春が待っているのさ つまづいて学ぼう

 本日3月10日は、毎年恒例「F校のいちばん長い日」。東大・京大の合格発表です。高3担任団緊張の朝。私も、2年前(高3担任)・去年(同副担任)は気が気ではありませんでした。高2以下は通常授業で私も高1現代文が4コマありますが、高3二次漢文の授業担当として結果が気になる所。夜は恒例、高3担任団慰労の(公式の)大宴会です。

 2・3・5・6限が授業で、ドンズバで空いてる4限の時間が合格発表。ということで、受験生の○×チェックに立ち会うことが出来ました(これについての詳細は、2015/3/10の日記に書いています)。高1Aの生徒の中には、お兄さん・お姉さんが東大を受験した生徒が2人いたのですが、そのどちらも合格していました。1人は65回生現役、昨日の日記に書いた4月に転校する女子のお姉さんです。そして2人目が凄かった。別の女子生徒のお兄さん(Yくん)は64回生で1浪生、現役の高3時に現代文を担当したので見知った生徒ではあったのですが……。

 そのYくん、合格発表直後に来校なさっており、ご挨拶。
 私「あのさ、Yくん、合格してたよね?」
 Y「はい」
 私「あの、えっと、御目出度う御座います……なんだけどどうしても信じられない! どうして、センター720(8割)から逆転が出来たの?」
 と、とてもお祝いとは言えないくらい失礼なことを言ってますけど、いやほんとに進路指導室でも現役生を差し置いて話題の中心になったのはこのYくんのウルトラ大逆転劇(後で電話でお話をしたお母様も「奇蹟ってあるんですね……」と)。
 私「合格したから何言ってもいいと思うけど、正直自分でも受かるとは思ってなかったよね?」
 Y「えっ、自信ありましたよ?」
 私「嘘っ!」
 私の失礼さよりもYくんのメンタルの強さの方が目立つ勢い。聞けば、初日の1限(国語)の時に腕時計が壊れたから目覚まし時計を持ち込んだら試験開始直後に没収されたとかいう聞く方の腹筋に厳しいエピソードまで持ってる(2限以降は、「めっちゃ腕時計持ってた」友達から1つ借りたそうです。これもまた香ばしいエピソード)。

 さて、折角なら実験。凱旋のYくんを授業後の教室に案内して、我ら高1Aに在籍の妹君(←多分、不合格を予想している)に合格の生報告をさせたら、どうなるか?
 妹「えっ、お兄ちゃん、どうしたの?」
 兄「……受かった」
 妹「きゃーっ!」

 放課後の掃除中。
 私「ねぇねぇ」
 妹「何ですか?」
 私「兄妹って、本当に『きゃーっ!』って抱きついたりするんだね」
 妹「(崩れ落ちながら)いやあれは……」
 御目出度う御座います。

 夜は、市内のホテルで高3担任団の慰労会。大勢の先生方の集いは、忘年会ならぬ所謂「忘年度会」でもあり。中華料理で存分に酔っ払って解散。高3担任団は当然二次会ですが、高3体育先生から「お願い!」と言われて幹事即諾。2日前の高3担任団飲み会と同じ「K」に電話したら個室OKだったので予約。同じ店だから徒歩10分の順路を説明する必要もなく全員が集まれます。参加者全員に「K」集合をお伝えした後、赤い顔の先輩方がその徒歩10分を歩いているだろう直線路を通らず、ちょっとした迂回路を全力疾走して5分で「K」に着。人数を伝えて最初の料理を注文した後、店の外で待ってやって来る先生方を深々と辞儀にてお出迎え。「いつの間に追い越したの?」と大笑いの先生たちですが、担任団でもないのに参加するんだからこの程度の「芸」は見せないとねぇ……って、年度末だからか、何だか私は幹事の仕事しかしてないみたいな日記になりつつあるような気も。

タマネギ目にしみても 涙こらえて

 昨日、春休み中の60回生Hくんが職員室に遊びに来ており、私・世界史先生との会話。東大工学部で4月から院に行くということで。
 私「所属はどうなるの?」
 H「社会基盤学科です」
 私「解る?」
 世「さぁ」
 H「解り易く言うと『土木』です」
 私・世「「解る!」」
 H「最初『土木』って名前の時はずっと底割れしてて、『社会基盤』に改名した途端に学生が殺到して」
 私「やっぱり、世の中は文系が支配してんだねぇ」
 世「ねぇ」
 夜にK市で友達2人と飲む、5000円の和食でいい店はありませんか? と聞かれたので、その場で「梅の花」に電話して春のコースを個室で予約したげました。パシらされる文系。

