旅の絵本

 夜中の2時に一旦目覚めて水分補給(ウェルカムサービスで置いてあったペットボトルのお水)、その時点でかなりの大汗をかいていて身体がスッキリ! していたので、昨日の体温上昇は単なる身体の疲労表明だったことが分かりました。寝直す前にシャツを着替えて、ふっかふかのベッドはツインで準備されていたので隣のベッドに移って快眠。

 5時半起床、体温36.0℃、克ち申した。入浴、荷物の整理、軽く読書。7時にホテルを出て(チェックアウトはしていません)、商店街内の「快活Club」で少しだけ書き物、スタバで読書。9時半過ぎにホテルに戻ってからチェックアウト、荷物は駅構内(新幹線改札横)のコインロッカーに入れてからプティ観光を開始しよう、と先ずは駅ビル内の書店を覗きに行き……新刊を6冊も購入してメインの津和野に向かう前に(しかも旅行バッグをコインロッカーに入れた後で)荷物を重くするなど。

 旦過から紫川沿いを散歩してから、特別展『画家たちの自画像 藤田嗣治から草間彌生まで』@北九州市立美術館分館、を訪問。著名な画家の自画像が続々でお得感アリだったのですが、鴨居玲の諸作が兎に角気持ち悪くて他の絵の記憶を全部持って行かれました。晩年(自決の日)に近づくに従って肖像画の中の目と口とが徐々に溶けていくリアル「足跡の怪」、しかも自死のアトリエで見つかった自画像(遺作)に至っては首以外(服と背景と)が真っ赤だというのですからもうたまりません。そこだけぐるぐる廻って作品を凝視してたからスタッフの方に怪しまれたんじゃないか知らん。

 夜が贅沢なので昼は麺類だと決め「はるやうどん」(小倉っ子の魂食)に行ったらコロナで閉まっていたのに萎え、隣のラーメン「一蘭」で「逆ブロイラー」(店曰く「元祖フィジカルディスタンス」)をキメてしまうという敗北感。

 小倉から新山口までは短い時間の新幹線、これは旅行の贅沢気分を演出するべく指定席に。何をする間もなく到着。そこから特急「おき」に乗り換えて1時間もすれば津和野駅です。この電車、以前乗ったような記憶があるなぁと思ったら、嘗て母君と出雲旅行をしたんでした。津和野はそれよりもずっと手前(新山口側)で、K駅から向かったとしても乗り換え込みで2時間半という利便です。特急の座席も指定席で、車内はガラガラとまではいかないまでも人は少なく、津和野駅で降りたのは私を含め2組3人だけでした。旅行中には何か一つは「人生初」をというマイルールがあって、今回はエナジードリンク(MONSTER)を飲んでみるというのをやってみたんですが、不味くて最後まで飲めませんでした(「オロナミンC」とか「リポビタンD」とか、好きなんですけど)。

 さて、津和野駅着14時。駅から宿(街の中で最も大きな旅館で、唯一の温泉宿)までは徒歩7分、チェックインは15時以降なので先ずはフロントに荷物を預かって貰いました。その後、3時間程の街歩きを。
 先ずは案内所で、係員の方から津和野について詳しく教わりました。津和野は、K市と大変関係が深いのだそう(最後の津和野藩主・亀井茲監はK藩主・有馬頼徳の子)。後述の「森鴎外記念館」の特別展が小倉を扱っていたことも合わせて、自分の故郷(就職前の小倉・後のK市)と繋がると縁を感じます(感染大爆発中のK市から来たと言ったら嫌な顔をされるかと構えていたのですが、そうはならなかったのはK市への親近感なのかK市の惨状をご存じないからなのか……)。係員の方には歴史や見所を詳しく教わり、私が2泊して1日半を観光に費やすと話したらそれで大抵の場所は網羅できると言われました。案内所に入ったのはご当地出身のアニメーターを称える「大塚康生パネル展」を観るためだったのですが、そちらは極々「かわいらしい」ものでしたね(当初予定の会期は過ぎていたのですが、会期中に大塚氏が亡くなったために会期が延長に)。

 観光施設内のトイレでジェットタオルが使用禁止ではない、というほどコロナに縁遠い様子の津和野町、それでも町行く老若男女(圧倒的に「老」が多いですが)は皆がマスクの新しい日常。殿町通りを歩いて(菖蒲の季節はまだでしたが、白壁沿いの掘割を泳ぐ無数のコイは見事でした)、地域一の庄屋屋敷を改修した「杜塾美術館」にて、ここを私費で買い取った中尾彰・吉浦摩耶夫妻の絵画を鑑賞(他に、ゴヤの闘牛版画も並んでいました)。津和野カトリック教会だけは改修中で外観すら拝めず残念。因みに、殿町通りの掘割に鯉を放つことを提案したのは宮本常一だそう。
 更に30分ほど歩いて「森鴎外記念館」、ここは以前F校の別の先生から収蔵品を図録(のようなもの)で教えて頂いていたのでそんなに期待してはいなかったのですが、特別展の方の自筆原稿(写真)ズラリには魅入ってしまいます。最近発見された小倉滞在時代の自筆原稿が記念館に寄贈されたとのこと。隣には「森鴎外旧居」も。
 最後はタクシーを呼んで宿まで。途中、国道9号線の山の上にある大鳥居(18m)を経由してもらいました)。

 16時半に宿にチェックイン、書類を書いている間に出されたお抹茶のお茶請けは名物の源氏巻。こしあんを薄めのカステラ生地で巻いたものでこれが美味しかった。町内には専門店が幾つも軒を並べていましたね。
 チェックインの後は荷物をほどいてから露天風呂(ホテル屋上)の湯浴み。今日は宿で夕食を摂るのが私の中のメインで、観光の本丸は明日です。

 4/29も「自粛御膳」はお休み、島根県は津和野の旅館「わた屋」にて広間の夕食。
 八寸・刺盛り・牛朴葉焼き・アマゴ焼き・うるか茄子・茶碗蒸し・野菜炊合せ・天麩羅・御飯・赤出汁・香の物・デザート・島根牛ステーキ(別注文)。
 大きな広間には家族連れ・ベテラン女性二人連れ・大学生男子二人連れ、と私で4組。他の3組は皆30分から1時間足らずで全て食べ終わって部屋に引き上げましたが、世の食べ物は全て酒のアテだと思っている私は読書独酌黙食をたっぷり2時間超。瓶ビール2本、300mlの日本酒小瓶を2本(2本目は一口だけ味見して、明日用に部屋の冷蔵庫へ)。朴葉焼きに熱が通る前に別注文のステーキが出てきたのにはビックリしたんですが、熱い物まで含めて全部一度に出してしまうというのは多くのお客さんが早食いだからなんでしょうか(宿のHPには「最適なタイミングで料理を供する」と書いてあったんですけれども、そう言えば誰にとっての「最適」なのかは書いてなかったな)。
 今夜は旅館の名物料理(島根牛は勿論、アマゴやうるか、八寸の山葵等々)を堪能して、明日の夜は向かいのお寿司屋さん(旅館オススメ)を予約して独酌です。
 351蔵目・島根「華泉」(吟醸酒)。
 352蔵目・島根「初陣」(純米酒 わた屋ラベル)。

 玄関から廊下、果てはエレベーター内から浴室内の洗い場の床まで畳敷きの旅館ですが、寝具は布団ではなくベッド。健康睡眠。