アッコの女流作家はつらいのよ!

 ちょっと前に録画した『きょうの料理』の再放送は、1985年の平野レミ初登場回。素晴らしい。
 平野さん、「執筆」を「しゅうひつ」と読んでいたという出だしのジャブからもう面白いんですけれども、天衣無縫喋りたい放題に見えて、「某デパート」「これはスライサーの宣伝じゃない」だとかのNHK弄りにしても、「開いて開いて開いて……箸をだからね」だとかの下ネタストロークにしても、NHKの生放送の中で出来る範囲がきっちり計算されているのは流石だと思いました(知りませんけど、久米宏の教育の賜物だったりするんでしょうか)。
 分葱の雑な扱いに驚いたり結婚なさい弄りにたじろいだりしつつも、平野威馬雄和田誠といった文化人家族にきっちり言及してQ&Aを成立させ、1週間保存の大根にはお酢を入れるという方向に誘導する等々、山根基世アナウンサーの講師捌きもお見事でした

 定期テスト2日目、本日も高校生の保健室受験は無し。私は1限に高1漢文の出題があり、50分の試験時間の間に2度(質問を受け付けるために)4クラスを巡回。今回は問題数が多くなく、その気になれば終業の時刻までに採点・集計を終わらせられるレベルだったのですが、今日明日は別の机作業(←昨日の日記で触れたもの)があって採点に時間を取ることが出来ず。明後日以降、ゆっくりやります(年度最後の定期テストというのは、生徒の性質が如実に見えて採点が面白いんですけれど)。

 鬼連荘3日目の夜は、K市いちばんの懐石「G」で後輩数学先生と月イチの飲み会、に中2主任数学先生をお招きして。今年度の色々な思い出を振り返った後は、(年度末恒例の)人事新学年に関する噂話や妄想話に花を咲かせました。ビールで乾杯のあと、ワインの赤・白をボトルで(私だけがワインの前に日本酒に寄り道)。月替わりのコース料理に今月は珍しく(年に1回も無いという記憶)天麩羅が出されまして、タネは殆どが山菜。寒の戻りが激しすぎて肌感覚ではそれどこじゃないんですが、確実に春はやって来ているということなんですね。
 「G」は街中から外れた場所にありますし、コースをじっくり堪能したら3~4時間はかかりますので、二次会は無し。タクシーで帰宅した後、居間で缶ビールを1本だけ飲んでから入眠。

スーパーワギャナイザー

 おまけその2。79年に始まった共通一次試験~センター試験~共通テスト(←名称嫌)の第一問評論、女性の書き手はどれくらいいたでしょう。私が思い出せるのは、馬場あき子・氣多雅子・鳥越けい子、という3人だけなのですが、他にいましたっけ(調べりゃすぐ分かりますけどね)。

 本日、第5回定期テスト初日。高校生に保健室受験が出れば私が監督することになっているのですが本日は無し。出題も明日ですので、生徒半ドンの午前中は完全にフリーで、職員PC室にてとある机仕事をひたすら(これが、就業時間全部を使って3~4日かかる分量なんです)。午後は自宅に戻って(出題予定の無い)模試の作成、読書、書き物。

 7連荘飲み会2日目は、63回生担任数学先生にお声がけをいただき、理系KTくん(工学徒)・KKくん(医師兼数学徒)・Sくん(研修医)、の卒業生3人を交えた5人で居酒屋「A」へ。
 自宅から西鉄K駅まで徒歩移動、ちょっと本屋を覗いてから店に向かおうとしたら、その書店でKTくん・KKくんとばったり(ラノベのコーナーで懐かしい作品を見つけるという戯れをしてました)、3人で歩いて店まで。
 仕事で後から来るSくんを除いた4人で、63回生の懐かしい話やそれぞれの近況など色々と楽しい(バカ)話を。数学先生はF校で最も声の大きな教員でいらっしゃって、『ワギャンランド』級の大笑が狭い個室の壁をビリビリと震わせました。「A」の注文はQRコードを読み込んでからスマホ操作という形式だったので、注文は全て工学徒にお任せです。