 さて、本日の私は学校に行かずに出張。F校親玉大学の看護学科棟に高1A組の生徒50人(1人だけインフルエンザで出席停止)が集まって、家庭科先生指導の下で調理実習です。
 作るべきメニューは親子丼・味噌汁・マドレーヌ、の3品。規定のメニューの他にも余裕があれば材料持ち寄りで作っても……の「余裕」も様々。9班に分かれた生徒たちはキャアキャア言いながら、焼肉だ麻婆豆腐だ鶏飯だロールケーキだチョコパイだホットケーキだみたらし団子だスイートポテトだドッグフードだ(!?)色々遊んでました。でもって、大体成功して結構美味しいものが出来てました。例えば「鶏飯」なんてのは来年度の「男く祭」食品バザーの予行演習だそう。色々考えてますねぇ。
 普段から「お手伝い」でお料理スキルを持っている生徒を中心に、マドレーヌの卵を「リボン状」に混ぜるという加減に困ったり、ガスの元栓がどこにあるのか分からず捜し回ったり、「余裕」の調理の方に我を忘れて熱中した結果肝腎の課題料理の方を忘れてしまってたり……先日のテーブルマナーみたく食べてる生徒を観察するだけでなく、作ってる生徒を観察するのも割と面白いですね。

 女子生徒の何人かは、(塩分のことを気にしているのか)自宅の食卓には絶対に味噌汁が上がらないと言っていました。躾色々ですね。味噌汁は出るけれども、具だけしか食べてはいけないという家訓がある家庭も。
 話は脱線しますが、A組に『クレヨンしんちゃん』禁止令の家庭が少なからずあるというのを知ってこれまた驚き。私なんて、『おとな帝国』『戦国大合戦』『ロボとーちゃん』の3作が人生の映画ベスト10に入ってるのに。

 片付けやお駄弁りや、解散は13時でしたが何となく残ってた生徒たちが全員帰宅するまでには更に90分ほど時間がかかりました。高校生あるあるです。
 高1Aはあと一週間ほどで解散して、4月からは文理別の新しいクラス分け、外進と内進とが混ざることになります(高2から高3にかけてはクラス変えがないので、次のクラス分けが最後)。解散前最後の集合写真を、(卒業アルバム用の写真撮影をなさっている)カメラマンさんにお願いしたり、何人かの生徒の携帯で撮ったりも。実は、A組の女子生徒が1人、3月いっぱいで(お父様の転勤で)東京に転学することが決まっています(同じくF高生のお姉さんは今年現役の3年生として東大を受験しており、たぶん合格しています)。その最後の想い出作りを兼ねての集合写真です。

 東京で銀行マンしてる55回生TくんとTwitterでやりとり。3月末の上京で飲む約束をしているので、エリアと時間とを確認しました。今回は、奮発して東京駅の焼き鳥「瀬尾」を。
 東京とK市とでこんなに気軽にやりとりが出来る(Twitterだけでなく、私はやっていませんがLINEやFacebookやもある)時代だから、件の女子、東京に転学してからもF高同級生との繋がりがなくなるわけではないんです。だから、淋しくはないです……いや、やっぱり淋しいかな。

すべてがFになる

 5時入りで授業準備。8時からは、高1現代文の授業で使う文章の朗読テープを作成するために生徒と二人きりでLL教室録音ブース。SHR、授業は現代文1コマ。

 今週は前期入試の合格発表が10日まで。受験者の数的に最初の盛り上がりを見せるのが本日8日で、九州大学の発表が本日行われるんですね。文系教員としては医学部だけ見てんじゃねーよ、と言いたいところですが世間様の注目は九医に何人通るのかというところに尽きましょう。
 で、九医に何人通るのか。
 28人。
 驚きましたね。現役15、浪人13の圧勝。1浪の64回生が男女とも面白いくらいに通ったのがこの人数を支えたと言っていいのかな。我らが63回生(2浪)の女子が1人合格したのですが、高1~3まで担任をされていたベテラン体育先生にお伝えしたら、ガッツポーズで喜んでおられました。体育先生は本日中学送別球技大会。恐らく、有志打ち上げがあろうかと思われますが。
 私「今夜のビールは美味しいでしょうねぇ」
 体「アイツの合格で100杯は行けるな」

