まほらの戸に立つ 産土へ 手向けるは

 1限は高3文系漢文(今日は東大の古い問題)、授業終了後に即42人分の添削集計……が(幾ら設問が3つしかなかったとはいえ)1時間強で終了したのは就職後最速のレベル、これが旅行の力!
 年休を取って帰宅、入浴、旅行準備。母君には賞味期限の長いパンとジュースとをお備えして、2泊の不在をお詫びします。昼過ぎにタクシーで自宅を出発して、これから2泊3日(丁度48時間)の熊本旅行です。今日の午後は年休、明日はF校親玉大学の創立記念日で休み、明後日の午前中も年休。
 熊本では、K市には通学圏の身近(新幹線で早ければ20分!)故に却って観光をするという発想に至らなかった駅近くを中心に遊び回ります。夜の飲みは、今宵独酌、明日は67回生Iくん(熊医)と。

 タクシーでJRのK駅、新幹線20分強で熊本駅、6年前の地震以降この駅で降りるのは初めてのはず。先ずは、チンチン電車辛島公園近くに移動、電車は10分に1回程度の到着で予想より本数が少ない。どこまで行っても170円というのは有り難いですね。辛島公園では花博が開催されていましたがそれはスルーして先ずはホテル(丁度、桜町バスターミナル・熊本城ホールの真向かい)に行き、チェックイン前なのでフロントで荷物だけ預かって貰いました。身軽になって最初に移動する先は「くまはく」こと熊本博物館。ホテルからは歩いて20分弱で着くようです。

 桜町バスターミナルから歩いて20分、今年が開館70周年だという「熊本博物館」で、常設展及び企画展「肥後のやきもの」を観てきました。徒歩20分で汗達磨状態になる夏日、Tシャツの上にジャケットという格好だったのですが、途中からジャケットは脱いで手に持って移動。館内のプラネタリウムでは和田誠の絵本『ぬすまれた月』を大竹しのぶの朗読でという映像が観られたそうですが、最終上映が始まった5分後に到着したので観ることが出来ませんでした(残念ではありましたが、所要時間を考えたら結果オーライでした)。
 「肥後のやきもの」。熊本の焼き物と言えば小代焼しか知らなかったのは不勉強、廃窯になったものも含め江戸以来の長い歴史の中で幾つもの窯がある(あった)そう。コロナ自炊以降普段遣い(民藝)の買い物は幾度もでしたが、ハイカルチャー(?)としての焼き物の歴史を眺めるのも面白く……どうでもいいですけれども、ここの展示を見ながら新しいクイズ(早押し)の問題を1問思いつきました(私、一応、クイズ研究会の顧問です)。
 常設展では、熊本に人類が現れてから現代(熊本城再建)までの流れを概観。弥生式土器に取っ手のついたタンブラー型の物があるというのを初めて知りました(企画展のどの焼物よりも魅力的でした)。貝塚で発見された「貝面」なんてのも面白かったな。

 博物館は熊本城の敷地内にあるのですが、同敷地内には徒歩10分弱の場所に「熊本県立美術館」も。当然はしごです。
 熊本県立美術館『印象派との出会い ひろしま美術館コレクション』、写真OKの作品をバンバン接写していきます。ドラクロワだとか岸田劉生だとか、誰でも知ってる名前の人の作品をばんばん写メるというのは下品で楽しい(人目は気にならず……というか、黄金週間前のど平日で人が居ない!)。残念ながら、ルオー「ピエロ」とルドン「ペガサス、岩上の馬」と(どちらも素晴らしい)は撮影不可でしたが、売店で絵葉書・缶バッチが買えたので良しとします。色々巡っているためか、浅井忠の農夫の絵など、他の美術館の企画展で過去に観た絵と再会する機会も増えてきました。
 同『細川コレクション 黒の魅力』は別棟で開催の小さな企画展で、目白の「永青文庫」から「黒」をテーマに諸作公開。期間限定の菱田春草「黒き猫」も写真OKでした。私、「永青文庫」を『春画展』でしか記憶していなかったので、「細川」の文字まで見ておきながら一瞬「何で熊本で『永青文庫』?」と思ってしまい、我ながら何とも恥ずかしく。
 同『水・緑・花~くまもとの風景と自然の恵み~』も鑑賞。花博との連携企画だそう。
 企画展を3つも並行して行っているだけでなく、県内の装飾古墳のレプリカや出土遺物の実物を展示している「装飾古墳室」があるなど、見所が多く、ここでかなりの時間を割いてしまいました。「博物館」~「美術館」の2ヶ所を巡っただけで今日の観光は時間切れ、そのまま歩いてホテルに戻りチェックイン。