 二次会は小料理屋「U」の個室が空いているということでそこに決め、ワンメーターギリギリくらいの距離ながら酔っ払っているから店先にタクシーを呼びます。私以外の4人をタクシーに乗せ(途中合流のSくんは私と「U」に行ったことがあるので彼に移動の指示を任せ)、私はダッシュで「U」に向かいました。一次会から二次会の移動で走るの、得意なんです。車じゃ絶対通れないショートカットを駆使したら、タクシー移動の4人に遅れること1~2分で「U」に到着、乾杯に間に合いました。
 再び馬鹿話に花を咲かせていたら、数学先生のスマホに、先生が現在所属している中3の学年主任国語先生から着信があり、国語先生と卒業生(69回生だったのかな)女子3人も「U」へ合流。個室がぎゅうぎゅうになったので、私とKKくんとはカウンターに移動して2人で喋ってました。KKくんは高1Cの時に私が担任を務め、2~3年は数学先生が担任を務められた生徒。理由は省きますが個人的に進路とその後とをちょっと気にしていたので、曲折経た現在の愉しそうな様子が嬉しく。

それが男だぜ それが男だぜ

 本日は午前中に東大現代文の解答解説プリント作成、午後に高1漢文の定期テスト(明後日出題)作成、分かりやすい2部構成です。

 東大第一問(文理共通現代文)は小川さやか「時間を与えあう」(2023年)。この点についてはセンターより遥かに頑なだった東大が、とうとう、ついに、やっと、ようやく、女性筆者の出典で第一問を作りました。第四問(文系専用現代文)のエッセイでは幸田文・蜂飼耳・河野裕子・馬場あき子・小池昌代、そして後述の菅原百合恵と、私が就職して以降の20年で6人の文章が出題されています(割合として多いとは言えませんが)。しかし、第一問の出典の筆者は、共通一次が始まった79年(漱石『文学論』)以降、これまで男性しかいなかったと記憶しています(間違っているかもしれませんが)。
 こないだ佐世保の書店で買った本の中に、東大のジェンダー・ギャップ史を精緻に研究したらしい矢口祐人『東大はなぜ男だらけなのか』という新書がありました(まだ読んでいません)。帯レベルの情報では女子学生2割(全学部の平均)の衝撃だけが書かれていましたが、勿論教員・研究者の側でも同じことが起こっている訳で、入試国語に関してもそうだった、ということですね。今回の出題が何らかの変化の兆しなのかどうかは分かりませんし、女性が書いた文章なら女性の受験生に有利になるのかどうかも勿論分かりはしませんが。
 因みに、今回の小川氏の文章はエッセイ調の軟らかい文章(これまでにも第一問がエッセイ調だったことは何度もあります)。読んでいて面白い本文だと解き甲斐もありますね(文章・設問は東大のHPで公開されます)。今回は設問(一)の解答作成にだいぶ悩みました。

 東大第四問(文系現代文)は菅原百合恵「クレリエール」(2023年)。仏文学者・歌人のエッセイで、こちらも良い文章だなぁと思いながら読んでいたら、57回生現代文をご担当の先輩先生から、回生を代表する才人Iくんが菅原氏のご友人で、だいぶ前に職員室を訪問したIくんから氏の歌集を贈られたことがある、というエピソードを伺いました。本文冒頭に筆者の年齢が伺える記述がありますが、私(1980年生まれ)よりも後に生まれた方の文章が東大国語の出典になるのも、若しかしたら初めてなのかもしれません(蜂飼耳も出題当時の年齢は若かったですが、私より早い生まれです)。
 予備校のサイトを覗いてみれば、4つ見てみた内、26日のうちに現代文の解答を公開したのは2校だけでした(残りの2校は27日以降)。文章は読みやすいけれども、設問に答えるのは難しいという(個人的な)印象。

 高1漢文の定期テスト作成。こちらは頭の中に初めから出来上がっているものをアウトプットするだけなので、午前中の仕事ほど頭を酷使することはありません(どちらかと言えば、手と目との方を使う仕事です)。今回は出題範囲が狭く(何せ、授業が4回しかなかった)、解説・知識の細かい部分や、応用的な思考が必要な問いが増えることになるので、受験生はちょっと苦戦するのではないかと予想しています。