 高3担任団で進路担当、同窓同僚数学と。
 私「100とかの人数しか居ない医学部1年生の中の28人がF高出身者。というか、どうせ今1年生のF高出身者の2~3人くらいは留年するだろうから、実質的には30人がF高出身」
 数「お前、こういう時、碌なこと言わんよな」
 私「一回目のお祝い、行っとく?」
 数「あぁ、進路指導部長が行こうか、って」
 私「お店なら、あるわよ?」
 ということで、高3担任団有志と進路指導部長、と賑やかしの私、で合計7人。当日というか3時間前の予約なのに飲み放題付きコースを出して下さるという良店「K」を予約。昨日、保健室のベッドから3月末の国語科慰労会を予約したのと同じ店です。
 完勝に、乾杯……う~ん、でも、やっぱり完勝じゃなくて「圧勝」かな。入試ですもんね。

5年かければ 人は貌だちも変わる

 昨日は21時に布団に入ったのですが、1~2時間ほど断続的に寝たり起きたりを繰り返した後は全く寝付けず、2時過ぎに睡眠を諦めて読書、入浴。5時入りの職員室で担任業務・授業準備その他のデスクワーク。花粉症の症状も併せて体調はグダグダですが13年もやってりゃ身体は自然に動きます……始業後、1時間だけ保健室で寝させてもらいましたが、別段体調不良という訳ではありません。保健室のベッドから居酒屋に電話し、3月末の国語科慰労会の予約を取る不良教員。

 1時間の仮眠で頭はスッキリ。1時間の年休を取って学校を中抜けし、午後に徒歩往復60分は血痰ネーミングショッピングモール「You Meタウン」。タワレコ矢野顕子×上原ひろみの新譜を買うためだったのですが、それと別にANATAKIKOUの新作が売られているのを見つけてそっちの方に歓喜。フルアルバムは5年振り。松浦さんのソロプロジェクトになると決まった時に、少なくとももうフルが発売されることは無いと諦めました。現在は、松浦さんをサポートするメンバーがライブ・レコーディングの時に集散するという劇団方式で活動しているとのこと。才能を眠らせない人々に囲まれているというのは素敵なことですね。帰りにウォークマンで聴きましたが「これぞ!」の出来で本当に嬉しくなりました。

 夜は「もりき」。F校修了式の18日に常連を集めた「日本酒の会」を開くとのこと。参加者がそれぞれに「お気に」の4合瓶(条件は純米酒であること)を持ち寄って飲もうという趣向。店(マスター)のお薦めが出ないんだったらそのコンセプトにはさして興味はなぁ、と思ったんですけれども、わざわざ11日の予定を一週間ずらした(11日は私がユーミンのコンサートで参加できないのです)と聞いたら乗らないわけには行かない。折角だから、持って行くお酒は10年来飲みたいと思って飲めていないアレにしようかなぁ。

欲深いな本当 無駄な話 矢継ぎ早に

 ここ一年ほど、ちくま文庫との相性がどんどん上がっています。ちょっと思い返すだけでも、山田風太郎『わが推理小説零年』、神崎宣武『聞書き 遊廓成駒屋』、今村夏子『こちらあみ子』、瀧波ユカリ・犬山紙子『マウンティング女子の世界』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、アンソロジー『お~い、丼』……。どれも傑作でしたが、高1の授業資料に使えそうな本はないかなぁ。

 5時入りで授業準備・高3添削。高3の添削は、後期京大法学部の小論文です。持ってきた高3氏はほぼ確実に前期文一に合格するそうなので(担任団曰く)、この添削は客観的に言って仕事としては「無駄」な部類に入ります。ただ、こういう「無駄」は大歓迎で、勉強になるし面白いし(言い方はあれですが)暇が潰せるし、善いことずくめなんですね。高3の後期添削を始めてから、凡そ仕事に関して「無駄だから、しない」という風に考えることは殆どなくなりました。
 授業は高1現代文が1コマだけで、お昼に前述の高3氏と面談。書き方・内容の両面から気になったことをお伝えして、同じ課題をもう一度書いてくるようお願いしました。

