ウッカリして甘いお茶なんて飲んだり

 昨日、職員室に足を踏み入れうっかり働き過ぎてしまったことを真摯に反省し、本日は働かない、為にも学校には一歩たりとも足を踏み入れない、という決定を下しまして。となると暇な独身は近場に一人で旅行だわ、と先ずは自宅前からバスに乗り、朝9時に西鉄K駅着。朝食は駅構内のうどん屋で昆布うどん大盛り。

 うどん屋ど真ん前のバス乗り場から西鉄バス、お懐かしや嘗て住んでいたアパートのある「苅原」(←読み、易しい)、どんな音便だよ「上津荒木」(←知らなきゃ絶対に読めない)、等々のバス停を過ぎ、左手広報に大観音像を見送り、共通テスト(←名称嫌)応援恒例のK工業大学を越え、40分強程車窓からの眺めを楽しんだら、茶の町・八女に到着です。身近過ぎて「観光」の意識が浮かばなかったこの町は、嘗て有名な酒蔵を訪ねるために一度だけ訪れたことがありますが、今日はそれとは違う名所を幾つか巡ってみようという算段。具体的な目的地として美術館は考えていますが、それ以外は一切白紙。

 福島の交差点でバスを降り、先ずは南へ徒歩15分、鉄道記念公園(踏切とレールの一部とが残っていました)を出て巨大な藤棚を進めば、「八女伝統工芸館」が。社会見学の中学生が小グループ数組に分かれて見学していた以外の客は私だけでした(朝イチでしたしね)。ここは展示・即売が一体になった施設で、日本一巨大な仏壇を見られたり、竹細工匠の製造実演が行われていたり、紙漉き体験が出来たり(現在はコロナで休止中)、燈籠人形の舞台の見事な再現が成されていたり、と色々楽しく。工芸コーナーで飾られていた銀杏の木の俎、木べらに木の杓文字、の3点を自炊用に衝動買いしてしまいました。和紙のコーナーでは、シールのセットを同窓同僚数学のお嬢様へ。地方の独り旅では大体1回以上あるのですが、私以外に客の居ない地元物販店の店員さんが異常に優しくしてくれた時に別段欲しいものが無いという時は、同窓数学のお嬢様向けに他愛ない(ぶっちゃけて言うと安い)お土産を購入することにしています(異常に優しくしてくれるような店員さんは、小さな子ども向けと言うと喜んでくれます)。

 「工芸館」前のバス停から1~2時間に1本出ている路線バス、時刻表とにらめっこで行き帰りのタイミングを計算しないといけません。西鉄バスではなく堀川バスですのでニコニコ現金払い、揺られて15分強の立花エリアに今回の小旅行で唯一の明確な目的地「八女市田崎廣助美術館」があります。以前、既にご退職の関西数学先生から教えていただいて以来ずっと気になっていた美術館。同地出身の文化勲章受章画家を顕彰、飾られている絵は20~30点というこぢんまりした建物でした。
 今日は、廣助が後年「阿蘇の田崎」と呼ばれるようになる前に集中して静物画を描いていた時代の展覧会が。それも良かったのですが、思わぬ拾い物だったのが、最近設置されたという五木寛之寄贈本の公開コーナー。つい先日、当地出身の五木氏が知人が館長を務めるこの美術館に資料本を大量(数百冊)寄付したそうで、その一部が展示されていました。よく生徒に、国語の試験の傍線部は古本に引かれた前の持ち主による赤線、と話すのですが、今回の展示は正にそれでした。赤線と付箋とに作家の思索の跡が見え、非常に興味深く。

 バスで福島地区に戻って先ずは天満宮にお詣り。手水がヨーヨーで埋もれていたり、境内入り口ではマスコットを名乗る木彫りのワンちゃんが出迎えてくれたり、「ようこそ天満宮へ!」というカフェみたいな手書き案内板があったり、何だかほっこりする場所でした。疫病禍収束を祈願。
 その後、商家の町並み散策は炎天下ほぼ無人。途中でフラッと立ち寄った無量寿院には坂本繁二郎の筆塚や山本健吉の墓があって、全然知らなかったので少し驚きました。

 街歩きで汗だくの身体を水出しの緑茶で冷やして(お菓子は八女の隆勝堂)、カフェに手配してもらった観光タクシーで「八女中央大茶園展望所」へ。片道15分、往復3500円の贅沢でしたが一目千両の風景圧巻で完全に元を取った気分。コロナ禍以降、陶器の里巡りに嵌まり、そうするとセットでついて来るのが棚田・茶畑なんですが、流石は八女、これまで見た中で最も広大且つ見事な景色でしたね(お茶自体はもう五番茶くらいだそうですけど)。因みに八女の棚田に関しては、9月に星野村で行われる「棚田祭り」がオススメ(この祭りに合わせて大量の曼珠沙華を咲かせるそうです)とタクシーの運転手氏から伺って俄然興味が湧いてきました。

 西鉄K駅まで路線バス40分の戻り道、K駅構内のスーパーマーケットで食料を買い込んで帰宅。学校に寄ろうかな(事務嬢さん・同窓数学にお土産を渡しがてら)、とも一瞬考えましたが、朝の決意を貫いて帰宅。入浴、自炊。

 8/2の「自粛御膳」。
 鱈鍋~鯛茶漬け~小鉢3種。
 590蔵目・栃木「熟露枯」(純米酒 山廃仕込み)。
 有田焼のセラミック鍋を初出し、真夏に汗だくです。旅行のお土産で自分用に買った出汁入り八女茶(粉末)が優れもの、お湯で溶いてそのままご飯にかけたら逸品に。刺身さえ買ったら家で鯛茶が食べられるなんて驚きです。