 大きな荷物は予め部屋に運び入れて下さっているというサービス。「ドーミーイン」は、普段(コロナ禍の影響を受けない正規料金)なら泊まれないクラスのホテルです。大浴場にサウナがついているのも嬉しい。荷解きをして携帯充電をセットしたら、早速最上階の大浴場へ。サウナ8分、露天風呂20分、サウナ8分。
 入浴後は外出着に着替えて直ぐにホテルを出発、流石に18時近くになったらジャケットを着ても汗をかくことはありません。

 4/27も「自粛御膳」をお休み、熊本泊の独酌を花畑の寿司「仙八」にて。
 L字型カウンターは10席満員の(コロナ的な)一蓮托生。私は予約のタイミングが早かったようで中央席にて大将と対面の状態、左に5人(同伴男女・企業人先輩後輩3人組)、右に4人(不動産業界人コンビ・常連夫婦)。18時一斉スタートでコース一通りが90分強という(良く言えば)潔さ・(悪く言えば)忙しなさだったんですが、気づけば日本酒を6合も飲んでました。酒の進む酒肴は逸品、鮨についても赤酢は苦手だという看板は今日を限りにおろします。
 ビール小瓶を注文して最初はお摘み。日本酒は九州の銘柄が中心で、お任せを1合ずつ出して貰うことにしました。
 ・刺身(タコ/トロ/イシダイ)
 ・生サバ(胡麻醤油/海苔/山葵)
 ・鰯/帆立/菜の花(鯛白子ソース)
 ・蛍烏賊共焼き(蛍烏賊擂り潰しと木の芽味噌と)
 ガリが出されて、握りに移ります。
 ・針魚
 ・ホヤ沖漬け(お摘み)
 ・甲烏賊
 ・太刀魚
 ・真鯵
 ・赤貝
 ・鱒漬け
 ・赤身漬け
 ・中トロ
 ・小肌
 ・車海老
 ・蛤和布吸物(お摘み)
 ・紫雲丹
 ・トコブシ(リゾット風)
 ・玉子(鱧すり身/甘海老)
 ・鉄火巻(コース外の追加)
 元々のコース(料理のみ)の値段は伏せますが、別会計の「小瓶ビール1本・日本酒6合・追加鉄火巻」の総計は税込6100円で明朗推して知るべし。
 因みに、今宵は私の右4人がそれぞれ「背負ってる」客という因果な夜らしく、業界人コンビは早い時間の0次会の影響で開始早々一人が顔面蒼白今にも倒れそう(途中で復活)、常連ご夫婦は昨夜の隣家家事(!)で眠れなかった上に嗅覚をやられており早退。4人を気遣いつつ残り6人を楽しませようとなさる大将(と店員さんたちと)のお人柄に感謝、いいお店でした。

 カウンターで全ての料理を写メって、内容をメモ帳に書く。最初にお店の方にやって良いか伺うんですけれども、今夜初めて「お寿司の食べ歩きをなさってるんですか?」と訊かれ。「素人だから書かないと忘れちゃうんです、折角良い物を食べたのに勿体なくて……あぁ、日本酒の飲み歩きはしてます」
 今夜の最初の日本酒は熊本「産土」という銘柄、これが「花の香」(日本酒チャレンジでは経験済み)の新しいアイテムだというのは聞いたことがあったのですが実物に触れるのは初めて、一口飲んではっとしました。奈良「風の森」、新潟「醸す森」系の絶品(★★★★★)。反射的に「これ、どこかで買えますか?」と訊いたら、特約店の縛りが厳しくて難しいという大将のお返事でした。
 後日「もりき」にこの話をしたら、「花の香」は最近「はせがわ酒店」の傘下に(?)入ったと教えてくれました。あ~、そ~なんだ~。

 6合も飲んで2軒目などあるはずもなく、ホテルに帰って即就寝……しようと思ったんですけど、「ドーミーイン」って1泊につきアルコール1本のサービスがあるんですよ。「金麦」1本飲んで寝ました。