 夜は、自宅徒歩2分の大衆中華「H」で独酌読書。かつてF校の公的宴会(例えば3月10日の高3担任団慰労会)は某ホテル一択でしたが、料理長だった「H」のマスターが退いた後、何となく疎遠になっていました。そのマスター、独立後は福岡修行を経て、私の自宅近くに開店して下さったのは幸運。マスターは酒豪で「もりき」の常連さんでもあり、今日も「もりき」の話題で盛り上がり。あと、昨年同じ町内に出来て私のお気に入りになった肉料理屋「I」のことも随分気にしてお出ででした。

東に行きましても 土地 土地のお兄貴さん

 黒谷知也『書店員 波山個間子(1)』読了、★★★。主人公の生活は我が身に通じて共感、性格には違和感、漫画としてはイマイチ、カバーを外した時のデザインには唯一「おっ」と思わされました。

 3時起床、いつもよりもスローな準備を経て学校着は6時。日曜日だというのに授業準備や担任業務やのデスクワークにうつつを抜かして、それもエラいことスムーズにうつつを抜かすことが出来たようで予定以上の仕事を終わらせて猶10時。仕方ないので仕事を切り上げて西鉄へ徒歩移動。書店逍遙の後でミスド読書(←「みすどくしょ」と読みます)。注文はホットティーとドーナッツポップ2個で単品価格350円。ポップを8個に増やしたらモーニングセット価格360円になります、と言われて(んなに食えるかと)お断り。年齢ですね。選書も年齢らしく小林信彦『おかしな男 渥美清』で、開いたらこれが冒頭から面白くて。

 15時にふらりと入ったブルーカラー御用達、昼酒の聖地「K」にてビール・熱燗。肴は鰹のタタキ、冷や奴、野菜炒め、揚げだし餅、おでん2種、コーンバター。本は引き続き小林信彦
 の後、市内2時間ウォーキング(音楽は高橋徹也)、帰宅後に入浴、就寝20時半。
 ベッドの中ではTwitterで月末上京の予定を調整したり、実際に東京の店舗に電話を掛けたりも。

それはせんせい 声を限りに 叫んでも

 56回生警察庁Mくんからの「食べログ」依頼は旨い肉。条件は①渋谷エリア、②「三百屋」「いのうえ」「松木家」以外、③Mくん兄弟とサークルの先輩(35歳)2人で合計4人、③五月蠅過ぎない、④予算7000円、というもの。取りあえず「三百屋 お弐階」「ゆうじ」「永秀」の神泉3軒を軸に数軒を紹介したら「永秀」が琴線で予約もとれたそう。事後でこんなこと言うとアレですけど、多分予算超えるけど許してね。官僚だからいいよね。
 あと、「サークル」って例の政策立案団体ですよね。同じくメンバーだった56回生Kくんが「政治的意識の高いヤリサー」って喝破したあそこのことですよね。だったら、「永秀」は大学に近いしお洒落系だしとある理由(ググってね)で若者人気の高い芸能人のサインが幾つかあって話題のとっかかりがある店だし、メンバー間のデートスポットとしていいんではないでしょうか(って、流石にこの段落の内容は伝えてませんけど)。

 さて、朝のSHR定期テスト現代文の答案返却。授業は高1現代文でセンター演習として評論を1つ、でしたがこれ(宇波彰「『のようなもの』の世界」)は彼らには簡単すぎて授業時間が余った。
 昼過ぎまで仕事した後は市街に出てミスドで読書。夜の読書独酌は家から程近いお気に入り肉料理「I」にて。

 山本崇一朗からかい上手の高木さん(2)』読了、★★★。感想は1巻(2/22)に同じ。
 前屋毅『ブラック化する学校』読了、★★★。私は私立の中高一貫校の教員です。始業5時・終業18時を月~金、始業7時・終業13時を土・日で、週の学校滞在は80時間弱。他に持ち出しの仕事が週に10~20時間。その殆ど(実に6割以上)を授業準備・準備・採点という「教科教育の仕事」に使える(残り4割が担任・校務・会議他)という点において教員としては「限りなく恵まれた」待遇だと認識しています。残業代は勿論ゼロですが、国語関連の仕事をやってる間はストレスが溜まることはありません。これを病識の無い社畜ブラック患者だと思われるなら、本書に詳述されている公立校教員の「地獄」は想像の埓外ということになりましょうか。

