思案橋ブルース

 さて、対面でメールで電話で手紙で、ここ1、2週間レベルでも63回生とは結構たくさんやりとりしているんですけれども(ここに、情報強者教員はFacebookとやらを加えるんでしょう)、大学生との間のテスト期間前後の話題は当然「あいつは危ない」という話題で持ちきりになるわけでして。
 彼らが在学中、少なくとも自分のクラスでは「試験中、解き終わらず寝るのは中学生、解き終わって寝るのは高校生、最後まで見直すのが受験生」と言い続けてきました。「落ち」をつけるのが好きなので、それに「寝過ごして試験さえ受けられないのが大学生」というのを付け加えるのを忘れたこともなかったのですが、その私の予言を語学始め必修科目寝仏恥という形で「身分け」た生徒と今後会った時、きみらが高校時代に貪るように読んでいた『ユメタン』は「夢と消えた単位」の略だったんだよ、というあまり面白くないけれど過たず肺腑を抉るギャグを言うかどうかというのが問題になるわけでして。
 だってさぁ、何が楽しみだったって、20歳になった卒業生と「乾杯!」ってのもありますけれども、その前、19歳大学1年生の卒業生に対してお前もあいつも私が在学中に言った通りになったろ? という意味の「でしょ?」っていうね、この3文字を投げかけるのがどれだけ楽しみだったことかいひひひひひひ……こら逃げるなそこの落単芸人っ!
 「落単芸人」とは何ぞや? という良い子・良いお父さんお母さんは是非是非ググってみましょう。そこに現れた大学生の生態を見て、「まさかこの僕(私)が」「まさか我が子が」と思うでしょ。いえいえいえいえいえ明日は我が(子の)身、「起床点欠」みたいにね、目覚めた段階で点が無い、みたいになる大学生は常に一定数居るんです。「胡蝶の夢」ならぬ「誇張の夢」、夢が延長し過ぎて現実を侵食し、ああいっそこの現実が夢だったらいいのに、という落胆まで面白おかしく伝達することで人に嗤ってもらえる芸にするしかないのが「落単芸人」です。
 これ、テストには出ませんけど、覚えといた方が得ですよ。そこの64回生高3、あなた、あなたですよ。TwitterFacebookだで先輩の落単芸を見て嗤ってる場合じゃ無い。私見ですが、これ、今年嗤った人が来年罹患する病気ですから。「先輩の舞台を見て感動して、僕もあんな風に後輩を嗤わせる人物になりたいって思ったんです!」

 同病相憐れむ。新人の先生に、F校で如何に自分が生徒から酷い目に遭っているかという失敗談を(飲み会等で)嬉々として語る私。
 新「先生、どうしてそんなに酷い体験を笑い話にできちゃうんですか?」
 私「そうしなきゃ、泣くからですよ」

 後、これはテストに出ませんし覚えといたら損する情報なんであんまり書かない方が良いのかも知れませんけど、F校出身の「落単芸人」、結局帳尻合わせて順風満帆な人生街道、みたいなのもゴロゴロしてるんですよ、ねぇ(悪魔の笑みで)。

 超健康起床、シャワーを浴びて着替えて6時、池袋駅のカフェで読書の後、ネカフェに移動して日記を更新。行きつけの店なら3時間でも4時間でも居られるんですが、そこがNGなため今回初めて使った店はやはり座席やPCや飲み物やの具合が気に入らなくて1時間で退店。日記の更新も2日分が限界です。
 開店直後の聖地・ジュンク堂本店を逍遙。先ずは地下の漫画フロア、次いでエレベーターで最上階まで上がり、後は順番に1階まで下っていく。背表紙だけでも読書になるお散歩90分、1階のレジで籠いっぱいの本を会計。「郵送しますか?」「いえ、持って帰ります」のやりとりはいつも通りでしたが、まっぴぃから以前聞いていた通り会計レジは改装されており、10000円毎のコーヒーチケットもデザインが変わっていました。その後、昼食は回転寿司「活」だったのですが少し食べ過ぎ(夜は63回生に食わせて抑えよう)。まだ清掃中のホテルの部屋に戻り荷物(本)を置き、再度ジュンク堂。先ほどもらったカフェのタダ券を使って、午後の動きを考えるんですね。

