次の音 びっくりさせるこんな感じで着々組み立てる

 5時起床。お風呂を沸かしている間に旅行の荷物をまとめて、母君のお供えを準備。お供えを次に交換するのは明日の帰宅後で夕方を過ぎてしまいます、嗚呼親不孝。入浴後に着替えたら6時半。新幹線が駅を出るのが7時ですので、直ぐにタクシーを呼んでJRのK駅まで運んで貰いました。自動券売機で往復の新幹線(K駅~新八代駅)のチケットを購入して、駅構内のコンビニで歯ブラシのトラベルセットを購入したら、新幹線が駅に到着する3分前になっていました。
 宮崎がすっかり気に入ってしまった私、コロナ禍以降の2年間の間に4度? 5度? ともう分からなくなってるくらいの回数訪問しています。毎回必ず67回生Fくん(宮医)に飲みに付き合ってもらってて、彼と行った店が、居酒屋「もも鐵 えん」、焼鳥「鳥雅」、焼肉「みょうが屋」、懐石「渋玄」……の4軒だったかな。ということは、今日が5回目の宮崎になるのか(Fくんからは和食のリクエストで店は予約済み)。

 K市から宮崎へは、新八代まで新幹線で出てから駅前の高速バスに乗り換えるのが最も早く着く手段。新幹線に30分強、高速バスに2時間強、自宅を出てからおよそ3時間半で宮崎駅に到着している訳です。高速バス2時間は人によっては居心地悪く感じるかも知れませんが、私は中高6年間の寮生活で毎週K市(F校)~小倉(実家)を往復するために使っていたのでいっそ懐かしく思い出に浸れて気持ちいいくらいです。
 さて、予定通りに高速バスは9時55分に宮崎駅に到着。そして私は、宮崎駅徒歩5分の場所に午前10時開店の人気店があるという情報を事前にゲットしていました。夜のさし飲みは鯨飲必至(馬食かどうかは分かりませんが)、1食目を早い時間に摂っておくに越したことはありません。予定、完璧。

 宮崎駅近くのかつ丼屋「りとき」に、10時のオープンと同時に飛び込みました。路地裏のコインランドリーの隣、到達自体がなかなか難しそうな場所で、建物はプレハブどころかバラックの様相です。引き戸入店、目の前のフロアは私の自宅リビングの半分以下かも知れません、形は正方形。フロアの正方形の奥にもう一つの正方形、レジカウンターで区切られた奥の方の正方形がキッチンになっています(ですから敷地自体は縦横2:1の長方形)。
 フロア正方形を4象限に分けた(入口側から見て)1・3・4象限にそれぞれ2人がけのテーブルが1つずつ。そして第2象限に当たる場所に小さな小さなバイキングコーナーがありました。かつ丼屋さんの中に、惣菜その他が取り放題のミニバイキング。
 メニューを見て(ネットで下調べ済みでしたが)改めて驚き。副菜・ドリンク全て無料で取り放題なのに、かつ丼が税込500円。多めでも650円少なめなら350円(!)という価格設定です。普通サイズの500円を注文しましたが、注文後の揚げたてがたっぷり2枚も入っている確りとした丼物でした。勿論、美味。副菜で取った茄子煮浸し・納豆・サラダ・沢庵、全て良。珈琲にお茶、食後にヤクルトのサービスまで。私の少し後で入ってきた小学生の男の子は小さなバイキングを見て開口一番「楽しい!」と小声でお母さんに。分かる。母子2人で少なめを2杯注文していました。
 今回の宮崎旅行、いきなりの「当たり」です。かつ丼の甘辛さも、ワンオペ女性店主プレハブ店舗の倹しさも、500円でお腹いっぱいになれるところも、ここだけ全てが昭和でした。平成ですらない。

 10分歩いて西橘のホテルに到着(検温は35.8度)、チェックインまで大きな荷物を預かって貰うお願いをしました。身軽になって観光開始、先ずはホテル前の停留所からバスで10分の宮崎神宮へ。ここでコロナ退散、F校生頑張れのお祈りをしてから動き出すのがデフォルト。神宮から博物館は徒歩10分、そこから美術館も徒歩10分。今回の旅の主目的は特別展巡りです。

 先ずは博物館。水族館の無い宮崎県ですが、現在は「宮崎県総合博物館」で企画展『モンスター水族館 深海魚とサメのひみつ』が開催中です。
 先日の佐賀美術館の錯視展示同様、これも夏休みのちびっ子が対象の企画(訪問客が多い!)ですので仕方ないですが、展示の魚介類に関して、モンスター感(キモい・コワい)の過度な強調や、その性質からやや牽強付会気味に造形したキャラ化や、というのはオッサンには不要でした……が、展示其の物は見応え充分。特に私、個人的に、小さい頃から深海魚に目が無いんです。もうたまりません。
 水深別に区分けされて展示された深海魚たち。世の中の人気(博物館による人気投票の結果)はメンダコだとかダイオウグソクムシだとかがさらっているようですが、私の一推し深海魚は何と言ってもボウエンギョちゃんです。今回の展示では残念ながらボウエンギョちゃんは実物剥製ではなく複製で残念でした。が、展示の殆どは実物剥製で、日本中の施設からそれらを借り集めた準備奔走に敬意を。

 徒歩10分から徒歩10分で施設間を渡り歩く……んですけれども外は炎熱。バッグにはタオルを2枚入れているのですが、汗を拭き続けてすっかりぐちょぐちょ状態になっています。建物に入りさえすれば、涼しさと展示の素晴らしさでそれを忘れられるのですが。