ホテルで逢ってホテルで別れる

 永江朗『東大vs京大 入試文芸頂上決戦』読了、★★★。
 東西を代表する国立大学の入試現代文過去問から当時の出題者の時代・社会意識を読み解きつつ、両者の入試問題のどちらに軍配を上げるかを考えようという試み、は面白いに決まってます(特に、私のような「フェチ」にとっては)。過去問70年分を集めて検討するという作業量にも敬意。なんですけれども、この仕事なら例えば斎藤美奈子氏にお願いしたかった。
 営みが想像力の勝負故に時に牽強付会が過ぎることは仕方のない許容の範囲内だとしでも、その想像の一助としてせめて解答を実作することはして戴きたく(難易の主観的判断について軽く言及するだけでは足りないと、斎藤氏なら感じてくれたのではないかと思います)。第三者の立場(外……これは、現在から過去を眺めるという意味の「外」という意味に加えて別に、受験というシステムの「外」という意味です)から眺めるだけでなく、実際に解答する立場(内)からも考えるという態度があれば、内容・分析に深みが増したんじゃないかなぁ。例えば、両学の入試問題の差異の分析は、解答欄の大きさの違いを明らかにするという形式的側面からも行わなければならないと気づくか、とか。とは言え、(問題・解答解説のみを収録した)赤本頼みの資料(過去問)採集だったという所に限界があったかとは思いますけれども……。
 後、タイトルに「文芸」という語が使われていることからも分かる通り、「現代文」という科目が求めている力に対する認識が(良い悪いは別にして)やや「古い」ですね。
 とは言え、今現在の視点から読み物としての入試の面白さを考えるという筆者の立場に立てば、あとがきで下された軍配になるのは「そらそだわなぁ」って感じかな。

 さて、定期テスト最終日。私は初日出題の現代文採点・集計が終わっているので、監督業務だけで楽ちん。他に、高3文系某くんから京大後期の小論文添削依頼が来ていて、これは本腰を入れてゆっくりと取り組まなければなりません(月曜日に面談予定)。

 テスト3限の後は、高1全員がすぐに市内某ホテルに移動して、ランチコースを食べながら(家庭科の授業の一環としての)テーブルマナー講座です。誰かの受け売りか半端に小金持ちなのか、生徒の中には「ホテルのクソ不味い料理やろ? 興味ないわ~」とか言ってるのもいますけど、「そりゃママのお弁当程ではねぇ」ってなもんで、何だかんだ言って始まったら皆さん美味しくお召し上がりになるんですね。
 さて、私が高1担任団に加わるのは56回生、63回生に続いて67回生が3回目なので、テーブルマナーの出席も3回目のはずなのですが、なぜかこれが2回目なんですね。理由は簡単で、56回生の時は直前のどっかのクラスの授業が余りに騒がしかったのにキレて途中で帰っちゃったんで、授業サボってイベントだけ出るのもあれだし、と参加をドタキャンしたんです。だから2回目。
 つっても、私は面倒臭い人間ですからね。一日一食と決めているその「一食」を酒も飲まないイベントで消費できるかい! ってなもんで、教員テーブルのフルコースは隣席に座る若手柔道先生に「柔道くん、僕の分も食べて! 宜しく!」「は、はいっ」ってやりとりで全投げして(ああ、先輩の強権!)、行事の間はひたすら自分のクラスのテーブルをぐるぐる回って「生徒観察」してました。修学旅行とかでもそうなんですけれど、生徒が物を食べてるところ見てるの、これが結構面白いんです(A組生徒は内進の先生が呆れるほどお菓子が好きな子が多く、休み時間にいっつも何かを飲み食いしてるんで、よく「観察」してます)。
 例えば、スープと一緒に出されるパンを魚・肉料理の皿が出される時点まで残しているテーブルもあればスープの時点で貪り食い尽くしているテーブルもあるとか、コーヒーを飲める子飲めない子砂糖ミルクを入れる子入れない子入れるなら砂糖をどのくらい入れるのかとか(スティックシュガーをそのまま口の中に注いでる阿呆も居ましたね)、挙げる例は2つで十分で他にも色々。あと、A組の生徒ではありませんでしたが、学ランを礼服風に折り曲げて、下のYシャツに手作りの蝶ネクタイを着けてる男子が居ましたね(A組の女子何人かに「可愛い!」と遠くから誉められてました)。

 13時~15時のイベント後は、喫茶店と居酒屋とをハシゴして読書。永江朗を読み終わった後は、またまた教員っぽい新書に手を出して、酔いが回って来たら漫画に移るという。

