それなら来年大吉だろうね

 誕生日の日記の冒頭ですが、オリビア・ニュートン・ジョンの訃報、哀しい。30年来のファンでした(個人的なベストは1976年のアルバム『水の中の妖精』)。大学時代の2003年、東京国際フォーラムで観た(当時25年ぶりだったという)来日公演の素晴らしさは今でも眼に耳に残っています。

 さて、武雄温泉1泊2日の2日目、本日誕生日、というか漸く厄年脱出! コロナ罹患等(就職依頼初めて)複数の病院にかかるという体調不良(若しくは衰え)、仕事の調子も(高3現代文をやっといてなんですが)この1年間についての自己評価は辛いものにならざるを得ないってとこでしたかね。気を取り直して再出発、元気に働いて遊ぶ毎日に(今日は遊びます)。

 ツインベッドの部屋だったのですが、目が覚めたら最初に入ったベッドと違うベッドで寝ていました。夜中に一度起き出して水を飲んで、再び布団に入るときに「折角2台あるのだから」と思ったのでしょう。良い部屋に泊まったからといって貧乏性が消える訳ではないということです。起床は4時。ジャズが流れていたCDプレイヤーには、自分で持ってきたおおたか静流のCDを入れて小さな音量で。
 そろそろ空が白み出すかというタイミングまではベッドの上でスマホを弄って、丁度良い具合になったタイミングで部屋風呂に。37度の微温湯につかって、露天の空が明るくなっていくのを眺めていました(30分以上ぼ~っと)。お風呂上がりには、有難いことに誕生日のメッセージを下さった方々とのやりとりなど(有難う御座いました)。

 朝食(夕食同様、部屋食)にも品書きがついているんですね。
 ・食前(野菜ジュース)
 ・前菜(三種盛り/博多炙りめんたい・ちりめん山椒煮・おから)
 ・小付け(国産大豆納豆/小葱・辛子)
 ・焙炉(佐賀焼き海苔)
 ・台の物(武雄温泉湯豆腐/榎茸・水菜・旨出汁・胡麻・生姜・小葱)
 ・焼魚(甘塩鮭/檸檬大根おろし
 ・焼物(だし巻き卵/菠薐草の浸し・糸がき)
 ・御飯(佐賀県産棚田米/上場コシヒカリ
 ・椀物(いりこ出汁の白味噌仕立て/揚げ茄子・油揚・若芽・小葱)
 ・香の物(浅漬け三種/大根・茄子・高菜・梅干し)
 ・水菓子(季節のフルーツ/ヨーグルト・メープルシロップ
 ・食後(三瀬石清水紅茶)
 湯豆腐とろとろ、出し巻きも同じくらいとろとろ。これだけで旅館に泊まった甲斐があったと、一口食べた瞬間は本当にそう思えるくらいでした。佐賀、素晴らしい。昨日の夕食とこの朝食との間でやったことって、2回お風呂に入った以外はただ寝てただけな訳ですから、お腹なんて全然空いてないはずなんですけれども、全て(鮭の骨以外)ぺろりんと。

 朝食後には歯を磨いて再び入浴、これで部屋付き露天風呂には入り納めです。風呂から上がった後は、着替えて9時過ぎに旅館を出て(チェックアウトではありません)、徒歩2分の楼門へ。武雄温泉観光の本丸とされるのは、この楼門と武雄温泉新館と、ということになりましょう。
 武雄温泉の楼門、大正4年に辰野金吾の設計で。釘が一本も使われていない、朱塗りの楼門……芥川「羅生門」の2階建てもこんな感じだったのかしら。普通は外から眺めて写真を撮るだけなのですが、朝9時から30分だけなら(有料で)2階に上がることが出来ます(文化財なので壁に触るのは禁止で、急な階段の上り下りは割と怖いです)。2階天井の四隅には、辰野金吾による干支4種の図が彫られており、子・卯・午・酉はそれぞれ北・東・南・西の方角を表しているという趣向。同じく辰野金吾による東京駅、その内部天井に意匠された干支が8種類しかない理由は長年謎だったのですが、残り4種が佐賀の武雄にあることが近年発見され、設計者の遊び心なのかと話題になったとのこと。そんな歴史的事実他、楼門や新館の詳しい解説を、2階常駐の現地ボランティアガイドさんが。
 新館は同じく辰野金吾の設計、21世紀の再建ではありますが、内部には大正当時の浴槽や休憩場等がそのまま残されて自由に見学が可能になっています。

 旅館に戻ってチェックアウトの手続き。大枚を叩いてから、手配して戴いたタクシーに乗り込みます。出発は9時50分で、帰りの電車は11時14分初なので、あと1箇所だけ観光が出来る。

