6時半の朝食バイキングは、2日ぶりに再会したポテトサラダとコーヒーとだけ。懐かし美味い。入浴、着替え。本日の移動先は五反田からは電車で少し遠くまで、初訪問の立川駅です。
 立川駅、都会。北口を出たところから始まるモノレールの線路下に沿って真っ直ぐに町を北上すると、左手に見えてくるのが「GREEN SPRINGS」と命名された一画。立川の近代的施設と昭和記念公園エリアの自然との境目に位置する場所に、恐らく文明と自然との交差をコンセプトにしたと思われるテーマパークが、これも恐らく最近オープンした模様。未来を見据えた健康志向とはこのようなものか、取り敢えず中心部の噴水パークには家族連れと女子グループとを中心にぎゅう詰まりの人々がバッテラみたいになってます。ちょっと近づくのが怖くなる人出ですが、折角来たのだから私も米粒になる勇気……の結果、中心部を抜けて入館した美術館は程々の訪問客で至って静かな空間でした。
 立川「PRAY! MUSEUM」の特別展『junaida exhibition IMAGINARIUM』へ。『怪物園』や『の』(←大傑作!)などの絵本で知られる作家・junaida氏の個展。総ての絵本の原画を含む500作超が一堂に会する圧巻のコレクションです。圧倒的なイマジネーションと精緻な描き込み。訪問者の殆どはお子様連れのママ(時々パパも)でしたが、ぐいぐい絵に惹き込まれていたのは大人の方だったようです。不思議さと美しさと恐ろしさとが同居した作風を、有栖川有栖伊坂幸太郎が自作に起用したというのは宜なるかな、ですね。私は、前述した大傑作『の』の全原画が観られたことで大満足。オッサンになってから読んだ作品ですが、幼稚園時代に読んで夢中になった谷川俊太郎和田誠『これはのみのぴこ』の感動が再びという経験でした。

 往復90分強の電車旅の目的は美術館だけだったのですが、折角ここまで来たのだから……と、立川から電車で10分の八王子駅へ。こちらは立川ほどの「都会!」ではない下町感、皮肉屋の伊勢正三ユーミンに東京と言ったって所詮は八王子と言い、ユーミンがあなたは東京オリンピックを知らないでしょう? と返した話は有名ですが、その八王子の近くまで来てファン歴30年が聖地巡礼をしない手はありません。駅から真っ直ぐ徒歩10分、「荒井呉服店」はシャッターが下りていましたが、写真を数枚撮りました。
 八王子から新宿へ向かう電車で川を越えながら、ユーミンが八王子だったという「距離」が大事なんだということを実地で理解。東京の「ウチ」の人間でもあり、東京を「ソト」から俯瞰する(憧れる)人間でもある、という両義性ですね。

 帰りの電車が新宿に到着する直前には少しうつらうつらとしてしまう程度には疲労。深夜・未明の往復で六本木の夜を謳歌した中学生のユーミン、感性もそうだけど体力がバケモンでしょ、と思う。オッサン、一旦五反田のホテルに戻って、ゆったりとお風呂に浸かりました。その後、着替えて今度はその六本木に、42歳にしてほぼ初訪問(少なくとも駅で降りるのは初めてです)。目的地は「東京ミッドタウン」で、用向きは午前中と同じく美術展鑑賞。「サントリー美術館」の特別展『京都・智積院の名宝』。長谷川等伯プロデュースの国宝障壁画が初めて寺外で一挙公開されると聞き、閉館間際にすべり込みました(滞在時間は僅か30分)。美術館の後は、施設内の箸専門店で、竹・漆の2種類(どちらも24cm以上のサイズ)を求めました。

 「サントリー美術館」は当初訪問するつもりは無かったのですが、夜の店が麻布十番だということで急遽組み入れた想定外。こういう想定外が起こるのは、勿論夜の店を手配した幹事が私ではないから。上京時の飲み会を人に任せるというのは普通しないことなのですが、56回生Oさん(食品開発→コンサル)は絶対に「通」だろうという確信があったのです。
 という訳で、12/29の夜は麻布十番の「トラットリア ケ パッキア」に56回生4人(Oさん・Oくん・Nくん・Mくん)と。
 流石Oさん、お上りオッサンが絶対に知らない街・ジャンルを的確に衝いてくれました。生ハムメロンなどという分不相応な皿、諭吉に届こうかというワイン、42歳がアラサーの教え子に「大人とは何か」を教わる夜。因みに、NSCのエンジニアMくん(卒業以来!)は冬のボーナスが「やっと」100万円を超えたんですって、羨ましい!(嫉妬、隠さんぞ)

 ホテルに戻って健康的な入眠。