倅や倅や 分かったな

 4時起床、読書、入浴、7時前にホテルを出発。池袋から渋谷へは山手線で15分、山手線改札から井の頭線改札までは早足で歩いて3分、勝手知ったる……と思ってたら、前回訪問から丸2年の時を経た駅構内は工事現在進行形の異形と化しており、迂回にも程がある大旋回で改札間移動に10分。時間には余裕を持って行動していましたし、東大入試の日だけは急行も電車も駒場東大前駅に停まってくれるし、別に遅れはしなかったんですけれどもちょっと文句は言いたい。

 駒場東大前駅は東口を出て階段を下りたらそこが東大正門、なんですが当日朝の受験生見送りをここでやるのは(人出密集具合を考えたら)無理筋で、反対側の西口改札を出たところに立っておくのが得策。ここから出てくる受験生はほぼ皆無、利用客は出勤・登校で駅を普段遣いしておられる地元の方々と、人の少ない西口ならば受験生と会って話をすることが出来るというのを知っている集団のメンバーだけです。コロナもありますからね、当たり前っちゃ当たり前ですけど、学校単位で「こゆこと」をやってるのは我々だけでした。
 当たり前のように駒場東大前駅を通学最寄り利用しているランドセルさんたちは、東大を「ちょっとそこまで」のご近所扱いしながら進学していくんでしょうねぇ。ホームうらやま。

 開場は8時20分(予定)ですが、私は7時半に西口着。文系35人中、半分に会えたら御の字というところでしょうか。付近のセブンイレブンでホットコーヒーを買ってから待機。寒いです。
 最初に到着したのは男子生徒4人組、連絡を取り合って一緒に来たんでしょうね。緊張はしているのでしょうが表情に出るほどではなく。私の方からは試験のアドバイスなんて「日常性の維持」以外にあるわけもなく、「タワー大神宮」の御朱印(お守り)を渡したら、二言三言言葉を交わして送り出すだけです。以降、生徒数人で、或いは一人で、或いは保護者の方と一緒に西口を出てくる文系組に御朱印を配っていきます。長く話しこんだ生徒は居ません。
 というか、西口を出て東口(正門前)に上がっていく坂の始まりあたりに誘導係の東大職員が居て、時折こちらに「あまり溜まって人通りを邪魔しないように」と注意をしに来るんですね。それを適当にやり過ごしつつ、アウェイの空間に降り立った生徒にホーム(K市)の顔を見せるのが私の役割。

 因みに、受験生があまり出てこない西口にも、インチキ(パロディ)予想問題集を携えた「時代錯誤社」のメンバーはやって来ます。今年の「配布係」は線の細い青年で、積極的に受験生に声をかける蛮勇は持ち合わせておられない様子。そこで、我らF高の文系組を送り出す前に。
 私「試験の合間の休み時間とかに、笑いたい?」
 文「笑いたいです」
 私「じゃあ、あそこに立ってるお兄さんから、予想問題集を受け取ってから(東口正門までの)坂を上がっていって下さい。多分、笑えるから」
 ってな感じで「時錯」に協力するなど。私も受け取りたかったんですけれども、お生徒さん方を送り出している内に気づけば居なくなっていました。

 西口は通称「駒下」、東口正門前から坂を下った場所にあるからです(今も通用する呼び方なのかは知りません)。逆に言えば、西口から出て来た受験生は坂を上って試験会場入りすることになります。何となく縁起も良いでしょう?

 8時30分で待機はお仕舞い。次の仕事は明日(二日目)の同時刻ですので、これから夜までは完全フリーということになります。先ずは、来たルートを逆行して池袋に戻ります。夕食を17時半の早い時刻に設定しているので昼食は回避、少し遅めの朝食を摂ることに。
 ザ・東京というモーニングはないかと考えた結果、東京名物「大戸屋」で朝定食を食べるという結論に。東口「大戸屋」に入るのは20年ぶりくらいでしょうか。大学時代はよくお世話になったものです。鰺の開きがメインの朝食セット、納豆をトッピングにつけて600円弱。雑穀米、味噌汁、香の物、メイン(鰺)、海苔、卵、大根卸し、小鉢。これはお得でした……夕食の「LATURE」ではこの20倍ではきかない金額を払うことになるんですねぇ。

