オープンバーン

 森博嗣の文章が教科書に載る時代、タイトルは「『具体』から『抽象』へ」、新書『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』の一説です。本文が教科書7頁分あるのですが、その中に語注がついた語が僅か3つ(キャラクター・ディテール・バール)のみ。これは現代文の教科書教材としては非常に稀と言ってもよい少なさで、その事実が本文の言わんとしていることを端的に語っています(それを試験で問うのはやや酷でしょうが)。
 中3の現代文でその森博嗣の授業。大体の場合、授業の冒頭10分程は扱う教材に関係のある概念だったりトリビアだったりを話すことにしているのですが、今日は珍しくちょっと前の授業で生徒から受けた質問について語りました。私は(恐らく属人的な理由で)生徒……特に高2以下の生徒……から質問を受けることが殆ど無い教員なのですが、先日、中3某さんから受けた質問が現代文の要諦であるところの「これって、あれじゃん」の典型例だったのにちょっと感心したんですね。それで、「抽象」という教材の主題に絡めてお話しした次第。生徒の質問について授業で話すのは、多分、19年務めて(忘れているケースがなければ)3度目です。

 2泊3日の東京旅行から帰ってきたばかりだというのに、今日も今日とて福岡1泊の旅行。明日は授業が5限だけなので午前中を年休にしました。折坂悠太のライブ鑑賞なのですが、遅くにK市に戻るのが面倒なので福岡で飲んでホテルで寝ちゃえ、という年寄りめいた算段です。夜は、春吉の日本酒バー「雲レ日」を予約済み。
 授業4コマを終わらせ、時間割の雑務を終えたら1時間の年休を取って退勤。西鉄K駅までバスで出たらそのまま特急電車で天神へ。本屋等に寄る時間は全くないので、天神駅徒歩5分のホテルにチェックインしてひとっ風呂浴びたら、直ぐに着替えて徒歩移動です。

 「DRAM LOGOS」は15年ほど前に教え子の56回生Mくん(当時はF高校在学中)とフジファブリック(当時はVocal志村正彦)を最前列で観た時以来でおよそ15年ぶり。詳しい場所が思い出せず、且つスマホの地図案内が不調で(私の操作が不味いだけかも知れません)、会場に電話で尋ねることにしたんですが、対応した店員が「西鉄グランドホテルですか? 近いです! 周りの誰かに聞けばもう直ぐです!」と教える気がゼロで好感度大でした。

 折坂悠太ツアー2022「オープンバーン」@福岡「DRUM LOGOS」、素晴らしかったです。やっぱりこの方は、若い世代に「浄念」を伝える歌い手なのだと改めて。演奏は「重奏」バージョンで、「合奏」バージョンよりもプログレ寄りなのかな。ツアー名通り、舞台上下手にたき火(風)のセットが組まれ、MC及び弾き語りの時にはセンターからそちらに移動して語ったり奏でたり。カバー曲、セルフカバー曲(アニメ関連の提供曲)や未発表曲が幾つか含まれセットリストの全曲網羅は出来ませんが、音源化済の持ち歌についてはデビュー作から最新アルバム『心理』まで隔てなく。未CD化曲の中では、2年前に配信ライブで観た時に完全に持っていかれた「夜香木」が生で聴けたのが嬉しく。子連れ客が2組居たのですが、その子どもの笑い声や喃語すら効果音に聞こえるミュージシャン方の包容力に心底感心させられました。
 瞠目はMC、突然舞台上で何の説明もなしに「ギョチョウモクモースカモースカ!(魚鳥木申すか申すか)」とバンドメンバーを指さしたシーン。この遊び、小学校時代に同じクラスのお友達(お寺さん)が朝の会で教えてくれた時以来、30年ぶりに目にしました。

 アンコール「トーチ」のアウトロを背に会場を出て、タクシーで春吉へ。日本酒バー「雲レ日」は定番無し(日替わりのみ)の日本酒が冷蔵庫にずらり数十種類、女性スタッフさん手ずからのお摘み(10数種の中から3種選んで500円)をアテに楽しむ人気店で、カウンター10席は平日休日問わず常に満員(予約をしないと入れないことが多いです)。流石に未踏破の蔵はありませんでしたが、今夜もスタッフさんとお話をしながら、島根「丈径」~三重「田光」~東京「十右衛門」~福島「楽器正宗」~滋賀「笑四季」~三重「KAWABU」、と日本中を行ったり来たり。提供は1杯90mlなので全部で3合しか飲んでいませんが、お店の中は時間がゆったり流れているのでせっかちな私ですらこの量(と最初の小瓶ビールと)で2時間超の長っ尻です。
 最初に入った時に横に座っていた4人組、佐賀の鹿島から来たようでずっと「能古見」は無いのかと燥いでたおっさんがいちばんの偉いさんで他はその取り巻きという感じだったのですが、泥酔の偉いさんが最後はスタッフさんにそれは無いだろうという絡み方をしていたのがかなり不快でした。取り巻きも「それは店が違います!」とかあやしてたけどどんな店だってそれはアウトだろ、と。20分程度で帰ってくれて良かった。

 2軒目は無し、タクシーでホテルまで戻った後は、自宅のより質の良い枕でぐっすり。