 終業後の夜は、英語パイセンに誘われて小料理屋「U」のカウンターに並びます。
 関係性としては要するに女子同士(貴様いつまで女子でいるつもりだ問題)ですので、とにかくトークが長い長い。2人で飲みに飲んで喋りに喋って(その割にはあんまりものは食わずに)たっぷり5時間! 話題の半分は口が裂けても他言できない職場関連の噂批判悪口愚痴、もう半分は口が裂けたら言っちゃうかも知れませんけれども周囲にドン引きされることは間違いのないOL(おっさんずラブ)民の感想合戦。
 7連チャンの1日目から飛ばしすぎた気がしますけれども、タクシーを降りて部屋に入って着替えてベッドに倒れてという一連の流れは全て覚えているので、そこまで酷い状態ではなかったのではないかと。

 おまけ。返す刀、F中・F高入試をチェックしてみよう!
 伊藤亜紗中村桂子・暉峻淑子・志村ふくみ・牟田都子。
 中学・高校各20年間の過去問を調べてみたら、合計40題の評論の筆者に女性は5人でした。流石元男子校、皆無ではなかったものの少ない少ない。東大のことをあ~だこ~だ言う資格はなかったみたいです。

3月の風に想いをのせて

 少し前にも書きましたが、3/9(土)の63回生同窓会、軽い気持ちでTくんに人集めを任せたら、卒業生19人・担任4人が勢揃いすることになりました。ならば手配はオッサンの役目、63回生に縁のある「月空」の座敷エリア26席が貸切OKだったのは幸運。規模もデカいし、主任化学先生が馬肉・半生肉NGなど注文も多いので、今夜はマスター(63回生Mくんパパ)との打ち合わせがてら、一人で予約を入れています。しかし、非公式なのに学年全体の1割が集合するのは凄いですね。と言っても、集まれるのは殆どが福岡及びその周辺で働いている人たちばかりで、要は医者中心なんです。我ら文系A組は(九州圏外在住ばかりで)Mくん一人だけが参加予定……担任が嫌われてるからだとは思いたくないなぁ(あり得そうな話なのが哀しいですけど)。

 通常通り(8時半)に徒歩で職員室入り。9時~12時、13時~16時、でひたすらPCに向かいました。事前の想定通り、6時間で進捗100%です。
 途中、色々と検索を駆使して、取りあえず東大現代文の出典だけは確認しました。第一問(文理共通現代文)の筆者が、何と女性!

 一旦帰宅、入浴。着替えて徒歩で西鉄K駅、特急15分で二日市。駅徒歩3分で「月空」。いつも通りの独酌読書ですが、今日は焼き場横のカウンター席(定位置)で、マスターと3/9の宴会(内容・予算・キャンセル規定など)についてちょいちょい相談も。
 「月空」は飲み放題付きコースが3800円という破格、ですがこの価格帯は流石に超ベテラン体育先生までお呼びする席ではアレなので、内容をお店に任せた5000円でお願いすることにしました。こちらからのお願いは2点で、①名物の馬刺し(←主任化学先生がNG)は牛バラ肉のタタキ風カルパッチョに変えてもらうこと、②〆(食いたい人が勝手に後でラーメン屋に行く)とデザート(酒の邪魔)とは外してもらうこと。
 当日は、何も言わなくてもマスターがかなりな融通を利かせて下さるはずなので、担任4人でちょっとずつカンパをしてお店に差し入れをすべきかなぁとか考えながら帰りの電車に揺られ、満席の日のバイトさんは大体3人だからマスターを含めた4人でシェアできる洋菓子とかかなぁとか考えながら徒歩で自宅(後で小料理屋「U」の女将さんに相談したら、本店居酒屋「U」のバイトさんたちも洋菓子かケーキかだったらいちばん喜ぶとのことでした)。

 明日は取りあえず、東大現代文2題の解答例(解説プリント)の作成がメインの業務。一応、今日の酒量は控えめにしたつもりですが……。

トコトン トコトン 人の前では

 目覚めたら7時前、お風呂にお湯を溜めている間に出勤準備と母君へのお供えを済ませ、入浴後に着替えて徒歩(というより競歩)出勤、8時半ギリギリに職員室入り。

 一昨日昨日の泥酔旅行の余韻(若しかしたら「酔い」?)も覚めやらぬ内、午前中に何故か2件の飲み会が決まってしまい、私、2/26(月)~3/3(日)の7連続で飲み会が入ることになりました。最近時々耳にする「鬼レンチャン」ってこういうのなのかしら。
 2/26……英語パイセンと小料理屋
 2/27……63回生(教員・卒業生)と居酒屋
 2/28……数学科2人と懐石
 2/29……数学科(元)・英語科とイタリアン
 3/1……店の常連氏(非F校関係)と小料理屋
 3/2……72回生卒業式後の謝恩会
 3/3……69回生Yくんと焼鳥