 陽光美術館の特別展『中国古陶磁と人間国宝 中島宏』、及び慧洲園散策。
 昨日訪問した「御船山楽園」直ぐそばの美術館・日本庭園。昨日訪問すれば良かったのですが、この土日が臨時休館だったので月曜日の今日しかチャンスが無く。
 美術館内の作品は全て撮影可能。こぢんまりした規模ではありますが、宋王朝時代を中心とした古陶磁と、郷土出身の人間国宝の作品とが整然と並べられています。平日10時一番乗りの私が30分会場独占、ずっとマスクを外していました。
 その後、走り雨の下(美術館の方が貸してくださった)和傘をさして、慧洲園を散策。池泉回遊式日本庭園、武雄の山々を借景にして、茶畑と瀑布との配置が美しく。20分程。その後、喫茶コーナーでグリーンティーを武雄の焼き物の器で。武雄は焼き物の里でもあるそうですが、温泉街近くには窯が無く今回は断念(タクシー20分の距離に有田があるので、その影に隠れているというのが実情みたいですが……)。

 手配したタクシーで駅まで戻り、11時14分の普通で鳥栖まで1時間、乗り換えてK駅まで僅か6分、帰りは80分弱の電車旅でした。K駅の改札で、ICカードのリセット手続きを済ませてからタクシーで自宅まで。Hさん家に珈琲豆のお土産をお届け。
 自宅に戻って母君のお供えを交換して、荷解き、洗濯。朝の観光と電車帰還だけでも汗をかいたので再び入浴。Facebook及び日記の更新。明日(9日)の朝にブルーシルエットの酒器が、明後日(10日)の朝に北海道鵡川の野菜が届くという連絡。

 16時に自宅を出てバスで西鉄K駅へ。喫茶店で1時間程読書の後、K駅~花畑駅という2分の電車移動(普通なら歩くんですが、ジャストのタイミングで急行に乗れそうだったので)、花畑駅から「G」までは徒歩10分弱です。

 8/8は「自粛御膳」をお休み、K市でいちばんの懐石「G」を貸し切って(カウンターに独りで予約を入れたら、個室は予約無しでした)、メニュー外の特別なコースを。勝手に名付けて「厄年脱出御膳」。月替わりの通常メニューとは異なるものなので、今日は紙に印刷された品書きがついてきました。
 【旬①】菱蟹塩蒸し(針長芋・花穂紫蘇・生姜ゼリー)
 【旬②】八寸(岩牡蠣・賀茂茄子・セルフィーユ/車海老・酒盗・白芋茎/黒鮑/諸子・蓮根/雲丹・チーズ・湯葉/マスカット・梅/牛蒡麩・鰻・粉山椒/赤飯・鮒鮨)
 【味】虎魚すっぽん仕立て椀(冬瓜・蓮芋・針葱・露生姜)
 【活①】焼き霜尾の身香香和え(青瓜・ちり酢)
 【活②】赤魚・炙り穴子(葉紫蘇・本山葵・昆布醤油)
 【火】のどぐろ油焼き(梨酢・焼き赤青万願寺唐辛子)
 【肴①】佐賀牛ロース岩塩焼き(ズッキーニ・酢橘
 【肴②】無花果の二色田楽(煎胡桃)
 【温】鱧あられ揚げ松茸あん(石川小芋・坊ちゃんかぼちゃ・茗荷・三つ葉・振り柚子)
 【粒】鮎粥(叩き陸蓮根・煮梅干し)
 【水】白桃
 八寸に赤飯を入れて下さったのと、ドリンクを「かなり」安くして下さったのと、確り誕生日を祝って戴きました。

 やっぱり、和食なら「G」だと改めて。昨夜の旅館だけでなく、過去に訪れた幾つかのお店を頭に浮かべても、ここ程の喜びは思い出せず。最初の菱蟹(一口食べて「ん~~~~~っ!」と悶えました)の途中で瓶ビールが1本半空いた時に「ヤバい」と気づいて調節……のつもりでしたが日本酒が進んでしまって。丁度、菱蟹を一口食べて「ん~~~~~っ!」となったタイミングで届いた若手体育先生・同窓同僚数学からのLINEが、お嬢様2人が「HAPPY BIRTHDAY たっぴぃ」を歌っている動画だったのが完全に拍車をかけました。
 福岡「喜多屋」(大吟醸 極醸)~福岡「繁桝」(純米大吟醸50)~長崎「よこやま」(夏純吟)~福岡「庭のうぐいす」(特別純米)~新潟「菊姫」(先一杯)~岐阜「恵那山」(純米吟醸)。
 コース終盤近くのメッセージのやりとりで、大学(東京大学クイズ研究会)の後輩2人が来月K市に来ると決まり、その場で夜の個室を押さえました。第7波で「キャンセルばかり」とお嘆きのお店にせめてもの恩返しをば、と。

 21時帰還、満ち足りた気分で就寝。完全無欠の満足感ですから、飲み直しの必要はありません。幸せ。