文明開化の音がする 書生書生と軽蔑するな

 山内志朗『自分探しの倫理学』読了、★★★。「自分探し」という言葉が嫌いだという筆者による自分探し考。反「自分探し」派というのも共感できるし、寄せては返すの文体も(筆者自身の自嘲とは逆に)嫌いではなかったのですが、イマイチ中身に乗り切れなかったのは偏に私が『新世紀エヴァンゲリオン』(の、音楽以外)に興味をもっておらず、ストーリーや筆者の注目する台詞やの出自を一切知らないから。我ながら、よく読もうと思ったもんだ。
 善本喜一郎『東京タイムスリップ1984⇔2021』読了、★★★★★。新宿渋谷他、40年前と現在との同アングルが顕す街場の不易流行、これは傑作。ただ、この素晴らしい仕事が、コロナ禍で街が無人になったからこそ可能になったのだと思うと複雑です(1年半足を踏み入れていない、遠い東京を思いつつ読みました)。

 旅行中に溜まっていたメールの中に、生徒からのハッピー厄年のメッセージが幾つかあったので返信を。やりとり抜粋。
 生徒「以前美術室で何年か前の卒業アルバムを発見し、先生の茶髪の写真を見て衝撃を受けました。売れないバンドでベース弾いてそうな髪型、という印象で、男子校時代にこういう先生がいたらそれはいじられるよなあ……と思ってしまいました。それで気になったのですが、黒髪に戻されたのはいつ頃だったんでしょうか? 又なにか心境の変化があったのでしょうか?」
 教員「卒業アルバムの中の私、それは茶髪ではなく黒髪です。大学時代は染めていましたが、就職後は黒一色なので、光の加減かなにかかと(職員室には、女性は染めて良い、男性はNGという、無意識の差別が働いています)。長かったのは大学時代の名残で間違いないですが、やがて(縮毛矯正が)面倒になって切りました。バンド……は楽器音痴なので言われるとこそばゆいです(楽器演奏が出来る人には憧れます)。自分の写真は一切見ないので想像でしかありませんが、古くはアジカン、新しくは(新しくもないけど)フレデリックみたいな、ちょっと捻くれた文系・文化系ロック(私は「書生ロック」と呼んでいます)路線のアマチュアの、中でも全く目立たないベーシストみたいな感じだったんですかね」
 生徒「先生らしいお返事を頂いてとても喜んでおります。黒髪だったんですね! 完全に茶髪だと思い込んでました汗 私の感想は褒めたつもりだったのですがきちんと伝わっていたようで安心しました」

 通常出勤。事務嬢さん、同窓同僚数学(のお嬢様お二人)へのお土産を渡し、欠勤中に溜まっていた(自主提出の過去問の)添削を消化。その後、進路指導室から退勤なさった元教諭の皆様に毎年お送りしているお手紙(で、恒例になっている)の冒頭を飾る俳句を選定するという仕事。今年は読書をテーマに考えて、「一日の春の嵐の読書かな(上野泰)」か「木蓮や読書の窓の外側に(子規)」かなぁと思っていたら、事務嬢さん・同窓同僚数学の二人が揃って「お手紙の句に『嵐』はちょっと」と意見が一致し、消去法で子規に決まりました。

 午前中で業務を終えて退勤、そのまま西鉄K駅へ行き、昼食(昼酒ではなくて、昼食)にカレーを食べ、ネカフェで仕事・書き物をして、スーパー他で食材等々を買い込んでから帰宅。
 料理を幾つか。先ずは胡瓜と大葉とを「美味酢」に漬ける、続いて砂糖と一緒に一度湧かした「かんたん酢」で茗荷の酢漬けを。冷や汁も作って、買ってきた胡瓜(3本)・茗荷(3本)・大葉(5枚)は全て消費。
 酢漬け用にピーラーで縦長に剥いた胡瓜の皮が8本(酢漬けの2本分)、包丁で真ん中から2つに割ったら16本。これを捨てずに、味の素・塩・胡麻油で和える。それに白胡麻をかけたら小鉢の1種に……なるかいなそんなもんが、と思ったらこれがなる。但し、波佐見焼の器に入れたら。

 8/11の「自粛御膳」。
 冷汁(汁のみ)・刺身3点・茄子みぞれ・小鉢8種。
 407蔵目・山口「無量」(特別純米)。
 買付旅行の果て、遂にほぼ全てがちゃんとした(し過ぎた)器になってしまいました。
 ①波佐見焼(箸置き・冷汁・ポテサラ・卵焼き・メンマ・胡瓜皮和え物)
 ②小鹿田焼(茗荷酢漬け・らっきょう・もずく酢)
 ③萩焼(刺身3点・茄子みぞれ)
 ④京焼「今宵堂」(生姜奴・刺身醤油・日本酒酒器)
 コースターは日田土産の『進撃の巨人』グッズ。箸は56回生Iくん、ビールタンブラーは同回生Mくんの結婚式引き出物でどちらも上質。分不相応が極まりました。中身が大したことがなくても、器が良いと酒欲がぶち上がります(明日も出勤なのに!)。こういう「並び」を出来るようになるまでに、「足」と「お足」とは使ってます。