どんなによろこんだ事だろう 私たちだけを

 起床爽やか。7時半にホテルをチェックアウトして鹿児島中央駅に戻り、コインロッカーに荷物を入れました。小さなバッグに本とCDウォークマン(折坂悠太)だけの身軽さで先ずは朝のコーヒー(構内の喫茶店で)。
 今日の目的地は美山(薩摩焼の里)で、ここには電車とバスとを乗り継いで行く必要があります。鈍行で伊集院駅まで出て(車内には、我らF校親玉大学の宣伝ポスターが。遠く後でも商売してますね)、市営バスに乗り換えて美山まで移動。バスの乗客は私独りでした。

 バスを降りた地区の中心部に「沈壽官窯」があります。
 豊臣秀吉の時代に大陸より連れられた陶工が400年の連綿を守り抜いた場所、門を潜ると2ヵ国の旗、その足元の像(水木翁の「朝鮮魔法」「隠形魔法」を髣髴)が出自を語ります。まず、登り窯や工房を見学(工房は外部ぐるりの窓越しにですが作業風景を覗くことが可能、写真は遠慮しました)。その後は「沈家伝世品収蔵庫」、十二代の作品(幕末~明治の万博で「SATSUMA」の国際的名声を獲得)を中心に鑑賞しつつ、沈家(つまり薩摩焼)の歴史を概観。某「史観屋さん」がここをモデルに書いた小説の碑もありましたね。
 売店では、現当主である十五代手づからの大ビアマグ(桐箱入り)を購入。他の店で購入したものも一緒に配送して下さるとのご厚意に甘えて、帰りのバスの前にもう一度立ち寄りました。
 ランチは今年オープンの窯附設の「茶寮」にて、要予約の「薬膳参鶏湯」を。参鶏湯を食べるのは初めてで(アニメ『ミスター味っ子』の冬虫夏草鷄スープですね)、一匹丸ごとを骨までしゃぶり尽くしてスープまで完飲、満足。他に、小鉢(胡麻豆腐揚出し)・サラダ(枸杞の実ドレッシング)・雑穀米・デザート(豆花)・薬膳茶。
 薬効なのか滅茶滅茶身体が温まったので、その後2時間半の地域散策はずっと上着を脱いだままでした。

 美山散策。先ずは「沈壽官窯」を南下、「樟脳製造操業の碑」へ。薩摩樟脳は「東洋の白銀」と呼ばれ有名だったとか。近くには、「御定式窯跡」という登窯の跡が残されていました。その後、細い路地に入って今度はエリアを北上しつつ山間へ。財政改革・陶業発展の祖と呼ばれる人物「調所笑左衛門の墓」を通り過ぎ、薩摩焼最初の窯元だという朴平意の記念碑を見学。山頂まで登ると急に開けた茶畑が広がっており、ここでは「美山みどり」と呼ばれる品種が栽培されているそう。波佐見もそうでしたし、小鹿田もそうでしたが、焼き物の里と茶畑って相性がいいんですかね。茶畑の奥には無人の社があります。「玉山神社」をお参りしたらここが美山のどん詰まり。
 山を下りて「日韓友好の石塔」の近くにある焼き物屋「音里碗」工房へ。好きが高じて趣味からプロへ、元は福岡だったという女性窯元さんからは薩摩焼の色々を教えて頂き、大皿1枚・ぐい飲み・箸置きを購入しました。
 再び里の中央部に戻ったら、地域の人々の整備でちょっとした観光名所になった「竹林ロード」の入口まで徒歩3分。至るところに陶片の散らばる路傍、「堂平窯跡」の見学、「招魂碑」のお参り。里中央部にある「四百年窯」「日韓友好の炎」を見学したら、里をぐるり一巡りしたことになります。ふぅ、汗掻いた。

 バス停近くの喫茶店で真冬にアイス珈琲を注文して、市営バスに乗って直接金生町まで行くことに。2時間に1本レベルのバスに丁度乗れるタイミングだったので、電車よりも遥かに時間はかかりますが車窓を楽しみつつ。90分弱のバス旅でした。
 金生町で下車したら、西郷隆盛像まで歩いて(想像より遥かにデカくて笑ってしまいました)、近くの「近代文学館」へ。市内では他の一切の観光を諦めても、ここだけは行きたかったのです。
 2~3年レベルの駆け出しながら向田邦子に魅せられた身としては、「近代文学館」で「向田邦子の世界」に身を浸すのが責務。映像・音声(伝説の留守番電話!)、生原稿・愛用品、自室再現など様々な形で向田の「為人」を感じられました。軽く2時間弱が蒸発。デラシネを自認しながら鹿児島を「故郷もどき」と呼んだ向田邦子ですが、彼女への文学館からの「返礼」は誠実なものだと「文学館」を見学して感じられました。特別展「向田邦子『あ・うん』の世界」も興味深く、過去に開催された向田関連の特別展のパンフレットを買い漁れたのも収穫。
 と言うわけで、結局、桜島も美術館も水族館もラ・サール学園も(?)観る時間がありませんでしたが、再訪必至の口実にしておきます。新幹線帰還。

 12/23は「自粛御膳」をお休み、旅行帰りに文化街のうどん屋「O」で独酌。
 塩辛・モツ煮込み・おかめうどん。
 K市のコロナ0人が続く中でも正直文化街は後ろめたく……と言いながら確り2軒目ライブバー「A」まで行ったんですけど(マスターの誕生祝いに出会しました。御目出度う御座います)。文化街でカラオケなんて本当に久しぶりでしたが数曲。途中、フィリピンから出稼ぎだというどこかのお店の娘さんが(マスターの誕生祝いに)来たので、杉田二郎「ANAK(息子)」を入れてみました。少なくとも20年以上聴いていなかったんですが、中学高校時代の記憶でもちゃんと歌えるものです。

 健康睡眠。