 本日は半ドン。授業なし、添削なし、なのですが時間割(教務主任)の大切な仕事があって、1限に教務部長地理先生との打ち合わせ、2限開始の10時から15時まではずっとPCに向かっていました。15時半に退勤。
 このPC作業にあと6~7時間かかりそうなので、明日は日曜出勤にして職員室で終日作業することにします。勿論、明後日26日からは、二次試験の問題の確認・分析(東大については解答解説プリント作成)という仕事が待っています。

 夜は小料理屋「U」で女将さん・常連さんとお話ししながら飲みました。前述の飲み会7連荘、2/26と3/1との小料理屋というのはこの「U」のことです。最近、本当に入り浸ってます。

坂道多く 海はすぐそば 異国のひと すれ違うところ

 本当は佐世保名物だという朝市を訪問してみたかった(なんだったら食材でも買い込みたかった)のですが、スナック「ヴィヴィッド」で日付跨いだ四十絡み(←43歳をこう言っていいのかは知らん)がそんな健康的なことなぞ出来るはずもなく、ホテルのベッドで目覚めたら7時半。幸いなことに宿酔いではなかったので、部屋風呂にお湯を溜めている間に帰りの荷物をまとめ、入浴後の8時過ぎにチェックアウトをしてホテルを出発しました。荷物バッグも軽いので、コインロッカー等の必要もありません。
 1泊2日、2日目の朝活は「亀山八幡宮」~「宮地嶽神社」のはしご。時間と体力とに余裕があったので、バスは使わずに全て歩いてまわりました。旅先の神社は本来なら到着直後に「宜しくお願い致します」と挨拶すべき場所という認識なのですが、今回は後先に。

 「宮地嶽神社」を出た時点でFくんとの待ち合わせまで1時間ほどあったので、繁華街の「くまざわ書店」を逍遙。3冊の本を購入しました。
 「あんだけ飲んどいて神社八幡朝活ってどんだけ元気なん」とは10時間ぶりに再会したFくんの言ですが、彼だって勤務病院で確り仕事をしてからやって来たそう。ただ、彼は車だそうで帰りの駅までは送ってくれるとのこと。有難いは有難いけど、私ゃてっきり今日から連休だという彼も飲むもんだと思っていました(と言ったら、「いや、流石にまだ飲めない」というお返事)。

 ランチ酒(Fくんはノンアル)は市民の魂食「ささいずみ」。旅行決定時に夜の予約を「重兵衛」か「ささいずみ」かと迷った居酒屋名店を、偶然の以心伝心でFくんが押さえてくれていました。予約無しの飛び込みは総て門前払いの大繁盛、予約時にFくんが押さえていてくれた烏賊活け作り、名物のカワハギ、どちらも美味でした。現地ならではの未踏破蔵もあって満足(758蔵目・長崎「梅ヶ枝」)。
 それにしてもFくん、カワハギの食べ方が医者。薄造りは小が1970円、中が2190円、大が3091円、という攻め倒した値段設定。それなのに「絶対大、それで足りずにお代わりするから!」と言い張ってきかないのを恩師(?)の権力で中に変えさせた私が、届いた皿を見てほらやっぱり2人ならこれで十分じゃないかと思いかけたその刹那、カワハギ5~6枚を一気に箸で掬って秒も躊躇わず口に入れましたもんね。私「……1枚ずつ食べたら、不味いの?」

 「酒臭っ!」と罵られながらFくんの車に乗っけられて駅まで介護送迎。帰りは流石に特急を使って、Fくんにオンラインで取ってもらった指定席に座った瞬間寝落ちしました。行きはチェリッシュ、帰りは八代亜紀のつもりだったんですけれども。

 乗り過ごさずにK駅で降りられたので勝ち。タクシーで自宅、荷解きもそこそこにベッドで泥寝(どろね)して、起き出した夜遅く(っつっても21時くらい)に湯船につかった瞬間にビールが飲みたくなるのが我ながら不思議。冷蔵庫には納豆が1パック余ってたはず。

