われわれは何者か

 朝8時過ぎの職員室を訪れた女性、中学生のお母様かと近づき「どなたか教員とアポイントメントがおありですか?」と伺ったところ「T先生です……」と返ってきた声で気づく、あぁ、56回生Oさん(九医卒のお医者様)じゃないですか。30歳そこそこの女性を保護者扱いとはこれはご無礼をば、とT先生のいらっしゃる「講師控え室」にOさんをご案内。今日は、中3・高1に卒業生が様々な職業について講演を行う「進路講座」の日なのでした。高校女子1期生である56回生は私も高1~3年(私にとっては就職2年目からの3年間)を副担任として併走した間柄です。
 1限が東大文系漢文二次対策、その後は添削をガシガシ。13時に定時退勤、本日はK市美術館にて青木繁坂本繁二郎の二人展を観た(2度目)あと、森村泰昌氏の特別公演を聴くことになっています。

 森村氏、御年71とは知らなかった(もっともっと若い方かと)。何せ、作品から著書の表紙を含めて、殆ど異性装のお姿しか見たことがなかったですからねぇ。青木繁坂本繁二郎を指して「二人の『繁』」と呼ぶ森村氏の講演、100分。
 黒田清輝が日本に西洋画を持ち込むときに、西洋の「内発」を持たない日本人が解さない文化的素地や「闇」の部分を捨て、日本人が受け入れ易そうな(印象派的な「光」の)部分を持ち込んだ、という話(仮説?)から。その上で、青木繁はそれに逆らうような形で西洋の「内発」とも言えるギリシア・ローマ時代以来の文化や西洋古典絵画の諸要素を「海の幸」に持ち込んだ(だから「海の幸」は日本西洋画の中における異端中の異端)、という見立てを、古今東西の絵画作品と比較しながら。
 その後、青木・坂本をゴッホゴーギャンに比するという大胆過ぎる設定(ご本人曰く、妄想)の下に両者の絵の謎解きを。学術的な正確さはさておき、制作なさる美術作品と同様、離れた2つのものの中に「これって、あれじゃん」という類似を見抜く遊び心は、観て聴いてするこちらをワクワクさせてくれました。
 講演の途中で「木下直之先生から教えてもらった本なんですけど〜」と唐突に紹介されたのが、九十九里浜の全裸の漁師だけを集めた写真集だったのには危うく吹き出しそうに。さすが木下先生だわ(後日、これをTwitterで呟いたら木下先生大好きっ子のまっぴぃが即座に反応してくれました)。

 西鉄K駅に移動して食材の買い出し、バスで一旦帰宅。「冬物語」の500ml缶1箱(24本)が到着していたのを宅配ボックスから引き取り。入浴後に再びバスで西鉄方面へ。
 夜は小料理屋「A」で小鉢(と酒と)を浴びる。ハムマリネ・イクラ・おでん・数の子・あん肝・ぬた・蓮根はさみ揚げ。帰宅後に少しだけ飲み直し、きりざいを作って日本酒を。