」に多くの男性が影響を受けたというのが本当なのだとしたら、まだTV番組の影響が大きかった時代のあの発言に影響を受けた(励まされた)男性も多かったのかなぁ、などと(丁度、包茎ビジネスが斜陽化していく90年代の初め~半ばの放送でした)。
 『日本の包茎』の最後には、名著(何度でも言うぞ、名著だ)『オトコのカラダはキモチいい』が紹介されていました。そも男性の身体的快感が一点に集中しているという思い込みが(澁谷氏が問題視している)男性間の暴力の根本的原因なのだとしたら、男性も全身が性感帯だと訴える『オトコのカラダはキモチいい』が指し示すような男性身体に対するイメージの更新が必要なのでは、と筆者は述べています。

 6時に学校入りして、時間割作業を粛々と。時間割作成のリミットは4限終了時、なのですが私は1~3限に高3現代文の授業が入っているので始業前に終わらせるのが必須。無茶させよんな(まぁ、コロナ休校に台風に大雪に大雨に信号機故障に……と数え役満が見えるレベルで当日の時間割変更が起こった昨年度に比べたらマシなのかも知れません。「舎畜」は下を見て暮らします、下に見えるのが自分だというのがアレですが)。
 1~3限の授業はセンター小説。01年の本試験小説、津島佑子「水辺」は確かに難しい問題ではあります。ありますが……20分で解答させて25分で解説、の授業後に3クラス120人分の答案を採点したら……「だぁめだこらぁ!」と叫びたくなる惨憺たる出来具合。理解力がうんたらとかいう以前の問題で、昨日の「男く祭」で皆体力とMPとを使い果たしています。今日の高校は午前中が授業で午後が「男く祭」2日目(明日)のリハーサルなんですけれども、午前中の授業は確実に要らんかったな、というのを答案の質が物語っていました。まぁ、生徒には「今日は生きて座ってるだけで偉い」と言ってます。

 4限の時刻を使って時間割変更の仕上げ、その結果連鎖的に生まれた連休後の時間割変更の仕事は午後の2時間を使って。
 学校近くのスーパーマーケットで食材や日用品やを買い込んで帰宅。今日は自炊ですが、明日以降暫く自宅の台所を使わないので、主に冷蔵庫の中身を空っぽにすることが夕食における目標になります。

 4/26の「自粛御膳」。
 納豆御飯・甲イカ刺・鯛あら煮・サラダ・小鉢3種。
 新しく買ってきたのはイカ刺だけで、後は全部冷蔵庫のお掃除。鯛あら煮なんて3日前に炊いたやつの残りですし、サラダの上に乗っけたチーズだとか納豆だとかは賞味期限が切れています。

 卒業生には「食べログ係やりますよ~」とよく言うんですけど、東京(山手線内)・K市ならともかく他はねぇ。
 今日は2件。
 69回生Yくん(東大1年)の「福岡市・もつ鍋・大学生2人」、これは楽勝。タイプの異なる3軒の候補を投げたらお終いです。どこが美味しそうか、予算は大丈夫か、営業時間と座席配置とから見て「密」を避けられそうか、等々2人で考えたらいいのでは、とお伝え。最後に老婆心、1人1杯以上は(ソフト)ドリンクを頼むこと(これは蛇足だったかな)。
 63回生Tくん(官僚)の「小倉・海鮮と日本酒と・5000円程度・2?3人」が困った。小倉エリアは全く疎いですし、その方々(年齢層不明)が飲み食いする量が分かんないから予算を示されたらちょっと戸惑う(日本酒っつってるからコース飲み放題は無理そうだ)し。ベタ路線なら「魚マルシェ」、小倉名物を食べたいなら「旬工房 くら」、大衆系なら「満天」、とかなのかなぁ。個人的には、いつか絶対とブクマしてる日本酒バー「酒肴 戎」って線もあるけど、行ったことないから人には薦め難いんですよねぇ。困りながら、考えるのは楽しいです。