何を見ているの? またシュートが外れた

 シタラマサコ『おそ松さん(3)』読了、★★★。碌碌たる六の陸でなしの録。クリスマスの話やカルタ取りの話等に顕著ですが、ちょいちょいオチがクソベタなのが鼻につきます。

 新聞記事の「1億総スポーツ社会」とかいう頭の悪いネーミングに(見なきゃ良いのに)ついつい目が行ってしまい、その中で「スポーツが『嫌い』『やや嫌い』の中学生を半減させ8%にする」という目標についての表現があって頭がクラクラする。
 というか、1億2000万人の国で16%がスポーツ嫌いだっつーなら丁度良い感じで「1億総スポーツ社会」になってんじゃんよ。
 中学高校時代、その他の授業と違って体育だけは「参加」義務があったことにずっと不自由を感じていました。出来れば「見学」を自由化して欲しいなぁ、と。座学の授業なら、机に固定されているだけで手も頭も使ってない人(「参加」せずに「見学」してる人)、いっぱい居ますでしょ?

 高1現代文の採点・集計が終了。A組がクラス別平均点で首位、一応担任の顔を立ててくれたようで良かった。平均点76.0でこれは想定通り。東大本文の初見でも対応できない人たちではないんです(勿論、設問は変えましたが)。最上位層の生徒なんて、数回(高3特講のような形で)書き方を練習したら、直ぐにでも東大現代文が解ける(←点を出す、とは違います)ようになるんじゃないかな。

いまに帰ってくるのやら 徐かに私は酒のんで

 さて、本日は高1以下の生徒は自宅学習で、一日中定期テスト(残り2日)の勉強に追われているはず。で、高2と高3とは送る側送られる側、の高校卒業式。私は高1担任団として式の受け付けであるとか式後に食堂で行われる歓送会の片付けだとかの雑務が色々。でもって、昨日は飲み過ぎた(というか軒数を重ねすぎた)という反省があるのに今日は今日で16時とかいう明るい時間から飲み始めてしかも杯を次々に重ねないといけないというお仕事が。

 高校卒業式の後は毎年、高3保護者主催の謝恩会が市内ホテルで開かれます。勿論主賓は担任団・管理職なのですが、高3で授業だけ担当した教員も招かれ、大体は縁が薄いという理由で断るケースが多いのですが私は誘われたら全部行くというマイルールを貫徹してヘラヘラと出席するという。
 3時間の会席中、担任・副担任の前には各クラスの保護者の方々がずらり列をなし、全員が瓶のビールを注いではご挨拶という、端から見てたら微笑ましく注がれる当人にとっては地獄みたいな光景が繰り広げられているのですが、担任団でもなく授業も文系漢文理系東大漢文特講だけなので対象生徒100人以下という私の場合はやって来られる保護者の方もぽつ、ぽつという感じでマイペースに飲める(だから「杯を次々に重ねないと」って程でもないですね。重ねましたけど)。

 さて、アウェイ勢漢文先生にとって唯一の「お仕事」は、各教員3分ずつという制限時間で壇上に立つ「3分間スピーチ」のみ。普通はアウェイ(授業担当者)→ホーム(担任団)の順番で喋るんじゃないかと思うんですが何故か今回は逆で、担任団が思い入れたっぷりのコメントで臨席保護者を感動させ尽くした所に司会者のお父様から「はい、アウェイ勢、どうぞ!」と壇上に促されまして。取りあえず、同じテーブルの副担任同窓数学に「今回こそは笑わせずに行くわ~」と宣言して、全く信用してないという視線を背中に感じつつ、マイクの前。「3分間スピーチ」、以下。