旅に出るのです 春に はじめて

 4時起床、朝風呂のお湯を溜めている間に旅行準備(1泊なので殆ど必要ありません)。今回の目的地は佐世保、行き帰りは電車で2時間強です。
 車内では車窓を見ながらCDを聴くことにして、八代亜紀・チェリッシュのベスト盤を準備。私の中では5年おきくらいに「悦ちゃん」のブームがやって来るのですが、今が正にその最中で、ここ数日はYouTubeで「夢のおかず」を1日に2回以上聴いています。準備したベスト盤は中学校の時に買った物で、「なのにあなたは京都へ行くの」から「四季・奈津子」までの10年間のシングル曲のうち18曲が収録。今回のマイ・悦ちゃんブームで知ったんですが、「四季・奈津子」って(こちらも大好きな)岸田今日子との競作だったんですね。

 タクシーでJRのK駅へ。6時少し前に着いて、駅構内のコンビニATMでお金を下ろそうとしたら、6時オープンのファミマがまだ開いておらず、私、コンビニエンスストアがオープンする瞬間というのを初めて目にしました(ただ、留学生らしき店員さんが電気を灯すだけなんですけれども、何か良いところに立ち会った感覚が)。
 外は真っ暗で6時15分初の普通電車は乗客が疎ら。Kを出たら、鳥栖・佐賀・江北駅で3度の乗り換え、前述の通り乗り換え含めて佐世保まで2時間強です。江北からの電車は中学生・高校生でいっぱい。平日年休でお気楽旅行という肩身ですので座るのは我慢、車両の端っこでバッグを抱きしめながら悦ちゃんを聴いていましたが、武雄温泉駅で殆どの乗客が降りてしまったので、最後50分くらいはシートに座って車窓を眺めることができました。

 佐世保には8時35分に到着。駅そばのホテルに荷物を預けて、駅前のタクシー乗り場から九十九島エリアに向かいました(途中、教務部長地理先生に教えて頂いた世界遺産のクレーンが見えました)、今回の旅行に関しては夜・昼の会食(68回生Fくんと)以外は全くの無計画なのですが、水族館があると聞けば訪問しない手はありません。
 「九十九島パールシーリゾート」と呼ばれるエリアに到着。先ずは九十九島遊覧船の乗り場に行き、クルーズのチケットを購入します。子沢山の地理先生からは「あれは楽しいよ……独りでだと分かんないけど」との言を頂戴致しましたが、こちとら独りのでぇベテランです。クルーズ船は、海賊船みたいな大型(パールクィーン)と、10人の利程度の吹きさらし小型(リラクルーズ)と、2通りのサイズがあり、受付の方は今日のような風の強い日は暖房付きの大型を是非と勧めて下さったのですが、天邪……もとい舌切り雀で小型を選択しました。

 9時開館直後の水族館「海きらら」へ。平日の朝なんて誰も来ていないだろうという(失礼な)予想は覆され、外国人観光客、幼児連れ家族、人生ベテランのご夫婦(これがかなり多い)、そして幼稚園の社会見学となかなかに盛況です。
 先ずは、アコヤ貝(実物を見るのは初めて)の真珠取りだし体験というのを、1000円払ってやってみました。ナイフで2枚貝をパカリと開き、ピンセットで真珠1粒を取り出す。私が選んだのは「ゴールド」色の「ドロップ」型なのだそう(クイズ研究会顧問としては、クイズベタの「バロック」型の方が良かったのかしら)。真珠は持ち帰りで、追加1000円を払ってイニシャル付きのストラップに加工してもらいました。自分用のお土産はこれで充分かな。
 「海きらら」は九十九島の海洋生態(アコヤ貝もその一つ)に的を絞った水族館で、残念ながらペンギンはいなかったのですが、カブトガニは成体だけでなく卵まで展示されていましたし、全国でもここのイルカショーだけでしか観られないというジャンピングキャッチボールには東西老若男女が満座喝采でしたし、アコヤ貝体験もできましたし、生まれたばかりのエイの赤ちゃんも可愛かったですし、150分があっという間の魅力的な空間でした。