 「宮崎県立美術館」にて、特別展『ホキ美術館名品展〜写実 永遠の存在感〜』。
 全く予備知識無し(写実絵画って何? みたいな)で出向いて、その「超絶技巧」に圧倒されました。知らないうち(訪問前)は「写真と同じなの? 似てるの?」とかぼんやり予想していたくらいなのですが、絵画実物を観たら写真とはもう全く違う。何がどう、そして何故違うのかというのは言語化の術を持ちませんが、でも例えば幾つかの作品に付された作者の言葉「描きたくないものは描かない(大意)」「カメラと違って手前から奥まで全てにピントが合う(大意)」等々がヒントめいていて楽しく。これはもう、いつか絶対千葉の「ホキ美術館」に行きたい!
 今回、私が断トツで魅せられたのは、2019年に「ホキ美術館大賞」をとった新進気鋭・中西優多朗さん(2000年~ )による「次の音」という作品でした(ネットで検索したら画像が出ます)。実物を前に20分、その後また行って戻ってじっくり観て。再入場不可故に立ち去り難い……ので、近くの係員さんに「『この』展覧会の図録は売られていますか?」と質問しました。で、「会場の外の売店で売られています」とのお返事を信じてそれならあとは図録で我慢だと退場……したらここで「展覧会あるある」、何と図録は作られておらず。売られていたのは「ホキ美術館」が数年前に出した所蔵作品集(係員さんはこれを図録と同一視したのです)だけで、その作品集に2019年のしかもコンクール応募作品など勿論載っていない。そうと知ってりゃあと10分は観たわい! と半ギレで売店を回っていたら有難や「次の音」が絵葉書になって売られていたので躊躇わず5枚ほど掴み取りました。中西優多朗さん、覚えとこ。

 15~16時代のバスが極端に少ないというのは時刻表を見て知っていたので、美術館を出た後は躊躇わずにタクシーを拾って市街地まで。宮崎駅前の百貨店「山形屋」で降ります。その「山形屋」の裏通りに今夜のお店(初訪問)があるので先ずはその場所を確認して、そこから徒歩1分の場所にある器屋「櫟屋」に向かったら……開いてましたっ! 3度フラれて4度目の正直です。
 最初の宮崎旅行で店構えに惹かれてフラッと入店したら、日本中の個人作家から集めた素敵な食器(陶器・ガラス・漆器)がズラリと並んで、まだ本格的に自炊を始める前でしたが幾つかの食器を衝動的に買い込んだんですね。その内の1つ(薄くて軽い陶器のボウル)は、未だに「御膳」で使い続けています。で、素敵なお店だから宮崎に行ったら是非にと思っていたんですが、ある時は定休日ある時は臨時休業とずっと縁が無かったのです。今回、リベンジ訪問……
 ……したら、9月から2割以上値上がりすることが決まったという伊賀焼の土鍋「長谷園のかまどさん」2合炊が現品限りで売られていまして、勧められるままに(衝動的に)買ってしまいました。「櫟屋」熱がず~っと燻っていた反動と、今年に入って何冊も読んだ平松洋子のエッセイで土鍋御飯の魅力が語られ尽くしていたのの記憶と、に完全ノックアウトです。他には、刺身・焼き魚からサラダ・パンまで何でも載せられそうな水色長方形の大皿と、汁物・丼飯・サラダ等々使い勝手が良さそうな銅色のボウルとを購入。全部まとめて、日曜日に自宅に届きます。

 ホテルチェックイン(検温は36.4度)、荷解き、入浴(大浴場サウナ付き)。大浴場の先客は5人、昨日は飲み過ぎた~なんて素敵なお話をなさっているその方々が何だか強面でらっしゃるなぁ、とぼんやり身体を洗っていたら、サウナから背中の龍が見事すぎる小父様が出てらしてドリフのコントかと思いました。何かされるわけじゃないからお風呂・サウナの居心地には関係ないですけど。
 たっぷり1時間弱かけて入浴の後、着替えて待ち合わせの「山形屋」へ。待ち合わせ10分前に着いたので、地下食料品売り場の酒屋で日本酒を1本買いました。蕎麦焼酎で知られる「雲海酒造」が作っている日本酒、これは未踏破なんです。

 8/24は「自粛御膳」をお休み、東橘の懐石「喜泉」に初訪問して、個室で67回生Fくん(宮医4年)とさし飲み。
 前菜・椀物・お造り・焼物・魚メイン・肉メイン・御飯。
 宮崎県下でも人気の和食。衒いのない極々シンプルな仕立てで美味、日本酒も進みました(日本酒のサービスがメチャメチャ良かったのはかなりの好印象でした)……が、やっぱりK市の「G」と比べてしまう!(コースの料金はいつもの「G」より1800円高かったんですが、軍配は電車道横綱相撲でK市に上がります)
 Fくんは医学部バレー部部長、部活の練習だけで今年3回も濃厚接触者になったというのは災難というかなんというか。因みに、とある事情でご両親がハンガリーを訪問なさったということ、トカイワインをお土産に頂戴しました、多謝。話題はFくんの将来のことからF校の(主にFくんと同じ外進A組勢の)進路志望の傾向のことまで、色々。

 2人で軽く2軒目に行って辛麺を食べたのに、ホテルに戻ってまたもやサービスの夜鳴き蕎麦を食っちまっただよ。ぶぅ。