 【国語科の池ノ都です。今年度は漢文の授業でお世話になりまして、対象が文系の生徒と理系の東大志望者の特講だけということで、ここにいらっしゃるお父様お母様のお子様全員と関わったという訳でもない、要するに「通りすがり」みたいな存在なのですがそんな人間にまでお招きの声を掛けて下さったことを、先ずは感謝申し上げます。
 さて、文系漢文の二次対策授業、及び東大の特講ということで、これは単に授業だけではなくその後に授業中に解いた二次試験過去問の添削という作業が御座いますので、これが意外に大変な作業になるんですけれども、今年の65回生高3は、何故か文系の生徒の数が少ない。例年なら50人程度居る筈の文系が、今年は30人弱しか居ないんですね。これで私の仕事は大変楽になりました。こんなに楽な高3は過去なかった。こんなに楽をさせて頂きましたこと、皆様方には心から感謝しております。
 何故今年の高3はこんなに文系が少ないのか、と職員室内で訝しがる声は多々ありますが、そんなの考えるまでもありません。お父様お母様ならお分かりだと思いますが、これは偏に担任団に居る国語科2人、学年主任先輩先生と文系担任後輩先生という国語教師2人のせいに間違いはありません。
 卒業式の日だとついつい「終わりよければ」と考えてしまいがちですがこれはちょっと違って、やっぱり「始めよければ」が実際の所なんですね。高校65回生の一日の「始め」はどこからだったかと言いますと、毎朝6時30分に出勤なさって高3フロアの廊下教室の掃き掃除をお一人でなさる主任先輩先生のお清めから始まるわけです。登校した65回生生徒諸君は「あら何となく我々のフロアは居心地がよいぞ」と思いながら毎日を迎えられる訳でしてこれが「始めよければ」。
 というのに象徴される主任先輩先生の生真面目、無礼講で言葉を選ばなければ堅物、というのが右にありまして、はい左を見たら今度は文系後輩先生。こちらときたら上から下までビッチビチにお洒落センスの塊、これで生徒の文系観は固まったんですね。右見たら生真面目、左見たらハイセンス、どっちかに飛び抜けてなきゃ文系になれないと思うならこれはもう前門の虎後門の狼、生徒は全員「理系に逃げちゃえ~」となるのは必然です。文系が少ない所以。繰り返しますが、このお二人のお陰で今年の私は本当に楽をさせて頂きました、本当に有難う御座います。
 さて、先ほど文系後輩先生はスピーチでお別れが寂しいというようなことを仰有っておりましたが、それは、甘い。私、初めて高3担任団の中に年下が居るというシチュエーションが嬉しくてついつい喋り過ぎてしまっておりますが、この国語科2人の壁を越えてわざわざ文系を選んだような猛者が文系後輩先生、あなたのクラスには揃った訳ですよ。あのね、あいつらは、来るよ。きっと来る。明日も明後日も来る、5日後も10日後も1年後も5年後も、来る。でもって、来たら食事の一つでも奢ってあげたくなるじゃないですか。ねぇ。
 だからね、文系後輩先生。お金を貯めなさい。今からコツコツお金を貯めるんです。私も、担当クラスの卒業生に誘ってもらって数日前やそれこそ昨日も飲みに行ったんですけれども、1軒だけのつもりがあ~ら2軒目ほら3軒目、となった結果、65回生の特講費、あ、特講って勤務時間外ということでちょっとばかりお金が貰えるんですけれども、一年分の特講費が蒸発してしまいましたもので。
 ね、文系後輩先生、お金、お金を貯めなさい。私が申し上げたいのはここに尽きます。本当に。
 それでは失礼致します。本日はどうも有難う御座いました】

 降壇。同窓数学に呆れられる。
 同「どこが笑い無しだ」
 私「おかしいなぁ、主任先生の掃除の話あたりで保護者号泣の予定だったんだけどなぁ」
 同「アホか」

 謝恩会では、スピーチ以外に担任団が「出し物」をしなければならない(様な風潮はどっから出たんでしょう)んですけれども、ここでは後門の狼お洒落番長後輩先生がギター弾き語りで魅せました。また「時代」(中島みゆき)、「青春時代」(森田公一とトップギャラン)っていう選曲がさぁ。
 聴きながら、隣席の副担任化学先生も大興奮。「楽器出来るってメチャメチャ格好いいよね。池ノ都、俺たちもギター始めるぞ! コミックバンド組むぞ!」 何でコミック限定やねん。

 生徒の3年間を振り返るスライドショーや最後の保護者謝辞では皆さん涙、涙。毎年(のように)来ていますが、今年も良い時間を過ごせました。
 で、私の次なる「仕事」はここからで、19時終了教員一同退場、の後で担任団打ち上げ(二次会)のセッティングをする幹事です。全員が十分飲み食いをしているので店はホテルから徒歩10分の野菜料理「B」で二次会コース、とあたりをつけて電話したらバッチリ人数分の席が確保できたので、参加者に会場をお教えした後酔っ払い疾駆5分で先に店に到着。店のマスターと料理の出し方を相談しながら後続の到着を待ちまして、主賓高3担任団の方がお店に入ってこられる頃にはコースの最初の料理(野菜)が出来上がっているという次第。
 「乾杯」以降は、な~んにも考えずに飲むだけです。