 「海きらら」の隣にあった中華食堂で人生初の「刀削麺」を食べたらこれが全然美味しくなかったのだけは悔しい(反面、夜の寿司が俄然楽しみになったという利点もありました)。

 暖房付きの大型ではなく吹きさらしの小型を選んだ九十九島クルーズ、平日朝の舌切り雀は私だけだったようで、運転手兼ガイド氏を私が独占という環境で50分を満喫(海風は大変強かったので、「海きらら」でグッズのシャツを購入して重ね着したのは正解でした)。
 小型船、砂岩侵食の様子や島々の名前の由来などの『ブラタモリ』的なガイドは大型船と同じなのでしょうが、砂浜に乗り上げんばかりのギリギリまで島に近づける小回りだったり、真珠体験の話をしたら養殖場の「田崎真珠」の看板前でストップしてもらえる融通だったり、岩上の巣から準絶滅危惧種のミサゴの鳴き声が聞けたり、とサービスが増し増しでした。腰掛け1枚で北風に耐えた甲斐は充分以上にあったと思います(というか、小型の方が大型より3割増しで値段が高かったんです。そりゃそうでしょうねぇ)。

 ちょうど良い時間に駅に戻るバスがあったのでそれに乗ったら、駅に到着する前に、先のクルーズの船頭さんがお勧めして下さった観光スポットである「セイルタワー」があったので咄嗟に下車。
 正式名称「海上自衛隊佐世保資料館」は、日本海軍・海上自衛隊の遺産・史料・資料を継承展示する施設。軍にも自衛隊にもそこほど深い興味があるわけではありませんが、K市から来ておいて海上自衛隊に仁義を切らないというのもあれですし……というか、7階建てタワー(最初に7階までエレベーターで上り、1階ずつ下りながら観ていく順路)からの街並み遠景を味わいながらの近代史概観、普通に面白かったです。無料。

 駅まで歩く途中の繁華街(夜の寿司屋はここにあります)のカフェでコーヒーブレイク(スマホ充電)。ホテルに戻ったのはチェックイン15時をちょっと過ぎた時刻で、取りあえず部屋風呂にお湯を溜めて本日2度目の入浴。

 その後、夜の約束まで半端に余った時間を、松浦鉄道乗車体験に充てました。JR佐世保駅ICカードが使えませんが、松浦鉄道はOKだったことは先に書いておきます。
 佐世保から、2両編成の電車にのんびりと揺られること15分。ビル住宅の隙間を縫って目指したのは泉福寺駅、退勤・下校のジモティーに紛れたローカル線体験は短い時間でしたがなかなか楽しい。下車した泉福寺駅は安定の無人、どころか駅舎も屋根すらも無い雨晒し(若干の雨模様なのでコンビニで傘を買いました)で、そこからトボトボ20分程歩いた山中に「眼鏡岩」はありました。灯ともし頃も過ぎた雨天故に写真に魅力は残せませんでしたが、実物はまさに奇岩の迫力、水木しげる翁の描く「大首」を思わせます。雨宿りの出来るベンチで初々しくしかし確実にイチャイチャしていた高校生男女は私が近づくとそそくさと退散、申し訳ないとは思いましたが日は確実に暮れていますので、子どもは帰って風呂に入って飯食って宿題やって、イチャイチャはLINEとかテレビ電話とかで(よく知らんけど)やって下さい。

 帰りは西肥バスで繁華街の松浦駅まで。19時に約束のFくんと、市内随一という鮨「重兵衛」カウンターに並びました。
 整形外科医として1年間だけ佐世保の大病院に勤務しているFくんからは、給与体系が良すぎて金銭感覚がバグるというその大病院での仕事ぶり、夜の(飲み方と金払いとの)激しさ、等々の話を伺いました。例えば、Fくんは客単価2万の「重兵衛」には2度目の訪問で、前回は賭け(ダイエット競争)で最下位だった後輩が参加者7人に全驕りしたということでした。後輩、30万円持ってきて一晩で全部使ったんですって。成程、バグってるわ(今回は割り勘です)。