 ゆったりと食事をしてから店を出たのが9時50分過ぎ。次なる目的地は勿論「聖地」、2年ぶりに「ジュンク堂」本店を巡礼です。10時開店時には店先に10人程度のお客さんが待機、これもいつものことですね。
 巡礼は先ず1階の新刊・企画コーナー、続いて地下1階の漫画、そのままエレベーターで9階まで上がったら、後は1階ずつ下りつつ興味があるコーナーを覗くというのがルートです。でもって、やっぱりここでの店内逍遙「背表紙読書」はあっというまに買い物籠を溢れさせます。2時間程歩いて1階の会計コーナーに。2年間の間に無人(セルフ)レジが導入されていました(有人レジよりも数が多かったです)が、私は有人レジを選択。3万円分くらいの本は、東京移動中に開く2冊を除いて全て自宅配送手続きをしました(無料です)。1万円以上購入した客に珈琲チケットが配布されるのも従来通り。あ、そうそう、今回は3階フロアの新書新刊コーナーで息を呑みました。岩波から霜山徳爾『人間の限界』が復刊! 取りあえず5冊購入しましたが、卒業する高3に配って直ぐになくなってしまうでしょう。
 4階のカフェで(チケットを使って)無料のブレンドコーヒー……だけでは申し訳なかったので、いちばん安かったマドレーヌを追加。朝定食がかなりのボリュームだったのでちょっと胃がきつく。

 池袋から丸の内線~田園都市線、目的地は神保町駅
 先ずは駅隣接の「岩波ホール」の看板(ジョージア映画祭2022)を写メ。白石加代子様朗読の大坪砂男「天狗」で酸欠になりそうな程に笑った他、幾つかの記憶に残る映画を観させてくれた「岩波ホール」は今年の7月で閉館です。その後、古書街散策、「東京堂」他新刊書店も何軒か(さっきあれだけ買ったのに、やっぱり数冊は買い足したくなるんですよねぇ)。いつもなら老舗喫茶店で珈琲をとなるところですが、今回は時間と腹具合との都合でスルー。

 神保町から原宿に出て(人出の多さ!)、太田記念美術館の特別展『信じるココロ 信仰・迷信・噂話』へ。江戸期に噂・迷信等々を「バズらせた」媒体としての浮世絵を概観するという試み。「火難目石」を軽々持ち上げる大鯰や、置いてけ堀・足洗い屋敷という水木絵元ネタ等、見ものチョイチョイ。いつもの特別展に比べたらややインパクトに欠ける内容で、客足は疎ら。
 原宿から渋谷へは徒歩で移動出来ます。その際、途中でタワレコを通るので少し店内を素見してみました。今回は購入作品無し。渋谷は辛うじて(本当に「辛うじて」)持ち堪えているという感じでしたが、K市のタワレコの凋落っぷりなんかを見ると、CDが「オワコン」だというのがよく判ります。

 渋谷駅を通り抜けて青山方面へ15分ほど歩く。青山学院大学の真ん前に目的地である『LATURE』が。店主さんがハンターにしてシェフ、ジビエに定評のフレンチはこれまでランチ利用が殆ど(というのが身の程)でディナー訪問はまだ2度目。コロナ禍下で上京が出来なかった期間、通販でハンバーグや餃子やを取り寄せはしたものの、やはり本店訪問の誘惑には抗えず。今夜は、覚悟を決めて贅沢かまします。

 2/25も「自粛御膳」をお休み、青山「LATURE(ラチュレ)」カウンターでお一人様フレンチ。コース、ワインのペアリング。
 アミューズ3種~前菜(鯉)~パテ・ショー~メイン(雉鳩)。
 アン肝のアミューズ、前菜の鯉など和風テイストを取り上げた前半戦が面白かったです。後半のパテ・ショー(名物のジビエ4種のパテに、鹿ロース・トリュフ・フォアグラの層)からメインのキジバト(何と丸々2匹分!)は、美味しかったんですけれども重いし味が重なってたし、最後の三口がキツかった(感想としては「経験を食べた」という風にならざるを)。1ランク安いコースのメインにあった蝦夷鹿(マデラソース)の方が私は好きかな(以前ランチで食べて絶句しました)。因みに、キジバトの皿には、飲んだら一発退場になる(と、クイズ好きなら知っている)例の水がついてきました。
 回し者みたいですけど、鳥のジビエに関しては「もりき」の鴨より美味しかったことがこれまで一度もありません。

 流石の人気店でテーブルは満席でしたが、お一人様用のカウンターは無人でゆったりと黙食。2時間半ほどかけて食事を終えた後は、寄り道をせずに池袋のホテルに戻ってそのまま健康睡眠。