腹もペコちゃんだし

 5時に起床、サウナと露天風呂。5時開錠の大浴場に一番乗りしたら、5分後にお一人、その5分後にお一人、60~70代と思われる小父さまがお二人。
 朝食は無し(ホットコーヒーのみ)、荷物をまとめてチェックアウト、徒歩15分で宮崎駅に行き、先ずは(9時開店直後の店舗で)お土産を購入。事務嬢さんへは辛いラー油、「もりき」マスターへは地ビール、Hさん(ジュニア)へは地元の焼酎、自分用に数種類の地元名物。その後、大きなバッグとお土産とをコインロッカーへイン。小さな手提げに文庫本を1冊だけ持って移動します。

 宮崎駅から延岡方面に電車で30分の高輪町。そこに、全国でも珍しい町立の美術館があると耳にしてふらっと出かける気になりました。
 駅前のタクシー乗り場には(当然と言ったら失礼かもですが)車はなく、看板に電話番号の会社に電話をしたら10分弱で到着です。「この街に観光する所なんてないよ~」と笑うお爺ちゃんドライバー、車内には「陰性証明書」が貼られていましたが、鼻マスクどころか上唇まで見える程度のマスクのかけ方を見るにコロナを全然怖がって居られない様子。そう言えば、昨日の夜・一昨日の夜と西橘で飲んだ(歩きながら色々な飲み屋の店内が見えたりした)訳ですが、宮崎はK市程、っつかあんまりコロナ対策に気を払っていない様子に見えました(これはぶっちゃけ、私が赴いた2店舗も含めて)。

 タクシー10分強で「高鍋町美術館」へ。到着直前に城址風の公園を横切ったので、美術館の後はそこを散策できそうだと当たりをつけました。
 特別展(町内高校OB・現役生の作品展)は正しく手作りでほのぼの、私が1時間滞在した間に訪れた町のオジちゃん・オバちゃんは皆こちらだけ観賞して帰っていきました(無料なのです)。
 私の目的は常設展(大人210円)。美術館所蔵800点の中からテーマ毎に選んだ20~30点が飾られ、半年ごとに展示替えがあるそう。令和4年度前期は「まなざし、あなたがいる」のテーマで24点が展示されていました。郷土の画家が中心ですが、中には富岡鉄斎日本画歌川国芳の版画、児島虎次郎の油彩画……等、私でも知ってる名前が幾たり。照明を落とした静かな部屋の中で1時間、独りで存分に作品を味わいました。児島虎次郎は、高鍋町で「児童福祉の父」と呼ばれ尊崇を集める石井十次の娘と結婚したことで高鍋町に由縁があるとか(知りませんでした)。妻の児島友を描いた「アイロンがけ」の点描は温かです。
 美術館に2枚だけ所蔵されているという久保田益央氏の作品「風景」が展示されていたのは本当にラッキーでした。宮崎出身で独立展会員、90歳を超えて現役、ということくらいしか判らないのですが、前に宮崎県立美術館で作品「グワンコロンコン」を観て、その異形(水木翁に通じる世界。民俗的だったり怪奇幻想的だったり。タイトルもそうですね)に釘付けにさせられたのです。職員の方に調べて頂いたら、ここと県立美術館、他に宮崎大学に作品が所蔵されているそう。いつか、ここでもう1枚の所蔵作品が飾られた時には是非観に行きたく。職員の方は、色々調べて下さった上に郷土出身の画集を貸して下さるなど親切でした。美術館の所蔵作品集(1000円)を購入、中に久保田氏の「風景」も。
 建物は新しく館内は清潔、100人以上が収容できるホールもあって立派なもの。駅を降りてすぐ見えた看板に「文教のまち」と書かれていたのは、多分偽りなしなんじゃないかなと、ここを見ただけでも感じられました。

 「高鍋町美術館」の隣にある「舞鶴公園」は城址を整えた上に神社・史跡・資料館、春は桜の名所……といえばこれは先日訪れたばかりのK市城址ともう全く同じですね。
 先ずは「舞鶴神社」にお詣り。本殿奥には、樹齢500年で国指定天然記念物の大楠が何本もの鉄ロープで固定されていました。太宰府天満宮から贈られた飛梅があるなど福岡にもご縁が。
 敷地内をうろうろと歩いていたら、「萬歳亭」なる復元建造物の庭に水琴窟があるのを発見。実物は初めて見たのですが、水を流したら確かにキラキラと美しい音が響きました(穿たれた小穴に竹筒を当てると更にハッキリと聞こえます)。

 電車の時間の都合で2時間強しか滞在できませんでしたが、美術館・公園散歩とも満足。この町には(タクシードライバーはご謙遜でしたが)他にも湿原などの見どころがあるようで、美術館と合わせていつかまた。

 宮崎駅帰着12時30分、駅前を高速バスが出るまで1時間半の時間があります。最後は「チキン南蛮」でダメ押しだと決め、五郎さんよろしく駅近くを小走りでキョロキョロ。10分程走ったら、駅近く路地裏に「ランチ」の旗を掲げた店舗を見つけ、近づいたら焼き鳥屋だったのでメニューを見ずに(嘘、本当はランチビールがあるかどうかだけは確認しました)飛び込みました。鶏を扱って南蛮を置かないはずはなく。
 店内手前左手には割烹型のカウンター、右手にテーブル席。先客は3組程。入店して「お好きな席に」と言われたので、飲む人間はぽつんが良いよねと、店内最奥の(入り口カウンターと別の)バーカウンターを指したらOKの返事。向かいつつ壁を見ると有名人のサインがずらり、有名店なのかも知れません。
 で、ランチメニューの前にドリンクだとグランドメニューを開いたら大正義、宮崎県内の焼酎100類超がずらりと並んでいます。圧巻、感動。これを見ただけで、次の夜はこの店でも良いかなぁ、などと(付き合ってくれるFくんは梅酒派で、Kくんは日本酒派なんですけど)。注文はランチビール、それと「チキ南」に小鉢3つが付いた(これまた酒飲みのためのとしか言い様がない)ランチ。
 文庫本を読みながら昼飲み。焼き鳥屋の鶏料理ですから当然メインは美味、小鉢の茶碗蒸しの具材にチーズを使うなど面白く。ビール(一番搾りプレミアム)は勿論瞬殺で、その後は地ビール日向夏の香り)を。「こいつ、飲むな」と思われたのか最奥おひとり様の方を遠くの店員さんがチラ見し始めたのを感じつつ、ぷしゅ~。最後は焼酎で、お詳しそうな店員さんに「日南産・芋感強め」とお願いしたら酒造大手門というところの特別な1本を出してくれました。車を持たず日南には行けない分をここでリベンジ。

 帰りの高速バス(新八代まで)は軽く寝落ちしたり、折坂悠太を聴いたり、文庫本をパラパラと開いたり。乗り換えた新幹線ではFacebookに今日の宮崎観光の記事をアップ。
 タクシーで自宅まで戻って入浴、荷解きもそこそこにお土産の地ビール・焼酎だけ持って自宅を出発。Hさん家に焼酎をお届けしてから「もりき」へ。ここへお土産を届けるまでが旅行なのです。

 4/5も「自粛御膳」をお休み、居酒屋「もりき」で独酌。
 小鉢2種~豚軟骨炒め~オムレツ。