風の囁き 海鳴り 空耳でしょうか

 中島みゆきさん、来年初頭のツアーが(全国規模のものとしては)ラスト、という情報が(ファンクラブを通して)入ってきました。「夜会」や単発のライブなどは続けるということですが、或る種の「引退興行」であることは間違いなく、いつかはという覚悟はありましたが寂しいです。やっぱり、観られるときに観ておかないと。
 本日は、午後にK市を出発して遠路宇部市ピカソのライブを初体験です。ボーカルの辻畑さんは63歳、バンドの知名度を考えても今回がライブ鑑賞のラストチャンスでしょう(宇部でのライブは、辻畑さんの出身地だからだそう)。

 1時間だけ出勤してデスクワーク(授業準備)、その後は7時間の年休です。先ずは、JRのK駅へ行き、Fさん(母君のお姉様)とYさん(Fさんのお嬢様)とをお出迎え。伯母・従姉妹、を母君の介護施設「I」へご案内。Fさんは二度目ですが、Yさんは初めて。Fさんが前回いらしたのは8月24日で、それからほぼ3週間が経っています。往診のS先生が「一日に一歳、歳を取っていくと考えて下さい」と仰っていた通り、20日間で20歳、前回はFさんからの問いかけにも割合に明瞭なお返事が出来ていた母君も、今日はそうではありません。「視力はほぼなく、返事も出来ないと思いますが、耳は聞こえているのでお声を聞かせていただければ」とお伝えした上で、お二人にお部屋へ入って戴きました(後でYさんが「話しかけたとき、何か返事をしてくれたような気がする」と仰っていました)。
 その後、月水金で行われる入浴介助を見学(私だけです)。途中、お二人の介護士から体勢を変えられておられた最中に母君が「いた~い!」と声を出されたのを聞きました。癌は(検査もしていませんが)恐らく骨転移、身体が固まった状態で動かされると、時に「痛い」と声が出る、と伺っていながら実際に耳にしたのは初めて。痛いときに「痛い」と仰るということは、普段は痛みがないという証左で、これで随分と安心できたのが今日の収穫でした。

 JR近くの喫茶に入り3人でお話。Yさんが事情のある子育ての真っ最中で、しょっちゅう学校に行ったり教員からの電話に対応しなければならないというお話を。Yさんの奮闘ご努力には頭が下がりますし、恐らく現場(というかトップ、校長ね)への忖度で身動きが取れないのであろう何人もの先生のお姿も想像出来、何とも言えない気持ちになりました。公立は不自由ですね。
 私立F校なんて何でもアリ(とまで言うと語弊があるやも知れませんが)ですから、例えば寝起きの極端に悪い寮生の部屋に朝から飛び込んで布団をはがしたら何故か全裸で寝てたからパンツ履かせて布団から蹴り出す、程度のことは担任業務として「ありよりのあり」だと思います。勿論、「なしよりのなし」だとお思いの先生もおられ、その思い思いが「自由」なんですね。

 お二人を駅改札までお見送りした後、駅近くの「チャイナ梅の花」でランチ(ビールも1本飲んでしまった!)。
 K駅から宇部新川まで行くには、新幹線を乗り継いで新山口まで出て、そこから宇部線に乗り換えてガタゴト普通列車13駅(47分)。片道2時間半の長旅です(F校生の中には、毎日片道2時間半という「猛者」も居ます)。ガタゴトの47分はなかなか面白かったです。読書は内田樹。学校帰りの子どもたちは周囲を気遣いながら小さくお喋り。独り客は殆どがスマホiPadですが、私の左が電子書籍(カギ括弧が多いので恐らく小説)、右は医療系の問題集の解答、と活字は人々の生活に益々浸透している様子。何度かスマホのトップ画面を見ると、現在地の町名が次々に変わっていくのも面白く。「長府松小田本町」って長い名前ですねぇ。

 宇部市文化会館は駅から徒歩5分、500人収容のホールは6割程度の客入りかな。或る種の「地下」と言ったら失礼に当たるのかも知れませんが(オツカル様の名言にある「地上と地下の間」なのかな)、客の中にも演者やスタッフと「お馴染み」の関係の人が少なくない様子。本日のライブ『PICASSO Live~百年の記憶』は、「シ・ネ・マ」「ファンタジー」「サヨナラの素描」などの『めぞん一刻』系から2019年の新曲「真夏のペンギン」「タンジェリン」など幅広い選曲、実験性に充ちた演奏が売りのバンドだと思っていたのですが今日の演奏陣には弦楽器のカルテットが加わっていてクラシックな印象。ライブの前座では辻畑さんが楽曲を提供した女性シンガーがギターの弾き語りを披露していましたが、辻畑さんはピカソの人でもあると同時に、我が愛する西村知美さんや研ナオコさんに曲提供をした職人さんでもあるわけです。中でも、前世紀末の『みんなのうた』で流れたBell&Accordions「潮騒のうた」は忘れられない曲、一聴「もしや!」と思いクレジットを見たら(その時点では随分お久しぶりの)東・辻畑コンビだったのに歓喜したこと……
 ……などなど色々思い出しながらのライブ鑑賞。完璧とまでは言いませんけれども十分な現役感、先に「ラストチャンス」と書きましたが、若しかしたらもう一度くらいは生で聴けることがあるかも、などと。
 ライブのMCは偶然にも辻畑氏による御尊父の癌介護のお話で、通夜不参加のライブ決行という逸話に襟が正されました(応援に来た親戚代表様ご一同がアップテンポな1曲目から最前列近くで号泣してた、というオチには笑いましたが)。

 瓦蕎麦で「獺祭」というのは山口県への礼儀。終演後は、宇部新川某店(学生も気軽に入れる地元系)で40分一本勝負。その後、ガタゴト普通列車、新幹線を乗り継いで0時前にJRのK駅着。新幹線の中では豆をつまみに缶ビールをぷしゅ~。
 若干の疲労、ですが健康睡眠(『高校生クイズ』の録画予約を失念していました)。