 「重兵衛」はカウンター8席・テーブル1つ。勿論、予約満員。注文はコースのみ、ドリンクメニューはなく店員さん曰く「一通り」だそうで、私たちはビール(瓶のみなのが好感)、日本酒(辛口か否かを言えば大将が銘柄を選択)、芋焼酎(三岳)を。
 前菜が今イチ(当社比……K市いちばんの懐石「G」との比較)だったので心配しましたが、2品目の鯨より先は美味しく楽しく満足。佐世保の魚がそもそも良くて、大将のお仕事も誠実。フォアグラを握るとか、雲丹の巻き方(軍艦ではなく握りを下から掬うように巻く)とか、鰻をたたいて出すとか、処々初めてはありましたが基本は王道です。
 日本酒の揃いは普通で、辛くないやつを4連打でお願いしたら、「よこやま」「一本義」「貴」ときて、最後の「北雪」は別の客が辛いやつで注文してたやつだったという御愛敬。皿は以下の通り。
 前菜(水雲・石蕗・蛍烏賊・黒豆チーズ・鯛真子・鯛炙り・蕪)
 鯨さえずり
 雲丹・烏賊・生唐墨
 中トロ漬け炙り(以下、味噌汁と果物と以外は全て握り)
 鮃えんがわ
 烏賊昆布〆雲丹乗せ
 トロ
 縞鯵
 雲丹
 海老
 鯛
 鮑
 フォアグラ
 味噌汁(トコブシ
 鰻
 鮪手巻き
 菜の花
 鉄火巻(追加)
 果物

 本日は祝祭日の前日ということで、夕方までは(平日故に)観光地は空いているだろうけれども夜は人出が多いだろうと想像していました。佐世保だから、米海軍基地の人々が夜の繁華街で陽気に騒ぐみたいな図も想像していたんですけれども、Fくん曰く米海軍基地は日本とカレンダーが違っているとのことで、確かに夜の町に外国人の姿は見えません。
 2軒目はFくんにお任せしたら、昭和感丸出しのスナック「ヴィヴィッド」に連れて行ってくれました。先に「外国人の姿は見えません」と書きましたが、ここは外国人お断りの店なんだそう(棲み分けがあるんですね)。私たち以外は一人客が2組で、こちらの相手は若いチーママさんがご担当。私たちは、昭和からやってるなというベテランママさんとお話をしながら、私が生まれるより前の歌謡曲を何曲も歌いました。FくんのSBM(Super B'z Mode)も久々に観られて満足……ですけど帰りの記憶があんまりありません(日付は確実に跨いでました)。

どしゃ降り雨で よれよれ

 鰈を煮付けた後で頑張って目をつむり、気がついたら3時半でそのまま眠れず、4時の台所で(八代亜紀を聴きながら)豚汁を作る。だから今夜は独り慰労会で明日からは旅行だっつってるのに。30cmのフライパンにいっぱいの野菜・豚肉を(胡麻油で)炒め、出汁パックと水とを加えて煮立て、味噌をとく。今回は豆腐は無し。
 なぜか味見をさせたくて、すき間だらけのテーブルで、朝食に豚汁を少しだけ。一味・ラー油で味変も。

 6時半に職員室入り、本日が受付最終日の二次試験過去問添削。15時半がラストオーダー(提出〆切)で、17時終業前には全て返却を終えました。
 今夜は独り慰労会で外食のつもりだったのですが、退勤徒歩15分で靴下までびちょびちょになる豪雨だったので外出を諦め、自宅近くの魚屋で刺身2点を購入してから帰宅。結局、夜中に煮付けた鰈と未明に作った豚汁とを役立たせることになりました。まぁ、明日は朝から旅行ですし、これで良かったのかもしれません。
 日本酒は、63回生Sくんから(お父様を通じて)頂いた新潟「久保田」(萬壽 純米大吟醸)。自分では絶対に買わないし店でも注文しない銘柄ですが、超久々に飲んだら、750蔵の玉石を経たからでしょうか、「久保田」って別に悪くないじゃん、と認識を改めるなど(何様)。