 ホテルからジュンク堂に行く途中でタワレコに寄り、KANA-BOONの新譜(シングル)を購入。サカナクションのコンセプトアルバムは迷った上でスルー、次の機会に。
 63回生東大Uくん(not落単芸人)からのメールに返信しつつ、先ほど購入したKANA-BOON「ダイバー」を聴きながら、(カフェ・ド・ジュンク……じゃなくなっている! チケットのデザインどころかカフェの経営自体が変わってたとは思ってもみなかった)4Fの喫茶店でコーヒー、午後は神保町に行くことに決定。
 KANA-BOON「ダイバー」、★★。この方々の最近のシングルは毎回毎回3曲収録のその3曲の曲調の順番が同じだから、冊子の全ページ同じ高さに水平の切り取り線が入っててそれを部分部分適当にめくったら着せ替えが出来るあれみたいな感じで、1曲目だけ2曲目だけ3曲目だけシャッフルしてたら何種類もシングルがコーディネートできるんじゃないかというのが感想。
 神保町へ向かうために退店しようとしたジュンク堂で、ついつい教育のコーナーに立ち寄り、高井良健一『教師のライフストーリー』を(既に福岡で購入済なのに)立ち読み。F校某先生の中年期の「来歴」も(仮名で)紹介。先生が切実な自己理解欲求に基づき語り筆者(F校卒業生である教育学者)が承認した、「真実性」を持つ「教師アイデンティティ」。校内事情故に限界はありますが、誠実な聞き書きでした。

 池袋で、リブロ改め三省堂の新店舗へ。店内を10分散歩……したら、棚の前を通りすぎ様「アタシを好きに料理してお見」と扇情的に誘う面陳列の表紙にヤられて選書1冊を購入。④校内模試が作れると目次すら読む前に直観。既に準備の問題よりも良いものが作れたら差し替えることにしましょう。
 神保町。東京堂書店の中にカフェ、ってのは「けっ!」と思いますが、古書店@ワンダーの中にカフェってのはなかなかですよね(「カフェ二十世紀」って店名が凄い)。文庫本を中心に、というよりも文庫本のみを求めて十数店舗回り、最後に「カフェ二十世紀」でコーヒー読書。今回の購入本、野見山暁治は自分用、森有正上田三四二長谷川如是閑なだいなだ……は卒業生用。絶版文庫も含め全て300円以下で買え満足。今夜お目にかかる4人にも1冊ずつ差し上げることにしましょう。

 神保町から移動して渋谷到着はハチ公待ち合わせの40分前。事前にメンバー4人(63回生東大理系)の内の1人に「何食べたい?」と聞いたら帰ってきた返事が「僕はもつ鍋が食べたいです」というかなりレベルの高いやつだったんで、渋谷の博多料理屋「J」ってとこを押さえたんですけれども初めてなんで場所が分からない。予約時に店員さんが「道が入り組んでいる上に看板も暖簾も無いんで分かりづらいかと」と仰っていたので、先ずは事前に店の場所をチェック。道玄坂某所を右に折れたラブホ街のど真ん中、雑居ビルの2階で階段前のドアに店名が書かれていないパターン、ってレベル高すぎだろ。

 コンビニでサインペンを買い、4人に渡す文庫本にそれぞれ「虎視淡々、日常性のeasy!」のメッセージを書いてから、約束の5分前にハチ公に着いたら、待ち合わせに間に合ったのはダブルTくん二人だけで、Hくんは10分、Kくんは15分遅れる、という安定の大学生クオリティ。店までは歩いて5分ですけど入口は難攻不落の分からなさだから待たざるを得ません。何が「日常性」やねん、と。

 さてさて、店は博多料理屋、からの(おしゃれチョコレートショップ併設の)カフェ、2軒で終電まで。
 で、A組文系男子クラス担任と、B~D理系クラス卒業生4人、とのお話は「つーかー」にならない面白さがありまして。どこの学年でもそうですが、文系には独特の閉鎖性がありまして、その中でものを見ているだけで十分以上に楽しく卒業進学できちゃうんですね。んで、そういう人は自分たちが理系(つったら学年の多数派です)からどう見られていたか、に関しては割と頓着しない(頓着したら面白いのに)。でもって、今日の理系4人は割と率直にものを言う人たちだったので、そのあたりが明け透けに聞けて貴重な体験でした。つられて私も何度か(出せる範囲ではありますが)毒吐いちゃったもん。
 63回生の保護者理事長であるお母様から卒業後に聞いたのですが、学年主任(理系担任)化学先生の池ノ都(文系担任)評は端的で「あいつは本当に面倒くさい、けれども学年には必要だった、面倒くさいけれど」 オセロだったら面倒くさいが3回になるだけなんですけれども、まぁ少なくとも2:1で面倒くさいが勝つ程度には面倒くさいメンバーだった、と。多分本当は3:1くらいで面倒くさいメンバーだったのが、幹事仕事と笑い・ネタの提供で強引に2:1に持って行ったってとこじゃないでしょうか……って、ほら、我らがA組と同じじゃない?(大笑)
 ま、要するに、私は言うまでもなく文系の味方ですが理系組の率直な文系観(っつか63回生A組観)を聞くのが非常に楽しかったんです、ということ。他者からの批判も含め、自己客観が大切ですよね……って、これは直前まで森博嗣のエッセイを読んでたのが良かったのかな(大笑)

 後で、4人中2人から「言い過ぎました」とのメールが来ました。気にしないよ、言わせたんだもん。
 健康睡眠。