私が現在やりたいこと なんですか

 1限で板書準備、2~5限で授業。高1漢文は定期テスト前最後の授業で、嘗てセンター試験に出題された白楽天の五言古詩「放鷹」を解説しました。前回の授業の最後にそのセンター試験の問題を(実力テスト)で解いてもらったのですが、割とよくできる人たちですら問一の脚韻を見事に落としていたのに吃驚。基礎の基礎、普通忘れるか? と突っ込みながら採点したのですが、今日は金体詩の分類・規則等々の話から。
 今の高1(私が担当しているのは内部進学のB~E組のみ)って、比較的真面目に勉強する(そうじゃない人もいます)し、暗記力等の勉強の基礎的素質は悪くないと思うんですけれども、「忘れてもいい知識/忘れたらだめな知識」を弁別するとか、どの科目にどのくらいの程度注力すべきかバランスを整えるとか、そういう方面に弱い(それに頭を使う発想がそもそも足りてないのか、弁別調整のセンスにやや乏しいのか)という印象を持っています。勉強それ自体において頭を使うというのの一つ上、どのように勉強するのかという生活設計に頭を使うことが、高2(F校では「高校生」を終えて「受験生」になるのが高2です)からの課題かな、と。

 仕事から帰ってリビングに入った瞬間の違和感、何だろう、この天花粉みたいな甘やかな匂いは。台所周りから出てくるとは考えづらい匂いの出所が全く思いつかず、まさか侵入者でもあるまいしと若干気味悪くなったのですが、少し経ってから、今朝から新しい線香を使い始めたことに思い至りました。和室のお位牌に「驚かせないでもらえます~?」と軽いクレームを入れながら、遂にここまで人らしい生活に身を浸すようになったか、と改めて驚く。
 夕食はキムチ鍋で、天花粉の匂いはかき消されてしまいました。

 夜中、ベッドに入っても何となく寝付けず、頑張って頑張ってから諦めて起き出し、日付跨ぎの台所で鰈の煮付けを作るなど(平松洋子さんならジャムを煮るところでしょうが、そんな上等なものを味わう舌・作る腕は持っておらず)。タッパーに入れて冷蔵保存ですが、しかしこれを食べるのはいつになることやら。明日は高3現代文(時々小論文・漢文)の添削の最終受付なので夜は外で独り慰労会の予定ですし、明後日からは在佐世保の68回生Fくんに呼び出されて(年休を取って)1泊2日ですし。
 ん~、やっぱり人らしい生活の深みにはまって(?)行ってますね。

 西加奈子『ごはんぐるり』読了、★★★。基本的には面白くて(食べるということに)真剣なエッセイ、という感じなんですけど……男性に求める飲食店エスコートの仕方みたいな箇所で無知は論外完璧はヤラしい、と松本ちえこ「恋人試験」みたいな気持ち悪いこと言ってるのはちょっと残念でした(面倒くさいのは自分でもわかってるけど、みたいな客観アピールも要らなかった。食のエッセイで1冊書ける人間がしっかり印税稼いでるんだから、男性でも女性でも年下でも年上でも自分がどんどんエスコートすりゃいいんですよ。そして、相手に応じて0点・100点・65点を使い分けたらいい)。

魂が降ってきたよ

 内田善美草迷宮・草空間』読了、★★★★★。既にご退職の関西数学先生(今でも年に季節に1回程度お会いして飲みます)からお借りした本、感想を聞かせて欲しいと言われたのですが、まぁ傑作でした。作者の本は昔『ほんの少しの水』を読んで挫折しただけだったのですが、引退直前の本作は(意図的に読みやすく描いてあるんでしょうが)すっと腑に落ちてきて。絵に惚れる人もいるでしょうし(2つの中編の間に3年の開きがあるので絵柄が変わっています)、キャラクタに惚れる人もいるでしょうし、私のようにネームに惚れる人もいるのでしょう。「ねこ」のセリフがシュール系の曲を作っている時の谷山浩子の歌詞みたいなので、これはちょっと変えたら美しい詩になるぞと思っていたら、ラストシーンで「魂が降ってきたよ」ですから。絶句。

 通常出勤で、机仕事(時間割・添削・授業準備)。授業に関しては、高3は終了し、高1漢文も明日(定期前)に1回、再来週に1回、とあと2回8コマを残すだけです。
 夜は小料理屋「U」で独酌……とは言っても、隣の常連さんや女将さんと喋りっぱなしなんですけれども(このお店、独り客が多いんです)。毎日の手書きメニューも、オープンから最近までは2人前の分量・値段設定がされていた(独り客は少なめの「小鉢」で注文した)のですが、最近ではデフォルトが「小鉢」の分量・値段になっています。